田舎で剣だけ振っていたい   作:深海 星

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1 クソ田舎で剣を振る

 人間にとって一番幸せな時間は何だろう?恋人と居る時?美味しいものを食べている時?それとも使い切れないほどのお金に囲まれている時?色々な答えがあるだろうが俺の答えはただ一つそれは『剣を振っている時』である。 

 その日も俺クロ・スミスは無駄に広い家の庭で剣の素振りをしていた。人と接するのがあまり得意ではない俺にとって剣を振る時間は何よりも至福の時間であった。

 俺の住んでいるこのカイナ村は兎に角クソ田舎だった。高い山々に囲まれ自然豊かではあるが、逆に言えば褒めれるところはそれくらいで、田舎すぎて隣の町に行くのに一週間はかかるくらいには田舎なのだ。

 そんな田舎なので皆協力し、助け合って生きているのでご近所付き合いがとても濃い。しかし俺は人と接するのが大の苦手であった、それはもう何か話しかけられればその瞬間に思考が停止して「…ああ」とか「…うん」とかしか言葉に出てこないくらいには苦手だった。そんなコミュニケーションに難を抱える俺であったがそれでも最低限の仕事はしなければならないので、今日も言われた仕事をこなしていた。

 今日の仕事は割と楽しかった、近所に出た弱いトカゲを狩るだけの物だったのだ。魔物退治は割と好きな仕事である、何故かと言うと勿論剣が振れるからである、剣さえ振れれば俺は割と満足なのだ。おそらく剣を振るという行為は何かしらの栄養を接種出来る行為なのだろう、睡眠、食事、素振り、俺はこれが人間の三大欲求だと思っている。

 そんなこんなで仕事を済ませた俺は家の庭で剣を振っていた。

 

「ふふふ…こんな時間が…ずっと続けばいいのに…」

 

「おにいちゃんそれ、これから何か起こる人の言うセリフだから…」

 

 楽しすぎていつの間にか独り言が出ていたらしい、そしてその独り言に反応したのは俺の義理の妹のティナ・スミスだった。ティナは両親が魔物に殺され天涯孤独となったところをうちの両親に引き取られた。

 何かと世話を焼いてくれるので物凄く助かっている、どのくらい助かっているかと言うと、ティナが居ないと他人とのコミュニケーションがまともに取れないくらい助かっている。…俺はもう少しコミュニケーション能力の改善をした方が良いのかもしれない。

 そうしてしばらく素振りという世界で一番幸せな時間を楽しんでいるとティナは短めに切り揃えられた綺麗な金色の髪をなびかせながら思い出したように言った。

 

「そう言えばさっき旅の人が村に来たみたいだよ、珍しいよね~」

 

 幸せな時間は長くは続かないらしい、このクソ田舎の村に来たその旅人によって俺の人生は大きく変わってゆこうとしていた。

 

 

 

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 私、ブレイブ・グラディウスは険しい山道を歩いていた。この大陸に置いて一番の領土を誇っているグランセント帝国。その帝国で剣の実力に置いては十指に入ると評された私であったが、正直なところ自分では全くと言っていい程満足していなかった。

 まだまだ上がある、自分はまだ上の領域に行ける!!と思ってはいるのだが、では何をしてその領域とやらに辿り着けるのか全くもって見当がつかなかったのである。そうしてジタバタと帝都周辺の魔物を片っ端から斬り伏せて居たところ、それを見かねた師匠から言われたのである。そんなに強くなりたいのであれば精強な魔物が多く存在するイカナ山脈に行け、と。

 イカナ山脈、それはこの帝国の端に存在するまともな人間ならば近づこうとも思わない場所である。何故近づかないのかと言うと、それは自然の脅威も勿論であるが、そこに存在する強すぎる魔物の存在である。魔物、通常の動物達よりも強く知能が高い事の多い生物であるが、一番の違いはこの世に存在しているマナを通常の生物よりも多く体内に取り込んでいる事である。

 マナはこの世界に空気の様に存在する目に見えない力の事である、このマナの力を借りることによって我々人間も理外の力を発揮することが出来る。私もそのマナを使って魔法と呼ばれる力を使い、剣で戦う魔法剣士と呼ばれる存在であった。 そしてイカナ山脈は通常よりもマナがとても濃い場所である。それが意味することと言えば、通常存在する魔物達がより多くのマナを体内に取り込んでいるため非常に強力になっていると言うことであった。

 

「ぐぅっ…!!」

 

 もう何度目かわからない魔物の襲撃を既のところで剣で合わせ防御する。魔物の中では最弱とされているゴブリンですら他の場所の三倍は強い。ゴブリン程度が三倍強くなったところでどうとでもなるが、こう何度も何度も攻撃されると体力と精神力が削られてくる。

 すでに山に入って七日。なんとか凌げては居るものの正直限界であった。やはり自分の実力はまだまだだったのか…そう思った時にそれは見えた。あまりにも大きい骨。それの後ろに家々が立ち並んでいる。その骨がなんの生物の物なのか直感で分かってしまう。あれは真竜の物だ、竜の中でも長くを生きたとてつもなく大きな力を持った竜。死してなお、骨だけとなってなお強大な力を感じるそれに呆気に取られていると久しぶりに聞く人間の声がした。

 

「あんれぇ~、こんな村に旅人が来るなんて久しぶりだねぇ~」

 

それはすごく気の抜ける、この様な魔物だらけの険しい山の中には不釣り合いな平和ボケした声だった。

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