「何とか期日内に完成しましたね」
ケンイチ兄さんとカナン様が安堵の顔で話していた。
「普請を投げ出して夜逃げでもしたかと思いましたぞ」
高級な馬車から降りてきた、明らかに血圧がヤバいくらい高そうな赤ら顔の肉団子子爵がやってくると、開口一番にそう言った。
「冗談はその赤ら顔だけにしてくだされ」
カナン様が高笑いしながら答えた。
「友人の魔導師が手を貸してくれましてなぁ」
カナン様が自慢気に更に答えた。
「あちゃー」
ケンイチ兄さんが頭を抱えていた、そりゃ内密にって話で手を貸したのに、こうもあっさりとバラしたのだから…。
「あれがツンベルギア子爵…好色なうえに野心の塊」
俺はツンベルギア子爵を少し離れた位置から見ていた。
「ケンゴ殿…あれがカナン様に色目を使う子爵だ気色悪い」
アルトニア騎士爵が汚物を見るような目で子爵を見ながら説明してくれた。
「ソガラム共々の退場願いたい人物だな」
俺はそう呟いた…まさかソガラムの方は実現するとはこの時は考えてもいなかった。
「カナン様着きました」
普請を終わらせアストランティアのユーパトリウム子爵邸に戻ってきた。
「やはりケンイチ殿の召喚獣は速いのぅ…私達はお友達であろぅ…その…これからも遊びに行っても…」
カナン様が何やら言い淀みながら遊びに行ってもよいかケンイチ兄さんに聞いていた。
「断る」
ケンイチ兄さんが即答した、
「ケンイチ…カナン様はお友達も少なく…少し位ならよろしいのでは?」
プリムラ義姉さんがカナン様な助け舟を出した。
「君は敵に塩を送るんだな」
プリムラ義姉さんはうん?という顔をしていた。
「ケンイチ兄さん、俺も遊びに来るくらいはいいと思うけど…カナン様で人体実験したいしな…」
俺の物騒なセリフにカナン様が怯えながら、
「お手柔らかに…」
とだけ答えた。
「人体実験って言ったって、俺の本業であるスイーツ作りの味見をしてもらうだけだ」
ネタバラシをすると、
「スイーツ?」
カナン様が首を傾げた。
「お菓子作りですよ…それは美味な」
それを聞いたカナン様…いやプリムラ義姉さんやアネモネが食い付いた。
「私達も!」
異世界でも女性は甘い物には目が無いようだ。
「これ食べてみるか?」
俺はアイテムBOXからレアチーズケーキを取り出すと、切り分けた。
「どうぞ」
俺は小皿に取り分けたレアチーズケーキと紅茶を其々の前に置いた。
「これはチーズなのかえ?」
カナン様がフォークで少しすくうと口に入れた。
「そうです」
女性陣は無言だった…そしておかわりを要求した、これまた無言で。
「ケンゴこれ美味しい!」
唯一アネモネだけが満面の笑みで美味しいと言ってくれた…まぁカナン様やプリムラ義姉さんの顔をみれば緩みっぱなしなので美味しいのは間違いないようだ。
「ケンゴ殿、これだけチーズをふんだんに使用したケーキ…それにこの紅茶は最高級ではないか…王族でも食べられないぞえ…」
カナン様がケーキを食べ紅茶を飲みながら驚いていた。
「これくらいの茶葉は何時も有るが…まぁカナン様が俺達にとって友人であり続けてくれるなら…遊びに来た時にはなぁ…それなりの紅茶とスイーツでもてなすくらいはしてやるよ」
俺の話を聞いたカナン様がケンイチ兄さんの家に3日に2日入り浸る原因を作ってしまった瞬間だった。
健吾の元の世界での職業はパテシエです。