いい加減にしてくれ!星ちゃん!   作:F1さん

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シーン2 星ちゃんはくっつくのが好き〜勿論相手は決まっているけどね〜

「人って言うのはみんなそれぞれ何かを目指して生きてくんだ。

それが何か、下らないものなのか。決めるのは『誰か』じゃなく自分自身なんだ。

だから、お前も選択をする時には悩め。悩んで、悩んで結論を出せ。

 それは決して誰かに踏みにじられていい事なんかじゃないんだ。

──お前は、お前を『信じろ』」

 

──なんてぶっきらぼうで、でもどこか温かみのある言葉なんだろう。

 

 これまでに様々な困難や苦悩を乗り越えて来た事なんて、彼が言わなくても、彼の雰囲気を見ればわかる。

 

 彼は天才じゃない。仙舟同盟の将軍の様な桁外れの強さなんて持っていないし、天才クラブの様な優れた頭脳は持っていない。

 

 でも、彼──レンは、確実に『何か』を持っている。

 

 私には何となくわかる。

 

 自分が何者かさえ、未だにちゃんと私には分からないけれど、それでも。

 

 レンは私にいつだって知らない世界を教えてくれる。

 

 彼と一緒なら、どんな場所だって『続く』ってそう思えるから。

 

 だから私は────彼を『信じる(あいする)』事にしたんだ。

 

※※※

 

「……ん?」

 

 レンは意識が覚めていくのと同時にやけに暖かいものが自分に触れているのを感じ、目を開く。

 

 すると彼の目に飛び込んできたのは長い銀色だ。

 

「ん……」

 

 銀髪の女性は瞳を閉じてレンに抱き着いたまま眠っている。

 

 一瞬、レンは混乱したが直ぐに冷静になる。

 

(また勝手に人の布団に……)

 

 そう、この女性がこうやってレンの布団の中に潜り込むのは初めてではない。

 

 しかし、一緒に仲間として生活を始め、多少の緊張や警戒が解けてきたとはいえ異性にここまで無警戒になるのは如何なものなのかと思う。

 

 そんな事を考えつつレンは女性を引き剥がすと、体を揺すって起こそうとする。

 

「おい起きろ、星」

 

 女性──星はまだ眠そうに目を擦りながらうっすらと目を開ける。そして目の前に居るレンを見て目を輝かせた。

 

「おはよう、レン!」

 

 星は嬉しそうにそう挨拶すると再びレンに抱き着く。

 

「ああ、おはよう。

……で? なんでまた俺の布団に潜り込んでいるんだ?」

 

 そんなレンの疑問に星は笑顔で答えた。

 

「それはね! 私がレンと一緒に寝たいからだよ!」

 

 その答えを聞いたレンは呆れながら言う。

 

「……あのな、お前、なのかや姫子さんとかと寝るのは兎も角、男のベッドに潜り込むのは色々と不味いだろ」

 

「どうして?」

 

 きょとんとした顔で首を傾げる星。

 

「どうして、って……。そりゃ、お前な……」

 

 レンは星にどう説明しようかと少し考える。そして口を開いた。

 

「いいか? 俺は男でお前は女だろ? 

だから男女が一緒に寝るのは色々と不味いんだよ」

 

「でも私はレンと一緒に寝たいし、それに私たちは仲間でしょ?」

 

「いやまあそうだけどさ……。でもそれとこれとは話が別というか……。うーん。もし俺がお前を襲ったらどうする?」

 

「レンが私を襲う? うーん。想像出来ないし、もし襲われてもきっとレンなら大丈夫だと思う」

 

 星は迷いなく笑顔で答える。その答えを聞いたレンは一瞬固まった後、頭を搔きながら言う。

 

「……あーもう分かったよ。いいけど、他の男のベッドには入るなよ。ヴェルトや丹恒とかもダメだからな?」

 

「分かった! 私、レン以外の男のベッドには入らない!」

 

「……いいかたぁ。まあ、いい。それと……」

 

 レンは星に軽くデコピンをした。

 

「いたっ!?」

 

 額を抑えながら涙目になる星を見てレンは言う。

 

「勝手に男のベッドに潜り込んだ罰だ。

あと、男と密室で2人きりにならない様に。絶対誰かといる事。お前が強いとしてもだ。わかったな?」

 

「うん……分かった」

 

 星は少ししょんぼりとしながら言う。そんな星の頭をレンは優しく撫でた。

 

「分かればよし、じゃあ朝飯食べに行くぞ。顔と手を洗ってから行く事。いいな?」

 

「うん、分かった!」

 

 星は笑顔で頷くと洗面台に向かった。そしてレンはその背中を見送りながら呟く。

 

「やれやれ……」

 

そう言って肩をすくめると自分は先に着替え始めた。

 

※※※

 

「……と言うわけなんだけど」

 

 昼。とある惑星を探索中に、仲間であるなのかに昨日の事を話した星だったが、それを聞いていた丹恒が呆れ顔で言う。

 

「相変わらずお前は無防備すぎるな。

レンが常識的だから良いものの、もしその……レンが暴走する様な事があったらどうするつもりだ?」

 

 丹恒の言葉に星は首を傾げながら言う。

 

「うーん。でもレンなら大丈夫だと思う」

 

 そんな星に丹恒は更に続けた。

 

「確かにあいつは誠実だが、それでも間違いを起こす可能性が無いわけではないんだ」

 

「……? レンは私と一緒に寝ただけだし、それを間違いとは言わないと思うけど?」

 

「そういう問題ではないだろう」

 

 そんな丹恒になのかが「まあまあ……」と声をかけ、星に視線を向ける。

 

「ちょっと聞きたいんだけど、アンタはレンと一緒に寝たいからレンのベッドに潜り込んだんよね?」

 

「うん、そうだよ!」

 

 元気に答える星を見てなのかは少し考える素振りを見せると口を開いた。

 

「なるほど……。誰でもいいってわけじゃない。そうだよね?」

 

「誰でも? うーん、誰でもは嫌かな。レンが良い!」

 

 その答えを聞いたなのかは丹恒に小声で言う。

 

「……これってさ、つまりそういうことだよね?」

 

「に、しては星は純粋すぎる。出生の問題もあるが……知識が無いから自分の感情に気付いていないだけの可能性もあるぞ」

 

「あー、それはありそう。だって星だもんねー……」

 

 なのかと丹恒がそんな会話をしている最中も星は自分の考えに没頭していた。

 

(今日はレンはお留守番だからお土産買っていこ! 何にしようかなー)

 

 そんな事を考える星を見てなのかと丹恒は苦笑していた。

 

「なんというか……あれだね、純粋すぎるっていうのも罪だね」

 

「ああ、レンも大変だな……」

 

「レンがいるからウチらにまだ被害がないけど、レンがいなかったらと思うとゾッとするよ」

 

「……三月……。その言い方は、その……」

 

 なのかの言葉に丹恒は微妙な表情をしてなのかを見る。

 

「いや、半分冗談だって。星は暴走しがちなだけで、根は良い子だよ。でも……ちょっと純粋すぎるのと、常識が無さすぎる」

 

「それは同感だな……」

 

 丹恒の言葉になのかは頷く。

 

「うん、だからウチがちゃんと見てあげないとね!」

 

 そんな会話をしている二人を見て星はようやく考え事をやめたのか、少し不思議そうな様子で首を傾げたのだった。

 

※※※

 

「レン! ただいまー!」

 

 星は元気よく背中からレンに抱きつく。その衝撃でレンは持っていた荷物を危うく取り落としかける。

 

「おい星、いきなり抱きつくな」

 

「ごめんね! でも私、早くレンに会いたくて……」

 

「いや、それ理由になってないからな? あぶな、もう少しで怪我する所だった……」

 

 レンがそう言いながら机に荷物を置くと、星は素直に謝った。

 

「え? あ。ごめん。気をつけるね」

 

「ったく。わかればいい」

 

 そんなレンを見て星は少し悲しそうにしながら言う。

 

「……怒ってる?」

 

「怒ってない、呆れてはいるけど」

 

 その答えを聞いた星は無表情ながら更に落ち込んだ様子でしょんぼりする。

そんな星の様子を見てレンは小さくため息を吐いた。

そして星の頭に優しく手を置くと口を開く。

 

「あのな、俺はお前が心配なだけだ」

 

 星は驚いた様にレンを見る。

そして少し考えて言った。

 

「心配?」

 

「ああ、そうだ」

 

「どうして?」

 

 星は心底不思議そうな顔でレンに尋ねた。

 

「それは……その……」

 

 レンは少し言い淀むが、やがて自分の額に手を置いた後、観念した様に言った。

 

「……お前、なんか危なっかしいんだよな。ちゃんと自我が無いというか。まあ、今記憶が無いようなもんだから仕方ないんだろうけど……」

 

「うん」

 

 星は素直に頷く。そんな星をレンは横目で見つつ続けた。

 

「お前、強いし、いつかどっかに一人で行っちまいそうでさ。

だから、それまで俺が見ててやらなきゃいけないかなって思ったんだよ。ちゃんと決断出来る様に。それが俺の役割かな、と」

 

「レンが、私の?」

 

「ああ。まあ、俺が勝手に思ってるだけだけどな」

 

「……でも私、ちゃんと自分の事は自分で決められるよ? レンが心配しなくても大丈夫」

 

「いや、でもさ……」

 

 レンは何か言いかけるが、星はそれを遮り言う。

 

「……私は自分の事を知りたい。色んな場所に行ってみたいし、色んな人と話したい。その為に私は旅をしてる」

 

「それは……分かってるけど……」

 

 そんな星にレンは困った様に頭を掻きながら言う。

 

「……まあ、お前が決めたなら俺は何も言わないけどな。お前の人生だし。余計なお世話だったかな」

 

 レンはそう言うと、星の頭を軽くポンっと叩くとそのまま部屋を後にした。

 

「……レン……」

 

 そんなレンの背中を星はただ黙って見つめた。

 

※※※

 

「あ。レン、お土産!」

 

 しばらくして部屋に戻ったレンに向かって星はいきなりやって来たかと思えば手に持っていた袋をレンに差し出した。

 

「お土産? ……というか、よくさっきの気にせずノコノコと来れたな」

 

 レンは呆れた様子で星を見る。しかし、星は気にした様子もなく言った。

 

「だって、レンは私を守ってくれるでしょ?」

 

「……」

 

 そのどこまでも純粋で真っ直ぐな瞳で見つめられ、一瞬言葉に詰まるもレンは直ぐに答えた。

 

「まあ、俺が傍にいる時はな」

 

「……え? それだけ?」

 

 あっさりとした答えに今度は星が驚いた様に言う。そして続けた。

 

「なんかもっとこう……『俺がお前を一生守る!』的なそういったの期待してたのに!」

 

「いや、それもうプロポーズだからな!!?

 

 そんな星の予想外過ぎる発言にレンは頭を抱えながらツッコミを入れた。

 

「え? プロポーズしてくれるの!??」

 

しないしないしない! 絶対しないから!

 

「え〜。しようよ〜」

 

まずそもそも付き合ってもいないだろ俺たち! 全く。ほら、そろそろ寝るぞ、部屋に帰れ」

 

 レンはため息を吐きつつ、そう言って自分の部屋のドアを開けようとする。しかし星に服を掴まれた。

 

「えー! 一緒に寝ようよー」

 

「いやだからそれは出来ないって前から言ってるだろ?」

 

「だって寂しいし……」

 

 しょんぼりする星を見てレンは少し悩む様子を見せるがやがて口を開いた。

 

「……はぁ。わかった、今日だけだからな」

 

 そう言うと部屋の中に戻りベッドに入る。そして少し横にずれると手招きをした。

 

 その仕草を見た星は一瞬驚いた顔をした後、笑顔になりレンの隣へと潜り込んだ。

 

「よーし、速戦即決!」

 

「使い方ちょっと違わないか? まあ、いいけどさ」

 

 そんなやり取りをしながらも星は嬉しそうにレンに抱きつく。

 

「おい、あんまりひっつくな。暑い」

 

「えー? 私は暑くないよ?」

 

 そんな会話をしながらも、なんだかんだで二人は眠りにつくのだった。

 

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