田舎で剣だけ振っていたい   作:深海 星

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作者の性格的にこの日のこの時間に更新しますって事が出来ないので、どうしても不定期更新になりますがなるべく早めに更新できるようにしていきますので、よろしくお願いします。


4 さらばクソ田舎!まあ、帰る日まで!!!

 私、ブレイブ・グラディウスは歓喜していた。まさかこの様な山の中で人に、それもあれ程の大剣を軽々とそれも華麗に振る人間に出会えるなど思っても居なかった。だからその姿を見た瞬間に声を掛けに行ってしまったのも仕様がない事だったのだ。

 

「一目見て分かった!!君こそ私の運命なのだ!是非とも私のパートナーになってくれっ!!」

 

 常に冷静沈着は私にしては珍しく熱くなってしまった。これはいけない…少し落ち着かなくては

 

「すまない、私としたことが冷静さを失ってしまっていたようだ」

 

 冷静に…冷静に…常に師匠に言われ続けた言葉でもある。師匠は言った。

 

『お前は少し熱くなりすぎる、どの様な剣も熱いままでは脆いのだ、冷静になれ。そうすればお前の剣はすべてを切り裂ける』

 

 と。この言葉を聞いてから私は常に冷静を心がけている、まあ私はどちらかと言えば冷静な方なので恐らく一緒に居た他の弟子に言っていたのだろうが…おっとそう言えば自己紹介もまだだった。危ない危ない。

 

「私の名前はブレイブ・グラディウスだ。普段は帝都にて剣の腕を磨いているが、このイカナ山脈に武者修行の為に来ている。」

 

「…ふむ」

 

 この男…先程から思っていたが何が起きても眉一つ動かない。なんて冷静な男なんだ!!!彼はまさに私の師匠の言った冷静な剣であれを常に実践しているのだ…!!なんて男、やはりこれは運命だッ!!今日ここでッ!!この男に会うために私はこの山の奥まで死にそうになりながらも来たのだ!!

 この山で起きたことは思い出したくない…普段よりもやたら強い魔物達に追われ、迎撃し休んでいる時も常に周りを警戒しなければならないので気も休まらない。

 そして村に着く少し前に見た大きな竜の群れ…あれはとてもではないが一人で相手に出来るようなものではない…上位の冒険者たちが合同で討伐隊を組んで漸くといったところか。まあ英雄と言われた限られた超上位の冒険者であればもしかすると単独でも討伐出来るのかもしれないが…

 私も上位冒険者の端くれとは言え一人ではどうすることも出来ない。そうして竜の群れから逃げている時にこの村の住人に会えたのは幸運であった。

 

「そしてこの村に来て君の剣を見て確信した…!私がこの村に来たのは運命だったのだと!!君のその美しい剣捌き素晴らしい!!!是非とも私と冒険者をして欲しい!!どうだろうか?」

 

「……なるほど」

 

「いいんじゃない?帝都、行ってきたら?」

 

「君の家族もこう言ってるしどうだろうか?」

 

「…ああ」

 

「!良かった!早速明日にでも出発しよう!」

 

「…ああ」

 

 彼は何かを思案しているようであったが、彼の家族の協力を受けて彼も私に同行して冒険者になることを快く受けてくれた様だった。

 

 そうして私は初めてこの村で会った御仁の家に泊めてもらい、久しぶりに安心感の中で眠りに着くことが出来るのであった。

 

 そうして翌朝、この村で食料を分けて頂き出立する事が出来たのであった。

 

「改めて名乗ろう、私はブレイブ・グラディウスと言う。君の名前をまだ聞いていなかったな、教えてくれないか?」

 

「…クロ・スミスだ」

 

 私としたことが思いの外熱くなっていたらしい。ここに至るまで彼の名前すら知らなかったのだ。そんな私に彼、いやクロは嫌な顔一つすることなく私の言葉に返してくれた。彼は剣の腕も一流だが人間性も一流と言う事だろう。やはり私の感じたことは間違いではなかったのだ。

 そうして村を出てはたと気がつく、そう言えば帰り道はどっちだろう…と。

 

「すまないクロ。私は道が分からないのだが君に着いていったので問題は無いだろうか」

 

「…ああ」

 

 短いが迷いのない確かな答えが返って来て私は安心する。人によっては無愛想なだけに見えるその短い会話はしかし彼の洗練された動きの前では安心感に変わる。武人肌の人間とは今までも何人か接してきたが、その中でも彼は今まで出会った人間の中でも一番かもしれない。

 そうして彼と歩いていると不意にどこからか音が聞こえた。

 

「…魔物だ」

 

「流石クロだな。私も何かが動く音が聞こえたよ」

 

 彼にも聞こえていたらしい。すぐに私に情報共有してくれる。やはりこの様な過酷な山に住んでいたのだ、今まで数え切れないほどの修羅場をくぐって来たのだろう。

 

 警戒しながら進んでいるとそれは見えた。人の腰ほどの身長に濃い緑色の肌、尖った耳。それは古くはエルフと同じ祖を元にしていると言われている魔物、ゴブリンであった。それが10体ほど。ここが帝都の近くであれば私一人でも十分倒しきれる量だが、このマナの濃い中のゴブリンは手強い。協力して素早く倒したい。

 

「クロ!右側は私が…」

 

 そう思いクロに敵の分担を申し出ようとした時であった。クロがその自身の身長とあまり変わらない剣を引き抜いた。そう思った直後には彼の前に居たゴブリンはその鉄塊の一振りで三体が引きちぎれながら吹き飛んでいった。

 なんという力であろうか。一見唯力任せに振るうしか無いような大きさの剣であるにも関わらず、それは彼の手にかかれば美しい舞踊の様であった。そうして彼はまるで踊るかのようにゴブリンを斬ったその反動でまた三体のゴブリンを斬るのであった。

 

 

 

 

 

------

 

 

 

 何故こんな事になってしまったのだろうか…俺、クロ・スミスの人生に於いてあまりにも不幸な出来事が起ころうとしていた。それもこれも昨日変な旅人が訪れたせいだ…彼が来なければ俺はずっとあの村で剣を振っているだけで生きていけたのに。

 朝になってどうにか行かないことにはならないだろうかと思っていたが、ティナがにこにこと俺の荷物の準備をして待っていたのでもはやどうしようも無かった。そんなに俺を追い出したいのか!!昨日まで慕ってくれていると思っていた俺の姿はさぞお笑いだっただろう。

 そんな身内からの処刑宣言を受け、村のよくわからんデカい骨の下で俺を待っている変態赤髪人生破壊兄さんの元に渋々と行く羽目になった。村を出る時ティナは満面の笑みで手を振っていた。くそ!そんなに俺が村を出ていくのが嬉しいのか!この薄情者!!

 

 そうして少し歩いていると変態赤髪人生破壊兄さんから声がかかった。

 

「改めて名乗ろう、私はブレイブ・グラディウスと言う。君の名前をまだ聞いていなかったな、教えてくれないか?」

 

「…クロ・スミスだ」

 

 このブレ…なんだ?イブで良いか。イブが言う通り確かに俺は自分の名前を教えていなかった。自分の名前をすんなり言えたのは奇跡に近いだろう。確かにー!って思ってたら勝手に口が動いてくれていた。フッ、故郷を離れてはや十分少々、早くもこの俺のコミュニケーション能力が成長を見せていると言うことか…恐ろしいな若さというのは…

 そうして適当に森を歩くこと二時間程、そう言えばどこに向かってるんだろうな~って思っていたらイブが話しかけてきた。

 

「すまないクロ。私は道が分からないのだが君に着いていったので問題は無いだろうか」

 

 いや、お前道知らないんかい!え?どうやって村まで来たの!?てか俺が知るわけ無いじゃん!生まれてから村から出たこと無いのに…どないしよ…とりあえず何か言わないとなぁ…

 

「…ああ」

 

 これしか声が出なかった。どうした俺のコミュニケーション能力よ!まさか先程の自己紹介ですべての力を使い切ってしまったのか!?フッ…認めたくないものだな…コミュニケーション能力の低さを…しかしこれはまずい。流石に二人でこんな森の中を彷徨うのは自殺行為というもの。

 

 そう思い訂正しようとイブの方を見たが…なんか物凄く安心した表情でこちらを見ていた。信頼度MAX人間がそこには居た。

 

 ええ…俺まだ君に信頼されるような事してないでしょ、なんでそんな顔をこちらに向けられるんだ…?しかし流石の俺もそんな顔を向けられてしまっては訂正等出来ようはずもなく…開き直って適当に進むことにした。

 

 まっすぐ歩いていれば、そのうち町に着くもんげ!難しいことは考えないことにした。

 

 

 

 

 

 

 そうして歩いていれば独特な匂いがした。この匂いはゴブリンの物だな。ゴブリンと一言に言っても様々な者が居る。そもそもエルフを祖とするから人間にとても近いものなのだ。

 

 それ故に友好的な者とそうで無いものが居る。その一番の違いは匂いと肌の色だ、穏やかな個体は匂いも薄く肌も綺麗な緑に近いが、獣に近くなるに連れて臭く肌も濃い緑となっていく。そしてこの匂いは間違いなく敵性個体の物だ。

 

「…魔物だ」

 

「流石クロだな。私も何かが動く音が聞こえたよ」

 

 おお、声が出た。まさか注意喚起出来るとは、先程はすべての力を使ったと思い込んでいたが俺のコミュ力もなかなかやるではないか!褒めて遣わすぞ。ゴブリンはすぐには襲って来ない。こちらを監視して奇襲を仕掛けてくるのだ。なのでそのまま気が付いてないフリをしながら歩くとほらお出ましだ!!

 

「クロ!右側は私が…」

 

 イブが何か言ったような気がしたが…まあ気の所為だろう。ゴブリンくらいなら余裕でなんとかなる。おら!俺の鉄塊丸の一撃を喰らえ!!お、ラッキー!なんか三体まとめて当たった!今日は調子のいい日らしい。

 

 ちょっとばかし力任せに振るってしまい足がもたついたが、うまいこともう三体に攻撃を当てることが出来たようだ。今日はついてますねぇ!!!これが俺の本当の力…もう私何も怖くない!!

 

 などと一人称が可笑しくなるほど頭の中で自分を褒め称えていたが、調子に乗りすぎて少し手間取りつつもう一体を倒すと、丁度イブが残りの三体を倒し切ったところだった。

 

 イブは恐らく俺が調子に乗って手間取った事に感づいたのであろう。少し呆れた様な目をこちらに向けてきていた。

 

 ごめんって。ほらそろそろ野営の準備をしようよ。そうして俺はこの辺りの魔物が嫌う匂いのお香を炊いた。

 

「クロそれはなんだい?」

 

 イブは気になったのだろう。お香を指さして聞いて来た。

 

「…魔物の嫌うお香だ」

 

「そんな物が在ったのか…ならばそれを焚きながら歩けば良かったんじゃないのかい?」

 

 確かにイブの言っていることはその通りなのだが…

 

「…そうすると広範囲に匂いを巻くことになる。すると錯乱状態になった魔物が村まで行きかねない」

 

「なるほど。確かにそれは無闇には使えないね」

 

 そうなのだ。ぶっちゃけこの辺りの魔物が村に入ったところでどうということも無いのだが、面倒くさいし家が傷をつけられたら堪らないのだ。昔これを焚きながら走り回って村にトカゲが二十匹も入ってしまい、村長にそれはもうしこたま起こられた。その後俺はしばらく村の便利屋としてこき使われたのだ…思い出すだけでも恐ろしい…

 

 そんな訳で一部で使う分には問題ないけど広範囲に使うにはちょっと駄目なのだ。

 

 あれ?今めちゃくちゃ自然に会話が出来ていたような…まあ気のせいだろう。俺のコミュ力さんは今日はもうお疲れなのだ。さっさと寝てしまおう。

 

 そうして俺達は野営の準備を終わらせて睡眠の準備を取るのであった…

 

「おやすみクロ」

 

「…ああ」

 

 それにしても…道はこっちで良いんだろうか…まあなんとかなるだろう。そうして俺の瞼は落ちたのであった。

 

 

 

------

 

 

 

 カイナ村を出る自分の兄を見送りながらティナ・スミスは思う。

 

『そっちって帝都と逆なんだけどなぁ…まあおにいちゃんなら何があっても大丈夫でしょ。それに…ふふ、すぐに私も行くからね…』

 

 そうしてティナは村の中へと戻って行くのであった。




今回でヒロインが出るはずやったんやけどなぁ…おかしいなぁ…



人物紹介

ブレイブ・グラディウス

赤髪赤目。身長175cmくらい、割と細身。

黒いのがカッコいいと思っているので全身黒尽くめ。

冷静を自負しているがかなりの熱血漢。

主人公を見た時に運命を感じた。勘違いである。

かなりのバカであり師匠には諦められている。

どんな訓練でも満足しないので適当なことを教えても何故か強くなる。

農家の出身であったが、どうしても剣士になりたくて現在の師匠のもとに弟子入りする。

師匠から礼儀作法などを教えられており、それなりに見れるようになっている。

礼儀を教えないと唯のバカしか残らないと思い必死に教えられた。

師匠からは色々な事を教わったが、段々と内容が適当になっていることに気が付いていない。
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