不良少年は飯食って喧嘩して、ボーダーに入るそうです   作:綾(あや)

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むずいー!


似た者同士、連戦連勝

 

 

数日後、遼平は本部の屋上で寝ころんでいた。他の隊員はこの時間は学校にいることがほとんどだが、遼平は抜け出していた。

 

「よう、遼平」

 

「あー?迅さんじゃん」

 

寝転んでいる遼平の横に腰を下ろしたのは、迅悠一。彼がボーダーに入隊するきっかけを作った男だ。

 

「んで?何か用かよ、わざわざアンタが話しかけに来たってことは何かあんだろ」

 

「ははは、まぁね。遼平...無茶だけはするなよ」

 

「俺がか?はッ、なわけねーだろ」

 

迅の意味深な発言に眉間にしわを寄せるが、その言葉を一蹴する。第一自分は無茶をした覚えもしなければならないことをした覚えもない。

 

「ならいいんだ」

 

そう迅が言い、遼平も昼寝を続けようとした時だった

 

「おわ!?なんだぁ!?」

 

突如物凄い数の門が発生、その数は普段とは比べ物にならない程増加していた。ボーダー本部からの警告が、響り響く。

 

「迅さーん?説明しとけよこのヤロー」

 

「遼平にも説明しとけばよかったかもな」

 

しかしここで話していては時間の無駄、そう感じた遼平は生身で屋上から飛び降り、空中でトリガーを起動すると、市街地の先を見つめた。

 

現れているのは、無数のトリオン兵。

 

「バムスター、モールモッド...おいおい、いすぎだろ」

 

迎撃に当たろうとしたところ、本部からの通信が入る。

 

『瓦木隊員か?こちら忍田だ。』

 

「あーはいもしもし?今忙しいんすけど」

 

モールモッドの攻撃を避け、足を引きちぎると無防備となった眼球に拳を放ち、更にその横のバムスターをモールモッドをぶん投げ体制を崩す。

 

『すぐに応援が来るはずだ。その部隊と一緒に迎撃に当たってくれ』

 

「え、その部隊って」

 

そして目の前のトリオン兵を倒そうと一歩踏み込んだ時だった。

 

「苦戦してるかァ、遼平よォ!!」

 

頭上から勢いよく振ってきた影浦がスコーピオンでトリオン兵を突き刺した。

 

「...うわ、お前かよ」

 

見るからに不機嫌な顔になる遼平だが、自分だけ暴れさせまいと、勢いよく飛び出した。

 

「ゾエ、ユズル、オレが叩きのめすからオマエらは後方から頼む」

 

「俺をハブってんじゃねーぞチリチリゴラァァ!!」

 

影浦が足を崩し、その隙に遼平が飛び蹴りで目を突き刺す。そして風を切る音とともに、瓦木は一直線にバムスターへと向かう。

 

「邪魔だ」

 

右手のスコーピオンを鋭く振るい、バムスターの装甲に斬りつける。バムスターの装甲は捕獲を用途としているため厚い。だが、この目の前の不良少年にはその程度問題ではなかった。

 

「はい、一体」

 

真正面からバムスターを叩き壊すと、背後からのモールモッドによる奇襲を予測し、宙返りして回避。瓦木の動きを見ていた影浦が、スコーピオンのブレードをしならせ、モールモッドを正確に貫いた。

 

「俺の獲物だぞカゲテメェ」

 

「ハッ、獲られたヤツが悪ィ」

 

だが、言い合いをしているその間にも、複数のトリオン兵がこちらに迫ってくる。

 

『邪魔すんじゃねーよこのボンクラ共がァ!!』

 

言い合いをしていた二人だったが、それを邪魔され激高。影浦のマンティスによる攻撃と瓦木の乱暴な一撃が、一気にトリオン兵の大半を吹き飛ばした。

 

「二人とも似た者同士だねぇ...メテオラっと」

 

影浦隊の射手、ゾエの放った無数のメテオラが、残りのトリオン兵を撃ち砕く。さらに、その隙を突いてユズルの狙撃が一体のトリオン兵を撃ち抜き、僅か1分程度で殲滅した。

 

「これだけか...ア?」

 

だが、次の瞬間、新たな敵影が現れる。

 

「...なんだ、あれ?」

 

今まで見たトリオン兵とのどれとも違い、異様な存在感を放っていた。そして新型トリオン兵、ラービットは影浦に突貫した。影浦はサイドエフェクトでは感知できなかったが、横に身を返しその一撃を避ける。背後の家はラービットによりバラバラに砕けており、通常のトリオン兵とは比べ物にならなかった。

 

「死ねや」

 

瓦木は瞬時にスコーピオンを纏い、右腕を振るった。しかし、ラービットは攻撃を右腕で受け止め、少し砕けた程度であった。そして影浦が援護に入ろうとした瞬間、逆に影浦の死角へと潜り込んでくる。

 

「あ?」

 

寸前でバックジャンプし、攻撃を避ける。影浦に追撃を行おうとしていたラービットだが、当然遼平はそれを見逃すはずもなく、すかさずスコーピオンを投擲した。

 

ラービットの肩口に突き刺さるが、それでも動きを止めない。

 

「しつけぇな、こいつ」

 

苛立ちを隠さなまま正面から向かい合う遼平だが、突如として影浦の顔色が変わる。

 

「遼平!避けろ!」

 

反射的にその言葉に従った遼平は、すぐさま距離を取る。するとラービットの体から触手のようなものが出る。

 

「隙だらけだ馬鹿が」

 

しかし遼平はその隙を見逃さず、ラービットの剝き出しになっている心臓部に拳を放つ。するとラービットは黒い煙を立てたまま、倒れた。

 

「次」

 

遼平が二体目のラービットに視線を向けた瞬間、足元に黒いポータルが出現し、そのまま遼平を飲み込んだ。

 

 

 

--

 

 

 

遼平がポータルから出ると、そこは先程とは数km離れている市街地だった。

 

「おいおい、どういうこった...んでお前は誰だ」

 

遼平の視線の先には、黒い液体が広がり、不定形に蠢く。それがゆっくりと一つの形へと収束し、やがて長身の男の姿を作り上げた。

 

「ケッ、玄界の猿が俺様に喧嘩売るってのかよ。いい度胸じゃねえか?」

 

エネドラは不敵に笑いながら腕を組む。全身を覆う流動する黒いトリオン体──"泥の王(ボルボロス)"が、じくじくと揺らいでいた。

 

「ははは、ブッ潰す」

 

その挑発が見事にクリーンヒットし、一気に接近し拳を叩きこむ。更に首を掴むと膝蹴りを顔面に叩きこみ、そのまま吹き飛ばした。

 

「おいおい、野蛮じゃねーかヤンキー猿」

 

しかしそれに堪えていないのか、エネドラはすぐに再生する。瓦木は舌打ちしながら、何度も首を跳ね飛ばす。

 

「無駄だ。オレに攻撃は効かねぇ。お前みたいな雑魚じゃどうしようもねぇんだよ!」

 

エネドラは言葉と同時に腕を振るうと、黒い刃が瓦木の足元から出現し、瓦木を一瞬で両断せんと迫る。

 

「テメェこそ、案外しょうもねー戦い方するんだな」

 

瓦木は天性の感によりその攻撃を避けると、スコーピオンを振るい、瞬時に回避しながら近接戦を挑む。再びエネドラの体は容易く崩れ、攻撃が空を切る。しかし、先程とは違う手応えを感じた遼平は、ニヤリと口角を上げる。

 

「おいオカッパ野郎、焦ってんな?」

 

「チッ!クソガキが!!」

 

エネドラの攻撃が横薙ぎに振るわれ、瓦木に迫る。しかし、直撃する寸前、瓦木は視界から消えた。

 

「あ!?」

 

エネドラが驚愕する間もなく、頭上に気配。瓦木が殴りかかろうとしていた。

 

「テメェの攻撃を利用させてもらったわ。そりゃあ当てられたくない部分は隠すよなぁ!?」

 

瓦木の拳はエネドラの急所をしっかりと捉えているかのように振るわれた。しかし瞬時に"泥の王"が反応し、エネドラの体は液状化。だが、その瞬間、エネドラの頭を掴んだ。

 

「バカが、逃がすかよ!」

 

「!? クソ猿がァ!」

 

頭を砕かれたエネドラは、視界が黒くなる。再生可能とはいえ、多少の時間がとられる。当然その隙を見逃すはずもなく、急所に拳を叩きこんだ。

 

「ぐッ!」

 

エネドラの右腕が砕けたのを見て、瓦木は不敵に笑った。

 

「さて、そろそろ終わりにしようぜ」

 

エネドラは咄嗟に液状化し攻撃を避けようとするが、動きが鈍くなっていた。瓦木は一気に踏み込み、渾身の一撃をエネドラの胸部へ叩き込む。

 

「っが…!」

 

エネドラの身体が大きく吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。

 

「クソ猿がァァ!!」

 

エネドラはトリオン体が崩れ落ちる、瓦木はゆっくりと息を吐いた。

 

「はッ、んじゃそれよこせ」

 

エネドラの手首に巻いてある黒トリガー、"泥の王(ボルボロス)"を奪い取った。生身のエネドラに抵抗する術はなく、あっさりと獲られてしまった。

 

瓦木はすぐに別の場所へ移動しようとしていた。市街地では依然として激しい戦闘が続いていた。ボーダーの隊員たちはそれぞれの持ち場で敵と交戦し、猛攻を耐え凌いでいる。

 

(まだ終わりじゃねぇな)

 

エネドラが地に伏し、黒トリガー"泥の王(ボルボロス)"を失った瞬間。

 

戦場の空気は、一変した。

 

「やれやれ、まったく……役に立たないな」

 

冷静な声が響く。

 

戦場を支配するような圧倒的な威圧感だが、瓦木はすぐさま構えた。

 

ゆっくりと歩いてくるのは、黒いローブを纏った長身の男。

 

アフトクラトル遠征部隊の司令官――ハイレイン。

 

「だが、意外だな」

 

ハイレインの視線が瓦木へ向けられる。

 

「オマエ一人でエネドラを討ったのか」

 

その目にはわずかな驚きと、そして興味が含まれていた。

 

瓦木は肩で息をしながらも、スコーピオンを展開し、構えを解かない。

 

「だったらなんだよ、俺がお前を倒して、人型近界民狩りの称号、まだ更新するつもりなんだよ!」

 

その瞬間、瓦木が一気に間合いを詰めた。

 

「ほう……面白い」

 

涼しげな顔で一歩引くハイレインに拳を振るうが、スコーピオンがトリオンキューブへと変わったのだ。

 

「あ?」

 

瓦木は即座に跳び上がり、回避。だが、ハイレインは既に瓦木の進行方向を読んでいたかのように、魚のような形をした攻撃を展開する。

 

瓦木は空中で身を捻り躱すも、ハイレインが拳を振るっていた。

 

「ッチ!」

 

拳が当たる瞬間だった

 

「瓦木、下がれ!!」

 

突如、上空から降り注ぐ銃撃がハイレインを狙う。

 

「新手か」

 

ハイレインは軽く手を振ると、魚のバリアを展開し、すべての攻撃をキューブ化し防いだ。

 

その間に、瓦木は背後へと跳び、駆け寄ってきたのは――

 

「……風間!?」

 

カメレオンを発動し、風間が再び姿を消す。

 

「――!」

 

ハイレインは瓦木に注意を払っていたため、風間の存在を見失う。

 

「……なるほど」

 

ハイレインは冷静に判断し、即座に周囲を展開しようとするが――

 

「遅ぇよ!」

 

瓦木がスコーピオンを振るい、一瞬の隙を突いてハイレインの腕を殴り飛ばした。

 

「……!」

 

防御が間に合わなかったのか、ハイレインのローブが切り裂かれ、片腕がなくなった。

 

「…なるほど」

 

ハイレインはなくなった腕を見つめると、僅かに笑みを浮かべた。

 

「面白い」

 

次の瞬間、ハイレインが襲い掛かった。

 

「くるぞ!」

 

風間の声が響いた瞬間、ハイレインの黒トリガー"卵の冠(アレクトール)が全方位に展開されたが、ハイレインの防御を突破できるチャンスでもあると考えた風間は指示を出した。

 

「よし、合わせろ!」

 

風間がカメレオンで消えた瞬間、瓦木は全速力でハイレインへと突っ込んだ。

 

「無駄だ」

 

ハイレインが瓦木へと向けて攻撃を放つが

 

「そんなモン、慣れた!」

 

瓦木はスコーピオンを空中に浮いている瓦礫に突き刺し、無理矢理方向を変え回避すると、懐に入った。ハイレインも負けじとカウンターを仕掛けるが――

 

「遅い!」

 

その刹那、風間が後方からカメレオン解除と同時に刃を突き立てる

 

「――ッ!」

 

咄嗟に体を逸らし、致命傷は避けるも、ハイレインの右足が切り飛ばされた。

 

「死ね」

 

意識を取られた瞬間に瓦木の拳が、ハイレインの顔面を強打した

 

トリガーが再展開される前に――決めるしかない

 

「オラァ!」

 

瓦木は瓦礫を無数に投げつけ、ハイレインを囲うようにして設置しスコーピオンで固定。そして瓦礫を足場にして無数に飛び回り、一気に加速し殴りかかった

 

「ブッ倒す」

 

そして瓦木の拳は見事にハイレインの胴体を捉えたのであった。

 

「……なるほど」

 

大きくトリオン体に損傷を負うも、ハイレインは薄く笑い、瓦木から泥の王を奪い取った。

 

「あ!?」

 

「……撤退だ」

 

ハイレインはゆっくりと後退すると、黒いゲートが展開された。

 

「待て!!!」

 

 瓦木が追おうとするが、風間が静かに手を挙げる。

 

「…深追いするな。今奴を仕留めるためにはまだ速い」

 

「クソッ……!」

 

瓦木は悔しそうに拳を握るが、ハイレインに一撃を入れ、撤退させたという戦績はB級隊員にしては十分すぎる程だった。そんな瓦木に一つの通信が入る。

 

『もしもし?暴れてるかー?』

 

「あー?迅さんか、どした?」

 

『修たちの援護にいってくれないか?ヤバそうなヤツらがいるんだ。レイジさんもやられた』

 

「レイジがぁ?...わかった」

 

レイジの強さは本部入隊前の瓦木は何度も戦っているため、よく知っている。しかしそんなレイジすらも倒す敵となると、烏丸がいるとはいえ修がやられるのは時間の問題だ。それを聞いた瓦木はパルクール選手顔負けの動きで向かうのであった。





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