いい加減にしてくれ!星ちゃん!   作:F1さん

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めちゃくちゃ長くなりました、すいません!!


シーン11 私の一番の宝物はあんただけだよ〜キメ顔で言うな〜

 

「……バカとバカがいるな……」

 

 レンは目の前に大量の空になった皿と、その前にいる2人の青年を見て、呆れたような表情を浮かべる。

 

 何やら騒動が起きてると街の人に連れてこられた先にいたのは、飲食店のテーブルに伏せた銀髪の青年と少し青ざめた表情の赤みがかった金髪の青年だったのだ。

 

「で、この王子と救世主は何してたんだ?」

 

 呼びに来てくれた身長の低い少年はレンに問いかけると困った様な表情を浮かべる。

 

 どうやら彼もあまり詳しくないらしい。

 

 とりあえずこの状況を何とかしなくてはならない。そう判断したレンは深いため息をつきながら立ち上がり、倒れている2人に近づき、とりあえず不死であり、気合いがある方であろう青年──モーディス(メディモス)に声を掛けることにした。

 

 

「おい、モーディス! 何やってんだ、お前らは! また競い合ってんのか? いい加減にしろよ!」

 

「……うっ……はぁ、コイツが、俺を挑発してきたからだ……くそっ……」

 

 弱々しい返事だけれど、しっかりと応答できるようだ。彼はかなりタフだ。

 

 問題はもう1人の方だろう。

 

「……ファイノン、本当か?」

 

「…………(コクコク)」

 

 銀髪の青年は無言で首を振っている。どうやら図星だったようだ。

 

 しかしまさかこんな所でも競争が始まろうとは……。

 

 まったく予想外ではあったものの、今回は被害は少なそうなので良しとするべきかもしれない。

 

 まあそれでもこの量の料理はどう考えてもやりすぎだが……。

 

「ムチャしやがって……。

てか、お前らはガキみたいな事毎回毎回、よく飽きないな……。別に競い合うのはいいけど、他人に迷惑かけんなよ……。ガキじゃなく、お前らは黄金裔(責任者的)な存在なんだから」

 

「……すまない、つい…………」「……クッ…………悪かった……」

 

「まぁ過ぎてしまったことは仕方がないだろ……。お前らの事は、アグライアか使いの誰かがそろそろ後始末に来ると思うからとりあえず……それまで待つか。胃薬とか持ってきてもらうか?」

 

 レンはやれやれと言わんばかりに肩を落としていると、後ろからいきなり目隠しをされる。

 

「ふっふーん♪ だーれだ」

 

「……ちょっとした悪臭。

いや、てかこんな事するの星しかいないだろ?」

 

「正解ー♪ って匂いで当てるのは酷くない、レン?」

 

 振り返れば案の定そこには楽しげに笑っている星の姿があった。

 

 この少女は星核を内包し生まれながらにしてあらゆる可能性を持つ存在……。

 

 今は一緒に星穹列車に乗っていてレンの恋人(彼女曰く)だ。

 

 星は美少女かつ、魅力的な女性なのだが中身が残念である。

 

 普通に話したかと思えば、たまに口を開けば暴言だらけだし、行動一つとってもおかしいところが多い。

 

 しかし、戦闘になれば一騎当千。

 

 そんなギャップに、魅了された人達が多くいる。

 

 レン自身もその一人ではあるが……。

 

 今回もきっと何か面白い物を見つけに行った帰りなのだろうと思い聞いてみると、どうやら違うらしい。

 

 聞けば彼女は今、「ゴミ箱探しの旅」とやらに出ているそうだ。

 

 そして現在進行形で新しい場所を探しに行っていたところだったという。

 

 なんでこんなところでゴミ箱を探す必要があるのか分からないが、とにかくそういうことらしい。

 

「で、モーディスとファイノンは何してるの? 食いだおれ? 大食い選手権?食べ放題?」

 

 

 レンは頭痛を堪えるようにこめかみを押さえつつ口を開く。

 

「問題児が増えた……丹恒呼ぶかな……」

 

 するとそれを聞いた星が不満げな顔を見せたのでレンは慌てて訂正する。

 

「冗談だ。とりあえず部屋に運んでやるか。……まぁ俺の体格だとどちらかしか運べないな……」

 

 

 レンは自分の腕を見下ろしつつ思考を巡らせる。

 

 そして最終的にはこうすることに決めたようだ。

 

「誰かどっちか……うーん、ファイノンの方を部屋に運んでやってくれ。支払いは……仕方ない。アグライアに請求する。あぁ面倒くさい」

 

 

 結局頼まれごとは全て自分に回ってくる羽目になるのだ。

 

 本当に損な役回りだと思うけれどこれが性分というものなのだろうか? 

 

 

 それとも単純に自分が優柔不断なだけなのか?

 

 あるいは両方なのか? 

 

 レンは自嘲しながら大きくため息をつく。

 

 そんな様子を眺めていた周りの人々は苦笑いしていたがレン本人としてはこれ以上考え事を続けていても仕方ないので切り上げることにする。

 

「まずはこの惨状を片付けよう。じゃないと他の客に迷惑になるしな」

 

 

───レンの指示により、その場にいる各々動き出した。

 

 その後、駆けつけたトリビーが会計周りなどを片付け、ヒアンシー(ヒアシンシア)がモーディスやファイノンの体調を確認しに行き、店内の掃除が終わる頃になると店員が「レンさん! ありがとうございます!」と彼に感謝の意を伝えてきた為に「気にしないで」と言っておくことにする。

 

※※※

 

 その後ようやく解放されたレンは再び大きく息を吐き出しながら伸びをする。

 

「……疲れたな、全く……。こういう騒動を何とかしている内は平和だと言われてるけど……もうちょっとゆっくりしたい……」

 

「そうだね、私とレンのデートも台無しにされたし……! あの2人にはきっちり謝罪して貰わないと」

 

デート1ミリもしてないけど!?

お前が後始末手伝ってくれただけだよな!?」

 

 

 レンは思わずツッコミを入れてしまう。

 

 しかし言われた星は何処吹く風といった感じであまり気にしていない様子だった。

 

 それどころかむしろ上機嫌になっているようである。一体どういう神経をしているのかわからない。

 

 

「はいはい、じゃあ私から提案があります〜! 今回の報酬として明日一日デートしよう!」

 

「…………はぁ」

 

 

 

 レンはもう何も言うまいと思った途端のことだった。「あっ……あれは!!」と興奮した様子で叫ぶ声が聞こえたと思った瞬間には既に遅く、彼女の視線の先へ向かってしまったようでそのまま消え去ってしまうのだった。

 

「……サフェルも超えそうだな、アイツの探究心で走るスピードは」

 

 レンはポツリと呟く。

 

 すると「ちょっと〜それは失礼じゃない?」と建物の上の方から声がしたかと思えば、猫耳フードの女性がレンの目の前へ降り立った。

 

 サフェル(セファリア)は猫のように目を細め、尻尾をゆらゆらと揺らしながら、笑みを浮かべる。

 

「まあ、いいか。あたしは別にそんな事気にしないよ〜。それよりあんたは相変わらず忙しいみたいだけど大丈夫?」

 

「ああ、なんとかなるさ。それにしても……よくここに来たな。そのままアグライアに会いに行けばいいんじゃないか?」

 

「……あんたさぁ。あたしが裁縫女に会いに行く必要、あると思う? わざと言ってんでしょ。でもざんねん〜。あたしはあんたを探してたの」

 

「俺を?」

 

 意外な答えを聞き返すと彼女はニヤリとした笑顔になりこう言った。

 

 

「だって面白そうな話を聞いたんだよね。巡回の坊やってさ、あたしが大盗賊ってこと知ってるでしょ?」

「は? ああ、まあ……」

 

 サフェルは「詭術」の火種を持つとされる、黄金裔の一員であり、嘘つきである。

 

 確かに彼女のようなタイプならば色々と情報を持っていても不思議ではないだろう。

 

 それなら当然、自分についても少しくらい知っていてもいいはずだ。

 

「巡回」という単語自体、星や丹恒、それにその話をしたアグライアしか知らないはずだ。

 

 

「あんたって警戒心ないんだね。普通、あたしの事知っているやつは大半が警戒するものなのに」

 

「……警戒しても意味無いしな。実際、お前は早いし。高速で追いつく奴に俺が逃げ切れるはずもないだろ。それに、お前は盗賊で嘘つきだけど、悪人じゃないし、義賊だろ?」

 

「ふぅん? 随分と買い被ってくれるじゃん」

 

「こう見えて色んなヤツに会ってきたからな。善人も悪人も等しく見てきたつもりだ。それこそ裏社会で暗躍しているような連中も多い。だから大抵は分かるようになったんだよ」

 

 レンの言葉を聞いたサフェルはしばらく黙り込んだ後に僅かに口元を緩ませる。

 

 

「……褒められて悪い気はしないけど、あんた、変なやつだね」

 

「そうかもな。まあ、そういう奴もいるんだよ。で、わざわざ顔を出しに来たのは何か用事があるんだろ? 本題に入ってくれないか? こっちは疲れて帰って寝たいんだよ」

 

「あははっ♪ うんうん、やっぱり面白いやつだね、あんたは。

さて本題だけど、ちょ〜っと来て欲しいんだけど良い?

用事があるんだよね」

 

「行くわけねぇだろ。あのバカ回収しに行かないとだから」

 

 星のことを思い出し、レンは急激にまたトラブルを起こすだろうと不安になってきたので早めに切り上げようと試みるが……

 

「ん〜ダメに決まってんでしょ。

ほら早く来てくれる?

あたし、こう見えても忙しいんだよね」

 

 どうやらサフェルの方が一枚上手だったようだ。

 

 彼女は強引にこちらの手を掴み引っ張っていく。

 

 抵抗しようにも、人ではない彼女は力が強く、とても敵わない上に先程のトラブルのせいで体力的にも厳しい為諦めるしかない。

 

 レンは引き摺られながら、最後の質問を投げかける。

 

 

「どこに向かうつもりなんだ?」

 

 その問いかけに対して彼女は悪戯っぽい微笑と共にこう告げるのだった。

 

「にゃはは〜着いてからのお楽しみ~♪」

 

 

※※※

 

 その時星はというと……。

 

「……おぉー凄いなぁ、このゴミ箱! 見たこともない造形!! 持ち帰りたい!!」

 

「星さん、情熱を働かせるところ、間違ってませんか……?」

 

 たまたまゴミ箱の素晴らしさを求める彼女を見て、通りかかった街の人がドン引きしていた。

 

 声をかけられた事で、星はようやくレンがいない事に気が付いたようで辺りを見渡す。

 

 そこで彼がいないことを理解し「しまった!?」と叫ぶと同時にすぐさま行動に移る。

 

 走り回りながらレンの名前を何度も呼び続ける。

 

 しかし一向に反応はない。

 

 それでも彼女が探し続けていると、いきなり目の前に猫が現れた。

 

 驚いて足を止めて、ある事に気が付く。

 

 口元に手紙を咥えている事に。

 

 

「え、なにこれ……? 誰から?」

 

 

 疑問を感じつつも手紙を受け取るとすぐに読むことにした。

 

『あんたの愛しい人は預かった。返して欲しければ、指定の場所まで来い(猫の手形マーク)』

 

「ん? 誰だかわからないけど!

私のレンの事に決まってる!

私のレンに手を出すとは! 許せない!

まだ手をつけてないのにどこぞの人間に奪われるなんて!」

 

 星は怒り狂いながら即座に書かれている現場へ急行していく。

 

 この姿を見ていた星穹列車のメンバーなら呆れて言うだろう。「()()()()()()()()」、と。

 

 しかし当の本人は全く気づいていなかった。

 

「私が行くまで奪われたり、食べられたりしたら承知しないんだから〜!!」

 

 そして再び全力疾走が始まるのであった。

 

 

 

※※※

 

 その頃当人はというと……

 

「いやぁ、助かったよ〜♪ あんたのおかげでお宝ザックザク。でも報酬いらないとか、ありがたすぎ〜。あたしってば超幸運!!」

 

「いや別にお前の為に協力した訳じゃないし……。無理やり連れてこられたから仕方なく協力しただけだからな? ……はあ……腹減った」

 

「え〜? 仕方ないなぁ。ご飯代くらい出してあげるか〜。んーと。はい、パンならあるよ?」

 

 サフェルからレンはパンを受け取り、齧る。

 

 さりげなく水が入った水筒もくれた。

 

 意外にも面倒見がいいんだなとレンが静かに思っていると、突然声を掛けられる。

 

「……美味しかった?」

 

「まあまあかな。というか何で急に協力させられたんだよ」

 

「ああ、それはちょっと足止めする為かな〜」

 

「は? 何のためにそんなことしたんだ?」

 

 するとサフェルは悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。

 

 

 

「グレっちをからかうため♡」

 

 

 その答えを聞いて呆然とするレンに対し、彼女はケラケラと笑いながら言葉を続ける。

 

 

「うそうそ! それも目的のひとつだけどさ、この土地って強ーい奴が眠ってるって話なんだよね。でも、その強い奴が宝物を守っているらしいわけ。だから、あんたと、グレっちに手伝って貰おうと思って」

「…………俺はともかく、星は働いた分絶対要求してくるぞ。あと、そもそもお前、半神なんだし1人で十分だろう? 強いんだから」

「そこがあんたの勘違い。あたしは身軽さと、スピードには自身はあるけど弱いからな〜」

「は?」

 

 レンはサフェルの発言に戸惑っているが、罠を解きながら勝手に目的地へと向かって歩いていく彼女の背中に追従していくしかなかった。

 

 レンは少し考えて口を開く。

 

「でもお前だってその速さがあれば、罠とか大丈夫だろうし、その強い奴を怒らさずに宝物を横取りすればいいんじゃないのか?」

 

 その指摘にサフェルはピタッと立ち止まり振り返ると真剣な眼差しでこちらを見る。

 

 そして数秒ほど間を置いてから話し始めた。

 

「確かにそれが一番楽なんだろうけどさぁ……。ソイツ自身に金になる素材が埋め込まれてんの。だから殺さずに宝物だけ、取るってのが嫌なわけ」

 

「全部残さず欲しいってか……。それに盗賊としてのプライドもある、と……」

 

「そう! 正解~! 巡回の坊やって頭いいじゃん! そっ。つまり殺したいわけ、あたしも。だから今回は特別に協力してほしいわけよ」

 

「成程。それで星を巻き込みたい訳だな……」

 

「あんたとだけでも良かったけどグレっちが嫉妬して面倒臭くなりそうじゃん?」

 

 サフェルの推測にレンは反論できず、ため息を吐くしかなかった。

 

 それを満足そうにサフェルは眺めた後で再び歩みを進め、レンも続く。

 

 しばらくすると大きな扉の前に辿り着いたようだ。

 

 扉の表面には毛皮が生えた獣の装飾が施されており威圧感を感じさせる。

 

 

「ここが目的地みたいだね」

 

「……みたいだな」

 

 

 二人で頷き合い覚悟を決めて踏み込む事にした。

 

 広間に入った途端異様な雰囲気を察知し緊張が高まる。

 

 暗さに慣れてきた目で周囲をよく見渡すと四方八方に大小様々な宝箱や石像などが点在しておりどれもこれも価値がありそうだった。

 

 中央奥の方へと進んでいくとそこには巨大な像があった。

 

 それを見た瞬間サフェルが小さく舌打ちするのが聞こえてきたためチラリとレンは様子を窺う。

 

 

「ちっ……まさかあんなにデカイとは。予想外。でも、あそこに財宝があるってわかっちゃったし、撤退する気はないけどね」

 

「……あんだけデカイと逃げるのも難しいだろ。サフェルはともかく、俺は。星が来るまで待つか?」

 

「……あんた、グレっちを信じてるんだ。仲いいねぇ」

 

「……まぁ、仲間だしな。それに……」

 

「それに?」

 

 

 サフェルはレンの次の言葉を待っているかのようにじっと見つめてきる。

 

 レンはその反応に、少し迷った後で意を決して告げた。

 

 

「約束したんだ。アイツの開拓の道を一緒に見届けるって……。あいつも、俺を信じてくれている」

 

「……ふぅん? 結構熱いとこあるんだね、あんた。……まあ、確かにグレっちも、もうそろそろここに来るだろうね」

 

「は? どういう……」

 

「だって、ここに来るまでの地図をさっき、猫ちゃんに渡すよう任せたから」

 

「……は?」

 

 レンは唖然とした後で文句を言おうとした瞬間だった。

 

 ────ズドン!!

 

 何か大きな音が響き渡り地面が大きく揺れる。

 

 二人は何事かと顔を見合わせ咄嗟に身構え、辺りを見回す。

 

 次の瞬間、壁が破壊され砂埃の中から現れたのは、特徴的な形状のバットを持った美少女であった。

 

「レン! 助けに来たよ!!! 無事!? まだ貞操は穢されてない!?

 

誰が貞操なんか危険に晒してるんだ。サフェルが俺を攫ったからって過剰反応し過ぎだろ……。しかもここに辿り着くの早すぎるし」

 

 

 

 レンは安堵しつつ呆れ交じりにツッコミを入れるが当の本人は全く気にしていないようで逆に胸を張っていた。

 

 そんなやり取りを見てサフェルは楽しそうに笑っている。

 

 

 

「うん、予想以上に早く到着したね! あんたへの愛情深さの表れ……ってやつかな。……っと、ちょうどいいタイミングだし、始めますか」

 

「は? なに? 何の話?」

 

 星は困惑しながら聞くとサフェルは目の前の大きな石像を指差して答える。

 

「簡単な話。アイツを倒して、宝を貰うんだよ」

 

 サフェルの言葉で星は初めてその存在に気付き視線を送る。

 

 そして改めて全体像を見てみると更によく把握できた。

 

 その巨躯は全身には鎧が纏われている他に頭部には角と翼のようなものが付いている石像だった。

 

 胸には光り輝く宝石が填め込まれており禍々しいオーラを放っているようだ。

 

 サイズ比としてはおそらく十メートルを超える巨体だろう。

 

 しかも四肢は太く逞しく筋肉隆々で腕など成人男性よりも太そうだ。

 

 

 

「ふうん、なかなか強そうだね。まあ、私とレンが力を合わせれば余裕で勝てるけど」

 

 星が自信ありげにそう言い切るとレンは呆れたような表情になる。

 

 だが、サフェルは正反対に笑顔を見せた。

 

 

 

「あははっ♪ すごい。流石グレっち。自信家〜」

 

「当たり前! レンとのコンビネーションは最強! 銀河一! それに今の私は以前の私じゃない。もっと強くなったからね!」

 

「へぇ〜それは楽しみ! じゃあ、頑張ろうか。あたしは援護に徹底させてもらうよ」

 

 こうして戦いの火蓋は切って落とされた。

 

 

 

 石像が雄叫びを上げると共に身体中の関節から蒸気が噴出され拳を作ると勢いよく飛翔してきた。

 

 標的はもちろん眼前の三人組である。

 

 先頭を務めていた星は素早く前方へ飛び出すことで回避成功。次に待ち受けていたのはレンだが特に焦る様子もなく冷静に対処した。

 

 相手の動きを予測して最小限の動作で避ける。

 

 石像の攻撃パターンは様々だが基本的にはパワー重視であるため隙が大きい。

 

 そのため避けやすいものの油断はできない。

 

 石像の攻撃速度が増し始めた頃合いでサフェルが大きな磁石のような道具で石像を掃除機の様に吸い寄せ始める。

 

 その怯んだ隙を突いて星はバットで接近戦を仕掛ける。

 

 石像の足元を狙った打撃はバランスを崩し床に落下するとそのまま叩き付けられた衝撃によって全身に亀裂が走った。

 

 レンはその好きに刀で石像の右側の鎧を斬り捨てる。

 

 そして直ぐに左側の鎧を剥ぎ取るように斬り捨てた。

 

「かったいな! 刃が通らない!」

 

「じゃあ私がやってあげる!」

 

 星が石像に接近し、バットから運命を変え、巨大な燃える剣に変えた。

 

 そして一気に叩き込む。

 

「終わりっ!!」

 

 爆炎を伴い振り下ろされた一撃は見事命中し、石像は粉々になった。

 

 砕け散った破片の中で光り輝く何かを見つけた星が拾い上げようとしたが、その前にサフェルが拾い上げた。

 

「これって……。マジで掘り出し物じゃん。ありがとう、グレっち、レンレン〜♪」

 

「レンレンって呼ぶな……」

 

「その宝石、私が拾おうとしたんだけど!?」

 

 星はサフェルが空いた壁から漏れる月光に透かすように宝石を見ている姿に、不機嫌そうに声を荒らげた。

 

「ふぅん? 所有権主張? でも、あたしの方が先に拾ったんだけど?」

 

 サフェルは悪戯っぽく微笑みながら挑発的にそう言ってくると星も負けじと言い返す。

 

「そんなの関係ない! 私が倒したんだから私が貰うに決まってるでしょ!」

 

「ダメに決まってんじゃん。これはあたしの獲物だもん。ようやく手に入れた物を盗賊が簡単に誰かに渡す訳ないでしょ〜。だからこれはあたしのモノ!」

 

 サフェルはそう言って、レンの目の前に宝石をちらつかせる。

 

 その姿を見た星は更にヒートアップして叫ぶ。

 

 

 

「レン! あの泥棒から取り返して!」

 

 レンは頭痛を抑えるように額に手を置いた。

 

 ガキの喧嘩に巻き込みたくないと考えた矢先にサフェルが思わぬ言葉を口に出す。

 

 

 

そうだ、さっき巡回の坊やがグレっちの事「可愛い」って言ってたよ〜。照れながら

 

「え!? レン、そういうのはちゃんと私に言ってよ! 照れながら!!

 

え!? 言ってない!! 照れてもない!! おいおいおい! 捏造すんな、サフェル!!

 

 レンは必死で否定するもののサフェルは聞く耳を持たず続ける。

 

 

「まあ、照れながらだったのは嘘だけど〜……。「信用してる」とか明らかにあれ愛の告白だったじゃん〜。あたし知ってるんだからね」

 

「……レン……照れ隠し? 照れなくていいんだよ? ほら。今からでも私にプロポーズしてくれてもいいんだよ〜」

 

「お前も何言ってんだよ!! もう嫌だ!! 誰か助けて! 丹恒! 姫子! ヴェルト! パム! なの! ……もう皆来てくれよ!! お願い!!」

 

 

 レンは涙目で悲鳴のような声を上げながら救助要請を行うも虚しく、勿論、誰も現れる気配はない。

 

 むしろ煽るサフェルと問い詰めてくる星に挟まれる形となってしまい窮地に陥ったレンは助けを求めたくても逃げられないという非常に追い詰められた状況にある。

 

 

「巡回の坊やったら照れちゃって。ほらほら〜♡」

 

「うるさいなマジで……お前ら」

 

「そんな照れないでよ〜。私、嬉しいよ。レンに愛されてて」

 

 レンが羞恥で耳まで赤く染めると、そんな様子が可笑しいのかサフェルは腹を抱えて笑う。

 

「あははは! 久しぶりにこんなに笑った〜!

ふぅ〜面白いもの見せてもらったし、楽しかった〜。

じゃ、巡回の坊や、グレっち。また遊ぼうね」

 

二度と顔を見せんな!?! お前、絶対許さないからな!

 

「そんな事言わないでよ〜♪ またね〜」

 

 

 

 レンの拒絶も虚しく、サフェルはあっさりと背を向け歩いていった。

 

 そしてしばらく行った所で一度立ち止まると振り返りウィンクする。

 

 そのまま手をひらひらさせて消えていった。

 

 明らかに話のすり替えのダシにしている。

 

 その背中を睨みつけるレンに対して星は後ろから抱きつく。

 

「ねぇ〜レン」

 

「なんだよ」

 

「私に対する気持ちは本当?」

 

「………………まあ、信頼はしてる」

 

「じゃあ私もレンの事信頼してるし、これからもずっと一緒にいるね!」

 

 そう言って更に強く密着する。

 

 離れて欲しい気持ちもあるが拒否できない部分もありレンとしては複雑な心境だ。

 

 

 

「まぁ、なんだかんだ一緒だしな……」

 

「うん、そうだよ」

 

 星は嬉しそうに微笑んでいる。この笑顔を見てしまうと、レンはいつものように適当にあしらえない。

 

 そんなやりとりをサフェルは少し離れた建物の上から眺めていた。

 

「……まあ、本当は。確かめるためもあったんだけど。あの新参者達は問題なさそうかな」

 

 サフェルはそう呟きながら、遠くに目線をやれば、黄金の小さなカブト虫の姿を見つけ、ソレに軽く舌を出した後、ゆっくりと踵を返す。

 

 彼女の足跡が完全に消えた時には新たな風が吹き抜けていった。

 

 

 

 

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