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町の冒険者に教えられたポイントにやって来ました!町を出て森を一時間程度進むと到着する、初心者御用達の場所だ。よく考えたらイブとは一緒にゴブリンと戦ったけど、俺が見た時にはもう戦闘を終えていたから彼の戦闘スタイルは知らないのだった。その後も魔物とは会ったけど雑魚か赤竜しか会わなかったし。イブは魔法剣士だというし、その戦闘スタイルがどの様なものか楽しみである。
「さて、皆の戦闘スタイルを確認したいと思うんだけど良いかな?」
「構わない、仲間の力を知るのは大切」
「…ああ」
魔法剣士の事気になるけど、どうやって聞こうかなって思っていたら、タイミング良くノノが聞いてくれた。
「…魔法剣士話には聞いた事あるけど…この目で見た事はない」
「そうだね…二人は何を持ってして魔法剣士とするのか知っているかい?」
そういえば知らないな。剣から炎出したりできたら魔法剣士になるのだろうか?バーベキューの時とか楽そう。
「…確かダンジョンで稀に手に入る…魔法剣を使って戦うのが魔法剣士だったと記憶してる」
「ああ、ノノの言う通りだ。だから剣を持って魔法で戦っても魔法剣士にはならない。そして魔法剣には魔法が込められていて、マナを流し込む事でその魔法を使う事が出来るんだ。」
なるほどね。魔法剣、個人的にとても興味があります。イブが背中に背負っていた剣は魔法剣だったのか、どういう効果があるんだろ?
「…ブレイブ、あなたの魔法剣は何が使えるの?」
…すごい、俺が気になった事を全部ノノが聞いてくれる。これはもはや一家に一台ノノの時代かもしれない。
「私の魔法剣は炎の魔法が使える。つまり私は炎の魔法剣士という訳だな。」
「…なるほど」
結局炎出るのね。今度肉を焼く時に貸してもらおうかな。中から炙れるからしっかりと焼けそうだ。イブの話が終わったと見て、今度はノノが口を開く。
「…私はマナを人より溜め込めれるから…それを使って体を強化して…殴るのが私のスタイル。」
そう言ってノノは『しゅっしゅっ』と口で言いながら、ファイティングポーズを取る。まさかの脳筋スタイルだった。小柄だしテクニカルなスタイルかと思いきや、まさかの殴打である。確かに川から俺達二人を引き上げたのだから相当に強化されるのだろう。それでも彼女が魔物を殴り倒す所が想像できなくて、つい顔が緩んでしまった。きっとイブも同じだったのだと思う、彼の口も少し口角が上がっていたから。そんな様子の俺達にノノは少し不服そうだったが、何も言わなかった。さて、最後は俺か〜、まあ俺が出来る事は一つしか無いんだよな。
「…俺は斬るだけだ。」
そう、これしか出来ないからね〜。むしろこれを無くしたら俺のアイデンティティは崩壊してしまう。というか最近の俺のコミュ力さん、成長が著しく無いか!?『ああ』以外の言葉も少しづつ話せるようになって来たし、これが旅の力?可愛いコミュ力には旅をさせよって事?この調子なら吟遊詩人にもなれちゃうかも!?うふふ。
俺が自分の成長に浮かれていると嗅いだ事の無い、独特な匂いがして来た。多分この辺りに居るっていう魔物の物だな。
「…敵だ」
俺のその言葉で、二人も周囲を警戒する。少しすると匂いの正体が姿を現した。それは灰色の毛の、鋭い爪を持った凡そ二メートル位の熊の魔物だった。この程度の相手なら一刀で終わらせられそうだな、と思い剣を抜こうとするとノノが前に出た。
「…丁度良いから、私の力見せる」
そう言って一人で魔物と対峙する。もしかして俺とイブが微笑ましい目で見てたの意外と気にしてたな?なんか余計に微笑ましいんだが…しかし本当に一人で倒せるんだろうか。何かあれば助ければ良いかな。なんて思って見ていたのだが、俺達が思っていた以上にノノは強かった。
こちらの様子を伺っていた熊の魔物が、動きを見せた瞬間、ノノの姿が消えた。
「…ふっ!」
気がついた時には熊の懐に入り込んでいた。そのまま左手の掌を立てて前に出し、右の拳を引いた。次の瞬間には彼女の正拳突きが炸裂していた。熊の魔物がくの字に折れて飛んで行く。そのまま後ろの木をへし折り止まった。どう見ても絶命してた。
えぇ〜!?つんよ!!多分熊さん五百キロは有ったと思うんですけど?あなた多分四十キロくらいしか無いと思うんですけど?マナで強化してるにしてもやば過ぎだろ。隣で見てたイブくんも目ん玉飛び出してますよ?『ええぇ!?』って顔してるよ?てか声にも出てるわ。
ノノは「ぶい」と言いながらこちらにピースサインを向けている。そんなに可愛らしい場面でしたかね?熊さんが吹っ飛んで行く恐怖映像だったんだけど。というかよく考えたらあの山の中に一人で居たって事は、少なくともあの山で一人で生き抜けるくらいの力が在るという事だ。俺より年下なのに凄いなぁ。
「…なるほど」
俺は何とか声を捻り出し、まあ分かってましたよ?感を出した。エルフって怖い。俺は心底そう思いました。
その後、何度かの戦闘をし、お互いの力は何となく把握できた。イブが森を燃やしかけて焦った事以外は何事もなかったし、あれから熊さんよりも強い敵も出なかった。イブも普通に強かった。魔法剣の切れ味もかなりのもので何よりもえげつないのが、魔法を発動させ剣に炎を纏わせて切ると、切断面が焼かれるのだ。
これがマジでエグいのだ。魔物の中には少々の怪我なら即座に回復してしまうようなタイプも居るのだが、切断と同時に焼く事で回復が出来なくなるのだ。そして何より焼肉のいい匂いがする。いや、これは関係ないか。
しかしイブ曰く、余り焼いてしまうと素材としての価値が下がり、買取価格が落ちてしまうのだそうだ。確かにこんなにこんがり焼けてたらそうかもしれない。魔物の素材も、持てるのには限りがあるため必要な分だけ回収し、残りは埋葬する。無駄な殺生をしているように見えるかも知れないが、魔物は生命力が強く、繁殖するのも早い。ある程度数を減らさないと魔物ではない動物の数が必要以上に減ってしまうのだ。とは言え命を奪った以上はなるべく無駄にはしない。使える素材は全て使うのだ。
そうして今日の目的を果たした俺達は帰路に付くのだった。ノノはマナが少なくなって疲れたらしく、俺に肩車されていた。どうも俺は普通の人よりもマナが溢れているらしく、近くにいると回復が早いらしいのだ。こうしていると昔ティナをよく肩車してやったのを思い出す。あの頃は良かった…あの頃は…今じゃ木偶の坊扱いされて村から追い出される始末…どこでこんな事になってしまったんだろう…
俺は郷愁に駆られながら宿へと戻ったのだった。
なんだかんだでこの町に来てから一週間が経った。俺はもう我慢の限界であった。あれからノノはマナが回復するからと、何かと俺に引っ付くようになった。その他の時間も皆で魔物を倒したりなんだりしていたので、一人でゆっくりとする時間が無かったのだ。
それが何を意味するかと言うと…素振りが出来ない!!俺は魔物を斬るのも別に嫌いではないが、一人で静かに剣だけを振るう、あの時間が好きなのだ!それなのに村を出てから此の方一度も素振りの時間が取れていない!
これは由々しき事態であった。俺にとって睡眠や食事を取っていないのと同じである。人が一週間以上も睡眠食事を取らなかったらどうなる?勿論死だ。つまり俺は今まさに死にかけていた。こんなに素振りをしないのがキツイとは思っても見なかった。
村に居た時は常に振る時間が取れていた。今考えると天国の様な環境である。なのに今はこのざまだ!何としても素振りの時間が取りたい俺は、一計を案じる事にした。
その名も、そろそろ休まない?作戦だ!この町に来て一週間、割と休みなく俺達は魔物を狩っていた。つまりこのタイミングなら自然に受け入れられるのだ!か、完璧な作戦だ!自分で自分が怖いよ。
思いついたが吉日、早速伝えに行かなくては…!!俺は宿の食堂へと足を運ぶ。
「ああ、クロおはよう。最近働き詰めだったしお金に余裕も出て来たから今日明日は休みにしようと思うんだ。どうかな?」
「…それで良い」
「良かった。じゃあそう言う事で頼むよ。」
そう言ってイブは何処かへと出かけて行った。結果的には同じ事なのだが…何か負けた気分である。だが休みと言えど安心は出来ない!何故なら最近引っ付いてくるノノの存在があるからだ!!
…いつまで経ってもくる様子が無いな。そう思ってるとイブが戻って来て告げた。
「そうそう。ノノにはもう伝えたよ。彼女も何処かに出掛けたみたいだ。」
そう言って再び宿を後にするイブ。俺は膝から崩れ落ちた。結果的には思い通りなのだが…物凄く負けた気分だ。ま、まあ良い!気を取り直して素振りだ!!今日の俺は抜かりないぞ!途中で二人が戻って来て邪魔をされない様に、町の外で素振りをするのだ!
俺はうきうきで町の外へと出掛けて行った。
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私、ノノはマナを求めてあっちへこっちへ旅をしていた。生まれ住んだ町を出たのには特に理由も無かった。ただ何となく村の外の世界を見たくなったのだ。
小さい頃から何かと知りたがりだった私は、旅に出てからもそれは変わらなかった。知らない物があれば見に行き、面白そうな本があれば読んだ。
町に行く事も有ったけど基本は森の中で過ごした。私の村は田舎だったから、自然の中での生き方を色んな大人が教えてくれた。
その山に行ったのは偶々だった。何となく、生まれた村と近しい物を感じて引き寄せられる様に向かった。そこはマナが濃くて、マナを溜め込める私には心地いい場所だった。
だから彼との出会いは偶然だった。いつもの様に木に登って果実を取っていると、野生の鹿が目に入った。そういえばもう一月は新鮮な肉を食べて無いなと、思ったが一人で飼ったところで食べ切れる量では無いし、もっと小さい獲物を狙おうかと思ってた時その人は現れた。
黒髪で背が高くて、大きな剣を背負っている。そして何よりも『筋肉が凄い!』私は少し筋肉が好きだった。その彼が私が狩ろうか迷っていた獲物を慣れた手付きで仕留めていた。どうしよう、筋肉が去ってしまう…私は何も考えずに、彼の前に姿を現した。どうしよう何も考えてなかった。
「…それ私が狙ってた獲物」
半分パニックになっていた私は、思ってもいない事を口走ってしまった。やってしまった…狙っていたも何も狩るかどうかも決めてなかったし、そもそも先に目を付けていた証拠もない。もはや言い掛かりである。しかし、そんな私に彼は少し微笑んだ方思うと一緒に食べないかと言う。その言葉に私は甘える事にした。彼は私が獲物をなかなか取れずに困っていると思ったのか、沢山食べて良いと言う。少し恥ずかしくなった私はその彼の気遣いに乗ることにした。久しぶりの新鮮なお肉に体が反応したのか、丁度お腹が鳴ってしまった。余計に恥ずかしかった。
その後獲物を解体し、彼の野営しているという場所まで付いて行った。仲間だという魔法剣士と会話した。その時に彼の名前がクロというのを知った。その後はブレイブと名乗った魔法剣士と話し、帝都に向かって居るのだと言う彼らの旅に付いていことにした。
正直帝都自体には興味があったが、それ以上にクロの筋肉の方に興味があった。どうにかしてその筋肉に触れないだろうか…まあ彼らの旅に付いて行けばそのうちチャンスがあるだろう。その日はそのまま眠りについた。
翌朝、彼らに付いて山を歩く。帝都ってそっちの方向だったかな?と思ったが、クロはこの山の出身らしいので近道でもあるのだろう。そう思い私は静かに彼らに付いて行った。少し歩いた所でそれは急に現れた。それは古い文献に記載されているイカナの赤竜と外見が一致していた。恐らく違うのはその大きさだけだろう。他の魔物とはその体に持つマナの量が違う。逃げるしか無い、そう思った次の瞬間には私達は吹き飛ばされていた。赤竜に攻撃されたのだ。クロが守ってくれた為なんとか直撃はしなかった様だが、それでも物凄い衝撃だった。
吹き飛ばされた先の谷間に、私達は吸い込まれるようにして落ちていき、クロがその剣を壁に当てることでなんとか落下のスピードは落ちていたが、止まるまでは行かず私達は底に有った川に落ちた。
数時間は流されていたのだと思う、途中でなんとか意識を取り戻した私は二人も近くに流されているのを見つける。体に溜めたマナを使い、体を強化する。二人を掴んで比較的川の浅い部分に地を着けて思い切り飛んだ。物凄い水圧が掛かったがどうにか川からは出ることが出来た。そのまま川辺に二人を寝かせて、私は暖を取る準備をした。
火を焚き体を温めて居ると、ふと閃いた。今なら筋肉を合法的に触れるのでは無いかと。思いついたら即行動、私はクロに手を伸ばし…すぐに引っ込めた。ブレイブが起きたようだったからだ。危なかった、触っているのを見られる所だった。クロもすぐに目を覚ましたので、今回は筋肉を触ることは出来ない様だった。
その後話し合い近くの町へと向かうことになった。彼らの荷物は流されてしまったが、私の荷物は量が少なかったからかどうにか流されずに済んでいた。その中に多少の通貨が有ったため、恐らくこれで全員一泊は出来るだろうと、思っていたのだが町に入る時の通行税で少し心許無くなってしまった。
クロが持っていた魔物の素材のお陰でお金の問題は解決し、どうにか宿に泊まることが出来た。久しぶりのお風呂は、自然の中での生活を好んでいる私でも嬉しいものだった。
翌日は全員の力や戦闘スタイルを確認するために、手頃な魔物を狩ることになった。私が拳で戦う事を告げた時の二人の顔は、冗談を言っている子供を見る微笑ましい物だった。川から引き上げているからかなりの力が有ることは分かっているが、直接見てないので信じれないのだろう。私としてはその反応は遺憾であったが、丁度良く魔物が現れてくれた。
「…丁度良いから、私の力見せる」
そうして少し心配そうな顔をしている二人を無視して前に出る。体にマナを巡らせる。この程度の相手なら強化しなくても倒せるが、二人の度肝を抜いてやりたかった。
「ふっ!」
一息入れ、飛ぶ。それだけで魔物の懐まで移動する。ここは分かりやすく、一突きで終わらせよう。左手を前に出し、魔物に当てる。右手を引いて、力を溜め、一気に右手と左手の場所を入れ替える。手に肉を殴った時の独特の感触と、骨を砕く音が聞こえる。そして魔物は吹き飛んでいき、木にぶつかり折りながら止まった。
二人の方を見ると口を開けて驚いていた。作戦は成功である。余りにも上手くいったので嬉しくなって二人に向かってVサインをする。
その後は簡単な魔物を狩り、全員の戦闘を見て終わりになった。倒した魔物の素材を取るのも忘れない。帰ろうかという時にクロと目が合った。それは小さい子に対して遊び疲れた?と見守っている親の目と同じだった。私は別に疲れては居なかったが、なんとなく癪に障ったので肩車を要求した。何故かすんなりその要求は通り、私は肩車をされる事になった。
自分で言っておいて何ではあるのだが少し…いや、かなり恥ずかしかった。一応使ったマナを補給したいとの言い訳をしておいた。一応嘘ではない。彼はマナの濃い所で暮らしていた所為か他の人よりも多くのマナが溢れていた。実際使ったマナは十分な程に回復出来た。
そして私は気が付いた。疲れた事を理由にすれば彼の筋肉を簡単に触れる事が出来るのでは無いかと!!そしてその考えは正しかった。翌日からマナを回復したいからと言えば彼は私が触っても何も言わなかったのだ!こんなに簡単な事だったなんて!!あっちをさわさわ、こっちをさわさわ。う~ん素晴らしい筋肉。これはずっと触っていたい。特に背中が素晴らしい。私は特に用事の無い時は彼の背中に張り付いて筋肉を堪能するのであった。
町に来てから一週間が経った朝。食堂にて食事を取っているとブレイブが来て今日明日は休みにすると言ってきた。確かにこの一週間でかなりの量の魔物を狩り、資金については余裕が出て来ていた。私は丁度気になっていた事もあったので、その提案に賛成した。
食事を終えた私は、町の図書館に来ていた。この町は七千人ほどが暮らしているらしく、そこそこ大きい図書館が有った。私が気になることとはクロの村と、赤竜の事だ。イカナ山脈に村があるなんて話は聞いたことがないし、伝承されている赤竜はもっと大きかった筈だ。この図書館で真実が分かるとは思っては居ないが、調べる価値はあるだろう。そうして歴史のありそうな石造りの図書館の門を潜った。
受付には歳を取って白くなったのであろう髪を纏めた、老人が座っていた。
「…イカナ山脈についての本は置いてますか?」
「ああ…イカナ山脈ねぇ、ちょっと待ってね。」
そういうと老人は手元に有った目録を捲り始めた。少し経って目的のページが見つかったのだろう、動きを止めて口を開く。
「イカナ山脈だけの資料じゃないけど、郷土資料が二階にあるねぇ。
「…ありがとうございます。」
私はお礼を言って、言われた通り二階へと向かった。二階には郷土に関する資料や様々な地域に関する知識に関する本が所狭しと置いてあった。私はこの付近についての歴史が書いてありそうな本を手当たり次第に読み始めた。
結論から言って、私が求めて居たような新たな情報は無かった。やはりイカナ山脈に村があるなんて情報も、赤竜が小さい等と言う情報も無かったのである。外を見ると日も落ち掛けている。そろそろ帰ろうかと席を立ち、本を戻そうとした時。後ろから声を掛けられた。
「おや、今どき郷土資料を読むなんて若いのにしては珍しいねぇ」
それは皺がれた女性の声だった。声のした方に顔を向けるとそこには老婆が居た。成人男性と同じくらいの身長。長く尖った耳。ゆったりとした服を着て、綺麗な長い金髪を後ろで一つに纏めていた。そして何よりも肌が“薄い緑色”だった。
その“ゴブリンの老婆”は少し驚いている私に向けて微笑みながら言った。
「おお、イカナの地の事を調べて居たのかい。わたしゃで良ければ知ってることを話してあげるよ。」
2025.3.18 重複部分を修正