会心の一撃   作:脱兎の如く

6 / 15
小林雄一さんは、
ヘタレでいくじなしで、そして覚悟なし
言った直後にビビる男です。
そんな小林と女神の会話を見てみましょう。


閑話1

閑話 覚悟を決めろ小林雄一

「これからユウと呼んでいい?」

 いきなりルビが話してきた。現在、午後20時くらい、そして、民宿の俺の部屋である……勘弁してほしい。

 なぜ、まだこの民宿から旅立ってないかと言うと、ここを一時の拠点としたからである。

 旅をすると言っても、渡り鳥みたいに街を転々とするわけではない。とりあえずマッピングをしながら、街周辺を改めて調査しつつ……戦闘経験を重ねながら行動範囲を広げようと言う事になった。そこで、その拠点をこの民宿にしているというわけである。

 しかし、この家の家主は遠慮がなくなりつつある。こうやって俺の部屋に上がり込んでは話をしにくるのだ。どうやら「コミュニケーション」をとるためらしい。

 ……正直やめてほしい。俺にとってパーソナルスペースは大事だ。1人の時間を大切にする俺は、その時間を妨害される事にものすごく嫌悪感をもつ。

「呼び名ですか?なんでもいいですよ。ユウでも」

 なげやりなその答えに満足できないルビはさらに詰め寄る。頼むからその顔を近づけないでほしい。

「だ、か、ら!その敬語をやめてくれって言ってんの!」

 また言い出した……なんであって数日の女性に馴れ馴れしく話ができるのだろうか。そんなの非常識だろ。……非常識だよな?

「これは時間と共に、そうだな、慣れたら砕けますよ。だから、それまで我慢してと何度も言ってるじゃないですか!」

「私は今すぐ砕けてほしいの!戦闘の生死をわける中で、敬語なんて無駄になるよ!」

 ……なるほど?そう言う理由なのか……それなら納得する。言葉が少なく済めばそれは効率がいいもんな。

「わかっ……た、なるべく善処しま……する」

 そう応えるのがやっとだった。

 

 もう、お気づきですか?

 女性とそんなに砕けて話せるわけないだろぉぉぉ!

 しかも美人!美女!俺とは住む世界が違う(実際違ったし)。お付き合いなんて……こんなにドギマギするんだからきっとしなかったのだろう。記憶にない自分よ!なぜ付き合わなかった!

 

 おれは自問自答していると、ルビが首を傾げて話を続ける。目の前でそんな仕草をしないでほしい。俺の精神力はとはやゼロに近づいている。

「とりあえず、私はルビってよんでね?様はいらないから、もちろん「さん」もいらないから」

 ……マジか、また難問を……

「さあ、呼んでみて?」

 しかも、今すぐとご所望する目の前の美女に、顔に全身の血液が上がってくる思いをしながら、絞り出すように呼んでみると

「……ルビ……」

 その時、満足したのかルビは微笑んでいた。その笑顔を見た時、時間が止まった気持ちになる。女神だからか、その美貌からか、視線の全てを持って行かれたような気持ちになった。すごく、胸の奥におもりがついて、その笑顔を縛りつけてるようにずーーんと居座った。

「……ユウ?どうしたの?」

 あまりに俺がルビを見続けたからか、ルビが語りかける。その顔は……俺の記憶、と言うか、そんなに覚えていることはないのだが、少なくとも……今は心のど真ん中にいる。

「いや………………なん……でもない」

 なんだ、こんな気持ちにどんな名前がつくのだ。

 小林雄一の呼び名なんて、二の次だ……この苦しい気持ちは何なんだ。

「ともかく、明日は装備を整えなきゃね。ユウは武道してたんだよね?剣道を生かす?合気道?」

 そうか、明日は装備を購入しにお出かけすると言うのか……そうだな、

「刀……なんてあるかな?」

 それは剣道をしている男の子なら、一度は夢見るものだ。真剣でやってみたい。

「……それって日本の剣だよね?わからないけど、明日鍛冶屋で聞いてみよっか」

 まあ、そうなるよな。日本特有なんだから、あるわけがない。しかし……武器か、本当に命のやり取りをするのだな。緊張してきた。

「危険な事がたくさんあるけど、私もいるからね!」

 俺が言うべきセリフをルビに言われた。ほんと……ヘタレで、小心者で、度胸もない俺に……この女神を救う事ができるのだろうか。

「ルビ……あの、もし、めちゃくちゃ強い人が現れたら、その人を頼ってくれ……俺は役不足だよ」

 そこまで言い切ると……ルビはその両手で俺の頬を挟んだ。

「!?!?!?」

 何が起こった?なんでこんなことになっている?

「あのね、ユウ。あなたは私のためにその命、運命を使ってくれると言ったよね?」

 確かに言った……それには間違いはない。

「その言葉だけで、嬉しいんだよ??きっとユウは大丈夫。大丈夫だから……」

 一呼吸おいてルビは言葉を絞り出した。

「世界ではなくて、私を救ってくださいね?」

 その時、目の前にいる人は女神と認識できた。今まで、逃げてきた自分はどこへやら……俺はいつのまにか

「すまない。わかった。ルビを救う」

 また柄にでもない言葉をルビの手で頬を覆われたまま語っていた。




ユウよ
それを人は恋というのではないだろうか。
ヘタレには難問みたいですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。