------クロside
眠い。兎に角眠い。昨夜、永遠と隣で話をしてくるノノの所為で全く眠れず、漸く眠れたかと思えば、更に朝クソ早くに来たデータ野郎のお陰で全く寝た気がしない。
そのデータ野郎に連れられてギルドの分会長に会いに行ったは良いものの、眠さの所為で全く話が頭に入って来なかった。寝ないように頭を起こすので一杯だったのだ。
しかも途中から小虫が周りをぷんころ飛ぶ物だから堪ったもんじゃない。コバエ野郎め、最後データ野郎の髪の中に入って行ったけど、彼の髪の毛は無事だろうか…まあどうでも良いか。
禄に準備もせずに連れてこられたものだから、途中で催してきてしまった。なので帰っても良いかなって聞いてみたら、すんなり帰してくれた。ありがとう分会長だいちゅき。そもそもこんな朝早くに呼び出されたのは分会長の所為だった。嫌い。
そんなこんなで便所に行き、無事に雉を撃ち落すことに成功したは良いが、絶妙に目が冴えてしまった。このまま帰った所ですぐに眠りにつくのも難しいだろう。
折角外に出たのだ。なにか食事をしていこうかな。まあ何処か店が空いているだろうと、歩みを進める。ここも違うかな、あっちも違うかなと飲食店を外から物色して居ると、目の前からすんごく見覚えのある、緑の肌の特徴的な耳形の老婆だった。見たくなかった会いたく無かった!!
その人物はこちらを見たかと思うと、笑みを浮かべて親しげに話しかけてきた。
「おや?クロの坊主じゃないか!こんな所で出会うとはねぇ、妹は一緒じゃないのかい?」
「…チッ、クソババア」
「ははは!クソガキめ!!もっと老人を労わらんかい!!!」
いつものような軽口に、つい悪態をついてしまう。お返しとばかりに肩をぐりぐりと小突いてくる。このババアはいつもこれだ。
ゴブリンのババア、、、リンと言う名前のババアなのだが、このババアは兎に角長生きなのだ。確か四千年は生きているとか、、、ババアどころかもはや生きるミイラだろ。
そして俺がこのババアの存在を何故に知っているのかと言えば、単純なことで、このババアが生まれたのが俺が生まれ育った街カイナ村の近くだからだ。
基本的に旅をするのが好きなババアだが、数年に一度は必ず村に寄りに来るのだ。そしてその度に俺は殺されかける。山の深くに住む魔物の住処に連れてこられたかと思いきや、魔物の眼の前に放り投げられ一人で倒せだの、一番高い山の頂上まで一日で四往復してこいだの。何かと無茶振りばかり振ってくるのだ。
しかも何故か俺だけにやってきやがるのだ。物心ついたときにはすでにその調子でこのババアの顔を見ただけで殺意が湧いてきやがる。
「ハッ!ご冗談を…」
「ほ~?どうやら儂に特訓をつけて欲しいようじゃな…何、素直に言えば」
「おばあ様。此の様な場所で出会うとは恐悦至極にございます。本日も大変ご機嫌麗しゅうみえます御座います」
「やめい、気持ち悪い。特訓なんてつけんわい」
危ねぇ…絶対なにかやってくるつもりだっただろこのババアめ…俺は騙されんぞ。
「ま、そんなどうでも良いことはええわい。元気そうで安心したわ、元気で居れよ」
それだけ言うとババアは俺が歩いてきた方向へと去って行った。まさかこんな所でババアに会うなんて思っても居なかった。
結局飯を食う気も失せてしまったので、そのまま宿に戻ることにした。
数日後、ギルドから今回の特別報酬が出た事で、王都までの移動費も十分になった。長いようで短かったソノーヘンでの暮らしも終わり、俺達は王都へと向かうことになった。
結局静かに剣を振るだけの生活は暫く叶いそうも無いようだ。けれどなんだかんだで俺はそんな生活も悪く無いと感じ始めて入るのだった。