悪魔の王の異世界活劇   作:Revak

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第3話

 

 バァル・ゼブルは城の中庭にやってきていた。

 来たのは訓練設備がある方であり、庭には多数の者達が入る。

 

 造形は人間そのものであり。思い思いの恰好をしている。

 全身鎧を着た者。軽装鎧を着た者。ただの服を着ている者。

 服装には幾つか共通している点がある。紺色を基準にした鎧や服を着ているのと、胸元にソロモンのマークである邪悪な山羊を模した絵が描かれている。

 髪色も多種多様だ。黒色の者もいれば赤色の者もいるし、ピンク色なんて者もいる。

 

 彼ら、あるいは彼女たちは近衛騎士団の者達だ。

 総勢十二名のレベル百のNPC達。種族は中位悪魔で統一されている。

 戦闘力を重視して作られた者達ではなく外見を重視して創られた者達であり、言ってしまえば賑やかし要員である。

 その大半もバァル・ゼブルが作ったのではなくギルドメンバーが作ったNPCに近衛騎士であるという一文をバァル・ゼブルが加えた形になっている。

 

 そんな近衛騎士団は各々特殊能力(スキル)や魔法を発動し確認している。

 

 その光景を見たバァル・ゼブルは自身も能力を確認するかと移動を開始する。

 

 転移魔法は発動した。だが、それ以外の魔法は? 特殊能力(スキル)は? 

 

 藁人形の前まで歩いたバァル・ゼブルは先ずは魔法の実験を済ませることにする。

 王酌の先端を藁に向け、魔法を唱える。

 

 バァル・ゼブルは炎系統の魔法に特化した魔法使いだ。

 IOOでは一つの事に特化する魔法使いになる事が出来た。

 メリットは勿論ある。通常の魔法使いよりも決めた系統での魔法の威力上昇や消費MPの減少等がある。

 デメリットもまたある。決めた系統以外の魔法の習得が不可能になったり、あるいは使用しても通常より多くMPを消費する上威力も下がるなどだ。

 

<火炎球>(ファイヤーボール)

 

 唱えるはレベル四の攻撃魔法。

 拳大の火球が王酌の先に生まれ、高速で藁人形に飛んでいく。

 

 着弾。同時に爆発。

 

 半径十メートルにも及ぶ炎の爆発が広がる。

 結果、藁人形は無残にも焼き尽くされた。

 

「……次と行くか。<炎の柱>(フレイムピラー)

 

 指定した対象──藁人形があった地点に炎の柱が上る。

 炎は城の城壁以上に──三十メートル以上上る。

 

「魔法発動は問題ないな」

 

(魔法を使った事でわかる。己の中の魔力量も。使い方も。何もかもがわかる。ある種の万能感だな。飲まれぬよう気を付けねば)

 

 そしてバァル・ゼブルは次は特殊能力(スキル)だな、と意識を切り替える。

 

 バァル・ゼブルが持つ特殊能力(スキル)は多岐に渡る。

 常時発動型(パッシブ)特殊能力(スキル)で言えば炎吸収等がある。

 特殊能力(スキル)とは異なるが種族特性というのも持っている。人間以外の種族が持つ特性であり、此方もまた多岐に渡る。

 悪魔ならば疲労無効に飲食不要、暗視能力、物理ダメージ軽減、魔法的視力。悪魔言語理解。毒軽減、病気無効、睡眠不要、麻痺軽減、即死無効。呼吸不要。

 デメリットとして聖属性ダメージ倍化。聖属性エリアでの能力値低下というのがある。

 それら以外にも魔法道具(マジックアイテム)で得ている耐性や無効化もある。時間停止無効や行動阻害無効。窃盗耐性に視界封じ耐性等など。

 

 今回バァル・ゼブルが発動することに決めたのは種族特殊能力(スキル)──最上位悪魔の種族で得られる能力である悪魔創造の特殊能力(スキル)

 

<中位悪魔創造>

 

 闇が沸き上がり、異形が生まれる。

 

 山羊の頭部を持ち、人間の肉体と腕を持つ。足は羊。背中からは蝙蝠の翼が生えている全長三メートルの大男。

 その手には己の体程もあろうかという程の戦鎚を片手で握っている。

 ソロモンにも多数召喚モンスターとして配備されているレベル六十六の中位悪魔山羊頭の悪魔(ゴートヘッド・デーモン)だ。

 ステータスこそ高いが職業が初期職である為戦闘系の特殊能力(スキル)を余り有していない、精々が中盤に入りかけの時に戦える程度の悪魔だ。

 

<中位悪魔創造>は一日に二十四体までレベル七十までの悪魔を創造する事が出来る特殊能力(スキル)だ。

 下位能力に<下位悪魔創造>がありこちらはレベル三十までの悪魔を一日四十八体まで創造可能。上位特殊能力(スキル)である<上位悪魔創造>では百四十レベルまでの悪魔を一日十二体まで創造出来る。

 

「面白いな」

 

 バァル・ゼブルは呼び出した──あるいは創造した悪魔と繋がりを得たことを実感する。

 目に見えない感覚器官とも言うべきものが繋がっている。

 為しにバァル・ゼブルは思念を送る。両手を上げて見ろ、と。

 

 すると山羊頭の悪魔(ゴートヘッド・デーモン)は戦鎚を握ったまま両手を上にあげ、降伏のポーズをとる。

 

「なるほどな」

 

 バァル・ゼブルは山羊頭の悪魔(ゴートヘッド・デーモン)を送還するよう意識する。

 それだけで山羊頭の悪魔(ゴートヘッド・デーモン)は闇へと帰り、其処には何もいなくなっていた。

 

「まぁ、こんなものか」

 

 魔法の発動にも特殊能力(スキル)の使用にも問題が無い事を確認したバァル・ゼブルは転移魔法を唱え目的地へと転移した。

 

 

 

 

 ■

 

 転移したバァル・ゼブルの視界に本が映る。

 バァル・ゼブルが転移したのは城の図書館であった。

 図書館には様々な本が収められている。

 ゲーム内書籍からプレイヤーが独自発行した本。召喚NPCを用意するのに必要な巻物(スクロール)

 それ以外にも現実で著作権切れとなった漫画や小説にネット上で無料公開されているものをIOOが公式に許可を取りに行って会得した本が多数収められている。

 

 バァル・ゼブルは図書館を静かに歩く。何時もの様に王酌を着くような真似はしない。

 

 向かうのは娯楽本コーナーだ。天井まで届く程に高い本棚にはぎっしりと本が詰められている。

 

 バァル・ゼブルは適当に本を一冊選びとり、開く。

 内容は狐の獣人が怪盗をしている作品だった。

 ぱらぱらと流し読みしながら、バァル・ゼブルはこう思う。

 

 ──元の世界に帰る必要なくね? 

 

 

 娯楽ならゴエティア(ここ)にある。現実に即時帰還しなければならない予定も無い。

 

 両親は既に亡くなっているし、それ以外の血縁関係など無い。現実での親しい間柄の者など居ない。

 しいて言えばネット上の元ギルドメンバーなどだろう。彼らとはチャットツールを使って多少話す程度の仲があった。

 

 それ以外の衣食住についてバァル・ゼブルは考える。

 

 衣、衣服に関しては大量のストックがある。人間形態用の着替えだって二桁は軽くあるし、魔法道具(マジックアイテム)である為劣化などしない。

 足りなく成れば鍛冶長に作らせればいい。

 食。料理長が居るし大量の食料品もある。野菜の種や苗が宝物庫にある為森を開墾していけば植えて増やす事も可能。

 住。ゴエティアがある。これ以上無い程に最高の家が。

 

 結果として、バァル・ゼブルは元の世界に──地球に差し迫って帰りたいと思う理由が無かった。

 

 だが、この世界に居たいと思う理由も無い。

 

 現実の自分がどうなっているのか。生きているのか死んでいるのか。生きているならば植物人間となって寝たきり状態なのか。

 もしかりに寝たきり状態、VRヘッドセットを付けたままならば三日もすれば餓死するだろう。

 そういった細々としたことが気にはなるが、どうでもいいと言えばどうでもいい。

 

「さて、どうするか」

 

 本を棚に戻して、バァル・ゼブルは転移魔法を行使する。

 向かうは自室だ。

 

 

 バァル・ゼブルの──正確にはギルドメンバーたちの自室は豪華絢爛に作ってある。

 行ったことも無いホテルのスイートルールを模して作った部屋だ。

 寝室、客間、食堂、執務室にドレスルームと部屋が幾つも分かれている。

 調度品も豪華な物で統一されている。

 転移して入ったのは寝室であり、巨大なベッドが目に入る。

 

「まずは……」

 

 バァル・ゼブルは独り言を呟くと虚空に向かって手を振るう。

 

(インベントリどう開くんだ?)

 

 IOOにはプレイヤーにインベントリが実装されていた。

 所持できる量には制限があるが一ダンジョンクリアしても満杯になるようなことは無い程度には大きいインベントリだ。

 

「あ、こうか」

 

 そう言うと同時に腕が虚空に消える。

 試しに何かを──使い捨ての魔法道具(マジックアイテム)である巻物(スクロール)を取り出すよう意識すると手に巻物(スクロール)が握られ、虚空から腕を出すと実体化して出てくる。

 

(インベントリも問題なく使える、と)

 

 確認を終えたバァル・ゼブルはレベル11の魔法を発動できる最上位の魔法巻物(スクロール)をインベントリに戻してから投げうつようにベッドにダイブする。

 

「疲れた……」

 

 何故か配下の者達は目上の──最上位に敬意を払う者としてバァル・ゼブルを扱ってくる。

 そのことがバァル・ゼブルには重荷だった。自分はそんなに偉い人間ではない、と。

 そもそもギルドマスターをしているのだって誰もログインしてこなくなったから自動的に最後のメンバーであるバァル・ゼブルになっただけなのだ。ギルドマスターとしての仕事などしたことも無い。

 

「これからどうするべきだ?」

 

 バァル・ゼブルは自問自答する。

 

 

(第一にすべきは周辺の探索と他プレイヤーの捜索だよな。他のプレイヤーが居るのは確実だろ。俺だけが特別なんてことある訳が無い。敵対してくることは無いにしても警戒はしておくべきだな。

 次に周辺の探索だ。何があるのか調べて防衛ライン築いておくべきだ。後は人が居るかどうかも探さないとな。ギルドの維持はコアさえ壊されなければ問題ないしな。

 どうせなら自分じゃなくて配下を使うべきだな。探知系に特化したモンスターを使うべきだな。何が居たっけ。確かレベル四十の人の悪魔(ヒューム・デーモン)とかいたな。

 そいつらに森を探索させるか。いや自分だけじゃなくてオロバスと相談でもしながら決めよう。あいつ頭良いって設定にしたから妙案出すだろうし)

 

「よし。頑張るぞ」

 

 

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