日本国召喚 -新世界・防衛力整備計画- 作:後日装備
日本列島の転移後、日本国はロウリア王国やパーパルディア皇国といった周辺の覇権主義国家との軍事衝突に度々見舞われ、そのたびに陸海空の自衛隊に出動命令を出し、敵対勢力の軍事力を撃退してきた。
中でも海上自衛隊の護衛艦隊は、ロデニウス沖大海戦、フェン沖海戦、エストシラント沖大海戦といった数々の海戦に勝利している。それらの戦闘では護衛艦隊側にほぼ被害を出すことなく、毎度のように圧勝と言える戦果を勝ち取っていた。
ロデニウス沖大海戦では、海自護衛艦8隻が木造軍船4,400隻からなるロウリア海軍と交戦、うち1,400隻以上を撃沈する戦果を挙げた。
エストシラント沖大海戦では、海自護衛艦11隻が投入され、戦列艦や飛竜母艦など計600隻からなるパーパルディア皇国海軍の主力艦隊と交戦し、過半の550隻を撃沈した。
ロウリアは剣や弓矢が主戦力なので砲火器を持たず、パーパルディアも産業革命の前後くらいの技術力しかない。現代兵器で武装した海自に勝てる筈が無いのは当然と言える。
だが、度重なる海戦を経験した海自は、ある問題を認識した。
護衛艦の砲撃力不足である。
先に述べた海戦では、対艦戦闘の主兵装となる護衛艦の
SSMは威力と射程に大変優れる反面、コストが高いので搭載量も少なく、無数の敵船を攻撃するのには向かない。対して主砲は1隻あたり数百発の砲弾を載せており、射程面でも充分に敵船をアウトレンジ攻撃することが可能だった。
しかし現代戦を想定した護衛艦の主砲は、76㎜から127㎜口径の単装速射砲が1門程度でしかない。現代では数百km先からSSMを撃ち合うのが海戦であり、WW2以前のように砲戦で海戦を決する時代は終焉している。
護衛艦の主兵装はSSMなどのミサイルであって、主砲は副兵装なのだ。
ところが転移後、海自では主砲で100隻超の敵艦を相手取るケースが頻発。副兵装のはずが主兵装としての使用を余儀なくされていた。
迫りくる大軍相手では、護衛艦の1門しかない主砲では敵の数に対処しきれなかったり、敵の数が多すぎて戦闘中に砲弾を撃ち尽くす危険性も出てきた。戦闘経験を重ねるとともに危機感を抱いた海自と海上幕僚監部は、不足する護衛艦の砲撃力を補う解決策を求めた。
その策としてまず挙げられたのは、攻撃ヘリコプターの艦載である。
陸上自衛隊の『AH-1Sコブラ』対戦車ヘリと『AH-64Dアパッチ・ロングボウ』戦闘ヘリが装備する機関砲やロケット弾は、戦列艦や軍船などの木造艦を無力化するにも十分な性能であり、これらを護衛艦に載せて対艦攻撃に投入するのだ。
これは実際に行われ、ロデニウス沖大海戦やエストシラント沖大海戦では海自の
しかしこの方法は都度陸自に協力を要請する必要がある、という問題があった。海自には攻撃ヘリが無いので陸自の協力が必須だが、もし何らかの理由で要請が却下されてしまえば攻撃ヘリの艦載は不可能になってしまう。
海自の『SH-60K』哨戒ヘリを重武装化し、海自が独自の攻撃ヘリを保有するという解決策も検討されているが、これも悪天候などでヘリが発進できない状況になれば意味がない。
そこで海上幕僚監部はもう一つの解決策を出した。それは――
「護衛艦の砲撃力が不足するのであれば、砲撃力を上げてしまおう」
目茶苦茶である。
が、無難な解決策でもあった。
ひとまず、既存の護衛艦に主砲を1門以上、追加搭載できないか検討された。
旧式化した『しらね型護衛艦』『はたかぜ型護衛艦』のように主砲を2門搭載すれば、それだけで発射速度や搭載弾数の向上が期待できる。
しかし、これは早々に却下された。追加された主砲の砲塔が艦の重心やバランスを乱し、また艦内に給弾機構などを追加しなければならなくなる等、護衛艦を新造する方が早いレベルでの大改造が必要になるとの理由からだ。
ならばと「新造する方が早いのなら、
陸自も転移後、各地に派遣されて実戦経験を重ねていたが、海上から艦砲射撃で支援攻撃してくれる水上艦の存在を魅力的に感じていた。米海軍のアイオワ級戦艦が度々、艦砲射撃で地上部隊を支援したように、砲撃性能が高い艦を陸自は切望したのだ。
そこに海自が砲撃に特化させた護衛艦を検討していると知った陸自は、いい機会だとばかりに新造を強く要望してきたのである。
いきなりの外野からの介入に海自関係者たちは怒りを表そうとしたが、それよりも前にこの話を聞きつけた
海上幕僚監部は怒りよりも先に「なんで外務省が?」と疑問を抱いたが、もはや彼らには口出しする余地が無くなってしまった。それどころか、外務省側から次のような口出しをしてくる始末だった。
「どうせ砲を多く積むなら
この少し前、日本は先進11カ国会議という国際会議に、外交使節を護衛するべく海上保安庁から巡視船『しきしま』を派遣した。ところがこの会議は世界各国が最新の軍艦を派遣し、自国の国力を誇示する、公的な砲艦外交の場でもあったのだ。
会議の場に集まった人々は、巡視船である『しきしま』を
また、この世界は覇権主義国家が多く、そのような相手との交渉には日本の国力を見せつけるしかないと外務省は判断するようになっていた。
それには砲艦外交が一番手っ取り早い。
だが海自護衛艦はパっとみて分かる武装が1門の主砲しかなく、技術力に差がある文明の人々からは「たかが1門の砲で何が出来る!」と侮られる始末である。外務省は一目で強そうな艦を欲していたが、海自がそれっぽい艦を作ろうとしているとの話が舞い込んできた。
仮に作るのであれば外務省からも予算を捻出する、とまで外務省が言い始めたことで、海自も引くに引けなくなったのである。
そうした次第で海上自衛隊は、艦砲射撃特化艦――言うなれば「砲撃護衛艦」の建造をスタートすることになった。
設計にあたり主砲をどうするか議論になった。元々は従来艦と同じ127㎜口径の単装速射砲を2門以上搭載する予定だったが、これでは外務省が望む「戦艦」らしい艦影にはならないだろう、との意見が大勢を占めた。
幸いなことに丁度よさそうな火砲があった。日本に修理(という名目の大改装)が依頼されていたムー国前弩級戦艦『ラ・カサミ改』用に陸自の『99式自走155㎜榴弾砲』の砲塔をベースとして急造された52口径155㎜三連装榴弾砲である。
これは従来の護衛艦の主砲よりも遥かに「主砲」然としており、少なくとも見た目は強そうかつ性能も十分なことからこれで決まった。
砲の搭載数は艦を戦艦らしく見せることから当初、『大和型戦艦』を参考に砲塔を前部2基、後部1基の、計3基9門の搭載が検討された。
しかし現代艦に欠かせないヘリの発着甲板と格納庫を艦後部に設けた方が良いと判断され、そうなると3基以上の搭載は難しくなったことから、『しらね型護衛艦』のように砲塔2基を前部に集中して背負い式で搭載し、主砲は2基6門とすることで決まった。
たかが6門だけでも155㎜砲6門、その火力は陸自の1個特科中隊(砲兵中隊)を凌駕している。
これらを搭載するべく船体は大型であることが必須とされ、海自水上戦闘艦でも屈指のサイズを誇るイージス艦『あたご型護衛艦』のものをベースに拡大拡張した船体を使用。
一方で建造費高騰を防ぐために『あたご型』が搭載していたVLSは不要と判断され、その空いたスペースに主砲基部などが載せられることになった。
アビオニクスも建造費抑制のために汎用護衛艦程度とし、また用途が特殊すぎるので乗員数も抑えた方が良いとの判断から、後に建造される『もがみ型護衛艦』のOPY-2多機能レーダーや統合マスト、自動化された各種システムを備えることとなった。
これによって艦橋構造物も『もがみ型』に似た小ぶりなものとなり、巨大な船体に反して小さくシンプルな艦橋、その前部に鎮座する2基の大柄な三連装砲という異様な艦影となった。
船体に広大なスペースがあったため、陸自のMLRS多連装ロケット砲システムと、『ラ・カサミ改』にも採用された
MLRSは過去に『おおすみ型輸送艦』の艦上で発射試験を行っており、艦上での運用能力もあることが証明されている。いざとなればクラスター弾頭のM26ロケット弾を洋上で投射可能だ。RMPMは陸自の
また「戦艦風にするなら副砲も要るだろう」との意見から、艦中央の両舷と後部ヘリ格納庫の上部に76㎜単装速射砲を3門、巡視船用にライセンス生産していたMk.44ブッシュマスターⅡ 30㎜機関砲の単装砲塔を4基搭載する。
場合によってはこれらの「副砲」も用いて敵艦船や敵飛竜などを直接攻撃したり、海岸へ接近して機銃掃射や直射をかけることも想定された。
使用するSSMは最新の
一方で対空・対潜戦能力はそこまで考慮していない。
対空兵器には急造の19式短距離艦対空誘導弾――陸自の11式短距離地対空誘導弾を転用した8連装ランチャーを1基と、退役護衛艦から転用してきた20㎜ファランクスCIWSが2基だけ。
対潜装備はソナーこそ他の汎用護衛艦と同程度にしつつも、攻撃手段は三連装短魚雷発射管2基だけとした。これも調達コストを極力抑えようとした結果であった。
こうして設計は順調に進み、意外なほどのハイペースで建造が進められた砲撃護衛艦は、戦艦然とした外見もあり、旧日本海軍戦艦の名を継いだ『ながと』の艦名を授かった。
惜しむらくは進水式の直後、日本政府が真の意味での戦艦である『ヤマト型護衛艦』の建造計画を承認してしまったことで、早々に陳腐化。1番艦以外の建造計画が白紙化された訳であるが――
――『ながと』は『ヤマト型』就役までに何カ国もの国々へ砲艦外交に赴き、日本に対して高圧的な国に対する外交でイニシアティブ獲得に大きく貢献したことは外務省を喜ばせた。
また、日本が再び巻き込まれたいくつかの局地紛争では、数百隻もの木造船団を単艦で撃滅し、上陸を図る陸自部隊を洋上から援護射撃するなどの様々な活躍も見せている。
その活躍ぶりは『
護衛艦『ながと』
スペック
基準排水量:6,800トン
全長:170メートル
船体幅:21メートル
機関:COGLAG方式
速力:30ノット
兵装:
52口径155㎜三連装榴弾砲×2基6門
76㎜単装速射砲×3門
30㎜単装機関砲×4門
20㎜ファランクスCIWS×2門
227㎜ロケット弾×12連装発射機1基(MLRS転用)
19式短距離艦対空誘導弾×8連装発射機1基(11式短距離地対空誘導弾転用)
3連装短魚雷発射管×2
その他:
後部ヘリコプター格納庫
艦載機:ヘリコプター1機
同型艦:1隻
次は10式戦車かBP-3Cの魔改造型の話にする予定です。