悪魔の王の異世界活劇   作:Revak

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第16話

 

「なにやってんだよ、お前」

 

 パーティ会場に入ったシュヴァルツに開口一番パイモンが怪訝な眼でそう言う。

 

「いや面目ない……」

 

 シュヴァルツは割と本気で反省しました、と頭を下げる。

 

「着替える時間も無かったのかよ。今からでも……いや、他にも似たような奴いるしいいか」

 

 パイモンはパーティ前にきっちりと着替えていた。

 何時もの魔術師風の恰好は辞め、パーティ用のスーツを着ている。

 顔が顔だけに男装している令嬢という雰囲気が漂っている。

 

 対しシュヴァルツは何時もと変わらぬ着物と袴であり、普通のパーティならば場違いだろう。

 だがシュヴァルツにとって有難いことに、シュヴァルツと似たような恰好の者は多数いた。

 

 着物の人間が居る訳ではない。パーティに相応しくない恰好の者が居るという訳だ。

 

 普段から使っているのだろう軽装鎧。隠すべきところだけ隠しましたという痴女一歩手前というか痴女が着るべきビキニアーマーを着た男性。

 彼らは流石に帯剣はしていない。だが冒険者であれば素手だろうと人を殴り殺せるため武装していないと言っても警戒を怠っていい相手ではない。

 他にも冒険者らしき恰好をした者が多数いる為、シュヴァルツもそこまで問題がある格好、という訳ではない。

 

「今回のパーティに招待された冒険者は好きな格好をして良いって事だから良かったけど、普通なら駄目だからな?」

 

 言外に、ソロモンに属する者が何という失態をしているんだ、と眼で訴えパイモンはシュヴァルツを睨む。

 そのことに自覚があるシュヴァルツはただ頭を下げる事しか出来ない。

 

「いやすまない。ルル殿。彼女は私との対局に夢中になってしまっていて……元を言えば私が誘ったのが悪いのです」

 

 其処に、一人の男が躍り出る。

 シュヴァルツと将棋をしていた男、ハンス・シュミットだ。

 

「いえ、時間を考えていなかった私も悪いので……」

「いえいえそんなことは」

「いえいえ」

「そういうやり取りはギャグの中だけにしてくれる?」

 

 互いに謝り続けるという不毛なやり取りをし始めた二人にパイモンは苛立ちながら言葉を放つ。

 

「──おや。シュミット殿。今日は来られたのですね」

 

 そんな三人に新しく男がやって来る。

 

 紺色のパーティスーツを纏ったガタイの良い男だ。

 両手の指には主張する様にダイヤモンドやエメラルドなどの宝石が付いた指輪をしている。

 黒髪黒目という、この国では有り触れた見た目の男である。

 

「おや藤原様。今日はパーティに招待していただきありがとうございます」

「こちらこそ先日の対局があったというのに参加していただきありがとうございます」

 

 藤原とハンスのやり取りにシュヴァルツが対局? と疑問符を口にする。

 

「シュミット殿は名の知れた棋士でね。先日も竜王戦をしたばかりなのです」

「──プロの棋士ってことですか」

 

 パイモンがこの国で得た情報を元にそう言葉を発する。

 

 この国、神聖王国では遊戯にもプロの世界がある。

 それ以外にも単なるスポーツでさえプロ戦というものがあるのだ。

 

 野球、サッカー、フィギュアスケート。将棋。チェス。それらを極めた者だけの世界があり、優勝者や最優者には賞金が出る。

 その為その道のプロであればそれだけで食べていく事さえ可能となる。シュヴァルツが知る世界では有り得ない事だ。

 

「それにシヴァ・イルデ殿にペイル・ルル殿。急な招待であったというのに参加していただき誠にありがとうございます」

 

 そう藤原は軽く頭を下げる。

 

「私達の名を知っているんですね」

「当然でしょう。招待客の名と顔を覚えるのは主催者として当然です」

 

 二コリ、と藤原は笑った。

 その笑顔に含まれている物をシュヴァルツは敏感に感知する。竜の探知能力があれば造作も無い事だ。

 

「ではごゆるりとパーティをお楽しみください」

 

 そう言い残すと藤原は離れていく。

 

「それでイルデ殿。先の対局の事ですが──」

 

 藤原が去った事でハンスはシュヴァルツに遠慮なく話しかける。

 会話の内容は対局についてだ。すわあの一手の意味は、とかあの時の手は、などといったものばかりである。

 シュヴァルツも特に答えを断る理由もないのでごく普通に答えていく。パイモンは将棋に其処までハマっている訳ではないので席を離れて行った。

 

 

 そうして話す事十分程。シュヴァルツとハンスに近づいてくる者がまた一人現れた。

 

 金髪碧眼の眉目秀麗な男だ。百八十五センチとシュヴァルツとハンスよりも大きな体をしている。

 青いスーツを纏った姿は様になっており、肖像画にでもすればさぞ売れるだろうという雰囲気だ。

 

「──其処の貴方。少々私とお話いただけませんか?」

 

 男──シュナイトはシュヴァルツにそう話しかける。

 

「おや、シュナイト殿も来ておられたのですか」

「えぇ。ハンスさん。藤原さんに招待され来てました」

 

 シュナイトはにこり、と人当たりの良さそうな笑みを浮かべる。

 

「最近活躍しているというシヴァ・イルデさん、ですよね。王都にも活躍は届いていますよ」

「そうなんですか?」

 

 王都には新聞社という物がある。

 情報誌を売る会社であり、全国各地の情報を集め売りさばく会社だ。

 最も国営であり、民間事業者ではない。国が管理する会社となっている為情報なども国が把握してからになる。

 

「どうでしょう? あちらで少し話しませんか?」

 

 シュナイトは窓際の方を視線で示す。

 いいですよ、と断る理由もないのでシュヴァルツは受け入れる。

 

 窓際まで歩き、人の喧騒から少し離れたところで、シュナイトが切り出した。

 

「単刀直入に問いましょう。貴女、人間では無いですよね」

「──?!」

 

 シュヴァルツは咄嗟に腰の刀を取ろうとする、が刀は遊戯室におきっぱである。

 

「あぁ、貴女と敵対するつもりはありません。そう警戒しないでください」

 

 シュナイトはそう言うモノの、シュヴァルツは警戒を解けない、解くはずがない。

 急に自らの正体を言い当てた相手──警戒するなという方が無理がある。

 

(どうやって見破った?)

 

 今のシュヴァルツはリリスの幻術によって守られている。

 その為余程高位の占術系や看破系の魔法でも使われない限り正体が露見することは無い。

 つまりはシュナイトがそういった高位の魔法を使える、あるいは高位魔法を発動できる魔法道具(マジックアイテム)を持っているという事になる。

 だが、これまでの事前調査で最高でもレベル六の魔法が限度の人類にリリスの幻術を突破出来る魔法を行使できる訳がない。

 となると国宝や秘宝級の、個人での使用が憚られるような物をシュナイト個人が持っているという事になりかねない。

 

「それで本題なのですが……貴女達のトップと話がしたいんです」

「……うちのトップと、どうして?」

「この国の──いえ人類の未来について、相談がしたいんです」

 

 シュナイトはそう、笑顔で言い放った。

 

 

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