不良少年は飯食って喧嘩して、ボーダーに入るそうです   作:綾(あや)

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あんま文字数ないですね…


一戦やって、また一戦

 

太刀川との戦いが終わり、遊真たちの正式入隊日。遼平は遊真たちの様子を見に行くという名目で、本部のラウンジでだらだらしていた

 

「よー修、遊真と千佳はどんな感じ?バレてねーよな?」

 

「瓦木先輩、こんにちは。空閑は訓練で目立っていますけど...千佳は狙撃手の合同訓練です」

 

修と遼平の視線の先では、トリオン兵を相手にした模擬戦訓練で0.6秒という異例の記録を出していた遊真が他の訓練生に囲まれていた。

 

「ははは、確かにすげー目立ってんな!」

 

ヘラヘラ笑う遼平を横目で見つめる修は、「この人...自分が目立ってるって知らないのかな...」と疑問を浮かべていた。それもそのはず、遼平は遊真と同じように異例の記録を訓練で叩きだし、更にはそのガラの悪い見た目で影浦とやり合っていたことから、遊真以上に目立っているのだが、それは本人は知らなかった。

 

「よう修、それに遼平も」

 

「とりまるじゃん。久しぶり」

 

「遼平、問題行動は起こしてないか?」

 

「てめーは俺の保護者か」

 

二人が何やら言い合っているところに、A級3位、風間隊の隊長、風間蒼也が歩み寄った。そして風間は三雲に模擬線を申し込んだ。会場がざわめく中、瓦木は静かに風間の目を見ていた。そして試合は一方的な展開で、風間の透明化のトリガー『カメレオン』により、修は何もできないまま24本を取られた。

 

「あーあ、負けてんじゃねーか」

 

「遼平、お前なら風間さんをどう倒す?」

 

「んなもん簡単だろ、出てきた瞬間殴る」

 

寝転がりあくびをする瓦木を横目で見ている烏丸は、再び試合に目を移した。しかしそこには覚悟を決めたような目をしている修の姿が見えた。修は訓練室のトリオン切れがないことを利用すると、超低速のアステロイドで埋め尽くし、動きを制限。そして突っ込んできたところにレイガストで壁に押し込み、至近距離でのアステロイドをブッ放した。誰もが倒したと思ったが、ギリギリでスコーピオンを修の心臓部に刺したため、相打ちになる。風間は修の戦略と性格を分析して、帰ろうしていた。

 

しかし、それを遮るように瓦木は一歩前に踏み出し、鋭い眼差しを風間に向けながら、言い放つ。

 

「テメェも、あん時いた奴だろ? 俺ともやれよ」

 

その言葉に修と遊真、烏丸さえも驚いた表情をするが、風間はその言葉を聞くと、一瞬だけ驚いた表情になるも

 

「……いいだろう」

 

「さっすがー、やろうぜ」

 

と、短く返答する。瓦木の声には、過去の戦いから培った自信と、次なる挑戦に対する覚悟を感じたためだ。

 

その返答を聞くと、瓦木は余裕な表情で、軽く笑いながらもその目は鋭く、まるで敵の一挙手一投足を全て見透かすかのように輝いていた。

 

 

 

--

 

 

 

そして、戦闘開始の合図とともに、瓦木は一気に接近。スコーピオンで覆われた拳を振り回し、風間に向け乱暴に放つ。風間は少し動揺するも、即座に反応し、『カメレオン』を発動。まるで幽霊のようにその姿を消し、次の瞬間には完全に気配を断ち切っていた。

 

瓦木は、敵の姿が消えた瞬間、辺りを見渡しながらも冷静さを失わなかった。

 

「なるほど、ダリーもん持ってんじゃねーか…でもな」

 

内心で微笑むように呟くと、背後のわずかな気配の変化を感じ取り、瞬時に横へ飛び出す。だが、そのとたん、風間の鋭い刃が空を斬るように放たれる。

 

「チクチク削るつもりか?つまんねーぞ!」

 

瓦木は攻撃の軌道を予測し、さらに素早い身のこなしで回避。すぐさま反撃に転じ、スコーピオンをより大きく、より強固に展開。拳が風を切る音が響き渡る中、風間の軌道を塞ぐように、瓦木は全身の力を込め蹴り飛ばした。その瞬間、風間は避けられないと悟ると、自らの体勢を微妙に調整し、肩に少し掠れる程度の最低限の動きで攻撃を受ける。再び、カメレオンを起動し、瓦木の視界から消えた。

 

「ッチ!またかよゴラァァ!!」

 

瓦木の声が戦場に響く中、両者の攻防は激しさを増していく。瓦木は、これまで培ってきた戦闘感覚と経験を余すところなく発揮し、研ぎ澄まされた攻撃と乱暴な動きにより、風間の一挙手一投足を全て潰していく。だが、風間もまた、長年の実戦で鍛え抜かれた戦術眼で瓦木の攻撃パターンを分析し、内心でこう呟く。

 

 (この動き...もはや技術ではなく、本能や感覚そのものだ。だが、コイツは...いや、コイツの攻撃には、計算された意志と野性味が同居している)

 

 様々な隊員と戦い、戦い方を見てきた風間でさえも、心の奥底では瓦木の喧嘩じみた戦い方に対する驚きを隠せなかった。普段は整然とした技と緻密な戦略を持つ彼にとって、瓦木の攻撃はあまりにも生々しく、直情的であった。だが、その裏に潜む、驚異的な反射神経と身体能力は、風間自身も認めざるを得ないものだった。

 

 瓦木が攻撃を仕掛けるたびに、その動きはまるで荒々しい拳闘のようにぶつかり合い、模擬戦というよりも、まるで狩りを行う獣のようだった。修たちは、その激しさにただただ目を見張ることしかできなかった。

 

そして、風間が攻撃体制に入り、透明化を解除すると、瓦木は瞬時に反応。回し蹴りが放たれ、風間の体勢を突き崩す一撃が放たれた。

 

「オラァ!」

 

風間は即座に回避を試みるが、その予想を超える速さで瓦木の攻撃が迫る。蹴りが風間の腕をかすめ、トリオン体の一部が削れる瞬間、風間は瓦木が自分とやり合えるどころか、倒す可能性があることを感じた。そして風間は再びカメレオンを起動しようとするが、瓦木は両手を広げていた。それを見た風間は、フッ、と小さく笑みを浮かべ、カメレオンを起動せず、瓦木に堪えたように真正面からぶつかり合った。

 

その間、瓦木は攻撃の隙を狙いながら、感覚と勘に頼った動きで相手の攻撃を読み取っていた。体中に染み付いた経験と、喧嘩のような荒々しい戦闘感覚が、彼に一瞬の隙を与えたのだ。

 

風間は、息を潜めながらも自らの心を落ち着け、内心で分析する。

 

(やはり俺の攻撃を見切り始めているのか?...いや、むしろ、俺が崩れ始めているのかもしれない。コイツの動きは、予測不能な野生の本能そのものだ。だが、ここで負けてやるつもりもない!)

 

その瞬間、瓦木の表情に凛とした決意が浮かび上がる。彼は自らの内に眠る全ての力を振り絞るかのように、声高らかに叫んだ。

 

「お前は強ぇけどよ……太刀川に比べたらまだまだだ!!熱がねぇ!!」

 

この叫びと共に、瓦木は全身に力を込め、手のひらから出したスコーピオンを激しく地面に突き刺す。そして固定された自身の体を全力で下げ、反動を利用して超高速の地面スレスレからドロップキックを放った。

 

風間は、瓦木の狙いに気付くが、あまりにも速い動きに反応する暇もなく、両足を切られ体勢が崩れた。そこに瓦木の渾身の一撃が、風間のトリオン体に直撃。間一髪でシールドを張ったため、活動限界にはならなかったが、その直後にもう一つの腕で放った拳が風間の鳩尾に食い込み、轟音とともにその体が砕け散る。

 

その一瞬の静寂の後、瓦木は勝利を確信するように低い声で呟いた。

 

「一本勝負、俺の勝ちだな」

 

会場は動揺に包まれていた。観戦していた修たちは勿論のこと、驚愕と興奮が混じった表情を浮かべ、風間隊の者たちもただただ固まっていた。だが、倒れた風間はすぐに静かに立ち上がり、瓦木の方を見据えた。そこには敗北を認める冷静な眼差しが宿っていた。

 

「...いい戦いだった」

 

短く呟いたその声に、瓦木もまた手を振る。風間も後ろを向きながら手を振ると、背を向けてゆっくりとその場を後にした。

 

 

 

--

 

 

 

風間隊との戦いを終えた修は、一人の少年に声をかけられた。

 

「おー、君が三雲くん? 俺、緑川駿。よろしくな!」

 

明るい笑顔を見せる少年は、遊真と同じくらいの背丈で、軽やかな身のこなしをしていた。修が自己紹介を返すと、緑川は興味深そうに修を眺めた。

 

「風間さんとやり合ったんだって? すげーじゃん!」

 

  修は謙遜しながらも、内心では緑川の人懐っこい態度に少し驚いていた。すると、緑川は突然、修に模擬戦を持ちかけた。

 

「なあ、ちょっと俺と模擬戦しない?」

 

修は戸惑いながらも、久々に行ういい機会だと感じ、頷いた。しかし、模擬戦の結果は散々なものだった。

 

「うわっ!」

 

 緑川のスピードについていけず、修は一方的に攻撃を受け続ける。何とか攻撃を仕掛けようとするものの、緑川は軽々とかわし、そのたびに容赦なく攻撃を叩き込んだ。

 

「うーん、やっぱこんなもんか」

 

緑川は腕を組んで肩をすくめ、期待外れと言わんばかりな声を上げる。それを見ていた隊員は修の実力を疑い始め、修にとってはあまり良い空気とは言えなかった

 

「...この観客、お前が集めたのか?」

 

その様子を見ていた遊真が、静かに口を開いた。緑川は遊真を見つめる

 

「いや?風間さんと引き分けた話題に釣られたんでしょ」

 

「オマエ...つまんない嘘つくね」

 

遊真の鋭い指摘に、緑川は寒気と同時に少し驚いたように目を瞬かせる。

 

「じゃあ、おれとやろうぜ。勝ったら修のことをセンパイと呼んでもらう」

 

こうして遊真と緑川はブースに入っていった。

 

戦いが始まると、緑川は一瞬で遊真との間合いを詰め、両手に持ったスコーピオンで高速の斬撃を放つ。遊真は最小限の動きでかわすも、緑川により上半身を切られ、緊急脱出する。

 

「動きは悪くないけど...ねっ!」

 

その後2本目も遊真は競り負け、緊急脱出。

 

スコアは2-0となり、緑川は勝利を確信する。しかし、その考えは三本目で打ち砕かれるのであった。

 

一方その頃、瓦木は別の場所で影浦と対峙していた。

 

「はッ、風間さんに勝ったからって調子乗ってんじゃねーだろなァ!」

 

「テメェこそ俺の方が強くなってる事実に焦ってんじゃねーのかァ!?」

 

瓦木が構えると、影浦もスコーピオンを両手に展開した。

 

影浦の攻撃は鋭く、それでいて精密だった。マンティスを活かして、瓦木を間合いに入らせずにスコーピオンで先回りするように斬り込んでくる。

 

「ッチ!戦い方がヒヨってんじゃねーのか雅人ちゃんよぉ!」

 

瓦木はすぐに態勢を立て直し、壁を蹴り接近しながら応戦する。しかし、影浦の攻撃は瓦木の攻撃をかわしつつ、突き込まれる。

 

「うざってぇな!」

 

「おらおら、そんなんじゃ俺は倒せねぇぞ?」

 

影浦は笑いながらも、スコーピオンの形状を瞬時に変え、瓦木の攻撃をギリギリで回避するが、瓦木も負けじと食らいつく。突然スコーピオンを背後に投擲し、壁に突き刺さると、伸びてきたスコーピオンを踏み台にして急加速。影浦の予測を一瞬だけ狂わせると、狙いすました一撃を繰り出した。

 

「おっ? いいねぇ!」

 

 影浦はギリギリで回避したものの、瓦木の動きに目を細める。

 

「ほら来いよ遼平、ここ突き刺せば終わりだぜぇ?」

 

「あぁ!?」

 

 影浦は胸の箇所をトン、と叩き見え見えの挑発をする。瓦木はそれにより闘志をむき出しにする。影浦と更に激しくぶつかり合い、戦いはまるで血みどろの決闘のように激化していった。

 

瓦木はスコーピオンを投げ捨てるようにして影浦の注意を逸らし、その隙に足元からもう一本のスコーピオンをかかとから伸ばし、蹴り上げる形で影浦を狙った。しかし、影浦も即座に気づき、スコーピオンを地面に突き刺して強引に軌道を変え回避する。

 

「っだー、マジかよ! いい感じだったのに!」

 

「やるじゃねぇか!」

 

 影浦は瓦木の意表を突く攻撃に興奮しながらも、最後の決め手を狙いにいく。

 

そして、決着の瞬間が訪れる。

 

影浦が大胆に踏み込んだ瞬間、瓦木はスコーピオンを右の拳に展開する。しかしそれはフェイントであり、本命は左拳だ。影浦が右腕を警戒した一瞬を突くように、瓦木は左の拳で殴りかかった。

 

「甘ぇ」

 

しかし次の瞬間、影浦のスコーピオンが瓦木の胸元を貫いていた。

 

「…野郎!」

 

瓦木のトリオン体が砕け散り、戦いは影浦の勝利に終わった。

 

「……何この人たち」

 

「うん、さすがリョーヘイって感じ」

 

緑川と遊真は、戦いを終えた後に横のブースで戦闘を行っていた瓦木と影浦を見つめ、どこか引いたような表情を浮かべていた。





風間さんに勝ててカゲに勝てないのは、風間さんは動きに整合性があり、遼平の戦い方とは相性が悪いからです
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