-----クロside
初めてのダンジョンでテンションの上がったのか、俺はもう早く探索したくて堪らなかった。
だが、俺の期待に対してダンジョン探索は余りにも何も起こらなかった。魔物も弱く小さいのしか出て来ないし。
なーんて考えてたらちょい大きい熊の魔物が出てきた。皆で手早く熊の魔物を討伐できた。
下降気味だった俺のテンションは再び上昇気流に乗っていた。何故ならちょっと強い魔物が出てきたからだ!
つまりここからは2ndステージ。財宝もきっと出てくる事だろう。楽しみが抑えきれずに、フライング気味に先へと進もうとする俺の前に急にトカゲが現れた。
そのトカゲくんは一番近くに居た俺に猛突進をしてくる。普段であれば迎撃できたのだが、余りにも突然の事で動きが遅れてしまった。
なんとか防御は間に合うが、トカゲくんの力が思いの外強く勢いそのままに後ろに押されてしまう。
「クロッ!!」
おお、ノノの大きい声初めて聞いたな。そんなに大きい声出せたんだ。
そんな事より止まんないだけど〜?靴の底が無くなっちゃう〜。ちょっと足の裏が熱いんですけど。
すると背中に強い衝撃が。どうやら壁にぶつかったらしい。崩壊音、そして浮遊感。どうやら壁を突き破ったらしい。
だがそんな事より何よりも…
「いてぇっ!!」
そう、想定外の痛みが俺を襲ったのだ。思わず声を上げてしまった。こんな痛みを感じるなんて、子供の頃以来かもしれない。
しかし痛がっても居られない、何故なら重力に従った物理的運動が始まっているからだ。つまり落下していた。
またかよ。一週間ぶり二度目の落下である。幸にして谷底に落ちた時と違い、その辺りから蔦が伸びている為それを掴みつつ落下速度を落としていく。
それにしても深いな…何となくだが、上がって来た時以上の高さを降りている様な気がする。
まだ着かないのかなー、って思っていたら底が見えて来た。ひょいひょいと蔦を飛び渡り、地面に降り立つ。
しかし今まで探索していたダンジョンの中は植物等生えていなかったのに、何故壊れた壁の先に蔦が生えていたのだろうか。それに気が付いたらトカゲくんも消えていた。
速度を落とす俺とは違い、真っ逆さまに落ちていったので、地面に叩きつけられている筈だけど…そういえば熊の魔物も消えてた様な気がするし、ダンジョンの魔物ってそういう物なのかもしれない。
まあ、考えていても仕様が無い。今はどうにかして上に戻る事を考えよう。助けが来るとはとても思えないし。
俺はまず、降り立った空間を観察する。そこは大広間程度の大きさの“部屋”だった。
何故部屋だと思ったかと言うと、四方にそれぞれ扉が付いていたからである。
え?ここ誰か住んでるの?まあ確かに塔だったしそんな事もあり得るのかな?町までそこそこ距離があるし、物件としての価値は低そう。
まあここでなんやかんやと考えても仕方ないので、目の前にあったドアノブを捻り、先の部屋へと進む事にした。
もう何部屋移動したか分からない。扉を開けても開けても同じ様な部屋が続いていた。
頭おかしなるでほんま。後何部屋移動すれば良いのだろうか。唯一分かるのは天井がちゃんとある為、最初の部屋では無いと言う事だけだ。
この国の娯楽小説に秘薬で子ゴブリンにされた探偵、名探偵ゴナンと言う人気小説があるらしいが、その主人公であればこの部屋の謎も解けるのだろうか。
もはや、長時間同じ様な部屋を彷徨い続けて、思考も意味がわからなくなってきた。
ドアノブを捻り開ける、同じ部屋。ドアノブを捻り開ける、同じ部屋。
「あああああああああああ!!!」
ドアノブを捻り開ける、すると変化が訪れた。そう!天井が無いのである!最初の部屋じゃねーか!!!
「巫山戯るな!バカヤロー!!!」
俺はもはや半狂乱になり、思いっきり殺意を込めて扉に向かって剣を振り抜く。
すると木製扉の木の感触とは違う何とも言えない感触と共に、扉は破壊された。
ストレスが溜まってついやってしまったなと思ったが、破壊した扉の先が何やら今までとは様子が違う事に気が付いた。
近づいて先を見てみると、今までの大広間とは違い、小さな部屋になっていた。そして、その先には上へと続く階段が見える。
やった!ついに抜け出したぞ!推理とか要らんかったんや。必要なのはパワー。力こそパワーだなやっぱり。
その小さな部屋に踏み込んで、足元に何かが描いてあるのを見つける。
円の中に何やら複雑な模様が描いてあって、外側には文字の様な物が書かれている。
あーあー、人の敷地に勝手に落書きしちゃって。持ち主に怒られちゃうやつだよこれ。
なんかよく分からんけど消しとくか。消す物ないから足で乱雑に擦る。うーん、まあ所々消えてるし大丈夫かな。知らんけど。
なんか隠し部屋っぽいから財宝でもあるかなって、期待していたけれどその類の物は全く無かった。
というよりも何にも置いてなかった。隠し扉とかあるかなって壁を調べてみたけれど、何も発見できず…しょうがないのでトボトボと階段を登る事にしたのだった。
いつになったら到着するんですかね?かなりの時間階段を登っている様な気がするのだが、一向に何処かに着く気配が無い。
これはまたあれか?無理矢理にでも壁を破壊した方が良いのか?なんて俺の中の破壊衝動が疼き出した時、なにやら先の方が明るくなっている事に気が付いた。
やっとゴールだ。と少し早足で階段を駆け上がると、そこには少し大きめの書斎があった。
右手には机と椅子があり、左手には本棚があり、本がずらりと並んでいる。机の上には何かを書いていた紙があったが、生憎読めない文字だった。それは本棚にある本も同じ様だ。
そしてその奥に扉を発見する。また扉か…とうんざりした気持ちになりながらも、切らずに普通に開ける。もし同じ部屋が続く様であれば破壊してやる!
思考に反して、扉の先は書斎では無い空間だった。地面と天井にびっしりと植物の根が張っている。
そして目を引くのが、真ん中に祀る様に置いてある、台座の上の真紅の宝石だった。
その宝石はかなりのサイズがある、四十センチは在るだろうか。だが、その宝石を持って帰ろう等といった考えは全くと言う程湧いてこない。
何故ならその宝石が、まるで心臓の様に脈動していたからだ。
うわ、きもっ。絶対これが悪さしてますわ。さては永遠に同じ部屋を繰り返させてたのもコイツだろ!もうこの際コイツじゃ無くても良いから破壊する。絶対破壊するわ。だってめっちゃキモいもん。
本当にコイツが原因かどうかなんてどうでも良い!色々我慢の限界だった俺は迷わずに宝石を一刀両断する。
すると、宝石はただの石となり、地面に落ちて砕け散った。
ノノ、マリー、イブ…終わったよ…知らんけど。宝石を壊しても特に何も起こる事はなかった。ただこのダンジョンから感じていたオーラ?みたいなのが無くなった気がする。多分。
宝石を壊したは良いけどこれからどうしようかなと考えていると、微かに何かの音が聞こえた気がした。
よくよく耳を澄ましてみると、壁の向こう側から何やら音が聞こえる。もしかするとこの先に皆がいるのかも知れない。
そもそも俺がこんな所に居るのも壁が壊れた所為だった。ならば壁を壊して戻せば良いだろう。
なるべく壁の薄そうな部分を探して、そこの部分を壊す事にした。剣を構え、力を込めて思いっきり袈裟斬りする。
壁に斬撃が当たる直前にドン!と何かが当たる音がしたが、もう止まらないのでそのまま振り抜く。
「あ"あ"あ"あ"あ"!?」
あっ、やべ。なんか一緒に切ったっぽい。