導星の錬金術師   作:星見錬

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今回は前回のラストと続けて読むのを推奨しています。


第16話『善と偽善』

 ──しなければならないと、少年は決意した。

 

 薬品臭い貨物車両で息を潜め続け、どれほどの時間が経ったのか。

 窓一つない車両の中で、時間感覚はすっかり麻痺してしまった。

 もう朝か夜かさえ分からない。

 

 道中、憲兵や駅員の目線を掻い潜るのはとても大変だったが、未だに見つからずにいる。

 「この幸運もイシュヴァラ神のお導きに違いない」と、少年は感謝の祈りを捧げた。

 

 既に故郷は遠く、微かに聞こえる駅名は聞いたこともないものだ。

 目的地まではどのくらいだろうか?

 

「地図も持って……いや、誰かに気付かれてしまうか」

 

 どのみち、このまま待ち続ければ大丈夫だろう──少年はそう判断する。

 体が固まらないように少しだけ身じろぎをすると、懐にある物を意識してしまった。

 濃厚な死の気配を纏う()()を抱えていることを再認識して、体が震える。

 ここに来て、なお死を恐れてしまう己の臆病さに対し、少年は呆れたように苦笑した。

 

「……師父は、俺のことを知ればお怒りになるだろうな」

 

 アメストリス人への怒りを抑えきれぬ自分に、『堪えねばならぬ』と師父は仰った。

 『復讐による不毛な循環は断ち切らねばならん』と。

 あの徳高き師父のお言葉だ。だからそれは、疑いようもない真理なのだろう。

 

「──しかし、いつだって正しさが我らを救ってくれるわけではないのです」

 

 かつての反論を繰り返し、少年は目を閉じる。

 

 思い浮かぶのは、『痛みを伴わない教訓には意義がない』という誰かの言葉。

 犠牲を払い、痛みを伴ってようやく人間は学びを得るという教え。

 

 『ならば、自分こそがその痛みとなろう』──少年はそう思った。

 

 アメストリスが自分達イシュヴァール人へ非道を行うのは、きっと痛みを知らないからだ。

 自分という痛みを知れば、奴らは必ず自身の愚かさに気付くに違いない。

 

 故に少年は旅立った。荷物は、大人達の備えから拝借した爆弾を一つとマッチだけ。

 目標はイーストシティ、または中央(セントラル)

 人の多く集まる都市でこれを爆破すれば、奴らは大きな痛みを知るだろう。

 

 

 極度の緊張状態によるものか、次第に強烈な眠気に襲われ、少しずつ舟を漕ぐ。

 がくりと頭が落ち、慌てて起き上がった瞬間──車両の扉が開く音がした。

 

 少年は反射的に物陰へ飛び込もうとしたが、足元の箱に膝をぶつけてしまった。

 乾いた音が響き、「しまった!」と全身を強張らせる。

 

 その音を頼りに、うろうろと薄暗い車両内を彷徨っていた懐中電灯の光が少年の顔を照らす。

 光の出所から息を呑む音が聞こえた。

 

「いた……おい、お前! 目撃情報にあったイシュヴァール人だな!?

 貨物車両に乗って無賃乗車するなど……恥を知れ!」

 

(見つかって──いた? とっくの昔に?)

 

 駅員の発言にあった『目撃証言』という単語に心臓が跳ねる。

 どうやら、順調だと思っていたのは少年だけだったらしい。

 わざと泳がされていたのかと考え、せめてもの抵抗として駅員を睨む。

 

 駅員は少年の赤い眼光に対し怯みかけたが、己の職務を全うするために奮い立った。

 少年を捕まえようと、車両の奥へ歩を進める。

 

「逃げようとしても無駄だからな……。既に憲兵も待機済みだ」

 

「…………っ」

 

 追い詰められ、少年は逡巡する。

 もしもここで捕まれば、自分の覚悟はあっけなく踏み躙られるだろう。

 爆弾は没収され、尋問され、普通の罪人と同等の扱いを受けるに違いない。

 あるいは、他の同胞への見せしめとして処刑される可能性もある。

 

(そうなるくらいなら、ここで──っ!)

 

「う、動くな!」

 

 少年は懐を開放して、爆弾を駅員に見せつけた。

 爆弾を視認した駅員は、顔を真っ青にして恐怖に震える。足など生まれたての馬のようだ。

 「これで逃げるに違いない」……そんな少年の期待は、即座に裏切られた。

 

「なな、なんて物を……やめろ! 落ち着け! こんな所で命を捨てるんじゃない!!」

 

 爆弾を恐れながらも、駅員は微塵も諦めてなどいなかった。

 目の前の少年を説得しようと、腰が引けているにも構わず手を伸ばす。

 

「お前、いや、君はまだ若いじゃないか……。きっと人生やり直せるって! な、な?

 頼むから考え直してくれよ……。そ、それに! この貨物車両には薬が積まれているんだ!

 これを待っている人がいるんだよ。分かるだろ? だ、だから……だから……!!」

 

 駅員は、あくまでも『イシュヴァール人』ではなく『一人の人間』として少年と向き合った。

 「真摯に対応すれば、きっと分かりあえるだろう」と。

 ──だが、その対応こそが少年の逆鱗に触れた。

 

「……知るかよ」

 

 静かな声が、車両内に反響する。

 

「お前らのせいで! 俺達がどんなに苦しんでるか知らないくせに……!

 人生やり直せる? 考え直せ? ふざけんな!!

 俺達の未来を奪おうとしたのは、お前らの方じゃないか……!!」

 

 内心でイシュヴァラ神へ祈りを捧げながら、マッチを擦る。

 そのまま小さな火を、導火線へ灯した。

 

「お、おい待て! やめろ、早まるな!! 今すぐ火を消し──」

 

 

「我々の怒りを知れ、アメストリス人!!!」

 

 

 刹那、爆炎が列車を呑んだ。

 貨物車両にあった揮発性の薬品が爆弾の威力を倍増させ、駅舎の屋根まで吹き飛ばす。

 周囲にいた人々は、何が起きたか理解する暇もなく巻き込まれて死んでいった。

 

 少し遅れて、機関部が二度目の爆発を起こす。

 二度の爆発に晒された駅が無事であるはずもなく、被害は駅周辺にまで及んだ。

 

 少数の死者と多数の重軽傷者を出した非道なテロリズムとして、この事件は翌日の朝刊の二面を飾った。

 ……しかし、人々の目に触れたのはそれだけ。

 人の少ない駅であり、死者が少なかったせいもあるだろう。事件はすぐに風化した。

 

 

 その日、十五歳の少年は至近距離の爆風によって、全身が粉微塵になって死んだ。

 彼の望んだ結果は、何一つとして得られなかった。

 

 


 

 

 トリシャさんから師匠(せんせい)が旅立った理由を聞いた後。

 ばっちゃんにざっくりと事情を説明すると、私は急いでロックベル家へと向かった。

 治療薬が届いたかどうか確かめるためだ。

 

 本当は全力疾走したいところだけど、ロックベル家は診療所や機械鎧(オートメイル)製作所も兼ねている。

 つまり患者さんがいるかもしれないわけで、そんな場所で走り回るわけにもいかない。

 だから、ユーリ先生の部屋へ行く時はあくまでも早足で。

 

 逸る気持ちを押さえつつ、ようやく部屋まで辿り着いた。

 ドアをノックしようと腕を持ち上げた、その時。

 

 

『なんだって!? おい、嘘だろう!?』

 

 

 辺りに響き渡るほどのユーリ先生の怒声が聞こえて、思わず手を止める。

 切羽詰まったその声は、普段の落ち着いたユーリ先生とはまるで別人だった。

 会話相手の声が聞こえないのは……もしかして電話だから?

 

 ただならぬ雰囲気に、胸の奥がざわめき始める。

 立ち聞きは良くないと思いつつも、入るタイミングを見計らうために耳を澄ませた。

 

『仕方ないって……あれを待っている患者がいるんだぞ!?

 それだけで済まされる話じゃないだろ!』

 

 ……嫌な予感に、どくんと心臓が脈打つ。

 いや、そんなはずがない。ありえない。ありえていいわけがない。

 『「ありえない」なんて事はありえない』

 

 呼吸すら忘れ、一言一句聞き漏らさないようにドアへ耳を当てた。

 知らず知らずのうちに、祈るように両手を握る。

 

 お願いだから、嘘だと……トリシャさんとは関係ない話であってほしい。

 その希望さえ取り上げられてしまったら、私は──

 

『あの治療薬は、今日届く手筈だったはずだ。……一体、何があったんだ?』

 

「────っ」

 

 祈りは、あっさりと打ち砕かれた。

 彼が口にした情報は、私が待ちわびていたもので間違いない。

 

 ……どうして?

 

『…………そうか。そう、か……』

 

 あまりの衝撃に悲鳴が漏れかけた口を押さえる間に、電話は終わったらしい。

 受話器を置く音と同時に、大きく金属が軋む音がする。……椅子に腰かけた音だろう。

 乱雑なその音は、ユーリ先生の心労が滲んでいるようだった。

 

 少しして、深く長いため息を吐く彼を労わるような、サラさんの声も聞こえてくる。

 

『……ねえ、一体何があったの?』

 

『……二つ前の駅で……薬を運んでいた貨物列車が爆発したらしい。駅は全焼。

 かなりの被害で情報も錯綜しているそうだが、話によるとイシュヴァール人の自爆テロ──』

 

「……………………は?」

 

 自爆テロ? よりにもよって、今?

 わざわざトリシャさんの治療薬がある貨物列車で?

 

 ぐらぐらと視界が揺れる。頭が真っ白になって、喉の奥が焼け付くように熱くなる。

 激情に突き動かされるまま、私はドアを開け放った。

 

「どういう……ことですか」

 

「っ、ステラ! 君はまた立ち聞きを──」

 

「貨物列車が爆発したって……自爆テロとか、そんな……っ。

 なんでっ、なんでそんな理不尽なことが起こるんですか!?

 治療薬は……トリシャさんは一体どうなるんですか!?」

 

「…………治療薬は、届かない。念のため一緒に頼んであった原料も同じだ。

 ……ただでさえ、貴重な在庫を回してもらったのに……。

 私の判断ミスだ。すまない……もっと早く彼女の症状に気付いていれば……!!」

 

「……ユーリ先生、手遅れみたいな言い方しないでくださいよ。

 まだ時間はありますよね? トリシャさんだって元気そうだし……薬はまた注文すれば……」

 

「無理だ。……今回被害のあった駅は、中央(セントラル)とここを繋ぐ大事な場所でね。

 しばらく列車は使えない。……車や馬車は、治療薬を運ぶには遅すぎる。

 ……次に治療薬が手に入るまでに、トリシャが生きている可能性は──」

 

「ふざけないでください!!」

 

 思わず、目の前の診察机に拳を振り下ろしていた。

 手の痛みすら感じないほどの怒りを、項垂れる先生にぶつける。

 

「医者のくせに簡単に諦めないで! 貴方はそんな情けない人じゃないはずでしょう!?

 それに! そんなことを言うくらいなら、あの時薬の錬成を許可してくれていたら──っ」

 

「やめて、ステラ!」

 

 ユーリ先生に詰め寄って胸倉を掴もうとした瞬間、サラさんに背後から羽交い絞めにされた。

 ぽたり、ぽたりと肩に感じる雫の感触が、燃え上がる激情を少しずつ冷やしていく。

 

「ごめんなさい。私達も、こんなことになるなんて思ってなかったの。

 ……だけど、治療薬を錬成するということは、貴女が彼女の命を背負うことになるのよ。

 ただでさえ記憶喪失で大変な貴女に、そこまでの負担を強いることはできないわ。

 そもそも、原料はここじゃ手に入らないものばかりよ。

 ……錬金術は、何もないところから錬成できないのでしょう?」

 

「……それは、そう、ですけど……」

 

 『無から有を生ずることあたわず』──錬金術の基本だ。

 何かを得ようとするのなら、必ず同等の代価を支払わなければならない。それが等価交換。

 等価交換を無視する賢者の石ですら、無から何かを生み出すことは不可能だったはず。

 

 ……つまり、もしもホーエンハイムさんがまだリゼンブールにいたとしても。

 原料がない以上、彼ですらどうすることもできなかっただろう。

 

 こんな時、錬金術はあまりにも無力だ。

 

「……単なる目撃情報に過ぎないが……犯人は、まだ年若い少年だったらしい……」

 

 呻くようにユーリ先生が言う。

 俯いているせいで顔は見えなかったものの、声はわなわなと震えていた。

 

「未来ある若者が……命を捨ててまで国に抗おうとしたんだ……」

 

 ああ、それは悲劇だろう。彼のように、心を痛めるべきなのだろう。

 だけど、今はとてもそう思えなかった。見ず知らずの少年に怒りしか湧かない。

 

 ……まさか、イシュヴァール人を心底憎む日が来るとはね。

 やっぱり、私の魂は人間のままみたいだ。

 

「……それが、何ですか? 命を捨ててまで抗おうとしたんだから仕方ない……って?

 その少年とやらを許せって言いたいんですか?」

 

 憎悪をそのまま吐き出すと、ユーリ先生は「違う!」と顔を上げた。

 

「理不尽は許しちゃいないさ! それくらい分かってる!!

 だが、その理不尽を彼にさせたのは誰だ!? ……私達、アメストリス人だろう。

 アメストリスがイシュヴァールを弾圧しなければ、こんなことにはならなかったはずだ!」

 

 自身の脚に拳を叩きつけ、先生は悔しそうに顔を歪ませた。

 

「だから、悪いのは私達だ。

 彼らを見捨て、国による弾圧を黙認し、そこまで追い詰めてしまった私達の……」

 

「……だとしても、そのせいでトリシャさんの命が危険に晒されるのは違うでしょう」

 

 『やらない善よりやる偽善』──原作でユーリ先生が言っていた言葉だ。

 私はこの言葉を……そう言って、最期まで信念を貫いた彼らを尊敬していた。

 

 だからこそ、今の彼には心の底から失望した。

 イシュヴァール人に同情するのは構わない。自分達を責めるのも好きにしたらいい。

 

 でも、それを諦めていい理由にしていいわけがないだろう。

 

「……放してください、サラさん。もう暴れたりしませんから。

 私はちゃんと、最後まで足掻きますよ。絶対に諦めませんから。……それでは」

 

 これ以上は意味がないと思って、足早に部屋を出る。

 

 乱暴に閉じたドアは、私の心に似ていた。

 

 


 

 

 ユーリは、去っていった少女の言葉を脳内で反芻していた。

 

『医者のくせに簡単に諦めないで! 貴方はそんな情けない人じゃないはずでしょう!?』

 

『……だとしても、そのせいでトリシャさんの命が危険に晒されるのは違うでしょう』

 

『私はちゃんと、最後まで足掻きますよ。絶対に諦めませんから』

 

 強い子だ。絶望に膝を折ってもおかしくないだろうに。

 だからこそ、どうしようもない現実に打ちのめされている自分がより情けなく思える。

 

 ……しかし、医者としての知識が、大人としての経験が、彼の意思を挫いてしまう。

 「最早間に合う道理はない。お前は判断を間違え、運命に見放されたのだ」と。

 

「……私は、本当に正しいことをしたんだろうか?」

 

「もちろんよ。あの時の貴方の判断は、医者として正しいものだったわ」

 

 夫の気弱な呟きを真っ先に否定したのは、妻のサラだった。

 彼女もユーリ同様、残酷な現実に心を痛めていた。

 

 トリシャは友人であり、同じ年頃の子供を育てる母親仲間でもある。

 そんな彼女の悲劇的な運命を、悲しく思わないはずがない。

 

 けれども、もう一人の医者として──そして妻として、彼を否定することはできなかった。

 

 だが、彼女の言葉はユーリの慰めにはならない。

 むしろ、「その正しさのせいでこうなったのだ」と突き付けるようにすら感じた。

 

「……()()()()()正しいのなら、人間としてはどうだ?

 ステラに全てを押し付けるわけにいかなかったのは分かってるさ。だけど──だとしても!

 正しさを優先して、それが最善だと()()()()()()()結果が今だ! 私は……私は……!!」

 

「あなた……」

 

 医者としての挫折なら、今まで何度も味わってきた。救えなかった命だって少なくない。

 それでも医者を続けてきたのは──医者であろうとしたのは、誰かを救いたかったからだ。

 

 だというのに、今の体たらくはどうだ?

 

 手の届かない場所で、未来ある子供が死んでいく。

 手の届く場所にいるはずの、友人の命すら救えない。

 

 ああ、なんて無力なんだろう。足掻いても、藻掻いても、まだ足りない。

 

 こんなことに、なるくらいなら──

 

「……あなた。いいえ、ユーリ先生」

 

「サラ?」

 

 昔の呼び名に顔を上げると、パチンという軽い音と共に頬に衝撃を感じた。

 遅れてくる鈍い痛みと、涙目になった彼女の顔で、ようやく叩かれたのだと理解する。

 

「しっかりしなさい! 辛くても、悲しくても、挫けそうになっても!

 医者が真っ先に諦めたら、誰も救えないでしょう!?

 ……私だって、諦めそうになったわ。今もどうしていいかなんて分からない。

 でも、あの子は──あの子達は、まだ諦めてなんかいないのよ!!」

 

「…………」

 

 彼女も、分かっているはずだ。同じ医者なのだから。夫婦なのだから。

 いや、トリシャとより親しくしていた分、辛さは彼女の方が上かもしれない。

 

 それでも彼女は立ち上がってみせた。その姿は、彼が惹かれた強い(ひと)の姿。

 どんな苦労や困難も共に乗り越えてきた、頼れる伴侶。

 

 ──思い出した。どんなに辛くても、悲しくても、挫けそうになっても。

 ここまで歩んでいけたのは、隣で彼女が支えてくれたからだ。

 

 そして、多くの人々の支えがあったからだ。

 

「……ありがとう、サラ。おかげで目が覚めたよ」

 

 彼女に、彼らに報いる方法など一つしかない。

 

 最後まで、諦めないこと。

 

 時に無駄だと笑われるかもしれない。「偽善だ」となじられるかもしれない。

 だとしても──

 

「私に足りなかったのは覚悟だった。最後まで、意思を貫く覚悟。

 ようやくそのことに気付けた。……ステラの言うとおりだよ。

 医者のくせに、簡単に諦めていいはずがない」

 

 瞳に光が戻る。椅子の背もたれにかけていた白衣を手に取り、勢いよく羽織った。

 

「諦めるのも、動かないのもやめにしよう。これからは『やらない善よりやる偽善』だ。

 責任を取る必要があるのなら、私が全部引き受ける。もう何一つ諦めるつもりはない。

 ……サラ。こんな情けない私だが、ついてきてくれるか?」

 

「もう、何言ってるのよ」

 

 仕方ないというように笑うと、サラは胸を張って答えた。

 

「そんなの当たり前でしょう? 私達は夫婦なのだもの。

 それに、責任だって二人で分け合うつもりよ? あなただけに背負わせたりしないわ。

 ……良かった。元のあなたに戻ってくれて」

 

「……ああ、本当にありがとう」

 

 妻の体を抱きしめて、感謝と愛情を伝える。

 背中に回された腕から、同じ感情が伝わる。

 

 これが、彼らの新たな信念の始まりだった。




「何故ロックベル夫妻は、縁もゆかりもないはずのイシュヴァール人を命がけで助けようとしたのか?」を、私なりに考察した結果が今回の話です。

それ相応の挫折や葛藤があった結果が「やらない善よりやる偽善」なのではないか、という感じですね。


解釈違いなどあるかもしれませんが、この世界線ではこんなことがあったんだなと思っていただけると幸いです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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