「健吾、お前のM113乗せてくれよ」
唐突にケンイチ兄さんにそう頼まれた。
「構わないけど」
俺は取り敢えず燃料を入れることにした。
「俺も乗せてくれよ…ってこれACAVか?
このタイプは湾岸戦争仕様だよな…ごちゃ混ぜ…しかもエンジンはターボディーゼルだし、多分A2仕様がベースだな」
いきなりアキラさんが割り込んでくると、M113の細かな違いを指摘してきた。
「俺も詳しい仕様は分からないけど…確かに初期のACAVはベトナム戦争時代の筈だからガソリンエンジンだったような…車体内部は凄く狭いから天井ハッチから車体上に乗ることになるけど」
「かまわないぜ、面白そうだな」
俺はM113を出すと運転席に潜り込んでエンジンを始動させた。
「それじゃ後ろのハッチから車内に入って真ん中の天井から出てきて」
俺の声に…アキラさんとケンイチ兄さん、プリムラ義姉さん、カナン義姉さん、アネモネが登ってきた。
「ケンイチ兄さん、走行中は落ちないように」
「おう、わかった…皆聞いてくれ、動き出したら、この両側の部分には近付かない事、落下して巻き込まれたら大怪我だけじゃない済まないからな」
とはいえ、危険なのは最初から解っていたので車体上面ハッチに腰掛けるように指示を出しておいた。
「それじゃ動かすよ!」
俺はトランシーバーで伝えると、操縦レバーを押し込んで前進させた。
「はやーい」
アネモネが車長ハッチから顔を出してはしゃいでいた…うん。
「どれ位の速度が出るんだ?」
ケンイチ兄さんが聞いてきた、
「約60km/hで航続距離は480km位は走れる、それと限定的だけど沼や小川などでの浮行能力迄あるみたいだね」
「結構出せてそれなりに走れるんだな」
「車体後部の増加タンク分は入れてないけどね」
アキラさんもその速度に驚いていた、
「ケンゴ、私達の居る部分に弓兵を乗せたら…」
カナン義姉さんがやっぱり気が付いたようだった。
「確かにそうすれば、本来の兵器として運用は出来るけど…弓兵4人しか乗れないとなると…果たしてなんだよね…1番は魔導師を4人乗せたほうが実用的では有るけど」
エクスプロージョンやファイヤーボールが使える魔導師を乗せれば、圧倒的な戦力にはなる。
「まぁこいつを本来の兵器にしないのは、ケンイチ兄さんの召喚獣と同じ位な大喰いなんで…油代で破産しかねないからね」
「成る程ね…確かにあの油の量は破産しかねないな」
カナン義姉さんがケンイチ兄さんの召喚獣の事を思い出していた。
「ケンイチ殿とケンゴ殿は居られるか!この音は何です?」
何やら俺達を呼ぶ声が聴こえた…。
「ケンゴ…不味いなアルストロメリア様が来た」
M113をしっかりと見られてしまった。
「それは何です?鋼鉄の…これも召喚獣なのか?」
アルストロメリア様が根掘り葉掘り聞いてきた。
「どうぞ…お乗りください」
俺は搭乗口である後部の扉を開けると車内へと案内した。
「ずいぶんと狭いですね」
アルストロメリア様が中を見回しながら言ってきた。
「そのへんは仕方ありません、我々の座る椅子を無理やり体内にくっつけてますから…お召し物にお気をつけを…遅かったか…」
アルストロメリア様が辺りに興味を示す余り、衣服が車内の出っ張りに引っ掛かった…そしてやっぱりだ、お胸が開け盛大にポロリをしていた。
「見たか?」
俺は見たとは言えずとぼけた。
「何のことでしょう?」
しかしアルストロメリア様の顔は多分…、
「王族のもろ肌をみたのだ…そなたも男なら責任を果たすが良い」
俺はアルストロメリア様の言葉を理解してしまった…つまり嫁に貰えとそう言っているのだ、確実に。
「アルストロメリア様…つまり嫁にしろと?」
一応俺は聞いてみた。
「それ以外に責任があるか…それと私の事はアルスと呼ぶがよい」
うんやっぱりだった、どうやらアマラ義姉さんに影響されたらしい。
「王が側室を大量に迎え入れてな、私も敢えている必要がないというわけだ…正確には王より正室にと言われたが断った、そなたの方が断然魅力あるしな」
こんな狭い兵員輸送車の車内で逆プロポーズされたよ…。
「健吾…頑張れ」
「健吾君頑張れよ」
ケンイチ兄さんとアキラさんが諦めろと言わんばかりの言葉をかけてきた。
「アルストロメリアよ、妾の事は義姉さんと呼ぶがよい」
アマラ義姉さん…もう既に決定事項なのですか!
「ケンイチ…このハマダ辺境領って…ある意味王国内最強(最恐)なんじゃね」
アキラさんがとんでもない事を言っていた。
「確かにな…此処に攻め込む馬鹿は…1人いたか」
ケンイチ兄さんが同意した…そう云えばカナン義姉さんに横恋慕していたゴヤ・ゴーヤ男爵なんてのがいたな。
最終的にアルストロメリアも俺に嫁入りした…姉さん女房…まぁそれもいいか…な?
こうして俺の嫁は、第一夫人にアルストロメリアが、第二夫人にメリッサが、第三夫人にメネシア、第四夫人にアザレアがという形で落ち着いた…家柄の関係ではあったがすんなりと決まった。
「しかし…こうも王族が集まっていて王都は大丈夫なのか…?」
アキラさんが最もな事を聞いてきた。
「王族円卓会議の面々が居るから大丈夫…多分」
アルスがそう答えた。
「しかしなぁ…ゴーヤ男爵の件もあるから横恋慕した貴族の襲撃はまたあるかもな…」
俺とケンイチ兄さんが今後の警備について頭を悩ませることになった。