果たして導き手とはなんでしょうか。
この小林の過去を知るルビは何者なのでしょう。
序章のラストです。
どうぞ
「導き手とは」
今し方、この世界を救うと言ってしまった事に多少の後悔と不安と懸念と……諸々負の感情が入り混じっている。それを惜しみなく表情に出している俺に対してルビが先ほどの微笑みとは違う苦笑気味に言う。
「あの、「導き手」になるのですから……その、もっと覚悟を決めていただければと思うのですが……」
ルビまで不安になっているようだ。そりゃそうか、あなたのために世界を救うと言った男が、言った瞬間に尻込んでいるような、なんとも頼りない男なのだから。
「そんなこと言いましても……ルビさん、そのうち自覚しますので、まずは「導き手」について教えてください」
俺は基本的にヘタレで、頼りない男だ。大きい事を言えるが覚悟のないやつなんだ。まだまだ、時間が欲しい。それよりも……導き手とはなんだ?
「導き手というのは、この世界を導く役目をする者と言う意味です。そのため、私から加護が得られます」
……加護?
「加護というのは、その……そちらの認識で言う「大吉」のような物です。おみくじ全て大吉的な……はい」
……それは、良い加護なの……かな。
運が良くなると言う意味なのかもしれない。それなら良いのではないか?幸運って大事だよな……うん。
「あの、運で世界を救えと言うわけではないでしょうね?」
一応、確認だ。一応だ。悪魔みたいなやつに運だけで挑むなんてあり得ない……その確認に対してルビは
「……あはは……」
乾いた笑いで答えた。これは、俺でもわかる。
運だけで挑めと言うわけですね。この人は、運が良くなると悪魔が倒せると思うのだろうか。そもそも、世界が危ないと言うなら、もう少し強力な何かを授けるものなのではないのか。
「あの、実は……先の2人に加護をかなり渡しまして、運しかないのです。それに、弱っているこの世界では私の力もそんなになく……ごめんなさい!」
頭を下げているルビに、俺はそれ以上言えなくなって……話を変えるつもりで質問した。
「ところで、ルビさんは何者なんですか?」
本来最初にする質問だ。なぜ俺の過去を知っている?なぜ俺のトラウマを知っている?……なぜ、加護を渡せる?
「それは、私が女神だからです」
その瞬間、目の前の女性の周りが光出した。でも、そこまでしなくとも何となくそんな存在なのではとわかっていた。故に語りかける。
「あの、その光とかそう言う演出いらないです」
「……」
どうやら、ルビを怒らせたみたいだ。光はなくなり、その代わり頬が膨らんだ。
自分の命運をかけるのに、緊張感のない女神様だ。
でも、俺がした事、濡れ衣を被った事、不甲斐ないこと、後悔……全て知っているのだなと感じた。だから思った。友人も家族もいなくなった俺だからかもしれない。見ていてくれたとわかった事で、少しずつ俺の中で何かが変わり始めているのだと思う……
「あの、女神様?」
だから……それを教えてくれた人だから、素直に思ってしまった。どうせなら……
「これから、自分なりに何とかして世界をどうにかします。ですので……」
やばい、さっきより震える。人を誘うのとか何年振りなのかな?思い出せないけど……きっと、そういうのが苦手になっているのだろう。
「俺と一緒にきて……もらえませんか?」
今度は俺が頭を下げていた。
「女神」
導き手とは、女神の加護を得た言わば「勇者」である。女神はその世界の管理をし、その理を調整する者である。故に、その調整するための力を加護として渡すのだ。
「ですので、この世界の魔法、そして、スキルを先のお二人にそれぞれお渡ししました。本来なら、天候や自然を調整する力もありますが、世界が弱っているため存在しません……」
そこまで言って、悲しそうな顔をするルビ。しかし、
「どうせ、この世界がなくなれば私はいなくなります。必要としない存在になるので……なら、いっそのことあなたと旅をするのも良いですね」
そう言って微笑んだ。その時、また重圧がのしかかる。この女神を守らなければならない。あの時のサラリーマンのように守ることができるのか……あの人のようにルビは逃げないと思うが、不安である。
……ただ、どうせ消える命だ。
「そうですね、世界を救う旅です。それに、どうせ消える命なら、俺の心を救ってくれた女神に捧げますよ」
そう、消えるのなら……その方が気分がいい。
その時、女神様がグイッと俺の前に来た、俺の目を合わせない技術が使えないくらい近くに……そして言った。
「世界が必要としなくても、私が必要としたんです。自信をもってください。世界を救えたら、あなたを消させはしません」
思えば受付カウンター越しで椅子に座り、お金を払うだけのつもりで話しかけた人が女神で……
初対面なのに、
そして、これから旅をすると言う……なんとも、話が早いことだ。いや、もしかしたら、ルビの加護「運」がはたらいたのかもしれない。
俺はこれから女神というこの世界の神様と共に、世界を救う旅を始める事になる。
「そう言えば神様?「ルビで良いよ」……ルビ?加護を与えてきたと思うけど……ルビ自体は大丈夫なんですか?」
ルビは固まる……そして、独白した。
「私、魔法も、スキルも……ないので……ただの庶民と同じなんです」
俺も固まる……これは、行き先不安になる。
「でも!消息不明のお二人の行方さえわかれば……返して貰えるかも……本来死亡や、消失、死場所へ送られたら返ってくるはずなのです」
ルビが必死に説明してくる。と言うことは。当面の目的は俺と同じように来た2人の行方不明者の捜索となる。
「そうですか、なら、その2人を探しましょう」
そういうとルビは驚きと嬉しさの混じった表情をした。嬉しさは、否定されなかったことだろう。来てもお荷物になるとかかんがえていたのかもしれない。かと言って動かないと自分が消滅するのを待つようなもの。きっと、ルビはそれなら動きたい人なのだろう。驚きの方は……行動しない事を繰り返して世界から弾かれた若者が、急に行動をし出したからだろう。だから……伝えた。
「俺も、ルビが言うように……努力して、足掻いて……誰かに求められる人にならなきゃと考えるようになりました。そして、もっと、自分を変えていくつもりです」
気がつけばもう
「さあ、いきましょう。女神様」
少しずつ小林のこころがほぐれているようです。
誰かに認められる時に、
人は幸福を得られることがあります。
特に、さまざまな虐げられた過去をもつものや、
肯定されなかったものは欲してしまいます。
きっと、小林の過去はそんなことが多かったのかもしれません。