人工天使は祈らない   作:謎の通行人 δ

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人工天使は急行する

三日目。

私やカラは特に寝たりはできないけれど、省エネモードというか…そんな感じのにすることはできる。半覚醒状態みたいな感じかな。私は別にそこまでではなかったけど、昨日のアレはカラにはそこそこ負担がかかってたみたいでちょっとの間省エネになってたりしてた。

そんな事がありつつ三日目。今日はいよいよ会議の中でセリシアさんが槍玉に挙げられる──意味合い違うか。まあ、セリシアさんが中心になる話題が挙げられる。

……アインさんは策があるって言ってたけど…なんか嫌な予感がするんだよなぁ…いや根拠も何もないし、完全に私の主観でしかないんだけど。

 

『……私もなんか嫌な予感はする。こう、上手く表せないけど…』

 

(カラも?……カラ、ちょっとお願いがあるんだけど…)

 

『周囲探知?』

 

(反応が早ぁい…うん、そう。ちょっと広めにお願いしてもいい?)

 

『良いけど………ぇ』

不思議そうな声を上げつつ探知を開始した直後。小さく、本当に小さくカラが声を上げた。

 

『は…え?いや、そんな…そんなわけ…いや、嘘…!?』

 

(カラ、もしかして)

 

『かなり大規模な魔力反応!方向は…ここから東に30000!数は……100前後…!?』

っ…やっぱりか…!

私の予感は確かにただの嫌な「予感」だけど、カラの予感はまた違う。カラが嫌な予感がする、って言ったときは大体何かしらの異常な反応が引っかかってる時だ。魔力100%で動く機構の体だからこそ感じ取れる勘的なものかもしれない。

 

「アインさん、!ひがし、にくかいがいっぱい…!」

 

「なっ…!?距離は?」

 

「30きろくらい…!」

 

「30キロだと…?もう国内じゃないか…!?」

 

「いってくる」

ガシシ、と瞬間的に体中から機構が展開され、魔力が溢れる。

 

「すまない、僕も後で援護しよう」

 

「いや!アインさんは、セリシアさんの、てだすけを、おねがい!」

それだけ言って、グラビティドライブを起動させる。とはいえさしものグラビティドライブもすぐに動き始めはしない。だから廊下を走って…できるだけ目立たないように、高いところから飛ぶために、外階段へ。

 

「シスちゃんおは…何事ッスか!?」

 

「ごめっ…!」

途中フォス君とすれ違ったけど相手してる暇ない…!急いで外階段を駆け上がり、屋上に躍り出る。同時に、背中から翼が一気に展開され、グラビティドライブに火が灯く。

 

(グラビティドライブ最大加速ッ!)

 

『ナビゲートは任せて。……肉塊の群れ、こっちの方に向かってきてるよ』

 

(だよねぇっ!急ぐよ、30秒で向かう!)

人サイズなら、地上から認識は少し厳しいだろう。上げられるだけ加速度を上げてものの数秒で最大速度へ、秒速300メートル近い速度で目的地へ向かう。

 

『距離残り2000!』

 

(…見えてきた。多い…けど、そこまで強いのはいなさそうな感じ?)

 

『うん。良くも悪くも「普通」の肉塊だね。…その普通の肉塊が100も集まるとだいぶ面倒ともいうけど』

 

(さっさと片付けよう)

グラビティドライブを操り、急降下。

群れの真上から急襲する。

 

『プラズマミサイル斉発!』

 

(大きめのもいるか…主砲用意、!)

背中から飛んだ紫電が先鋒のような不定形の肉塊を次々焼き払う。いきなり現れた「敵」に、一瞬慌てたような反応を取った肉塊だったけど…すぐに襲いかかる方針にシフトしてきた。そのまま慌ててくれてれば助かったんだけどな。

 

(てッ!)

腹の底に響く音と肩の鈍い痛みと同時に、飛び掛ってきたクマのような肉塊と馬のような肉塊が消し飛ぶ。撃ち漏らした小さい肉塊はブレードで一体一体裂いていく。

 

(時間取ってる場合じゃ…ないんだよっ!)

飛び出てくる不定形の肉塊を体を反らして躱す。主砲を横薙ぎに振り抜いて殴り飛ばす。振り抜いたその死角からまた別の肉塊が飛んでくる。ブレードで斬り払い、その勢いのまま体を回して近くの肉塊を蹴っ飛ばす。

 

『シス、増援来てる。中規模の群れ…20体くらい』

 

(増えるかぁ…どこからこんな量の肉塊が…いや、今はとりあえず潰すことを念頭に置こう)

地面を大きく、強く踏みつけてグラビティドライブを蒸かす。上空に身を投げて少し俯瞰視点から見下ろす。

 

(肘部機銃機構展開…万砲斉射!)

 

『プラズマミサイル射出方向調整…前へ、斉発!…空飛ぶ奴がいないだけマシだったかな…?翼一枚借りるね』

 

目の前に道ができるように紫電が膨らみ、その上を機銃の弾丸が走っていく。

同時に、右上の翼が制御を離れて撃ち漏らした肉塊に追尾して貫く。

……戦闘開始から2分以内に、殲滅は完了した。

 

『……400m圏内の敵性反応、無し…』

 

(うん、ありがと……ん?カラ、どした?)

なんか元気がなさそうに感じる。

 

『…ごめん、もっと早く気づけるはずだったのに…ミスした』

 

(え?何が?)

 

『…昨日から今日にかけての魔力探知、ほぼ全くしてなかったから…ここまで近付いてたのなら、本来ならもっと近付く前に気づけたはずでしょ。……元々探知は私の役目なんだから、役目を果たせてなかった事に──』

(いや…いやいや…カラ、それは流石に違うって。カラには昨日だいぶ負担かけちゃったし、それを提案したの私だしさ。…それに、別にどうにかなったでしょ?………いや、待って、もしかしてだけどさ)

 

『…包囲されてる。総数は分かんないけど…動く様子がないから、潜伏、もしくは待ち伏せされてる』

 

(っ!?……はぁー…こっち来てからこんなのばっかだ。なんで肉塊の中にそんな知能があるヤツがいるのさ…ん?包囲されてる?いつから?)

 

『さっき、気付いた。明らかに何かおかしい』

 

カラが()()()()()()()って事…?あーもう、何がどうなってんのさ…!

 

(…ひとまず蹴散らそう。だいたい何体ぐらいとか分かる?)

 

『…だいたい、全体で50くらい。でも現時点で分かる範囲だから、もしかしたらもっと出てくる可能性も高い』

 

(分かった。位置共有してくれる?)

サ、と頭の中に地図と魔力反応の位置が浮かんでくる。

それを元に一旦息を整えて──

 

(二種ミサイル、全方斉発)

鉄翼を翼みたいな状態から地面と水平に倒して周りに展開し、同時に普通のミサイルとプラズマミサイルを八発ずつの計16発、全方向に向けて発射する。と、泡を食ったように肉塊が煙と紫電の向こうから姿を現した。

見えさえすればこっちのものだ。

勢いをつけて飛び、そのまま目についた肉塊を片っ端から打ち抜き殴り飛ばし蹴り飛ばしていく。

 

『……打ち止めかな?一応反応は増えてない』

 

(なんなのこいつら…魔力隠す能力でも持ってるの?)

別に強さが特出したものはなかった。基本的に肉塊は何かの動物の型を取ってるやつほど強かったり厄介だったりするけど、今回は全部不定形型。むしろそのなかでも弱い方まであった。ただ、カラの探知に引っかからなかった、という時点で警戒心は引き上げざるを得ない。

 

(…カラ、他の場所で肉塊が発生してる場所、ある?)

 

『ちょっと待ってね…………ある。マークして送るね』

広域のマップとおおよその魔力反応の位置が頭に浮かぶ。当然町中にも反応はあるけどそれは神聖力の反応だろうし無視。町の外れに目を向けると四方八方から、おおよそ全部で6の群れがあった。

…群れの数だけで見れば少ないかもしれないけど、一つの群れが30体くらいと考えても200体近い訳だからなぁ…しかも個々がだいぶ離れてるし。

 

『どうする?アインさんに報告しとく?』

 

(…いや、いちいち帰ってる暇はないよ。通信用の聖石は返しちゃったし…こっちでどうにかしよう)

グラビティドライブに魔力を焚べて空を裂く。

隠密のようなことをしてくる肉塊に、包囲された神聖国家。現状気づいてるのは私達とアインさんのみ。

一手でも遅れれば町中に肉塊が入り込む可能性がある。そんな事が起これば肉塊の蹂躙が起こる可能性もある。

一般人には、肉塊の相手は荷が重い。

 

三日目は、最悪の形で幕を開けた。

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