彼女の心には一抹の不安があるのうです。
女神の憂鬱
「ルビの心中」
ルビ視点
ユウはたまに、まだ挫折というか絶望を感じる前に戻る時がある。それはここ最近だ。私と共に導き手となってから、少しずつ変わってきているようだ。それは、この世界にとって重要な事。私は……私も世界も救う勇者である導き手……その素質がユウにある事に最近気づいている。だけど、彼が元の性格に近づけば近づくほど「世界に拒絶されなくなる前」に戻ってしまう。それはつまり「元の世界に戻る選択」が出てきてしまう。
……彼に黙っていることがある。03号室が使われる前……01号室と02号室からきた転生した人たちの末路だ。いずれも頑張ってアトラスを倒そうとしてくれたけど、その道中いろんなことがあり、
…………
この世界は言わば終わりかけの世界。そこに世界の異物がたどり着く、しかし、その異物が浄化されたら、心が戻ったり、世界に求められたら……戻るか、戦うかの選択が迫られる。おそらく、2人ともその選択で迷わず帰ったのだろう。命をかけなくともいい、そして、トラウマも間違いも向き合って元の世界で生きていける精神力が戻れば、帰る選択以外ないのだから。
……ユウは、会ってまだ数日なのに、こんなに
ユウ視点
領主に公衆浴場を改善する手立てを教えて、あの時の木刀男を筆頭に改修をしている。今ではその男と仲良くさせてもらっている。木刀男はダンという名前だ。ちなみに領主はアダル。恰幅の良い白鬚の爺さんだ。
改修といっても、かまどのような浴場の水を暖める機構を、浴槽全体に掘り進めて、そこ全体から油を染み込ませた草のようなモノを発火させる事で全体を温めると言った簡易的な物だ。しかし、簡易的で簡単だからこそすぐに取り掛かれる。翌日には工事は終わった。当番隊の皆さんと、衛兵の皆さんには感謝だ。材料の選択も良かったらしい。いや、選択肢を持ってこられた時点で俺にとって正解にしかならない。運を味方につけるって言うのは大事な事なんだな……
それに、最近は人と話すことが億劫にならないなってきた。なぜ、前まではあんなに人と話すことが億劫だったのだろう。嫌悪感があったのだろう。それに、なぜなにもかもに絶望したいたのだろう……おれの前の世界でなにがあったかは、白いモヤがかかったような感覚で、よくわからないけど……今は目の前のことをやろう。
浴場が完成すると言うことは、人々がそこで体を洗浄する。今は草を使って洗っている。わたのような繊維で、割いて使用するわけなのだが、いかんせん草臭くなる。石鹸みたいなものがあればいいな……そうすればこの街の諸問題の一つが解消される。そんな事を民宿の部屋で考えていると……またいつものように、
「ちょっと良い?」とルビが部屋に入ってきた。
「ルビの憂鬱」
こちらの世界に来て……早くも2週間。店の掃除に、南の平野、領主とのいざこざ、これが3日間、その後は大衆浴場の改装に明け暮れていた。その間も、民宿に帰ればルビがこうやって部屋に来て、話しかけてくれる。なんだかんだ好きな時間だ。
頬を挟まれて言ったあの言葉、この先ルビを守ると言う使命感もあるが、なんだろう。やっぱりこうやって話をすると安心感と恥ずかしさと、居心地の良さを感じる。
「浴場完成したね、明日から再開するらしいね」
嬉しそうにルビが話す。実は彼女も完成を待ち望んでいた1人だ。
「そうだな……ここ最近それで忙しかったな、けど、そのおかげでこの街に慣れて……ルビと話すのも慣れた気がするよ」
最初の緊張感や人に対する疑念感はなくなっていた。といっても、この世界は獣人がいたり、エルフみたいな人……簡易的にエルフと言おう。それに小人みたいな人もいる。ちょっと人に慣れたというより、世界になれたのかもしれない。
「ユウは、明日からはどう……するの?」
ルビが不安気に質問をする。現在、ギガトードは7体の油をごっそり奪ってきた。その油に燃やす材料を浸しているのでしばらくはなくならないだろう。消費の速さがわからないから油断はできないが……そうだな……
「ギガトードの倒し方はわかった。南の平野はあとあのでかいカタツムリとゴブリンだよな。その2体の倒し方を探そう」
その言葉にルビが驚く……まあ、最初はへたれていた俺だから当たり前か。
「ルビ、俺は武道というものをしていた。そんなに上手い人でもなければ、強い人でもない。けど、誰かを守れると思って続けてきた」
その言葉にルビは切なそうな顔をする……
「だからかな?ルビを守ろうとする事も、この街を良くしようと思う事も嬉しいのかもしれない。だから、精一杯な事を……目の前の事を精一杯しようと思うんだ」
今の正直な気持ちを話す。その中にアトラスを倒すとは言えない。まだまだわからないからだ。
「ユウ……あなたは」
元の世界に戻りたい?
ルビから放たれた言葉に俺は即答する、
「ルビ守れなくなるからない」
その言葉の後、
ルビが号泣した……俺はやはり女の子は苦手なようだ。気持ちが全くわからない……なにがいけなかったんた?
ルビ視点
私を守れるからこの世界にいる。この世界の街を良くしたいと願う。あんなに他力本願になってしまった人が率先してる……こんな人を元の世界が見逃すわけがない。なのに、私を守れるからこの世界にいるという。そこの理由は他力本願なの!?……と思ったけど、正直嬉しかった。最初は私の自殺パートナーだった。けど、今は……この世界に持っといてほしいと願ってしまう。
どんどん頼りがいのある男性になるユウに、いろいろな期待をしていられずにはいられない。
運だけの加護、そして、今では頼りない女神……そんな私に彼は、命をかけてくれる。元々の性格もあるのだろうけど、これからも彼は私の期待を超えていくのだろう。
……私も、彼の力になりたい
切実にそう思った。
人のトラウマとか不安とか、
過去の後悔とか、
結局人との関わりで楽になるんですよね。
次回は変わり続けるユウの奮闘そのに、ゴブリン討伐です。