勇者ってこう言う事じゃないと思うんだ。   作:ガガガッ!ガガガッ!

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俺達の武器は!勇気!正義!闘志!
お楽しみはこれからだ!


勇者が転生でやってくる。

 

 俺はいつの間にか、夢を見ていた……俺の目の前に映るのは、クレヨンで手を汚しながら紙に絵を描いているような少年だった。

 

 子供の頃住んでた懐かしい家で、ロボットアニメを見ながらテレビを見ながら、その子が真っ白なキャンパスに絵を描いていた。

 

 俺が、絵描きを楽しむ子供が……俺の目の前に映る子供が幼い頃の()()()だと理解するのに時間は掛からなかった。そうだ、俺は子供の頃は絵を描くのが好きな子供だったんだ。どんな絵を描いてたっけ……それはもう、記憶の彼方に取り残されてしまっている。

 

 そして、俺はこれが走馬灯の様な物だと理解する。頭に深く残った記憶が、頭の中で次々と流れ込んでくるからだ。

 

 生まれた日の事、喧嘩したこと、泣いたこと、笑った事、怒ったこと、嬉しかったこと……様々な記憶が俺の中に流れ込んでくる。

 

 (俺は死んだのか……?)

 

 湧き出たその疑問……これが走馬灯だと言うなら、この空間があの世だというのならそう考えるのが自然だ。

 

 だが、何故だろう。俺は何故だか妙に落ち着いていた……これと言って死んだ記憶がないからだろうか。

 

 覚えている最も古い記憶は、昨日普通に夜飯を食べて、風呂に入って、両親に挨拶して、寝て……それだけだ。死ぬようなことは何も起きてない。寝てる間に何か起きたのかましれないが、全く持って見当がつかない。

 

 俺が困惑し、何の実感も持てないままでいる……すると、俺の頭の中に声が響いてきた。頭痛がするほど、脳の芯から響くような声だ。

 

「いいや、君はまだ死んじゃいない。」

 

 その声が聞こえると、絵を描いていた幼い俺が立ち上がる……と同時にその姿は、まるで陽炎が重なるように、その姿は変わっていく。

 

 やがて目の前の子供の頃の俺は、銀色の髪をした……少なくとも現実では、いや二次元でもそうそう見たことがないような美少女へ変わってしまった。

 

 そのあまりの美しさに、見惚れるよりも先に若干の恐怖が生まれてしまうほどに。

 俺は、ただでさえ意味不明なこの状況に重ねがけされた意味不明さに、数拍唖然としてから思わず目の前の少女に声を掛ける。

 

「っ!?あんた一体だr」

「私は神だ。」

 

 食い気味で答える神……神!?

 神って……ゴッド!?

 

「神っ!?貴方何言ってr」

「君には、やるべき事がある。」

 

 いや、なんでちょっと食い気味なんだ!?やるべき事!?

 

「いや、やるべき事って……そんな事よりも、一体何がどうr」

「君には異世界に行って、その地で邪智暴虐の限りを尽くす魔王を倒す『勇者』となってほしい。」

 

 ちょっ、話聞いて――

 

「いや、勇者になれって――少しくらい説めr」

「勿論、君には力を与えよう。勇者としての力をね。転生特典って奴さ、分かるだろ?テンプレさ。」

 

 あの、いや、ラノベ見たいな展開だって事は分かった。せめて話させて欲しいなぁ……

 

「いや、分かるは分かるんですけr」

「いやぁ、君は物わかりがよくて助かるな!長ったらしい説明は嫌いなんだ!感心感心!」

 

 いや、貴方が俺の話聞いてくれてないだけなんですがそれは……本当に説明がないと何が何だか分かんないんたけど!?

 

「すみません!せめて俺になr」

「さて、無駄話を長々しててもしょうがない!

 

 いや、無駄話じゃなくて最低限の説明すらされてないんですけど俺!?つかなんなんだアンタが持ってるそのボタン!?自爆スイッチか!?

 

「あの!?だかr」

「君が魔王を倒してみせた時に、また逢おうね。」

 

 そう言って目の前の自称神は、取り出していたボタンを押す……すると、俺の足元がガタッと言う音と共にまるで落とし穴のように開く。

 

 俺は有無を言わさずに、足元にできた穴へと吸い込まれるように落下していく事となるのだ。

 

 ……いや!?一切話聞かねぇんだけどあの神!?最後の方ほぼ喋らせてもらえなかったんだが!?

 

 

 訳の分からない急展開……出来の悪いネット小説だと言われたほうがまだ納得できるような現実に、俺は怒りと困惑を覚えながら、遠ざかる穴を見つめてその意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神と名乗った美少女は、男を穴へと落っことした後に、先ほどまで描いていたキャンパスを手に取り、中の絵をのぞき込む。

 

 そこに描かれていたのは、青と白を基調にしたロボットへ変形するオオカミを始めとした、拙くとも楽しそうに描かれていた様々なロボットのイラストだった。

 

 その絵は、本人が覚えているのかはしらないが、紛うことなく男が幼い頃に描いていた物だった。テレビからは、あいも変わらず懐かしいロボットアニメが流れている。

 

 神は、そのキャンパスに描かれた絵をじっくりと眺めながら少し笑ってつぶやく。

 

「いいセンスだ。『大門大我《ダイモンタイガ》』……やはり君は、勇者になれる!」

 

 そうつぶやけば、神はキャンパスをめくって新たな白紙のページを取り出すと、机の上に置かれたクレヨンを取って、鼻歌を歌って絵を描き出すのだった。

 

―――

 

 

 

 

 

 

 『大門 大我(ダイモン タイガ)』年齢19歳。ロボットアニメ――取り分けスーパーだったり勇者だったりなシリーズ――が好きな大学生。

 

 いつの間にか理由のわからない場所で神と名乗る理由のわからない存在に異世界へと転生させられた、哀れな青年である。

 

 さて、異世界転生のテンプレに巻き込まれた彼……タイガ。彼が目を覚ましてはじめに目にしたのは……

 

GRUUUUUUUUU!!!!

 

 

 

「……?……??……????」

 

 

 

 森の中に佇む青と白を基調とした、()()()()()()()()メカニカルで巨大なオオカミだった。何処かで見たような……しかし、見返してきたロボットアニメにはあんなのは居なかったはずだ。

 

 大我はじっと見つめてくるそのオオカミに、何を血迷ったのか思わずそっと声をかけてみる。

 

「や……やぁ!」

 

 なぜこんな事をしたのか……それは、大我の中にある目の前のオオカミへの既視感と、彼のロボット好き魂が呼び出した行動と言っていいだろう。

 

 ……その機械の大狼は、大我の挨拶に対して大きく遠吠えした。

 

WOOOOOOOOOOOON!!!!!

「っ!!」

 

 大我がその咆哮に耳をふさぐ……

 そして次の瞬間……そのオオカミはその大顎を開いて、大我をその口の中に入れようとしてきた。

 

ウオォ!!!ヤベェェェェェ!!!!!

 

 当然、大我はその場から走って逃げた。目の前にいる巨大なロボットに食われそうになって落ち着ける人間はこの世に居ないだろう。

 

WOOOOOOOOOOOON!!!!!

 

 だが、そのオオカミのロボットは必死で逃げる大我を問答無用で追いかけてくる。

 

「ちょっ!?な、なんで追いかけてくるんだよ!?」

 

 突然わけのわからない場所に飛ばされたかと思えば、わけのわからないロボットに追われ、わけのわからないまま死ぬ。そんなのは冗談ではないが……

 

 大我は人並みよりかは運動できる方だが……そんな大我でも、巨大なオオカミに追いかけられれば一分も持たない。

 

 大我の脳裏には、先程まで感じられなかった死の予感がよぎる。必死に逃げる大我……しかし、そのオオカミとの距離はどんどん近づいていく……

 

(も、もう駄目だ!)

 

 早くも、大我がそう諦めそうになった次の瞬間……天から一体の鉄の塊が降りてくる。

 

「うわぁっ!?次はなんだよ!?」

 

 それは、10mほどの甲冑を模したロボット……そう表すのが、一番しっくりくる鉄の巨人だ。

 

 オオカミは大きく吠えると、そのロボットへと大顎を上げて噛みつこうとする。ロボットは片腕をオオカミにかませて、その空いたその胴に拳の一撃を加える。

 

 オオカミはキャインと甲高く鳴くと、もう一度立ち上がるが、鉄の巨人は腰に携えた剣を引き抜いて、飛びかかってきたオオカミへ一撃を与える。

 

 オオカミは大きくふっとばされ、地面を転げ回る……次にそのオオカミは立ち上がるが、その目には闘志は無く、()()()()()()()()()()()()森の奥へと逃げていった。

 

「た、たすかった…………のか?」

 

 大我はそう言って腰を抜かして地面に座り込む……しかし、命が助かったと言うのに、なぜだか心の奥はスッキリしない。

 

 あの見覚えのあるロボットのオオカミ……あの悲しげな仕草。どうにも心の奥に何かが引っかかる。何か、忘れているような気がしてならないのだ。

 

 大我はそっと目の前に佇む巨大ロボットを見上げる……しかし、あのオオカミのロボットといい、この鉄の巨人と言い、大我の心には変わらない一つの思いが浮かんでいた。

 

(かっけぇぇなぁぁぁ………!!)

 

 先程まで死にかけたにしては随分と余裕のある感想……しかし、カッコいいものはカッコいいのだ。仕方がない。

 

 

 大我がしばらく唖然としていると、そのロボットが膝をつく……そして、胴体が開き中から人が現れる。

 

「アンタ!大丈夫か?」

 

 そう言って声を上げるのは、銀色の髪を持った顔に傷をつけた鎧を着た少女だった。

 

 

 

 

 

 

 銀髪の彼女の姿を見て大我は真っ先に思い出すことがある。

 

 

 ――あの人の話を聞かない自称神だ。

 

「銀髪……女の子……うっ、頭が……」

「大丈夫か!?頭を打ったのか!?」

 

 慌ててロボットから飛び降りて駆け寄る少女……どうやら、大我にとってあの自称神との滅茶苦茶なやり取りは、トラウマになるほどの事だったらしいのだった。

 

 

 

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