会心の一撃   作:脱兎の如く

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ゆうはルビの世界に帰ってきた。
元の世界で、これから良い人生が送れるという選択肢があったにも関わらず、「約束」を守るために。


閑話 導かれるもの、導くもの

閑話

「ただいま」

 ルビ視点

 あれから、どれだけの時間が流れだろう。

 ユウはアクセルタウンの中で、南の平野のモンスター討伐と調査をしている。並行して、公衆浴場に加えて「石鹸」作りに着手している。もはや街の要となっている。南の平野が街の人たちで対応できるようになったら、北の山脈の調査と探索をはじめる予定だ。

 ……本当に、ユウは変わった。

 まず、前の世界の異物ではなくなったため、記憶がもどっている。だからか、より一層誰かを守るといった信念が強くなった。あの時、なんで導き手の一撃を放てたかはわからない。ただたまに、()()()()()()()()()……その度に、心配になる。また居なくなるのではないかと。

 

 街も変わっている。

 南の平野を自分たちでなんとかできるようになりつつある事が大きな要因だが、ユウがいる事がやはり大きい。導き手として認められているようだ。

 私も……変わってしまった。

 前にも増して頻繁にユウに会いに行っている。

 仕方ないよね。守ってもらうのだから……

 たまに、本当にたまに、寝付けれなくて、夜中に部屋に行く事もあるけど、その時も優しく話をしてくれる。

 ……私はこの世界の調整者だ。女神だ。こんな感情。持ってはいけないのかもしれない……けど……

「私の世界を選んでくれたのだから、仕方ないよね。終わりに向かう世界を……平和な世界ではなく……私を選んだのだから……」

 そんな気持ちを押し込めて、今日も私は彼の横を歩いていく……

 

 ゆう視点

 北の山脈……

 前までは隣町までの最短ルートだったが、今では危険地帯となり、この山を回るように向かわなければならない。よって、東と西から伸びる街道を通る。しかし……その道は5日はかかる。山脈自体が大きいからだ。

「次の山脈に向けて買い出しだね」

 ルビと一緒に次の探索の準備を進めている。

 ダンは……アダルのところで仕事をしている。相変わらず師匠と呼んではついてくるが……

 

 まずは武具店を訪れた。俺が刀をもらって以来、店名も導きとしてる。なんか恥ずかしい。

「おっちゃん!頼んだものある?」

 おれはもはや馴染みの店主に話しかける。目的のものは「投擲ナイフ」だ。

「おう!あるぞ!一応予備もたくさん作っといた!」

 そこには木箱の中に大量のナイフが……こんなにいらないよ……おっちゃん……

 続いて投擲用の石でできた球だ。これは試しに使うものだ。事と次第によっては大きな武器になる。

 これも頂いた。

「いつもありがとうな!おっちゃん!」

 店主に礼を言う、本当にありがたい人だ。

「そうだ……ルビちゃん!ほい!」

 それはルビ用の武器だ。レイピアに近い剣だ、

「護身用にとっときな!頑張れよ!」

 ルビは今まで武器を持たなかった。正確には必要かなかった。周囲を見ることに専念してもらってたからだ。だが、それでは危険と判断して持ってもらう……本人は最初嫌がったけどな。

「ありがとうございます!」

 だが、今ではこんなに嬉しそうにしている。

 ルビは笑顔がよく似合う。最近は笑う事が増えたみたいだ。ルビが笑顔でいるように、この世界を守ろう。

 

「本音」

 ある日、俺の部屋でルビから独白を受ける。

 最初の日のことだ。ギガトードに殺されて、俺は元の世界に、本人は消滅しようとしていたと言われたのだ。……本来怒るべきなのだろう。だが、今ではわかる。

「この世界の終わりを見たくなかったのだろう?」

 その問いかけにこくりと頷く。ルビは優しい、だからこそ……自分のせいで苦しんでいると考え、そんな姿を見る事に耐えられなかったのだと思う。

「耐えられなくなったから……役目を終わらせようとしたんだな」

 小刻みに震えるその肩は、女神とかそんなのではなく、助けを求めている少女だった。この世界は、なぜこんなに小さな女性に全てを託してきたのか。

「ルビ……あのな、自分で消滅を選んだ時点で世界を諦めたことになる。それは前の世界に絶望した俺と同じだ。だからさ、ルビの責任に比べたら小さいものだけど、気持ちの方向くらいはわかる。俺は何もかもを拒絶すると言う逃げ方をしたけど、ルビは受け止め続けて……見たくなくなったんだよな?……世界が少しずつ壊れていくのを」

 ルビが震えながら頷く。今はアクセルタウンという街がいい方向になっているが、きっと世界全体ではそれは些細な変化にしかないのだろう。

「でも……ルビは強いよ。その事を言うくらいの勇気がある。そして、俺は()()()()()()()使命がある導き手だ」

 ルビの震えが止まり……顔を上げる。その澄んだ青い目は、溜まったもので瞳が揺れている。今にも溢れそうだ。俺はゆっくり言葉を繋げる。

「俺は()()()()()でルビを守る。それはこの世界を救う事であるなら、やり遂げる。なんたって、俺には女神から授かった運があるんだ」

 いつしかそうしてきたように……俺に話したように……その時と同じ、いや、強い気持ちで言う。

「俺は……君が大切だから、守る。導き手として、1人の人間として」

 ルビは小さく「はい」と言いながら微笑んだ。目の端から涙を溢れ落としながら。




ルビも自分と向き合えたようですね。
さて、次は北の山脈編に入ります。

たくさんの読者の方々に読んでもらえて光栄です!
お気に入りや評価もいただき、書くのが楽しくなっています。
投稿は遅くなるかもしれませんが、どうぞお付き合いください!
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