悪魔の王の異世界活劇   作:Revak

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 前書き
 今回場面変換多いです。申し訳ございません。



第7話

 

 

 森妖精(エルフ)たちをソロモンの臣下、民として認めたは良いが問題が発生した。

 大きな問題は二つ。森妖精(エルフ)の住居と言語の問題だ。

 

 森妖精(エルフ)たちが使う言語とバァル・ゼブル達が使う言語は違う。唯一アリシャだけが両方の言語を仕える為通訳として使う事は出来るが、一人しかいないのも問題だ。

 その為バァル・ゼブルは問題解決の為再び宝物殿に訪れていた。

 

「たったこれだけか」

 

 バァル・ゼブルは差し出されたアイテムを見てそう呟く。

 宝物殿、ルキフグスの私室でバァル・ゼブルはルキフグスから差し出された首輪型の魔法道具(マジックアイテム)を手に取り観察する。

 それはダイヤモンドが付いた金のネックレス。名を上位言語理解のネックスレス(グレーターランゲージ・アンダースタンド)というレベル五の魔法道具(マジックアイテム)だ。

 IOOには多数の言語が実装されている。通常言語以外に森妖精(エルフ)語や洞窟小人(ドワーフ)語、古代文字にルーン文字等だ。

 それを単純に読めるようにする魔法にレベル四からあるシリーズの魔法が<理解>(アンダースタンド)系の言語理解魔法だ。

 勿論文字を記憶する事で自力解読も出来るが、普通は魔法や魔法道具(マジックアイテム)を使う事で言語を解析する。

 バァル・ゼブルは習得していない魔法であり、使う時は巻物(スクロール)で代用していた魔法系統だ。

 だが異世界に転移した事で巻物(スクロール)の入手が困難、あるいは不可能になった現在気楽に使う訳にもいかない為魔法道具(マジックアイテム)を求めて来た、という訳だ。

 

 バァル・ゼブルに差し出されたネックレスの数は六個。微妙な数だ。

 

「申し訳ございません。下位の魔法ならばあるのですが……」

 

 言語理解の魔法にも上位、下位の種類がある。

 

「いや。まずは上位だけで充分だ。下位の言語理解で通じるか不安だからな。感謝するぞ、ルキフグス」

「勿体無きお言葉」

 

 バァル・ゼブルは例を言うとネックレスを受け取り、転移魔法で目的地へ転移した。

 

 

 

 

 ■

 

 ゴエティアには多数部屋が存在する。

 娯楽用の部屋から客人用の部屋まで、多種多様だ。

 そんな多数ある部屋の一つ、応接間もまた豪華絢爛な作りとなっている。

 街で売ってた多分豪華なのだろう何処かの風景画の絵画。黄金で出来た単純な重量だけで金銭的価値が発生している壺。

 小さな棚も装飾が施された物であり、悪い見方をすればポリゴン数多くて重くなりそうだな、なんて思ってしまう作りだ。

 カーペットも朱く、紋様が描かれているふかふかの物が採用されている。

 

 

(お、落ち着かん!)

 

 そんな部屋の、これまたふかふかで体が沈みそうなソファーに座って人──悪魔を人と言っていいかわからないが──を待つのは森妖精(エルフ)のリーダーアリシャだ。

 アリシャだけは情報を提供する、という事でこの応接間に通されていた。

 他の森妖精(エルフ)たちはリリス案内の元客人用の寝室に案内されている。時刻も大人が寝るには早すぎる午後七時であった。

 

 そしてアリシャが何よりも落ち着かないのは、この部屋だけでなく部屋に居るメイドの存在もあった。

 これまた美人であり、されどこめかみから角が生え、臀部から先端がハートマークの尻尾が生えた異形であると主張するメイドを前に多少の安心感と混乱を抱いていた。

 アリシャは確かに森妖精(エルフ)のリーダー、族長という立場ではあるもののこのように持て成された事など無い以上混乱するのも無理は無い事であった。

 そもそもとしてゴエティアの設備や内装が神聖王国でも類を見ない程に豪華絢爛というのもある。そして森で原始的な暮らしをしている森妖精(エルフ)ともなれば猶更であった。

 

 ちらり、とアリシャは横目でメイドを見る。

 メイドという従者の存在もまた、アリシャが戦々恐々としている要因だった。

 メイドとしての仕草が完璧な、瀟洒なメイド。そんな人物が茶を入れ、茶菓子を用意しドアも開けてくれる。そんな対応をされるのも初めてな為困っていた。

 

 そこにこんこんと、ドアがノックされた。

 

 アリシャが立ち上がろうとするよりも速くメイドが動き、ドアの前に移動する。

 

「マラコーダです。入ってもよろしいでしょうか?」

 

 ドアの向こうからの名乗りに、メイドは畏まりましたと返事をしドアを開ける。

 入って来るのは異形の悪魔、四天王の地位に付いているマラコーダだ。

 

「失礼します。アリシャ殿。遅れて申し訳ありません」

「い、いえ。左程待っていないので大丈夫です」

 

 アリシャはしどろもどろになりながら対応し、遅れて言葉が自分の耳にもわかりやすい森妖精(エルフ)の言葉であることがわかった。

 

「失礼ですが、言語の方が……」

「えぇ。魔法道具(マジックアイテム)を装備させて頂きました。この話し合いで双方に齟齬があっては困りますからね」

 

 マラコーダは見せつける様に首元の金のネックレスをちゃりちゃりと揺らす。

 そしてそんな魔法道具(マジックアイテム)を知らないアリシャは恐怖する。魔法道具(マジックアイテム)作成能力でも圧倒的に上だと知って。

 

「では。情報収集と参りましょう。まず第一に、ここが何処か教えてくださりますか?」

「畏まりました」

 

 そうして二人の長い長い会話が始まった。

 

 

 ソロモンが転移したのは、終わりの森というこの世界の基準での高レベルのモンスターが生息する地域だ。

 平均レベルは四十代であり、確認された森から出て来たモンスターで最高レベルは五十レベルにも成るという。

 ただあくまでもこの世界基準で見れば高レベルという話であり、ソロモンの面々からすれば話に成らない程度の弱さのモンスターだ。

 

 そしてこの世界には国家が一つしかない。その国の名は神聖王国。

 四百年前に誕生した最初の国家であり、神聖王国以外の国家は存在しないという。正確には神聖王国周辺には国家という規模の知的生命体の集落が無い、というのが正しいらしい。

 神聖王国では人こそが至上という宗教国家であり、人以外は見つけ次第殺して周る事こそが正義と謳われている。

 その為に森妖精(エルフ)であるアリシャたちは複数に分かれて逃げ出した。

 アリシャたちと同じように別ルートからこの森に入った者達。終わりの森以外に希望を見出した者。あるいは故郷から逃げることなく残った者等が居る。

 神聖王国に話が戻ると、国土は膨大。貴族性を採用した国家であり、最高位に国王、下に五代公爵家が存在する。

 この終わりの森の近く──と言っても直線距離で百キロ以上離れている場所にバッケンという街がある。

 アリシャたちと山羊頭の悪魔(ゴートヘッド・デーモン)が遭遇したのは城から約九十キロ程離れた地点になる。

 終わりの森もまた広大であり、大陸を横断するかのように森が広がっている為この森以降を探索する事は出来ていない。

 

 森妖精(エルフ)という種族は、マラコーダが知っている限りIOOとの違いは無さそうだった。

 三百年の寿命を有し、人の基準での美貌を有する。金髪緑眼の外見を有し、弓の扱いに長けている。

 アリシャの容姿もまた金髪緑眼であり、スレンダーな体型であるが充分美しいと言える容姿をしている。

 

 

「なるほど。成るほど」

 

 マラコーダは時折メモを取りながら以上の事を頭に叩き込む。思ったより厄介だな、と。

 特に人類国家が一つしかないというのが問題だ。最悪の場合ソロモンとの全面戦争にまで発展しかねない。というよりまずなるだろう。人類以外を許容できぬ国家と悪魔の集団だ。

 

(これは早急に四天王とバァル・ゼブル様とで会議しなければ成りませんね)

 

 マラコーダはそう考え、夜も遅くなったので情報提供は終わりとなった。

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 翌日。昼の十二時。人ならば食事をしている時間に会議室に悪魔たちが集まっていた。

 悪魔は種族的に食事が必要ない。だが食事が取れないという訳ではない。IOOでは食事はバフを得る手段だったため、悪魔が食事してもバフ効果が得られないというシステムだった。

 会議が長丁場になる事を予想され、円卓の各席にはコーヒーが置かれ、茶菓子としてチョコクッキーもある。

 

 会議場に居るのは六人の悪魔だ。

 バァル・ゼブル。オロバス。マラコーダ。ファレルロ。リリスの前回の会議と同じ五名。

 そして新しい悪魔がいる。

 

 長身。バァル・ゼブルには及ばない百九十センチの体躯。

 外見は一見優男に見える。黒髪黒目の男であるが、優し気な瞳をしている。

 服装もまたきっちりとした物であり、服の乱れなど一切ない。

 名をセーレという最上位悪魔であり、職業はアークジェネラルという指揮関係最上位に付いている最後のレベル二百の悪魔だ。

 

「さて。今回の議題ですが森妖精(エルフ)たちの住まう場所と防衛についてです」

 

 オロバスが口を開き、会議が始まる。

 そして即、バァル・ゼブルが返答する。

 

「城ではダメなのか?」

 

 今いる森妖精(エルフ)の数は三十六人。その程度ならば城の寝室や客間等で事足りる。

 

「流石に城に住まわせるのは駄目かと。こちらの防衛的観点からしても悪手ですし、これ以上増えないとも限りません」

 

 今いる森妖精(エルフ)の数が三十六人というだけであり、これ以上増えないという保証はない。

 アリシャをリーダーとした一団以外にもこの終わりの森に来ているし、それらが合流するとなると人数もまた増える。

 そうか、とバァル・ゼブルは軽く返答し黙る。そういったことを考えれない以上これ以上下手に何か言うのは辞めた方が良いかと考える。

 

「ではまず森妖精(エルフ)たちの住処ですが、バァル・ゼブル様が臣下、民として扱うとのことですので首都の建設も併設して進めようかと思います」

 

 オロバスがそう言うとインベントリから地図を取り出す。

 

「こちらの地図はこの二日で配下の者達に作らせた物になります」

 

 ご覧ください、とオロバスは地図を広げる。

 非常に大きい地図だ。地図には城周辺、約五十キロ以内の情報が細かく書かれていた。

 

「そして森妖精(エルフ)たちの住処──何れ首都に成る予定地はここに作ろうと思います」

 

 オロバスはインベントリから宝石を取り出し、地図上に置く。

 そこはゴエティアから北西の地点だ。

 

「建設にあたってセーレからは建築能力を有するマルファスを。そしてバァル・ゼブル様にはシュヴァルツ=イルディッシュを借り受けたく思います」

「構わん。好きに使え。こっちで使う予定が出来たら使わせて貰うがな」

「畏まりました。ありがとうございます」

 

 オロバスは一度コーヒーを飲んでから、再度計画を話す。

 

「必要な住居や施設は森妖精(エルフ)たちと相談しながら建築していきます。また城の食料製造能力では数に不足も出るでしょうしマラコーダから棺の悪魔(コフィン・デーモン)とイビルツリーを二体ずつ、ドルイド能力を持つ者を貸し出させていただきたい」

「畏まりました。後で連れてきましょう」

 

 ゴエティアには一定量の食料品や錬金素材を作り出す能力を持っている。

 生成できるアイテムのランクは最高で四レベルで、微妙に使える程度の設備だ。

 だが森妖精(エルフ)達百人以上を食わしていく能力があるか、と言われると流石に無い。

 

 

 

 会議は綽綽と進み、問題なく終わりを迎えた。

 

 

 

 

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