いい加減にしてくれ!星ちゃん!   作:F1さん

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レ「持ち歩けないけど!?!」

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コイツらイチャイチャしかしてないな


シーン8 今日の運勢は大凶!星ちゃんを持ち歩くのがオススメ!〜重そうと言ったらバットが唸るよ〜

 

 

「と、言うわけで。実験に参加して」

 

「うん。ヘルタ。いきなり呼び出したかと思えば何言い出してんだ?」

 

「今回はこの奇物に触れて」

 

 そう言うヘルタには人形の関節が見えている。

 

宇宙ステーションには数多くの『ヘルタ』がおり彼女はその一人だ。

 本体である(彼女曰く全部自分)自称、マダムヘルタは今日も気まぐれに顔を見せないのだろう。

 

 ヘルタ達は皆、マダムヘルタより小さく、紫の花が付いたベレー帽の様な帽子を被り、黒と白のワンピースを着ているのが特徴的だ。

 

「おい。話を聞けって。またマイペースに話を進め…「いいから早く」おい。やだって。なんか嫌な予感がするんだよ。それに今日はうちのメンバー(星穹列車のメンバー)と打ち合わせがあるんだ。遅れないようにしないと……」

 

 そう言ってレンは呆れた様にため息をつく。

 

 しかし、ヘルタは天才だ。いや天災だろう。

 彼女は確かに気遣いを僅かに見せる時はあるが、大体は興味あること以外、どうでもいいと思っているし、一々聞かれるのは好きではない。

 つまり、何をやっても無駄だ。

もうこうなればレンが折れるしかない。

 

「早めに終わるのか、それ?」

 

「うん。すぐ終わるよ」

 

 ヘルタのその言葉を信じてはならないと頭ではわかっていても、状況が状況だ。

 レンは渋々と奇物に手を伸ばした。

 

───その瞬間、部屋が一瞬だけ歪んだように感じた。しかし次の瞬間には何も起こっていないように見える。

 

「終わり、か?」

 

 レンは拍子抜けして尋ねると、ヘルタは首を横に振る。

 

「まだ何も起きてないよ。この奇物は特殊でね、効果が出るまで時間がかかるタイプだから。とりあえず戻っていいよ。異変があったら連絡して」

 

 そう言いながらヘルタは手元のタブレットに目を移す。全く興味がない素振りで。

 

「……いや、これって、副作用とかあるのか? というか、何が起きるんだ!?」

 

 レンが全然説明を聞いてない事に気が付き、必死に尋ねるが……──。

 

「ちょっと運が悪くなる。それだけ。副作用はないと思うよ。多分

 

「多分!?」

 

 その言葉を最後に、ヘルタは完全に自分の作業に戻ってしまった。レンは頭を掻きながら部屋を出る。

 

※※※

 

「……はぁ。大丈夫かな」

 

 そう呟きながらレンが宇宙ステーションの廊下を歩いていると、前方から慌ただしく走ってくる姿が見えた。

 

「レン! レン! どこ?! 打ち合わせ始まるよ!」

 

 星だった。

彼女の長い銀髪が揺らし、黄金色の瞳が必死にレンを探している様だった。

 

「いや、まだ半システム時間くらいはあるだろ……。今、ヘルタに呼び出されて……」

「アスターじゃなく、ヘルタ? 何の用事だったの?」

 

 星は足を止め、興味深そうにレンを見つめる。

レンは少し迷ったが、結局正直に話すことにした。

 

「……何かの実験に協力させられた。奇物に触れたんだ」

「奇物?」

 

 レンがそう言った途端、星の目が輝いた。

 

「それって面白そうだね! どんな効果があるの?」

「それが、ヘルタはちゃんと説明してくれなくて……ただ『運が悪くなる』とは言ってた」

「運が悪くなる? ふーん……」

 

 星は何か考え込むように顎に手を当てる。そして突然、にっこりと笑った。

 

「じゃあ、私が守ってあげなきゃね!

運が悪くなった分、私、運がいいから傍にいたら運、上がるよ?」

 

 そう言って星はレンの腕に自分の腕を絡ませた。

 

レンは自分をラッキーアイテム扱いする星に呆れつつも、いつも通りの彼女に安心して微笑む。

 

「ありがと。まあ、大丈夫だと思うけどらいざとなれば頼む」

「任せて! ほら、早く行こう!!」

 

 慌てたように星に引っ張られ、仕方なく彼女に連れられたままレンは歩き出す。

 

「それにレンがまた誰かといたら嫌だし……」

「ん? 何か言ったか?」

「なんでもない! それより、まだ時間あるなら一緒に散歩しない?」

「ん? ああ、まあいいけど……」

 

 しばらく2人は歩いていたが、星が突然立ち止まった。

そして、近くのゴミ箱をじっと見つめ始める。

 

「やっぱり…………宇宙ステーションのゴミはちょっと違うんだよね……」

「おい、またか……星」

 

 星がゴミ箱を見ればつい目をやるのはいつもの事で、レンはため息をついた。

 

「行くぞ。ゴミ箱とずっといたいならいいけど、俺の早くしないと気が変わるぞ」

「気が……変わる? って事は今日は1日中ずっと居てくれるってコト!?」

「そこまでは言ってないな!?」

 

 そんな言い合いをしつつ、散歩に向かうと、道中、通行人にぶつかったり、転んだり、落とし物をしたりと小さな不運が続いた。

 

「なんかついてないな。まさかあの奇物のせいじゃないだろうな……。星、お前は大丈夫か? 怪我とか……」

「私は大丈夫!! 怪我1つないよ!」

 

 星は自信満々に答えると、レンの手をぎゅっと握った。しかし、その直後、レンの目の前に何かが転がって来た。

 

「危ない!」

 

 レンは咄嗟に星を庇い、避けられたものの、何かを脚にぶつけた。

 それは小さな鉄の塊のようだった。宇宙ステーションの部品の一部だろうか?

 

「っ……──痛ってぇ」

「レン! 大丈夫!? 怪我した!?」

「いや、大丈夫……少し痛むくらいで……。ったく、今日はついてないな」

 

 レンは思わず脚に手をやり、そうぼやく。すると星が申し訳なさそうな表情を浮かべた。

 

「ごめん……私のせいで……」

「いや、お前のせいじゃない。どちらかと言えば、俺のせいだろ?」

 

 レンは苦笑いしながら星の頭を撫でた。星は少し目を見開いた後、照れたように俯いたが、すぐに真剣な表情になった。

 

「本当に大丈夫? 血とか出てない?」

「ああ、大丈夫だ。ちょっと青タンにはなるかもしれないが」

「……もし、痛いなら、近くで休む?」

「別にそこまでじゃないって。気にすんな」

「……そっか。じゃあ、これだけは約束して。今日はずっと私と一緒にいること! レンに何かあったら困るからね!」

 

 星はレンの手を強く握り締めた。レンは星の真剣な眼差しにドキッとしながらも、微笑んで頷いた。

 

「わかった。お前がそう言うなら、そうするか」

 

 そう言った時、レンの携帯端末からアラーム音が鳴った。

 

「おっと、もう打ち合わせの時間か。行こう」

「うん!」

 

 星は嬉しそうに返事をし、レンの腕を引っ張るようにして歩き出した。レンは星を何気なく眺めながら、改めて彼女の存在に感謝した。

 

※※※

 

 打ち合わせはスムーズに進み、問題なく終了した。その後、星はレンを強引に自分の部屋に連れ込んだ。

 

 

「星? なんでこんな所に……」

「レンの足、治療しようと思って」

「そんな大げさな事しなくてもいいのに……」

「ダメ! ちゃんと治さないと! それに……」

 

 星は急にモジモジし始める。レンが不思議そうに『それに?』と、尋ねると、星は真っ赤になって視線を逸らす。

 

「……私といる時間が増えるから」

 

「は?」

 

「だから! 私といる時間が増えるから、ちょっと嬉しいかなって……」

 

 星は恥ずかしそうに俯きながら言った。レンは一瞬言葉を失った後、思わず笑い出した。

 

「なっ……なんで笑うの!?」

「いや、ごめん。バカにした訳じゃなくて、なんか……その、可愛いなって思ったから」

「かっ……!? かわいい!?」

 

 星は顔を真っ赤にして、慌てて口を開閉させる。レンは笑いながら、星の頭を優しく撫でた。

 

「それに、多分心配してくれたんだろ? 確かに部屋にいれば安全だもんな。ありがとう」

「うん……」

 

 星はようやく落ち着いた様子で、レンの顔を見上げた。

 

「あのね、レン。……私、ずっと言おうと思ってたことがあって……」

「ん? 何だ?」

「私……レンの事……本当にす『ジリリリリ!』……な!? なに?

 

 星が何か言いかけたその時、レンの携帯端末が鳴った。レンは端末を取り出し、画面を見た後、通話ボタンを押す。

 

「ヘルタ? 何の用だ?」

 

───『期限について言い忘れてた。運が悪くなり始めて24システム時間くらいには戻るから、それまで気を付けて。後で報告よろしく』

 

「分かった。それだけか?」

 

───『それだけ。じゃあね』

 

 ヘルタは一方的に電話を切った。相変わらずマイペースの様だ。レンはため息をつきながら端末をポケットにしまう。

 

 そして、星に向き直ると、彼女は複雑な表情を浮かべていた。

 

「……ヘルタは何だって?」

「ああ、24システム時間くらいは効果が続くって。まあ、運が悪くなるだけだから、そんなに心配する必要はないと思うが……」

「……それって、24時間ずっと一緒にいれるってコト?」

再放送か? まあ、そうかもな……」

「やった! じゃあ今日はもう外出禁止! ずっと一緒にいよう!」

 

 星は喜び、レンの腕を抱きしめた。レンは呆れながらも、星の無邪気な笑顔を見て苦笑する。

 

「なんかさっき機嫌悪そうだったのに、切り替えるの早いな。まあいいか……」

「そうそう! レン。ゲームでもしよう! 私が勝ったら……その……色々お願いきいて!!」

色々!? いや、勝った時のメリットデカすぎないか? じゃ、俺へのメリットは?」

「私が負けたら……」

「負けたら?」

「……私が、レンの言うこと何でも聞く!

「……それ、どっちも同じだし、俺にメリット無いだろ。まあ、別にいいけど」

「やった! じゃあ、早く始めよう!」

 

 星は嬉しそうにレンの腕を引っ張り、スマホを取り出した。

ソシャゲで対戦したいらしい。レンは仕方なく星に付き合ってスマホを取り出し……──。

 

※※※

 

「……レン、もう1回! もう1回勝負!

 

「いい加減諦めろよ。お前、本当に下手だな」

 

「くっ……次は絶対勝つから! クソッ、レンの運が悪いはずなのに全然勝てないんだけど!?

 

「それは俺に失礼じゃないか? あと口悪いし。 というか、お前が弱すぎるだけだろ」

 

 レンは呆れながら星を見つめる。星は悔しそうに唇を噛み締め、再びスマホを操作し始めた。

 

でも、やっぱりおかしい! なんで勝てないの?!」

 

「知らん。諦めろ。……そもそも運が悪いからって絶対ゲームに勝てなくなるわけじゃないだろ? ……そういや、俺が勝ったらお前に命令できるんだっけ?」

「あ……」

 

 星は急に動きを止め、スマホを握りしめたまま固まってしまった。レンは不審に思いつつも「星」と声をかける。

 

「さっき、何でも言うこと聞くって言ったよなぁ……?」

 

「はっ……!? そっ……それは……その……

 

 星の顔が見る見るうちに真っ赤になっていく。レンはその様子を面白そうに眺めながら、星に近づいていく。

 

───そして、星の耳元で囁いた。

 

「どんな命令されたい?」

 

ひいっ!? ちっ、近いっ! 耳元で喋らないで!?

 

 星は慌ててレンから離れようとするが、レンは逃がさない。

 

「お前、何か企んでたんだろ? ほら、早く言えよ」

 

そっ、そんなことないけど!?!

 

「へー? そんなことない?本当にか?」

 

 レンは星を壁際に追い詰め、逃げ場を塞ぐ。星は顔を真っ赤にしてレンを見つめ返す。

 

そっ……それは……

 

 星の目が潤み始め、息が荒くなってきた。レンはその反応を見て内心驚く。まさかここまで反応するとは思わなかったからだ。

 

「なんだ? ほら、教えてくれよ

 

 レンはさらに顔を近づけ、星の瞳を見つめる。星の心臓が激しく鼓動するのを感じる。

 

「れっ……レンに……その……」

 

 星の言葉が途切れ途切れになる。

 

「ん?聞こえないんだけど。何?」

 

 レンはさらに顔を近づけ、星の唇に触れそうな距離まで迫る。

 星は全身を震わせながら、ようやく言葉を絞り出した。

 

レンに……その……「ククッ、そ、そんな必死にならなくてもいいだろ、冗談だって」……はぁ!? 冗談?!

 

「そうに決まってるだろ。そんな真っ赤になって……本当に面白いな、星は」

 

 レンはニヤニヤしながら星を見つめる。星は真っ赤な顔のまま、プルプル震えていた。

 

「もしかして……期待してたか?」

「そ、そんなことあるわけないけどぉ!?!」

 

 星は怒ったように叫びながら、レンの腕を叩いた。その勢いで倒れそうになり、バランスを崩してしまった。

 

 

「あっ……!」「うわっ!」

 

 レンは咄嗟に星を受け止める。が、バランスを崩してそのまま倒れ込んでしまい……。

 

 ──……二人の唇が重なる。

 

「「!?」」

 

 一瞬の出来事だった。レンと星は互いの顔を見つめ合う。その距離は限りなくゼロに近かった。

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 沈黙が続く。星は顔を真っ赤にして硬直している。レンも同様だった。

 

 

「ごめん……」「い……いや、こっちこそ……」

 

 二人とも同時に謝り、目を逸らす。その後、数秒の沈黙が続いた。

 

「……あの……」

「あっ……えっと……」

 

 星が口を開くが、すぐに口ごもってしまう。レンもどう返事をしていいか分からず、言葉に詰まる。

 

「その……」

「あ……あの、レン!

 

 星が再び口を開いたとき、レンの携帯端末が再び鳴った。レンは驚いて飛び上がり、急いで端末を取り出す。

 

「わっ! なんだ!?」

 

───『レン、やっぱり戻って来て。打ち消せる奇物が見つかったからそれの効果を試してみたいの』

 

はぁ?! さっき言ったろ?! 24システム時間くらいは戻るって!」

 

───『もう見つかったの。じゃあ待ってるね』

 

 ヘルタはそう言って一方的に電話を切った。レンは頭を掻きながら溜息をつく。

 

「なんだよあいつ……いきなり……」

「……行くの?」

 

 星が不安そうな表情でレンを見つめる。レンは少し考えてから答えた。

 

「ああ、仕方ないだろ。ヘルタのことだから、行かないとまた何か面倒なことになるかもしれないしな」

「そう……」

 

 星は明らかに落ち込んだ様子だった。レンはその様子を見て、星の頭を優しく撫でる。

 

「ごめんな。でも、すぐに戻ってくるから、此処で待っててくれないか? お前が良かったらだけど」

「──……分かった。待ってる」

 

 星は少し寂しそうな表情を浮かべつつも、頷いた。

 

「じゃあ、行ってくる」

 

「うん」

 

 レンが部屋を出ようとドアノブに手をかけた瞬間、後ろから星の声が聞こえた。

 

「あのね、レン」

「ん?」

 

 レンが振り返ると、星が顔を赤らめながら口を開いた。

 

「私、レンのこと……その……好きだよ」

「!?」

 

 突然の言葉にレンは驚きのあまり固まってしまった。しかし、いつもの事だから、とすぐに微笑みながら答える。

 

「そうか……ありがとう。俺も……お前のことは特別だと思ってる」

本当!?

 

 星の顔が途端にぱっと明るくなる。レンは照れくさそうに頬を頷いた。

 

「ああ。だから、行ってくる」

うん!待ってるからね!」

 

 星は笑顔でレンを見送った。レンは頬をかき、少しだけ照れ臭そうに笑いながら部屋を出た。

 

 部屋を出た後、レンはしばらく立ち尽くしていた。

 先ほどの星とのやりとりが頭の中でリフレインする。

 

「……あれは『不運』というより……」

 

 レンは苦笑しながら、ヘルタの元へ向かうために歩き出した。

しかし、心の中では星のことを想い続けていた。

 

「好き……か」

 

 レンは自分の気持ちを整理するように呟いた。

 

しかし、答えはまだ見つからないままだった。

 

 

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