ルビを守りつつ、戦闘を終えることができるのでしょうか。
そして、魔物よりも、
実は隣人が怖い存在になる事を知ります。
運の良さと経験と
「遭遇」
平野に踏み出した、ウジャウジャとモンスターが出てくる、、、というわけではなかった。至って、平和に歩き進んでいる。進めば進むほど、周りに放棄された戦闘の跡を気にしなければ、そんなに悪くない道である。震えていた手もいつしか麻痺したのか震えなくなっていた。今日はそのまま探索になるかもしれない。そんな事を考えていた。
だが、俺はA型の男。気になってしまう事はとことん気になってしまう。そして、気づいてしまう……
それはつまり、戦闘後に死んだ討伐隊員は……何かしらに処理されたことになる。気づいた途端……また震え出した。もう帰りたい……
「ユウ、私はあなたが死んだ時に消える運命にあるわ」
突然ルビが話しだす。
「だから、神として……この世界の調整者として、あなたの運命に従う。あなたがついてきてほしいと願ったのなら、喜んでついていく……だから」
そんな……こと……言われても
「私を守ってね?」
その言葉を言い終わると同時に、目の前に巨大なカエルが地面から顔を出した。、
「戦闘」
ルビが言うには、もともとこの世界の生物は共存できる大きさ、強さに調整されていた。しかし、アトラス国に異変が起こり、調整ができなくなった。そうして焦っているうちに、このようなモンスターが現れだしたと言う事らしい。そんな事を……目の前の巨大カエルを見ながら思い出していた。
「……ルビ!一度逃げ……え?」
ルビの手を引こうとしたら、後ろには大きなカタツムリが移動をしているのが見える。戻ろうとしても、あれに気づかれるだろう……
もう、やるしかないのだ。
俺は、午前中に買った武器のバッシーを構える。……値札が見えたから思わずむしり取った。後ろにはルビ、守るべき女神がいる。
ここで、精一杯の知識を駆使してカエルの生態を思い出す。カエルが舌を伸ばす時は、一度顔を向けるはずだ。そして舌は筋肉でできている。それを収縮させる事で一直線に飛び立たせるはずだ。また、舌を使わない奴らは地面ごと口で丸呑みにする。
なら、やるべきは
こいつは歩いているところを見ると歩行をするタイプのカエルだ。後ろの筋肉がそんなに発達してない……なら、やることはある!
まずは、その辺に落ちていた小さな槍を目に目掛けて投げる!槍投げの真似をしたが、
痛そうにしているカエルを横切り、そのまま後ろを切りつけるが……ヌメヌメしてて剣が滑る!!
まずい、気がついたカエルが振り返る……その前に!
「うらぁぁぁぁぁぁぁぉぉぉぉぉぁぉ!」
カエルの排泄口に剣を捩じ込む!
あまりにも激痛からか、カエルはもがき苦しんで、仰向けになった……そういや、学んだ事があるな、解剖学だっけ??心臓の位置を思い出した……そのまま心臓があるだろう位置に剣を突き立てて絶命させた……
剣を抜くときに真っ赤な血が吹き出して、浴びてしまう。カエルの排泄物まみれの剣と、真っ赤な俺は……はたからみたらモンスターだろう……
「ユウ……すごいね。あのカエルは数人で倒すものなのに……」
ルビがそんな俺を引くこともなく、疎遠になることもなく、褒めてくれた。素直に嬉しかった。
「ありがとう、一度戻らないか?カタツムリはいなくなったし、今の倒し方を教えた方がいいだろう」
ルビはハッとして俺を見る、
「世界の安泰を導く者が俺なんだろ?なら、こいつらの倒し方を導いてあげなきゃな」
1人で全てできるわけない。今回は運が良かっただけ……それに、俺だけではどうにもならない。そして、俺だから……導き手だからできるのではなく、みんなできることなんだ。それを伝えて、あの正気を失った門番の方や、討伐隊の方々の被害を少しでもなくすこと。少なくともそれがアクセルタウンのためになるはずだ。
俺のその意図が分かったのかルビは満開の笑顔を見せて「やはり、あなたは導き手ですね!」
そう笑いかけてくれた。
とりあえず、血を洗って、剣も洗い流したい……
「疲弊した領主」
街に帰るまでに、また数頭のカエルを葬った。最初の倒し方で何度も倒せたところを見ると……正解なのだと思う。カタツムリにはあのあと遭遇しなかった。
血の匂いと、カエルの排泄物の匂いに塗れた俺を門番達は怪訝な顔をして見たが……ルビが見せたカエルの肝を5つが討伐の証拠となった。そして、そのままアクセルタウンの領主の元に招かれることとなった。
……ちゃんとお風呂には行かせてもらった。この世界にもお風呂という概念があるらしく、暖かい……というよりゆるいお湯で汚れを流す程度だった。薬草を擦り付けて匂いを落とすのだが、草くさくてたまらない……
草くさい俺はしっかりぬるま湯で洗い落として私服に着替えた……その私服はルビが選んだらしいが……なんだろう……今度買いなおそう……流石に紫色で統一することはやめてほしかった。
夕刻……領主との面会の時間が来た。
領主のと言っても、お城とかお屋敷とかではなく、ちょっと大きな家に住んでいる長老言った感じだった。
その家の応接間に通された。現世で言う校長室のようなものだ……と思う。なんだろう、嫌な気分になる。前に謹慎にあったときも、こうやって座ったっけ……
「あなた方がギガトードを5匹狩ったと?お二人だけで?」
なんとも疑念のこもった声だ問いかける……気分が悪い
「だったら、なんと言うんですか?倒し方を教えるという意味でこちらに来たのですが……」
感情を押し殺して話しかけるも鼻で笑われる。
「いいですか?ギガトードは数100人の討伐隊を組んで20匹討伐がやっとの相手……それを2人で五匹とか、夢物語です……あなた方がアトラスの手先でなければね」
そう言い終わると、何人かの屈強な男が現れる。最初から決めつけてここに呼んだみたいだな。なんでこう……おれのムカつく部分を具現化してくれるのか。
「正直に言えば手荒なことはしません。どうやって倒したのですか?」
ルビは真っ青になって言う
「領主様?……その、何も分かっていないのにその言い草はあんまりなのでは!?証拠の肝も差し上げたでしょう!?」
その言葉に領主は……
「それもアトラスの人間なら可能だろうな」
その言葉にルビは絶望の顔をする。
そうして……俺の気持ちを逆撫でし続ける領主に対して、忘れていた俺の中の何かを思い出してしまった。
「なあ、おっさん……」
その言葉にその場の全員が固まる。そりゃそうだ、それまで他力本願、オドオドしていた男がいきなり落ち着いた口調になったのだ。
「カエルの目をつぶして、後ろからケツに剣を突っ込んで、仰向けになったら心臓ひとつきしたら普通に倒せるぞ?」
その言葉に領主が憤慨する。
「そんな事で倒せるわけがないだろう!?そもそもその言葉使いはなんだ!?おまえは……」
「うるせぇんだよ!ダメ領主が!」
一瞬の沈黙、俺は続ける。
「その言葉を信じずに、勝手に俺らを拘束して、死刑にでもしてみ?それでこの南の平原の問題は解決すんのか?あぁ?」
領主は口籠る。
「アトラスだかなんだか俺はしらん!!もし、それでもメンツたたないなら、勝手にしろ!」
沈黙が落ちる。領主も、その周囲の男も動けないし、話せない。そんな中ルビが言う。
「領主様、これまでの態度は導き手であるユウ様への侮辱ですね?しばらく留まる予定でしたが、もはやその予定もなくなりました。私たちが害をなす存在というなら、このまま外へ出してください。ご存知の通り外の魔物は恐るに足りないので……」
ルビの話している途中で、落ち着いた俺は続ける。
「正門のやつれた門番を見ました。城壁の防護の良さも見ました。城門の頑丈さも見ました」
そう……それはこの領主が頑張ったものだ。
「そこまでアクセルタウンを守りたい思いがあるみんなを、あなたの助けになると思い。ルビの言う導き手の役割をまっとうしたいだけなのです」
領主はそれでも黙り込んでいる……アトラスがそれほど憎いのだろう。なら、俺が希望の存在という事を、アトラスをどうにかする存在という事を証明しよう
「領主様……俺の女神からの加護をお見せします」
次回、勇者の証明
度々、思い出す前の世界の記憶、
誰かとの関係は薄れていても、経験と知識は残っているようです。
それも、薄れていくのかもしらませんね