悪魔の王の異世界活劇   作:Revak

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第18話

 

「これが人の街か」

 

 ゴエティアから最も近い街、バッケンに着いたバァル・ゼブルはそう呟いた。

 大通りの中で美女が居れば注目を集める。

 バァル・ゼブルは今隣にシュヴァルツとパイモンを連れてやってきている。

 いや、その二人以外にも自らの影の中に影の悪魔(シャドウ・デーモン)を二体入れている。

 

「それで何処に行かれますか?」

 

 シュヴァルツがそうバァル・ゼブルに尋ねる。

 

「まずは冒険者ギルドだな。ファンタジーのギルドとはどういうものか気になる」

「わかりました。ではこちらです」

 

 シュヴァルツが先導し、街中を歩く。

 

(……街並みが日本に近いな。やはり神聖王国にはプレイヤーが居る、あるいは居たのは確実だな。しかも建国に関われるレベルで)

 

 ステップしそうな程に上機嫌に歩きながらも、バァル・ゼブルは街の観察をしておくのを忘れない。

 街並みが日本に近いという事にいち早く気づき、プレイヤーの存在を強く感じ取る。

 電線などは無いが、ほぼ日本そのものである街並みにバァル・ゼブルは少々のホームシックを感じながら歩くと冒険者ギルドに辿り着く。

 

(ここは洋風なんだな。面白い)

 

 バァル・ゼブルはそう思いながら中に入って行く。

 

「おぉ……」

 

 IOOにも冒険者ギルドに似た組織はあった。ギルドという名前だけの組織であり、サイドクエストを受注でき、一部素材の売買もできる組織としてだ。

 雰囲気としてはそれに近い物をバァル・ゼブルは感じる。

 

 きょろきょろとバァル・ゼブルはおのぼりさんのように周囲を見る。

 それが気になったのか、一人の男が席を立ちあがりバァル・ゼブル達に近づく。

 

 体中に傷のついた大男だ。雰囲気からして暴力を生業にしていることが明らかであり、この世界に来る前のバァル・ゼブルであれば近づく来たくない人種だ。

 

「なんだ、ペイル。その嬢ちゃんは?」

「ヘイゼルか。僕の友人だよ」

「初めまして。私はベルゼと申します」

 

 にこり、とバァル・ゼブルはほほ笑む。

 美女の笑みにヘイゼルはどきりとし、一歩後ずさる。

 バァル・ゼブルの人間体は非常に美人だ。モデルにでもなれば毎号飛ぶように売れるのが確定の美女である。

 

「実はこの辺りに来たのは初めての事なので、どうか教えてはくれないでしょうか?」

 

 バァル・ゼブルは妖艶な笑みと共にそう問いかける。

 

「あ、ああ。いいぜ。ここには──」

 

 ヘイゼルを体よく使いながら、バァル・ゼブルはバッケンの街を楽しんだ。

 

 

 ■

 

「ふぅ……」

 

 パイモンとシュヴァルツがとっている高級宿の一室で、バァル・ゼブルは息を吐いた。

 それは疲れからくる息だ。肉体的疲労は兎も角精神的疲労は無効化出来ない。無論外部からの干渉であれば無効化出来るが、自身の内から湧き上がる精神異常は無効化出来ないのだ。

 部屋は非常に広い。ゴエティアの一室とは当然比べれば見劣りするが、それでも広い部屋に質の良い家具が取り押さえられている。

 

「お疲れですか?」

 

 そう声をかけるのはシュヴァルツだ。

 

「ああ。久方ぶりにこれだけ動いたからな。やはりたまには体を動かさんといかん」

 

 ふふ、とバァル・ゼブルはほほ笑む。

 実際ここ最近のバァル・ゼブルは動いたりしていなかった。移動に便利な転移魔法も使える事であまり運動というのをしていない。

 これからは訓練がてらNPC達と模擬戦でもしようか、なんて考える。

 

 バァル・ゼブルが部屋の茶菓子であるクッキーに手を伸ばした時、部屋にノックがかかる。

 どうぞ、とパイモンが返事をするとドアが開き中に一歩入って来る。この高級宿のスタッフの女性が入って来た。

 

「申し訳ありません。シヴァ・イルデ様にお客様が着ております。シュナイトという、勇者様です」

 

 は? とシュヴァルツが間抜けな声を漏らした。

 

「……入れてやれ」

 

 バァル・ゼブルは何が目的だ、と思いながらも情報を得るために受け入れることを提案する。

 

「……わかりました。部屋に連れてきてください」

「わかりました。少々お待ちを」

 

 スタッフの女性はそう言うと部屋を出ていく。

 

「シュヴァルツ、どういうことだ?」

 

 パイモンが強い口調でそう尋ねる。

 

「私にもわからん。どういうことなのか……」

「ま、相手の出方次第だな」

 

 いざとなれば抹殺しようと物騒な事を考えながら、バァル・ゼブルは勇者が来るのを待つ。

 五分も経たず、再度ドアがノックされる。今度はパイモンが返事をすると、ドアが開く。

 

「お久しぶりです。シヴァ・イルデさん」

 

 にっこりと、人の良さそうな笑みと共に部屋に入って来たのは長身の男、シュナイトだ。

 鎧の類は着けておらず。帯剣もしていない。白い無地の服を着用し、黒いズボンを履き黒い靴を履いている。

 碧眼の眼でシュヴァルツを見やる。

 

「どうも、お久しぶり……です。シュナイトさん。どうやってここを知ったので?」

「勇者としての権限を使わせて頂きました。勇者はあらゆる情報にアクセスする権限を持っていますので」

 

 何それずるい。シュヴァルツはそう思う。

 プライバシーという概念は無いのか、とシュヴァルツは抗議したくなるもみっともないのでしない。

 

「……貴女がシヴァさんとペイルさんの主ですか。初めまして、バァル・ゼブルさん」

「あ”?」

 

 バァル・ゼブルはシュナイトの言葉に苛立ちと共に返事をする。

 

 ──どうやって余の名を知った? 

 

 バァル・ゼブルは普段から隠蔽系の魔法道具(マジックアイテム)を装備している。

 どんな情報も隠す事が出来る最上位には一歩遠いが、それでも上位の隠蔽系アイテムを装備しているのだ。

 その装備効果で並大抵の占術系魔法や看破系特殊能力(スキル)を防ぐことが出来る。

 一目見ただけで相手の名を知るなど並大抵の魔法や特殊能力(スキル)で出来る事ではない。

 可能性は二つ。相手が高位の占術系魔法を行使する魔術師や看破系の特殊能力(スキル)の保有者である事。

 もう一つは理不尽の権化である──

 

「──貴様。勇者か。なるほどな」

 

 ──勇者であるかのどちらかしかない。

 

 

 勇者。IOOにおける最強に数えられる職業の一つ。

 それが持つ固有特殊能力(スキル)の一つに『鑑定眼』というものがある。

 これは相手のあらゆる対情報系、占術系魔法や特殊能力(スキル)を無視して相手の名前とステータスを見通す事が出来る特殊能力(スキル)だ。

 なんというぶっ壊れ特殊能力(スキル)か。対人戦、対モンスター戦両方においてこれ以上に強い特殊能力(スキル)は無いだろう。

 

 バァル・ゼブルは考える。どうせ称号としての勇者に過ぎないだろうと考えていたが、まさか本当の勇者とは。

 最悪、ソロモン(うち)の全戦力をもってかからないと此方が負けうると。

 

 

「……それで勇者。シヴァに──いや、余に何の用だ?」

 

 バァル・ゼブルは上位者然として対応をする。

 シュヴァルツとパイモンは両隣に行き、警戒の構えを怠らない。

 

「……私はこの国の未来について、貴女方と話がしたいのです」

「具体的には?」

「貴女方を……いえ。貴女が率いる勢力を正式に神聖王国に国として認めさせたいのです。人類以外の者達で構成された国家が生まれれば、国の上層部も考えを改めざる負えない」

「ほう……」

 

 バァル・ゼブルは自身の行動と似たものがある、と感心する。

 ソロモンは現状あらゆる種族に声をかけ、国造りを順調に進めている最中だ。

 

「……いったいどうやって認めさせるつもりだ?」

「それは勿論、話し合いで。貴女という象徴がいれば、話はスムーズに──」

「はっ」

 

 バァル・ゼブルはシュナイトの言葉を鼻で笑う。

 

「世の中、一番に来るのは力だ。対話等という甘い考えで動けば食われるぞ」

「……力は最終手段です。力は劇薬。良くも悪くも変えてしまう」

「見解の違いだな。こちらは力をもって行動を起こすぞ。勇者。貴様はどうする?」

「……その時は、力を持って防ぎます」

「やってみろ。だが、今は時と場が悪い……余は帰るとしよう」

 

 バァル・ゼブルは椅子から立ち上がる。

 

「ではな勇者。いずれ合うだろう。<転移>(テレポーテーション)

 

 

 バァル・ゼブルは魔法を唱え、その場から転移で消え去るのだった。

 

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