ここすき、アンケート、お気に入り、感想、励みになります。
良かったらお願いいたします。
ゲーテホテルに入れば、長い階段の奥に大きなロビーが見える。
清潔な空間に、豪華なシャンデリアとガラスに入った植物。
なのかは目を輝かせながら「今夜はふかふかなベッドとぽかぽかの枕」で寝れる、と声を弾ませた。
ロビーでは紅茶のいい香りがし、客らしきドレス姿の女性や、本を読む長いコート姿の男性が優雅な時間を過ごしていた。
高級ホテルであることは
その事に少しレンは違和感を抱く。
(人が住める場所なんて上層部ならこの地域しかないのに、未だにわざわざ泊まるホテルがある必要があるのか?
外からの来訪者は来なくなった、と言っているのに。
いや、シアターがあるようだから、撮影とか、芸能人用にあるんだろうか?
多分維持出来ているのは、客層の羽振りの良さがいいのかもしれない──。)
そんな中でもなのかは嬉しそうに「後で枕投げしよう!」とみんなを誘ってくる。
「──三月。クリフォト城にいる時──」
「ストップ! 言いたいことなら分かってるって! どうせ「三月、喋りすぎだ」とか「三月、他人に俺たちの目的を明かしてどうする」とかでしょ?
……はいはい、りょーかい!
でもさ、大体回りくどい話ばっかりしてるから悪いんでしょ?
焦れったい!
……でも、ほら、それに!いい結果になったでしょ?
貴賓扱いされてるし、ちょ〜豪華なホテルに泊めてもらえるし、現地政府の支援まで受けてる!
今回の開拓任務も順調に進むと思うんだ!」
「……いや、その話じゃなくて」
「じゃあ、何?」
「……クリフォト城にいた時──あの「
「もちろん! ウチだってアンタたちと冒険しながら、鋭い観察力を磨いてきたんだから!」
丹恒の疑問に対し、なのかは自信たっぷりに答えた。
「……でも、なんかおかしくなかった?」
「え? おかしい? 普通の女の人だったよ。最初はちょっと声をかけづらい人かと思ったけど、ちゃんと話してみたら優しかった。
ただ、あの人の目、見透かす力があるというか──
つまり、ウチらと話してても、遠くにある何かを見てたような……」
「そうだな。丹恒もその話がしたかったんだろ?」
星の呟きに似た発言に、なのかが不思議そうにしていると、レンは同意しながら丹恒に目を向ける。
「ああ。そうだ。……あの部屋にいたのは、俺たちだけじゃなかった気がする」
「えっ、何その言い方、急に怖くなってきた!」
「あ。なら、透明人間だ!」「それじゃ丹恒の目は誤魔化せないよ?」
「お前は丹恒をなんだと思ってるんだ?」
星の突発的な発言に呆れた様になのかは返すが、レンは思わずコントみたいな会話にツッコミを入れる。
丹恒はゆっくりと思考していたが、視線を上げ、口を開いた。
「いや、俺の考えすぎか。
手を貸すという約束、守ってくれるといいんだが……。
早く休もう。明日の話し合いのために気力を養っておけ」
丹恒がそう言うと、カウンターにいる老人の男性に声をかけ、チェックインをする事にした。
※※※
「ね、さっきパンフレットみたいなやつ見たんだけど、このホテル名ってさっきのおじいさんの苗字らしいよ!
話によると、ずっと昔に経済不況で没落して、下層部に移り住んだけど、その中で志が高い人が事業を復活させて、上層部でこのホテルを作ったんだって!」
「あ。それなら、さっき、女の子達がアフタヌーンティーがいいって言ってた。人気だって」
ホテルの廊下を歩きながらなのかが自信ありげに言い、星が情報を追加すると、「へえ」とレンは相槌を打つ。
「……けど、部屋、1人ずつってのはちょっと不安だな」
「丹恒とレンが心配しすぎなんじゃない?
ウチらって信用されてるからこそこのホテルに泊まれるんでしょ?」
「そうだったらいいんだけどな……」
「確かに罠、という可能性もあるな。油断はできない」
丹恒がレンにそう言うと、「ええー?」となのかは眉を下げ、不満を表す。
「あ。星、一緒に……」
「? 一緒に?」
「あ。いや、何でもない。何かあったら直ぐに連絡を取り合おう」
レンは星の方を見て何かを言いかけたが、直ぐに止めてしまい、言葉を濁す。
星は不思議そうな顔をしたが「でも枕投げは?」と気にせず聞いてくる。
「お前な……。安全が確保されてからでいいだろ。解決したら好きにやればいい」
「それなら安心! じゃあ、おやすみ!」
そう言い、星がレンの腕を掴んでレンの泊まる部屋に行こうとし始めたので「待て待て待て!」と慌ててレンは止める。
「なんで!? 別々は危ないとか言ってたくせに!
ならレンと同じ部屋で寝たい!」
「おま……! 駄目だろ! 泊まるなら、なの、とにしておけ!」
「なんでなのかとはいいのにレンは駄目なの?」
「俺が男で、お前が女だからだ」
「私はレンなら平気なのに」
「そういう問題じゃねえ!」
星は「なんで!?」と不思議そうにするが、レンは真っ赤になりながら否定する。
そんな2人の様子を見ていたなのかはため息を吐きながら「……またか〜」と呆れた様に言い、丹恒も静かにため息を吐いている。
星は「じゃあみんなで寝よう!」と提案し始め「なんでそうなる!?」とレンはツッコミを入れた。
「アレもダメ、これもダメ。レンはわがままだなあ」
「わがままじゃないからな?
むしろお前がわがままだからな?
……ったく。周りに迷惑だから部屋に大人しく入れ」
「ちぇ」
レンがそう言えば星はむくれた様子で自分が泊まる部屋に向かっていく。
(……とりあえず警戒しておくべきか。武器や物資の確認……と)
そんな事を考えながらとりあえずは部屋に向かっていくのであった。
──夢を見ている。
誰かが話しているのが聞こえる。
『ねぇ、どうしてあんたは……』
乱れた長さの灰色の髪が揺れる。
暗い夜空に、眠らない街の電光が眩しく光る。
彼女は、フードを被り暗闇の中に一人佇んでいる。
座り込んだ俺の目の前に彼女は立っていた。
黄金色の瞳には感情が一切込められていなく。
まるでロボットの様に無機質だった。
──またこの夢だ。
何か危険な事が起きる前には、必ずといっていいほど見るあの夢。
警戒をするようにその時、過去の夢が。「星」が語りかけてくる。
レンは自分の部屋のベッドで目を覚ます。
汗で濡れていた服を脱ぎ捨て、シャワーを浴び、歯を磨き、新しい服に着替えた。
それから外が騒がしいことに気が付く。
カーテンを開ければ外でシルバーメイン達の姿が見える。
何かしらのトラブルがあったのだろうか。
「……嫌な予感がする」
その騒動の真相を探る為、とりあえず朝が早い丹恒の部屋に行くことにした。
彼の部屋のチャイムを鳴らすと彼がすぐに出た。
「丹恒、下が騒がしいみたいなんだが」
「ああ。それなんだが……」
「──あれ? レンも気がついたの?
話し声とか鎧の動く音みたいなの聞こえてくるんだよね。
やっぱり何かあったのかな?」
そう言えばなのかの部屋が丁度丹恒の隣であったなと思いつつ、まだ眠そうななのかが瞼を擦りながら話しかけてきた。
「確かめよう。星も起こして、はぐれないように皆で行動した方がいい」
「おう。賛成だ」
丹恒の意見に賛同し、星の部屋をノックすると、不思議そうな星が出迎えた。
「おはよう。なに?」
「おはよう。さっきから騒がしいから皆で確認しようと思ってな」
「ふーん。それよりみんなで一緒の部屋で寝なくてよかったの?
やっぱり皆で寝た方が楽しかったかもって思ったんだけど」
「「「はぁ……」」」
星の問いかけにその場のメンバーは彼女を除き、そろってため息を吐いた。
レンは頭を抱えながら呆れたが、直ぐに「とにかく今は問題がないかどうか確認するぞ」というと3人も頷いた。
玄関から出ればシルバーメインが集まっており、何かを話し合っていた。
彼らはレン達に気がつくとその中の1人が「おい」と声をかけてくる。
「下でブローニャ様が待っている。早く会いにいけ、くれぐれも妙な真似はするなよ!」
「ブローニャって、昨日会ったカカリアの娘か?」
「あれ?そうだっけ。よく覚えてるね〜。
何の用だろ? まあ、行かないと分かんないか」
「だな。」
「了解」
よく分からないが、彼らの話によるとブローニャがレン達を呼んでいるとのことだったので女の元に向かうことにした。
途中の通路にはシルバーメインが何人もおり、監視されているような気分になる。
「すごい数のシルバーメイン。やっぱ何かあったのかな」
「さあな。でも警戒したほうが良さそうだ」
なのかがキョロキョロとして呟けば丹恒は静かに呟く。
そして下に行けば、ブローニャとペラの姿があった。
「あれ? アンタは……昨日のガイドさんもいるんだ!
で、となりのアンタがウチらを呼んだ人?」
「……そう。私はブローニャ▪️ランド。
シルバーメインのリーダー代行だ。真に高貴な
大守護者代理として、あなたたちの行動と発言の権利を一時的に
──以上。無駄な抵抗は諦めて、ついてきなさい」
「ま、待ってよ! 昨日の話と違うじゃん、今日の面談で重要な話をするって……」
「やっぱりか、
「……ああ。これは間違えなく。
レンは歯噛みをしながらため息を吐き、丹恒も静かに怒りを露わにする。
このままでは捕まり、
向こうがかなり優位な今、捕まるのは非常にマズイ。
いつの間にかシルバーメイン達で周りが囲まれていた。
「また囚人になるの? 3つも星を渡ってると、似たようなことが起きるんだね……」
「それはお前が急に熱くなって、計画もなしに行動するからだろう」
「イヤイヤ! ウチも成長したよ! 今だって計画を考えてんの……経験……けい……そうだ!」
なのかは眉を寄せ、辺りを見回したあと、とある方向に目をやる。
「3人とも、あそこの路地、見て!」
「昨日見たあそこは
「今しかない、か」
「ああ。レン。星、三月、逃げる準備だ」
「へ? 本当にいいの? 適当に言っただけなんだけど……」
「中々行動力あるね!」
「
「へ?」
「しっ! 列車組の合図だよ! 1まで数えたら走って!」
「
「おい、何をブツブツ言っている? 大人しくついてこい!」
「──
それまでシルバーメインに大人しく後に続いていた一同だったが、それを合図に丹恒が槍を出しシルバーメインを吹き飛ばすと道を作る。
それと同時にレン達は走り出し、星はバッドを持ち、レンは刀を持ちながら走る。
なのかはシルバーメインの銃口を凍らせ、べーっとウィンクをし「ではでは、皆さんお先──!」と言いながら、4人は裂界の入り口に飛び込んだ。
それをつい、追いかけるが、ブローニャ達は足を止める。
「飛び込みました!」
ペラが叫ぶように伝えれば「ここにも裂界が……」とブローニャは小さく呟いた。
「……自ら裂界に飛び込むなんて、自信過剰なのか、自滅の道を選んだのか。
やはりお母様の判断は正しかった……」
ベロブルグに生きる人間達にとって裂界は危険なものだと刷り込みをされている。
そんな行為に及ぶなど自殺願望のあるものだとしか見えないのだ。
「失踪か死亡と報告しましょうか?」
「……」
ペラの問いにブローニャは固く目を閉じる。
その両耳の雫のような大きな卵形の耳飾りが揺れ──
「いや。大守護者様は犯人を捕らえろ、と命じた。
封鎖エリアに飛び込んだとしても追撃をやめるわけにはいかない。生きていようが、死んでいようが、私がこの目で確かめる」
──決意と共に止まった時には、覚悟を決めた視線が裂界の入口を見つめる。
「……はい。承知いたしました」
「私が今できることは……ベロブルグを脅かす悪党の
ブローニャを踵を返し、噛み締めるように小さくそう呟いた。
挙一明三→1つの事を上げると3つの事が話題に上がること。
君命無二→君主の命は一度でれば絶対であること。
一意専心→他に心を動かされず、1つのことに熱中すること。