ゴブリンを倒してから三日。俺達は只々森の中を彷徨っていた。魔物の匂いがする場所を避けながら歩いている為、戦闘になることは数えるほど程であった。途中一メートルくらいの二足歩行タイプのトカゲと戦闘になったが、首を落として一発だった。この辺りだと知っている魔物ばかりなので楽なものである。
しかし帝都に向かっているかどうかは全く分からなかった!だって村からこんなに離れたこと無かったし!それなのに相変わらずイブは信頼マックスの目を向けて着いてくる。これに関しては俺が道を分からないと素直に伝えなかったのが良くなかった気がする。
なんか心なしかマナが濃くなってきた様な気もするし…一回村に帰った方が良いのかもしれない。ま、でも何とかなるよねイブ太郎!そうして帝都に着くかも分からない道を進んで行くのであった。
そして今日も二人で夜営の準備をする。これで四回目なので慣れたものだ。俺は焚き火を起こす為の薪を拾う為野営地から少し離れて一人歩いていた。うーんこの辺りは余り良い枝が落ちてないなぁ…なんて考えていると少し先に高さ一メートル程の小ぶりな鹿が見えた。怪我もなく健康そうな個体だ。
この三日間干し肉や果実等しか食べていなかった為新鮮な肉が食べたいと思いっていたので丁度いい。こいつを晩御飯とする!
手頃なサイズの石を持ってそろりそろりと風下から近づいて…鹿の頭が吹き飛ばない程度の力で思いっきり石を頭にぶつける!上手いこと鹿を気絶させる事が出来た様なので近くの川で放血しようと鹿を担ごうとした時、木の上から結構な大きさの生物が降ってきた。
「…それ私が狙ってた獲物」
喋ったぁぁああ!!ってそら喋るか。いきなり頭上から現れたのでびっくりしたが、よくよく見なくてもそれは青に近い銀髪を短く切り揃え、動きやすそうな格好をした人間の少女であった。
それにしても彼女が先にこいつを狙っていたのか…どの道イブと二人では食べ切れないのでここはお裾分けの精神と行くか。コミュ力さんが息をしていない俺でも流石に子供相手ならば問題ない。
「…一緒に、食べるか?」
まあ大人に比べたらだけど。
「!…いいの?」
しかし可愛らしい声だな。そして俺は気がついてしまった…この子返事をする迄に少し間が開くのだ。それはつまり、俺と同じくコミュ力さんが瀕死だという事!何故分かるかって?ソースは俺。
ふふふ、しかしならばコミュ力の先輩として優しくしてやらねばなるまい。
「…ああ、いっぱい食え」
「…ありがとう、とてもお腹が空いていた」
そう言うと同時に彼女のお腹から可愛らしい音が聞こえてきた。どうやら相当に腹を空かせているらしいな、ならは善は急げだ!すぐにご飯の準備をしようじゃ無いか!
「獲物を解体する、手伝ってくれ」
「…うん!」
そうして彼女を連れ立って川で鹿の解体ショーと洒落込む事になったのだった。わっしょいわっしょい。
鹿を解体して戻るとイブがご飯の準備をして待っていた。ふふふ、今日はそこにメインディッシュ様が加わるよ!そうして近づくとイブがこちらに気が付いた。
「クロ!戻ってきたか。おお!それはまさか鹿肉かい!?」
お、さすがイブ。一目でメインディッシュ様の存在に気が付いたらしい。やはり彼も新鮮な肉が食べたかったのだろう。やはりあそこで鹿を狩るという俺の判断は間違っていなかったッ!
そうしてイブと肉を焼く準備をしたところで俺の後ろに居た少女の存在に気が付いたみたいだった。
「あれ?クロ、そちらの女性は誰だい?」
「…狙う獲物が重なったので食事を共にする事にした。」
おお、コミュ力瀕死仲間が居るお陰かいつもよりも言葉が出てくるでは無いか!
「なるほど、そうだったのか。ブレイブ・グラディウスだよろしく頼む」
「…私はノノ…よろしく」
なるほど、彼女はノノと言うのか。名前を覚えるのが苦手な俺でも流石に二文字なら覚えれるだろう!何とも物覚えの悪い人間に優しい名前では無いか!
「…あなたの名前は?」
彼女にそう言われて、そういえば俺はまだ自己紹介をしていなかったな。という事に気が付いた。
「…クロ・スミスだ」
「ささ!自己紹介も済んだところで食事にしようじゃ無いか!」
イブのその言葉で食事の時間となったのだった。
「なんと!貴方はエルフの方であったか。しかしこの山へ何をしに?」
「…この山はマナが豊富だから…来た」
食事をしながら会話する事で仲が深まったのか、イブと彼女は会話を楽しんでいた。俺?俺はもちろんウンウンと頷くフリをする事によって会話に参加してますよ?と見せる奥義、ウンウンの舞をしていた。
まああれじゃん?なんか人の会話って途中で入っていいか分からないじゃん?でも参加してる風にした方が雰囲気はなんか良くなる気がするし…このウンウンの舞はトッテモ重要なのだ!!
そして、俺は気が付いてしまったのだ。彼女はコミュ力が瀕死なのでは無い…ただ少し会話のテンポが遅いだけなのだ…!!何という事だ、妹に続いてまたも味方だと思った人間に裏切られてしまった…味方だと思っていた俺の姿はさぞお笑いだっただろう。
しかしエルフか、エルフは耳が尖っていると聞いた気がするのだが、少なくとも彼女の耳は普通の人間と変わりが無い。エルフの耳が尖っていると言うのは、租を同じとするゴブリンの耳が尖っている事からも事実だと思っていたのだが…「耳は尖っていないのか…」
「…長い時の中で大分人間の血も入った…だから皆尖っている訳ではないの」
!?なんと彼女は心が読めるのか!?声に出していないのに俺の疑問に答えるとは…妹といい彼女といい…やはりコミュ力を持ちし者は顔を見ただけで考えが分かるというのだな!サスガダァ!!
「失礼かもしれませんが、エルフは長命だと聞きます。貴方はかなりおさ…若く見えますが長い時を過ごされたのですか?」
「…貴方の言いたい事は…分かる。私はエルフの中でも若く見られるけれど…これでも成人はしている」
なんと。彼女は見た目だけならば十歳位に見えるが成人しているらしい。人間は十五位で成人とする場合が多いらしい、国によって差異はあるらしいが。
つまり彼女も恐らく十五歳位だろう!つまり年下!ならば俺のコミュ力さんも少しは力を出してくれる。彼女に思った以上のコミュ力があった事は衝撃であったが、なに子供ならば二人力よ!
イブと彼女は何やらまだ話している様であったが、そろそろ遅い時間になって来たので眠る事とした。何やら彼女も今後同行する事になった様だが、まあ良いだろう。人数が増えて困るという事は今のところ無いのだから。
俺は久しぶりの新鮮な肉を食べた幸福感で一杯のまま眠りに着くのであった。あ、残りの肉はエルフの彼女が燻製にしてくれました。
そうして新たな仲間といざ出発!したのは良いんだけど…まじでこれどこに向かってるんだろう?まあ何とかなるか!と、ここ四日間で何度も考えついた結論に行き着いた時"それ"は訪れた。
4足で地に足を着けていると言うのにも関わらず、五メートルはあるかという巨体。生半可な攻撃は全て弾くであろう赤く堅牢な鱗。人を何の苦労もなく絶命させるであろう鋭い爪。そして背中に生えた二対の翼。あ、これあかんやつや。
一瞬、その竜が動いた。何も見えていなかったが、咄嗟に剣を守る様に突き出す。轟音。衝撃。最後に見えたが恐らくは尻尾の一振りだ。その一振りで俺たち三人は吹っ飛ばされた。
吹っ飛ばさせれた先に見えるのは山中を切り裂く様に開いた谷間。タニィ!?おいおい死んだわ俺。
そして俺たちは仲良く谷底に落ちていくのであった。
ようやく少し話が進んだかな?