田舎で剣だけ振っていたい   作:深海 星

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ちょいと体調悪くて更新遅れました。

ちょっと書き方変えました…多分。変わってない気もします。


15 初めてのダンジョンに潜る

-----ブレイブside

 

 私達はギルドでの自己紹介を終え、以前に地竜が確認されたというダンジョンへとやってきていた。それは塔型のダンジョンで外から見ると中に地竜が存在出来るほどの大きさには見えなかったが、どうやら中はマナの力に因って拡張されているらしかった。

 分会長の話通りなら、近年は地竜程の強い魔物は確認されておらず、ソノーヘンの冒険者でも十分に対処出来る程度らしいが…

 

「データ通りなら、このダンジョンのはずだ」

 

「ふ~ん、ここがねぇ…見た感じ至って普通のダンジョンだが…やけにマナが濃く感じるな」

 

 場所が分かると言うデータロウの案内で、件のダンジョンへと八人で来ていた。情報の通り、黒い塔型のダンジョンだった。外からの見た感じだと五階建て程度だろうか。

 そしてアキラの言う通り、イカナ山脈に居た時に感じたような重くて濃いマナを感じ取っていた。

 ダンジョンとは見た目と中身が一致しないのが一般的だ。気を引き締めたほうがいいだろう。

 打ち合わせでは、中の探索は私達四人とアキラ達&データロウの四人で別れて探索することになっている。

 そして、急いだ方が良いと言うクロの発言も気になる。聡明な彼の事だ、きっと何かを感じ取っているのだろう。

 

「では作戦通りに、二手に分かれるという事で大丈夫ですね?」

 

「ああ、それで問題ない」

 

「俺達も問題ないぜ!」

 

「クロ、それで問題無いね?」

 

 最後にクロにも確認をする。戦闘に関して彼の言う事は間違いがない。もし戦力を分散させて不味いようなら、きっと何か助言をくれるだろう。

 

「…ああ」

 

 クロは何かを考えて居た様だったが、問題なしといった風にいつも通りの短い返事をくれた。これならば大丈夫だろう。入る前のマナの濃度から考えても、恐らく何かの異常が起こっているのは間違いがない。

 だが、彼が居るのならば問題ないだろう。

 

「では、お互いに無理せずに生きて帰りましょう」

 

「勿論だ!お前らも無茶はすんなよ!」

 

 ギルドで自己紹介をした時も思ったが、アキラさんは真っ直ぐでとても良い方だと思う。これで妹狂いで無ければ、かなりまともだったと思うのだが…まあ、趣味嗜好は人それぞれだ、とやかく言うほどの事でも無いだろう。

 そうして私達の初めてのダンジョン攻略が始まった。

 

 

 

 

 

 塔の大きな両開きの扉を開けて、中に入る。やはり、外から見た以上の広さを持っている様だった。

 中は薄暗いが、何も見えないといった事もない。これといった光源は見当たらないが、恐らくこれもマナによるものなのだろう。

 

「では、僕達は右側から探索する。左側は任せた」

 

「ええ、任されました」

 

 データロウが言うには、このダンジョンは二つのルートがあるらしい。右回りと左回り、最終的に辿り着く場所は同じだが、今回の依頼が調査である事を踏まえると、別々に行動した方が効率が良かったのだ。

 

「…ここ、マナが多い」

 

「ええ、四級のダンジョンにしては多すぎますね。これは二級相当の魔物が出るかもしれません」

 

 基本的にダンジョンの難易度は級が一つ上がる毎に倍以上上がっていく。特に三級以上のダンジョンは、魔物の強さは勿論の事ギミックを攻略しなければならない物も多い。

 それは失敗すれば即死する様な物から、ダンジョン内にランダムにワープさせられる物等、多岐にわたる。

 その点今回のダンジョンは、強力な魔物が出る可能性が高いとはいえ、ギミック等は無い為その点は安心できる。

 

「ししょー、私ダンジョン初めてです…」

 

「…俺もだ」

 

「ししょーもなんですか?意外です」

 

 確かに、クロが初ダンジョンだと言うのは意外ではあるが、よく考えると納得である。

 彼は私と旅に出るまで、村を出た事が無かったのだ。今回が初めてなのも当然と言えた。

 

「…急ごう」

 

「クロ、ギルドでも思ったけれど、何か分かるのかい?」

 

「…ああ」

 

 やはり、クロは何かを感じ取っている様だった。彼はいつもの様に短い返事をすると、迷宮の奥へと目線を向けた。

 これはなるべく急いだ方が良いのかもしれない。私は一層気を引き締める事にした。

 

 

 

 

 

 

 強力な魔物が出ると思っていた私達を待ち受けていたのは、小さく魔物達だった。やる気に満ち溢れた様子のマリーが風魔法によってあっさりと兎型の魔物を倒す。

 

「ししょー!私魔物倒せましたよ!」

 

「…ああ」

 

 マリーが自分の倒した魔物を嬉しそうにクロに見せて居た。正直、拍子抜けする程に弱い。このマナの濃さであれば、弱い魔物でさえ通常以上のマナを取り込んで、強化されている筈である。

 だが、ここに来るまでに倒してきた魔物ははっきり言って四級ダンジョンにしても弱く、ある意味で異常を感じざるを得なかった。

 

「何かが、可怪しいですね…」

 

「…ブレイブもそう思う?…明らかに魔物が弱い」

 

 やはり、ノノも同じ様に感じている様だった。クロも先程から何かを思案している様だ。彼もやはりこの違和感に気が付いているのだろう。

 

「とは言え、魔物が強いのならば兎も角。弱いのであれば、引き返す理由にはなりませんね」

 

 引き続き、注意だけはしながら先へと進む。ニ階も三階も、特に変わった様子もない、そのまま弱い魔物だけを倒し、更に奥へと進むと四階へと続く階段を見つけた。

 注意を怠らずに、階段を登るがこれまで以上に何も無い空間が広がっているだけだった。

 首を傾げながらも先に進むと、それは突然に現れた。

 

「えっ…」

 

 先程まで何も無かった筈の空間に五体の熊型の魔物が現れる。それは竜種程の強さは持っていないものの、間違いなく強敵であった。

 そして先程までの魔物とは違い濃いマナの気配を感じる。

 

「やっとお出ましですね」

 

「…囲まれてる…やるしかない」

 

 何処からとも無く現れた熊達は、此方を逃がすまいと取り囲んでいた。ノノの意見には賛成だ。やらなければ、やられるだけだろう。

 

「クロとノノはやりやすいように。マリーは私と二人の援護をしますよ!」

 

「はいっ!!」

 

 クロとノノは一騎当千の実量がある。無理に周りに合わせるよりも好きに動いてもらった方が良い結果を出すだろう。マリーはまだ実践経験が少ないのでサポートに回ってもらう。

 

「フッ…!」

 

 クロの放つ斬撃を熊の魔物が受け止めるが、その重量に耐えきれずに片腕が潰れる。そこにマリーの風魔法が加わり、腕を切り飛ばした。

 私はその切り傷に剣を刺し、内側から焼く。

 

「爆炎斬!!」

 

 内側から焼かれて、熊の魔物は絶命した様だ。まずは一頭、この調子であればすぐに戦闘は終わりそうだった。

 クロは次の獲物を定めると、剣を振りかざし、今度は一刀で頭を斬り落としていた。やはり彼は流石だ、私もいつかはその剣技に追いつきたいものだ。

 

「覇ッ!!」

 

 ノノも魔物を殴打し、仕留めているようだ。クロの剣技程ではないが、彼女の武術もまた見事な物である。瀕死になった獲物をマリーと私でトドメを刺していく。完璧な布陣だ。

 何事も無く、全ての魔物を討伐出来た様だ。倒しそこねた魔物は居ないかと辺りを見回すが、全て倒しきった様だった。

 魔物がその姿をマナへと変えていく。ダンジョンの魔物には凡そ二つのタイプが存在する。それはダンジョンの濃いマナを肉体に変えて顕現するタイプ、そしてダンジョンの中に迷い込んだ、もしくは住み着いた魔物達が、これまたダンジョンの濃いマナに影響を受けてその姿を変容させるタイプだ。

 違いはすぐに分かる。それは死体が残るかどうか、そして傷を与えた時に血が流れるかどうかだ。マナを肉体に変えるタイプは生命では無く、意識の集合体みたいな物なのだ。

 それにしたって何処からとも無く急に現れるとは聞いたことが無かったが…

 

「…マリーよく動けてた」

 

「ほんとですか!?ありがとうございますノノちゃん!!」

 

 後ろではノノとマリーが二人でじゃれ合っていた。恐らくノノの齢は四十を超えていると思うので、明らかにマリーが年下だと思うのだが…ノノも嫌そうでは無いので問題は無いだろう。

 魔物を倒し、正直に言って油断していたその時。またも急に魔物が現れた。それは先程までの熊の魔物とはレベルが違う、竜種の魔物だった。

 

「っ!みんなっ…」

 

 仲間たちに注意を促そうとしたが、全てを言い切る前に動く存在が目に入った。それはクロだった。

 クロは私達を庇うように立つと、竜種の攻撃を剣で防御する。しかし攻撃の勢いが強く、そのまま押され後ろに下がっていく。

 

「クロッ!!」

 

 ノノが緊迫した声をあげる。それは、焦り以上の何かを含んだ声に聞こえた。

 クロでも勢いを殺しきれずに、勢いそのままに壁に激突する。

 

「なっ…!」

 

 激突した壁が崩壊し、その中へとクロと竜の姿が消えて行った。

 

「いけっ!!」

 

 壁の中へと消えていく瞬間にクロの声が聞こえた。彼はこんな時でも俺達の事を考えてくれているのだ。しかし、何故先に行け等と言ったのだろうか。

 先程の竜種も皆で力を合わせれば討伐できるはず。そう思い崩れた壁の先を見て、私達は絶句した。その先は床が抜け、底が見えなくなっていたのである。

 

「えっ…ししょー?」

 

「そ、そんな…クロが、死んじゃった…?」

 

 その光景を見てマリーとノノがショックを受けているが、私は逆に落ち着いていた。そもそも最後に彼が放った言葉は、先に行けだった。

 つまり、自分の事はなんとかするからこっちの事は気にしないで先に進んでくれという事だろう。

 

「二人共落ち着いてくれ。クロは最後に私達に“先に行け”と言ったんだ。つまり、クロは死ぬ気なんて全く無いって事だ。それにこの程度の事でクロが死ぬなんて私は思わない」

 

 自分の考察した事を、そのまま彼女たちへと伝える。暫く思案しているようだったが、私の言った事に納得したのだろう。徐々に落ち着きを取り戻した。

 

「…そう、ね…クロなら大丈夫…うん」

 

「そ、そうですよね!ししょーがあんな竜にやられる訳がありません!!私達はししょーを信じて先に進みましょう!!」

 

 ノノは少し怪しいが、マリーはもう大丈夫だろう。師であるクロを絶対的に信頼している彼女は、自身の師匠を信じることにした様だ。

 

「ならば、先へと進みましょう。クロは必ず追いついて来る筈です」

 

 最後にアクシデントはあったが、私達は先へと進む事にした。

 

 

 

 

 

 

 その後は特に強力な魔物が出ることも無く、私達は五階へと到達した。そこは今までとは全く違う、唯唯広い空間がずっと広がっているだけだった。

 在る物と言えば、自分たちと同じ様なこの階に到達する為の階段と、部屋の中央にぽつんと置かれた椅子だけである。

 

「何もありませんね」

 

「…うん…いっそ不気味なくらい」

 

 私達が、余りの何も無さに逆に不安になり、その事を話して居ると丁度反対側からアキラ達がこの階へと登って来る姿が目に入った。四人全員居るようで少し安心した。

 

「アキラさん!貴方達も無事でしたか…」

 

「おお!ブレイブ!勿論だとも!!そっちも…ん?クロの奴が居ないんじゃ無いか?」

 

 アキラは早速クロが不在な事に気が付いたみたいだ。私は端的に、私達の身に起こった事を説明する。

 

「なるほどなぁ…ま、クロの奴なら大丈夫だろ!見ただけでも只者じゃないと分かるぐらいだからな!しかしこっちの方は弱え魔物しか出なかったぜ?」

 

「ええ、アキラの言う通りデータ通りの魔物しか遭遇しませんでしたね」

 

 ニ級冒険者であるアキラもクロの凄まじさを見ただけで感じ取ったらしい。しかしアキラ達の方には弱い魔物しか出なかったのか…何か理由があるのか。

 アキラ達と合流し、この階を一通り見て回るがどうやら中央にある椅子意外は本当に何も無いらしい。しかしだとするとマナが濃くなった原因とは何だったのだろうか。

 

「これ以上見てもデータは取れません。一旦帰るのが賢明では?」

 

「確かにデータロウさんの言う通りですね。クロとすれ違いになっては行けないので帰りも二手に分かれて…ッ!?」

 

 そうして帰ろうとしたその時だった。突然部屋の中央から凄まじい殺気を感じた。

 

「おや?もうお帰りになるのですか?寂しいですねぇ」

 

 それは何時からその場に居たのだろうか。気が付けば中央の椅子に腰掛けた男から声を掛けられていた。

 若い。人の良さそうな顔をして居る、黒髪のスーツ姿の男だった。

 

「まさか竜種をけしかけて一人しか消えないとは…まあ雑魚が何人減った処で関係無いですけどね」

 

「おいおい、いきなり出てきて黒幕面か?」

 

「ハハハ、まあ黒幕と言えばそうかも知れませんねぇ…」

 

 アキラの剣呑な物言いにも全く動じていない。常に余裕の姿勢で此方を見ているが、その身から発している殺気は全く無くなる気配を見せなかった。

 

「この森に現れた地竜、あれは貴方の仕業ですか?」

 

「地竜?ああ、あれの事ですか。餌をやらなかったら勝手に逃げ出しましてね。困ったものです」

 

 やれやれと言った風に首を傾げる仕草をする。やはり、地竜はこのダンジョンから発生した物だったのだ。

 だが、この男の正体は依然として分からない。何が目的でこの場に居るのか、そもそも発言からしてダンジョンに住んでいる様な物言いだったが…しかし慎重に動かなければ、この男に殺されてしまうだろう。

 次の一手を考えて居たが、ノノが皆の前に出たことに気が付く。

 

「ノノ?何をして…」

 

「…お前が」

 

「ハイ?」

 

「お前がクロを…!!!」

 

 それは初めて見るノノの姿だった。常に冷静な彼女にしては珍しい、感情に任せた発言。不味い、彼女は今感情のままに動いている。

 男はどうでも良さそうに頬を掻いている。

 

「クロが何かは存じませんが…だとしたらどうだと言うのですか?」

 

「…殺す!」

 

 次の瞬間、ノノの姿が消える。そうして戦いの火蓋は切られてしまったのだった。

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