会心の一撃   作:脱兎の如く

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挫折って誰にでもありますよね。
その挫折があるから、人は成長すると言いますが、
みんながそうではありません。

その時、誰からも信用されなかった主人公。
彼の過去の一端がわかります。


導き手

「変わった世界」

 世界を救って欲しいと案内人は言う。その言葉を、何となく他人事のように聞いていた。俺は幼い頃から、大きな事を考えながら何もしない人だった。そもそも……就活だって、教育の闇という目の前の絶望感から始めた事。その業界や世界を変えようと行動するのではない。逃げただけなのだ。そんな自分から目を背けて、絶望したと上から目線の答えを出したのだ。

「……救って欲しいという願いはわかりました。でも、具体的にはどのようにして救うのですか?」

 記憶の中には戦争や紛争、破壊される環境、自然が思い浮かぶ。どれも俺だけの力では無理な話だ。

「この世界には……今、二つの勢力があります。ひとつが今ここにあるアクセルタウンが属するエリス。そして、もう一つがアトラスです。エリス国家はあなたの言葉で言う人類系ですかね。多種多民族からなる国家です。アトラスは自らを先人と呼んで、その種族のみで構成されています」

 そこまで話をしたルビは一間置いてくれた。「ここまで大丈夫ですか?」という優しい間だ。俺はそれに応えるように頷く。それを見てルビは続けた。

「アトラスは自分達以外の民族の迫害をしています。それに対してエリス国家が抵抗しているという現場です」

 話の大筋から、その紛争を止めるためにアトラスをどうにかしろと言う事だろう。だが、一応確認だ。

「俺にやって欲しい事が、そのアトラスと対話をして紛争をやめさせると言う事なのか?」

 その質問に、目を伏せながらルビは応える。

「対話ですか……無理ですね。それで解決したら既に今平和になっているはずです。ですが、アトラスをどうにかして欲しいと言う事で間違い無いです」

 そして、一呼吸置いてルビが放った言葉に衝撃を受ける。

「アトラスを殲滅してください」

 

 

「この世界」

 いくら美女からの頼みであっても、1人の男が国を滅ぼす事ができるわけがない。しかも、無力なただの若者の自分なら尚更だ。……おそらく、否定の顔をしていたのだろう。俺に対してルビが続けて話す。

「アトラスはエリスと比べて小国です。人数もそんなに多くありません。それに、殲滅するのは主要な方々だけなので……言葉足らずですみません」

 小国の主要な官僚の殺人をしろってことか。話が進み過ぎたので、一度確認をする。

「そんな小国からの迫害なら、エリス国だけで大丈夫なのではないか?」

 その問いに、ルビは言いにくそうに応える。

「アトラスは、12人の幹部で構成されています。みんな人間ではありません。あなたの言葉で言う悪魔です」

 耳を疑った。それはつまり、アトラスという国は……

「つまり、悪魔の国を倒せと言われていると言う理解なのだが、間違いないか?」

 一呼吸おいて、ルビが頷く。

 それと同時に俺は固まる。俺の意思はどこにもない。突然言われたノルマやタスクに対して憤りを感じるのは人として当たり前であろう。しかし、もはや俺の頭はついていけてなかった。……とりあえず、これでもうひとつの確認がある。これが重要だ。

「……やるかどうかは別として聞きたい。俺の前の2人はどうした?失敗したから俺が呼ばれたのだろうが、事の顛末を聞きたい」

 ルビはまた、言いにくそうに……

「消息不明となりました。死んだのかどうかもわかっていません。死んだら行くはずの場所にすら行ってないので……」

 その答えは、俺の想像より遥かに危険だと言う事を示していた。そして出した答えが……

「俺には無理だ。そんな事できるわけないだろ」

 否定だった。

 

「導き手」

 ルビに対して否定をした直後、その言葉の応答にならない言葉が返ってきた。

「あなたは、前の世界の異物です。そして、この世界のもとの所有物になりました。こんな事を言うのは失礼ですが……拒否権がないんです」

 それは、はいかイエスかイエッサーと答えろと言う意味だった。今までの人もそうやって無理やり送り出したのだろう……可哀想に。

「なら、この世界で天寿を全うするように振る舞えば良い。そんな危険な事をする義理はない」

 そうルビに伝えた。俺がいつものように行動しなければ良いんだ。それで解決だ。

「あなたは……そうやって逃げていたから切り離されたのかもしれませんね」

 そのルビの言葉に思わず顔を背ける。……自覚してるからこそ、言われたくない言葉だ。

「少し強めに言います。あなたは世界から必要ない人間として、この世界にきました。そして、この世界で必要とされる事をしないのであれば……消滅します」

 ……それは、俺に肯定をしなければ死ぬと言う事と同意義だという事を伝えていた。それにしても……必要のない人間……か。

「なら、いっそのこと消滅してくれませんか?」

 その言葉にルビが驚く……

「なぜです?前の方々は……申し訳ないのですが、これを伝えた後進んでいきました」

 そんなこと言われても……俺は変わらない。

「必要とされない人間が、突然世界に必要とされたところで……無理な話だ。そもそも、仮に救えた後、俺はこの世界で必要ない存在になるんじゃないのか?」

 どこにも必要とされない人間の考えだが、概ね合ってると思う。どのみち必要とされないのなら、いっそ消えてしまった方が楽になる。

 ルビは、どこまで俺の意図を汲み取ったのかわからないが……少し感情を込めて話をする。

「あなたは、誰かに必要とされる「もの」であり続けるつもり?誰もが何かに必死になって努力して、変わっていって、そしてその力を求められるから……必要の人になるんじゃないの!?」

 その言葉は深く……深く心に染み込んでいく……

 何も言い返せないでいると、ルビが続けていう。

「あなたは……「小林雄一」は、少なくとも武道をしている時は輝いてた!必要とされてた!」

 それまで事務のように話していた印象だったルビは……激情のまま話を続けていく……

 そして、俺の過去を掘り返していく、忘れていた事も含めて……

 剣道と合気道に熱中していた俺は、高校二年生のある日……というより、冬だな。目の前のサラリーマンが親父狩りにあっているのを見つけ、助けたことがある。ただ……「暴力行為のため謹慎処分」となった。助けたサラリーマンも救出の時に逃げてしまい行方を知れず。俺は行きたい大学にも行けなくなっていた……それを誰かに叱責されたってけ……あれは誰だろう……

「……その出来事で、あなたは周りから距離を置く事になり、好きだった武道も人に手を出したとされて破門になった。けど!」

 なんでそこまで知っているか……わからないが……なんだ……「知っている人」がいるのか……

「あなたは間違ってないんだよ?」

 ああ……もうその言葉だけで……いいや。

 改まって俺は聞く、涙声ではあるが。

「ルビさん、あなたはこのままどうなるのですか?」

「私はこの世界の管理をしています。このままだと私も消滅します」

 なるほど……まだまだ腑に落ちない事があるけど、

「ルビさん、もう覚えてないけど……きっと家族もその時の先生も、友人も、誰も理解されないまま……俺は疎外された事に絶望したんだと思う。それも覚えてないのですが……そして、諦めた。おれが行動しても何もならないと」

 ……でも、

「なぜあなたが知っているかは別だし、なぜこの国を救えばあなたが救えるのかはわからないけど……」

 けど……

「おれを……そうやって真正面から正しいと伝えてくれる人のために、どうせ消滅する命を使いたいと思います」

 その言葉にルビの見開く……

「良いですか?ルビさん、世界のためではなく」

 信じてくれる人のために

「俺は、行動してみようと……思います」

 その言葉に、ルビが微笑む。

「わかりました……そしてありがとう。この世界をお願いします「導き手」となる者よ」




気がつけば3000文字こえてました。
長すぎました。
でも、流れとして切りたくなく、書き切りました。

悪魔みたいなもの、
一体なんなのでしょうね
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