今回は練習試合編、「その背中を追う視線」です。
先鋒・和樹と大将・清治。
あえて“真逆の戦い方”で描いてみました。
・圧で動きを封じる剣
・崩れない型で押し切る剣
同じ「強さ」でも、見え方や感じ方が変わるように意識しています。
そしてもう一つ。
今回は“戦っている側”だけではなく、
それを見ている側──五つ子たちの視線や心の動きも大事に書いています。
この試合を通して、それぞれが何を感じたのか。
そこも一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは、本編をどうぞ。
「ん?戻ったか和樹」
ちょうど練習を終え、タオルで汗を拭っている清治に声をかけられた。
「お疲れさん。気合い入ってんじゃないの?」
僕が右拳を差し出すと、清治もそれに応え右拳を当ててきた。
「三年の先輩が引退しての初めての練習試合でもあるからな。それにお前の前で至らないところを見せられんしな」
「いちいち大袈裟な……あ、恒一さんが見にきてるよ」
「何!?」
清々しい顔で真っ正面から言われれば照れるものだ。
その照れを悟られない様に、外に恒一さんが来ていると話題を逸らした。
「政樹が呼んだんだってさ」
「全くあいつときたら……」
清治は呆れたようにため息をつくが、その口元はわずかに緩んでいる。
「とはいえ、見られる以上は下手な試合はできんな」
「別に見られてなくてもやることは同じでしょ?」
「それはそうだがな」
タオルを肩に掛け直しながら、清治は軽く首を回す。
骨の鳴る音が、小さく響いた。
「……調子はどう?」
「悪くない。むしろ良いくらいだ」
短い返答。
だが、その一言に迷いはない。
「そっちは?」
「同じくだね。今日は体が軽いよ」
そう言って、軽く竹刀を握り直す。
握りの感覚を確かめるように、ゆっくりと振る。
ヒュン、と空気を裂く音。
「……やっぱり違うな」
ぽつりと清治が呟く。
「何が?」
「お前の振りだ。無駄が無いというか……余計なものが削ぎ落とされている」
真っ直ぐな視線。
評価ではなく、純粋な感想。
「剣道っていうより、やっぱり“実戦”だな」
「まあ、そういうのしかやってこなかったからね」
軽く肩をすくめる。
「でも、清治の剣道も十分通用するでしょ」
「当然だ」
即答だった。
「剣道には剣道の強さがある。型があるからこそ、崩れない強さがある」
「なるほどね」
考え方の違い。
だが、それを否定する気はお互いにない。
「……どっちが上か、って話でもないしね」
「そういうことだ」
一瞬、静かな間が生まれる。
道場の中では、まだ部員たちの掛け声が響いている。
竹刀のぶつかる音。
足さばきの音。
息遣い。
その全てが、試合前の空気を作っていた。
「和樹」
清治が、少しだけ真剣な声で呼ぶ。
「ん?」
「今日は……勝つぞ」
それは確認ではない。
宣言だった。
「当たり前だろ」
それに対して、即答する。
「負けるつもりで来てないし」
「ふっ……違いない」
清治は小さく笑う。
「それに」
僕は視線を外へ向ける。
五つ子たち。
政樹。
風太郎。
聖奈。
らいはちゃん。
そして──恒一さん。
「見に来てくれてる人達もいるしね」
「……ああ」
清治も同じ方向を見る。
「期待に応えないわけにはいかん」
「別に応える必要もないと思うけどね」
軽く言う。
「自分のやることやるだけでしょ」
「……それが一番難しいのだがな」
ぽつりと漏らす。
「まあね」
短く返す。
「でも、お前ならできるだろ」
「お前もね」
視線が交わる。
言葉はそれ以上いらない。
「さて──」
僕は軽く腕を回す。
「そろそろ時間だね」
「準備するか」
清治も竹刀を持ち直す。
その時──
「おーい!兄貴ー!」
外から政樹の声が響く。
「もうすぐ始まるってよ!」
「了解」
軽く手を上げて応える。
「……騒がしい応援団だな」
「嫌いじゃないだろ?」
「……まあね」
少しだけ、口元が緩む。
「じゃ、行くか」
「ああ」
二人並んで歩き出す。
床板を踏む音が、規則正しく響く。
一歩。
また一歩。
道場の中央へと向かうその足取りに、迷いはない。
その背中を──
いくつもの視線が追っていた。
「それでは──これより、練習試合を開始する!」
審判の声が、道場に響き渡る。
ざわり──
それまでざわついていた空気が、一瞬で引き締まった。
「関係者以外、畳の上には入らないように!」
試合前の注意が飛ぶ。
武道場の外周。
木の床の観覧スペースへと、応援の生徒達が下がっていく。
五つ子や政樹達も、その流れに従って端へと移動していた。
「ここから見るんですね……」
「ちょっと遠いけど……よく見える」
五月と三玖が、試合場へ視線を向ける。
「先鋒戦、両者前へ」
その声に応じて、一歩踏み出す。
床を踏む音が、やけに大きく響いた気がした。
……先鋒か。
悪くない。
むしろ、都合がいい。
軽く竹刀を握り直し、定位置へと歩み出る。
対する相手も前に出てくる。
体格は平均的。
構えも、特別崩れているわけではない。
……だが。
──止まったね。
間合いに入る直前。
相手の足が、わずかに止まった。
「始め!」
審判の声。
同時に──
スッ……
僕は竹刀を下げた。
「……え?」
小さく、相手の声が漏れる。
下段。
通常の剣道ではあまり見ない構え。
竹刀の切っ先を低く落とし、相手の中心を制する形。
その構えを見た瞬間──
「な、なんだあれ……」
「下段……?」
「先鋒であの構えかよ……」
観覧スペースからざわめきが広がる。
「……来ない」
三玖が、小さく呟く。
「え……?」
五月がその横で目を瞬かせる。
だが──
一番反応しているのは、目の前の相手だ。
来ない。
間合いは、既に入っている。
普通なら、踏み込んでくる距離。
仕掛けてもおかしくない。
なのに──
踏み込めない、か。
相手の喉が、小さく動く。
「……っ」
一歩、出そうとして──止まる。
「なんで行かないのよ……!」
二乃が思わず声を漏らす。
「……圧だね」
一花が、少し真面目なトーンで呟いた。
「空気、変わってるもん」
理由は分かっている。
圧だ。
構えでも、技でもない。
もっと単純な──“気配”。
見えてる。
相手の呼吸。
重心の揺れ。
踏み込みの予兆。
全部、分かる。
だから──
動く前に、止められる。
「くっ……!」
相手が、声を上げる。
だが、その足は前に出ない。
どうする?
こちらから動くこともできる。
だが──
まだいい。
一歩も動かず、ただ構える。
それだけで、相手の選択肢を削っていく。
「……なんだよ、あれ」
観覧スペースのどこかで、誰かが呟いた。
その言葉が、妙に的を射ていた。
そう。
これは“構え”じゃない。
“待ち”でもない。
……詰みだよ。
相手が、動く前から。
勝負は、もう半分終わっている。
「──っ!!」
耐えきれなくなった相手が、踏み込む。
その瞬間──
遅い。
視界が、静かに狭まる。
世界が、少しだけ遅くなる。
「はぁっ!!」
振り下ろされる竹刀。
その瞬間──
「来た……!」
四葉が思わず前のめりになる。
「でも……遅い……」
聖奈が、小さく呟いた。
一歩──半歩。
ほんのわずかに体を外す。
「え──?」
相手の視界から、僕の姿が“ズレる”。
そのまま──
踏み込む。
ドンッ!!
床を強く踏み抜いた音が、道場に響く。
「……速っ!?」
一花が目を見開く。
「入った……!」
五月が息を呑む。
低く構えていた竹刀が、一瞬で跳ね上がる。
下段から──
一直線。
「──面ッ!!」
パァンッ!!
乾いた音が、道場中に響き渡る。
「一本!」
審判の旗が、鋭く上がる。
ざわっ──
観覧スペースが一気にどよめく。
「はぁ!?もう終わり!?」
「なに今の……!」
二乃と一花が同時に声を上げる。
「……見えなかった……」
三玖がぽつりと呟く。
「す、すごいです……!一瞬でした……!」
五月が思わず前に出そうになり──
「五月、線から出るな」
風太郎に軽く止められる。
「あっ……す、すみません……」
慌てて下がる五月。
「やっぱ兄貴やべぇって!!」
政樹が大声で叫ぶ。
その横で──
「……理に適ってる」
風太郎が小さく呟く。
「無駄がない。最短だ」
その分析に、聖奈が小さく頷いた。
「ええ。相手に“選ばせた”上で刈り取りましたね」
一方──
少し離れた位置。
観覧側から試合を見ていた恒一が、口元を緩める。
「ちっ……やっぱりな。だから言っただろ。いい教材だって」
その言葉に、後ろの部下二人は完全に見入っていた。
「い、今の……何が起きたんですか……」
「踏み込んだ瞬間に……もう終わってたような……」
恒一は軽く肩をすくめる。
「“遅れた”んだよ」
短く、それだけ言う。
「動いた時点で負けてたってことだ」
──試合場。
その後も同じ様な展開でまた一本取る──
「……ありがとうございました」
相手が呆然としたまま頭を下げる。
「ありがとうございました」
こちらも軽く礼を返す。
そのまま場外へ戻ると──
「兄貴!!今のやばすぎるって!!」
観覧側から政樹が叫ぶ。
「うるさいって」
軽く手を振る。
「……カズキ」
三玖が少し前に出て、小さく声をかける。
「……すごかった」
その一言。
「ありがとうございます!本当に見事でした!」
五月も続く。
少し距離はある。
だが、その分──
視線と声が、まっすぐ届いていた。
次鋒、中堅、副将と続くが──
「……最後は清治だな」
視線を試合場へ向ける。
「……先鋒であれか」
恒一が小さく呟く。
「最後、どうなるか見もんだな」
そんな声が僕にも小さく届いていた。
その後、次鋒、中堅、副将と試合は進んでいった。
こちらの部員達も善戦はした。
だが、相手校も流石に練習試合を組むだけの実力はあり、簡単には勝たせてはくれない。
一本を取り、取り返され、また粘る。
そんな拮抗した流れが続き、気付けば勝負は大将戦に委ねられる形になっていた。
「思ったより、競ってるわね」
「ええ。でも……それでいいんだと思います」
二乃の呟きに、聖奈が静かに頷く。
「兄さん一人が強くても、団体戦は勝てません。だからこそ、大将まで繋げた意味があります」
「なるほどねぇ~……」
一花が感心したように息を漏らす。
「じゃあ、その最後を決めるのがキヨハル君ってことだ」
「はい……まさに大将って感じです」
五月が胸の前で手を組みながら、少し緊張した様子で試合場を見つめる。
そこに立っていたのは、既に竹刀を握り、静かに相手を待つ清治の姿だった。
「……カズキと、全然違う」
「ですね」
三玖の言葉に、聖奈も小さく頷く。
和樹の剣が“獣”なら、清治の剣は“城”だ。
正面から見れば隙が無い。
動けば形が崩れそうに見えて、その実、どこにも綻びがない。
「大将戦、両者前へ!」
審判の声が響く。
清治が一歩、前へ出る。
その足運びは静かだ。
和樹のような、見る者の心臓を掴むような異様さはない。
だが──その代わりに、見ているだけで“隙が無い”と分かる安定感があった。
対する相手も、大将らしく堂々としている。
長身。しっかりとした足腰。構えも深い。
ここまで勝負を繋いできた男だけあって、顔つきに弱さは見えない。
「始め!」
両者が同時に動く。
清治は正眼。
教科書のように真っ直ぐな構え。
だが、その真っ直ぐさが妙に重い。
「わ……」
「なんか……空気違わない?」
四葉と一花が思わず声を漏らす。
「兄さんの時は、怖くて動けない感じでしたが……」
「今度は、動いても崩せなさそうですね」
五月と聖奈の言葉が、的確に状況を表していた。
そう。
和樹の剣が“踏み込ませない”のに対して、清治の剣は“踏み込んでも届かない”のだ。
相手が小さく竹刀を揺らす。
誘いをかけているのだろう。
だが、清治は一切それに乗らない。
「動かない……?」
「ううん、違うね」
一花の言葉を、僕が小さく否定する。
「清治は、動いてないんじゃない。動く必要がないんだよ」
ほんのわずかな重心移動。
竹刀の先の揺れ。
前足への圧。
それだけで、相手の攻め筋を潰している。
「なるほどな……」
恒一が、今度ははっきりと感心したように呟いた。
「先鋒があれで、大将がこれか。すげぇな、この学校……」
部下の一人が、息を呑みながら言う。
「タイプが真逆だ」
もう一人も、目を離せない様子で続けた。
「でも、どっちも前に出にくい」
その通りだった。
「……行け」
相手校の応援席から声が飛ぶ。
それを受け、相手の大将が一気に踏み込んだ。
鋭い面。
だが──
パシィッ!!
清治の竹刀が、真正面からそれを受け止める。
「おおっ!」
「止めた……!」
四葉と五月が同時に声を上げる。
だが、驚くのはまだ早い。
受けたのではない。
制したのだ。
竹刀を合わせたまま、清治が半歩前へ出る。
圧が増す。
「っ……!」
相手の顔が歪む。
鍔迫り合いに持ち込みたいわけではない。
押し込まれたくない。
だが、下がればその瞬間に主導権を失う。
迷い。
その一瞬を──清治は逃さない。
「──面ッ!!」
鋭い一閃。
パァンッ!!
乾いた音が、道場の空気を切り裂いた。
「一本!」
旗が上がる。
「入ったぁ!!」
「キヨハル君すごっ!!」
一花と四葉が立ち上がりかける。
「まだだよ」
「うん……一本だけ」
三玖が小さく言う。
その通りだ。
一本は一本。だが、勝負はまだ終わっていない。
相手も大将。
ここで折れるような男ではない。
「……ありがとうございました」
仕切り直し。
再開後、相手は明らかに攻め方を変えてきた。
面ではなく胴。
いや、それも囮か。
崩しを入れて、清治の真っ直ぐさを乱そうとしている。
「今度は、細かく揺さぶってきますね」
「ええ。ですが……」
五月の言葉に聖奈がそこで言葉を切る。
「通じないでしょうね」
その一言の直後だった。
相手がフェイントを入れ、体勢を低くする。
次は胴──そう見せて、実際には小手か。
だが、清治の竹刀は微塵もぶれない。
「うそ……」
「全然引っかからない……」
二乃と五月が呆然と呟く。
僕は小さく笑った。
「それが清治だよ」
奇策に強いわけではない。
むしろ、奇策を“奇策のまま終わらせる”のが上手いのだ。
構えが崩れない。
呼吸が乱れない。
相手のリズムに呑まれない。
だから、最後に苦しくなるのはいつも相手の方だ。
「はぁっ……!」
再び相手が仕掛ける。
今度は正面からの勝負。
だが、その踏み込みは僅かに浅かった。
「そこだ」
僕が小さく呟くのと、ほぼ同時。
「──小手ッ!!」
バシィッ!!
鋭い音。
相手の竹刀が跳ね、手元が浮く。
「一本!」
二本目。
それで決まった。
「勝負あり!!」
道場がどよめく。
先鋒の和樹。
大将の清治。
最後を締めたのは、まさに“王道の剣”だった。
「す、すごい……」
「和樹さんとは全然違うのに、同じくらい強い……」
五月と四葉が感嘆の声を漏らす。
「……きれい」
三玖がぽつりと呟いた。
「ああいうのが、剣道って感じするわね」
「うんうん。カズキ君が異質すぎるだけで、キヨハル君も十分おかしいよね♪」
一花と二乃の言葉に、政樹が力強く頷く。
「そりゃそうっすよ!清治は去年も今年も個人全国一位っすから!」
「改めて聞くと化け物ですね……」
「和樹の周り、どうなってんだ本当に……」
聖奈と風太郎の声は、どこか呆れ混じりだった。
恒一はそんな様子を見ながら、深く息を吐いた。
「なるほどな……」
その声は、和樹の時よりも低かった。
「先鋒は異質。大将は王道」
「で、どっちも“本物”ってわけですか……」
「そういうことだ」
部下の問いに、恒一は短く答える。
「見ただろ。和樹のは、“踏み込んだ時点で終わる剣”だ」
「はい」
「清治のは、“踏み込んでも崩れない剣”だ」
少しだけ笑う。
「嫌な相手だろ?どっちも」
部下たちは真剣な顔で頷いた。
試合場では、清治が礼を終えて戻ってくるところだった。
「お疲れ」
「お前もな」
近くまで来たところで、僕が声をかける。
清治は汗を拭いながら、小さく息を吐いた。
「……どうだった?」
「らしかったよ」
そう言うと、清治は僅かに目を細めた。
「お前こそ」
「そりゃどうも」
短いやり取り。
だが、それだけで十分だった。
「加藤さん、すごかったです!」
「ありがとうございます、四葉さん」
四葉のまっすぐな称賛に、清治が珍しく柔らかい声で返す。
「流石でした」
「五月さんにそう言っていただけると光栄です」
五月にも丁寧に返す。
「……綺麗だった」
「……そうか。ありがとう、三玖さん」
三玖の一言に、一瞬だけ清治の表情が緩む。
その様子を見て、一花がくすっと笑った。
「和樹君もキヨハル君も、今日は大人気だねぇ」
「兄貴はいつも人気っすよ!」
「そこ、威張るのお前なんだな……」
僕が呆れると、政樹はけろっと笑う。
その時──
「おい、坊主ども」
恒一がこちらに歩いてきた。
「二人とも、期待以上だった」
「珍しく素直じゃないですか」
「うるせぇ」
僕の返しに、恒一は鼻で笑う。
「だが、来た甲斐はあった」
その言葉には、本音が滲んでいた。
「どうでしたか、部下の方々から見て」
「勉強になりました!」
即答だった。
「正直、剣道ってもっと形式的なものかと思ってましたけど……」
「全然違いました。あんなに相手を追い詰めるんですね……」
その感想に、僕と清治は顔を見合わせる。
「まあ、追い詰め方は違うけどね」
「うむ」
僕が言うと、清治も頷いた。
「でも、勝つために積み上げた結果という意味では同じだ」
その言葉に、恒一が少しだけ目を細めた。
「……なるほどな」
それだけ呟いて、口元を緩める。
「ますます面白ぇじゃねぇか」
その言葉を聞きながら、僕は軽く天井を見上げた。
勝った。
清治も、きっちり締めた。
そして、見に来た人間の目にも、それぞれ違う形で何かを残せた。
悪くない一日だ。
そう思った時──
「和樹さん!加藤さん!」
「写真撮ろうよ写真!」
一花と四葉が元気よく手を振る。
「ほらほら、せっかくなんだし!」
「皆で撮ったら記念になります!」
その明るい声に、思わず笑いが漏れた。
「……騒がしいな」
「嫌いじゃないだろ?」
「……まあな」
さっきと同じやり取りを、今度は清治と交わす。
それから僕達は、賑やかな応援団のもとへ歩き出した。
その背中を追う視線は、もう試合前とは少し違っていた。
強さを見た目。
惹かれた目。
興味を深めた目。
そして──譲るつもりのない目。
いくつもの想いが交差しながら、練習試合の一日はまだ終わらないのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
今回は「強さの対比」と「視線の変化」を軸にした回でした。
和樹は“異質な強さ”
清治は“王道の強さ”
どちらが上というよりも、
「違うからこそ際立つ」関係にしています。
そしてタイトルにもある通り、
この回で少しずつ“視線”が変わり始めています。
ここからは日常パートに戻りつつ、
関係性が一気に動いていく流れになる予定です。
もし「ここ好きだな」と思ったシーンやキャラがいれば、
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それでは、次回もよろしくお願いします!