転生したから魔法少女モノで黒幕やることにした   作:外道黒幕魔法少女

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8話

 

霧の中を進む陽菜、涼香、伊吹の3人

湿った空気が肌にまとわりつき、足音が鈍く響く。すでに30分以上歩き続けていたが、霧は一向に薄まる気配がない

陽菜は杖を握り締め、記憶を呼び起こしながら口を開いた

 

「ねえ、さっき霧の中で低い羽音が聞こえたんだ。『ジュン…ジュン…』って、普通の『チチッ』って音と違ってて…。『チチッ』て音が子個体なら、低い音が親個体なんじゃないかな?」


 

涼香が足を止め、冷静に頷いた

「親個体…子個体を統括する個体とでも呼ぶべきかしら。いい推測ね、サンライズ。高い音は子個体、低い音が親個体なら、それを探して倒せば霧が晴れる可能性がある」

 


伊吹がニヤリと笑い、拳を握った

「よし、そいつをぶっ潰せば終わりだな! さあ、行くぜ!」

 

3人は親個体を探すべく、再び霧の中を進み始める

歩き始めて数分すると涼香があることに気づき始める

「……さっきの所より霧が濃い。場所によって霧の濃さに変化があるとするなら……」

「どうしたんだろう、アクアタイドさん?」

「さあな。何か気付いたのか?」」と陽菜と伊吹が考え始めた涼香を不思議そうに見つめる

 

涼香は一瞬目を閉じ、深呼吸してから決然と提案した

「サンライズ、ブレスインパクト、聞いて」

「もしかしたら親個体がいる場所によって霧の濃さが変わっているかもしれないわ。霧の濃い場所に向かって進みましょう」

「う、うん。わかった」「いいぜ。あたしもその案に賛成だ」

 

10分程霧の濃い方へ進むと異変が訪れる

「シュッ!」と鋭い風圧が右から襲い、陽菜が杖で身を守ると、左からも別の風が唸りを上げて襲いかかってきた。さらに背後からも風圧が続いていく

 

「攻撃が増えてる…!」

「構えて! 近くにいるわ!」

順調に増えていく攻撃に対処しながら3人はさらに奥へ。霧の冷たさが頬を刺し、視界は依然として10m先も見えない

 

すると、陽菜が小さく呟いた

「…聞こえる。かすかに『ジュン…ジュン…』って」

その瞬間、「シュッ! シュッ! シュッ!」と連続する風圧が襲いかかり、3人はその場から動けなくなるほどの攻撃に晒された

伊吹が「くそっ、何だこの数!」と小型の風を放つが、霧に飲み込まれ効果は薄い

 

涼香が槍を構え、風圧を弾きながら叫んだ

「恐らく当たりよ。サンライズ、集中して! 親個体の場所を突き止めて!」

 

陽菜は目を閉じ、深呼吸

魔力を全身に巡らせ、聴力を強化した

 

「チチッ…チチチチ…」という子個体の軽快な羽音に混じり、「ジュン…ジュン…」という低い音が右前方から響いてくる

陽菜は心の中で方向を定め、勘を頼りに杖から最高速度の魔法を放つ


オレンジ色の光線が霧を切り裂き、一直線に飛ぶ

 

「キィ! キィ!」と子個体らしい悲鳴が数体分聞こえたが、「ジュン…ジュン…」という低い音は止まらない

 

陽菜が「外した…!」と呟くと、光線が通った場所の霧がわずかに薄れ、黒い影が揺れた。そこには、巨大な羽を持つ鳥型の怪物の姿が一瞬だけ浮かび上がる——雀サイズの子個体より一回り大きく、重々しい羽音を響かせている

 

涼香と伊吹が即座に動き出す

涼香が親個体へ向けて「シュン!」と鋭い音を立てて槍を投げつける

 

だが、子個体が群がり壁となり、槍が逸れてアスファルトに突き刺さって金属音を響かせた

伊吹が跳び上がって口から広範囲に炎を吹きだす。赤い炎が霧を焼き、子個体が「キィ!」と悲鳴を上げて散る中、親個体は慌てて羽ばたき逃げ出した

 

陽菜が杖を向け光線を放つ。子個体が再び壁になろうとするが、光線は親個体の羽をかすめ、「グゥオッ!」と重い悲鳴が響いた

すると、地面が揺れ、涼香が姿を現す——槍を投げた直後に潜水で親個体の真下まで移動していたのだ

 

彼女は回収した槍を振り上げ、一気に親個体の胴を貫いた。親個体が灰となって崩れ落ちると、子個体たちは「チチッ!」と慌てて霧の中へ逃げていった

 

─────

 

霧が少し晴れ、周囲がぼんやり見えるようになった。しかし霧が完全に晴れる様子はなかった

涼香が通信機を取り出し、「…使える」と呟く

 

彼女はすぐに他のチームに連絡を取った

「こちら第1チーム。数百体の怪物に会敵しその中の親個体を撃破。霧が薄れつつある」


「親個体は他にもいる模様。霧の濃い方に親個体がいる可能性が高い。他の個体より低い音をだしてるのが特徴よ」

数チームから「了解!」と返信が来たが、近いチームには繋がるものの、遠くのチームには通信が届かず、雑音だけが返ってきた

 

陽菜が息を整え、「まだ親個体がいるよね…?」と尋ねると、涼香が頷いた。「霧が濃い場所に親個体が縄張りを持ってる可能性が高いわ。次を探すわよ。」

 

─────

 

3人は再び霧の中を進む。1時間近く霧の中を彷徨い、親個体が見つからないまま陽菜の足が重くなってきた

「どこにいるんだろう…」と陽菜呟いた瞬間、霧がさらに薄れ、前方数百メートルが見渡せるようになった

 

通信機から別のチームの声が響く

「こちら第3チーム、親個体撃破!」


「第5チームです、親個体を発見、追跡します!」


涼香が通信機を見つめ、「順調な様ね」と呟いたが、その時、彼女の表情が凍りついた

 

通信ログに救出隊からのSOSが数十回も埋まっていたのだ

「救出隊が集中攻撃を受けてる…!」

 

「そんな!」

「あたしたちが霧の中を迷っている中、怪物達の本命はあっちだったわけか。くそっ!」

 

涼香が「急ぐわよ!」と指示を出し、3人は小学校方面へ全力で走り出した。道中、第5チームから「親個体撃破!」の連絡が入り、霧がさらに晴れ、数キロ先まで視界が開ける

すでに数キロを移動した疲れが残る中、30分以上走り続け、やっと霧が晴れた先に小学校の輪郭が見えた

陽菜の胸がドキドキと高鳴り、杖を握る手に汗が滲む

 

小学校に到着した瞬間、陽菜は息を呑んだ。上空には夥しい数の雀サイズの鳥型が飛び交い、その中心に黒い塊が浮かんでいる。

 

「シュッ! シュッ!」と風圧が絶え間なく降り注ぎ、小学校周辺では魔法少女たちが必死に応戦している。


黄色の光を放つ2丁拳銃を持つ魔法少女が銃弾で子個体を貫き、黒い刀を持つ魔法少女が子個体を鋭い魔力を飛ばし斬り落とすが怪物を数の多さに押され、疲弊が見える。体育館の屋根には穴が開き、内部から住民の泣き声わ叫び声が聞こえてきた

 

陽菜が「こんなに…!」と呟き、涼香が鋭く言った

「サンライズ、ブレスインパクト援護して!私は状況を聞いてくるわ」


伊吹が拳を握り「ぶっ潰してやるぜ!」と叫び、3人は戦場へと足を踏み入れた

 

─────

 

陽菜と伊吹が駆けつけ、戦場に加わった

陽菜は杖を構え光線を放ち、伊吹は拳に赤い光を宿して即座に炎を放つ

子個体が「キィ!」と悲鳴を上げて散るが、黒い塊は微動だにしない

 

涼香が冷静に救出隊のリーダーと自衛隊の隊員に近づき、状況を確認した

「現状はどうなってるの?」

 


救出隊のリーダー——赤い髪をポニーテールにした魔法少女——が息を切らしながら答えた

「怪我人は多数、腕や足に切り傷を負った子が多いけど、死傷者はまだ出てない。体育館の屋根に穴が開いてるのは、鳥型が集団で突撃してきたせいよ。上空から風圧と矢みたいな攻撃が降ってきて、防ぐのが精一杯なの」


自衛隊の隊員が付け加えた

「住民は体育館内に固まってるが、物資があと少しで不足する。到着直後に物資を運んでいた車両が攻撃されたんだ」

 

「そう、ありがとう。救援に遅れてごめんなさい。」

「いいえ、討伐隊が親個体を数体倒してくれたおかげで最初より戦いやすくなってる。霧の晴れ具合から残りは少ないはず。上空にいる黒い塊を倒せば私達の勝利ね」

 

すると通信機から再び別のチームの声が響いた。

「こちら第4チーム、親個体撃破完了」

涼香は冷静に状況を見極め決意した。彼女の声は落ち着きながらも力強く、他のチームに届くよう明瞭に響いた。

「こちら第1チーム、アクアタイド。全チームに通達する。親個体の撃破が進み、霧が十分薄れつつある。小学校周辺で最終防衛線が構築中。至急、小学校に集結してほしい。上空に残る黒い塊が最後の親個体とみられる。応答を頼む」

 

すぐに複数のチームから返信が届く。

「第2チーム、了解!現在地から10分で到着する!」

「第3チーム、こちらも了解!親個体撃破後、すぐに向かう!」

「第4チーム、了解。距離があるため時間がかかります」

「第5チーム、了解!直行するよ!」

「第6チーム、第7チームと合流。すぐに向かう」

 

涼香は通信機を下ろし、救出隊のリーダーの方に向く。

「他のチームが合流する。時間稼ぎと準備が必要よ。上空の動きを抑えて。」

「了解。私は皆の士気をあげてくるわ」

 

陽菜達が参戦が始まってから既に30分程過ぎたころ、小学校周辺には続々と他のチームの魔法少女たちが集まりつつあった。決算地となった小学校では魔法の光で溢れかえっていた

 

─────

 

上空の黒い塊——最後の親個体——は低く唸り、攻撃を激しく降らせ続けるがこちら側が不利になってくのを感じた。

 

─────

 

突然黒い塊が震え、崩れ出す

子個体が散り散りに飛び、奇妙な模様を描くように旋回する

中央に親個体が姿を現した——巨大な羽が重々しい羽音を響かせ、鋭い眼光が地上を見下ろす。親個体は攻撃が届かないさらに高空へと飛び上がった

 

魔法少女たちは武器を構え直し、警戒を強める。子個体たちが六芒星の形を保ちながら飛び始め、その中心の上に統括個体が位置取る

 

六芒星——魔法陣を完成させるとそれは赤黒い光を帯び始めた

 

陽菜が目を丸くし、「なにあれ!?」と叫ぶと、涼香が冷静に説明した

「魔法陣……。30年前に研究者達と一部の魔法少女達が作り上げた代物よ。人がつくったものを怪物が扱うなんて……」


魔法陣は悍ましい威圧感を放つ。赤と黒の光が渦を巻き、脈打つ線がまるで生き物の血管のようだ。中心から黒い霧が噴出し、縁からは火花が散る

空気が重くなり、耳障りな不協和音が響き渡った

 

魔法少女の一人が震える声で叫んだ

「撤退した方がいいよ! これ、ヤバすぎる!」
「住民がまだ中にいる。逃げるわけにはいかない」と涼香が却下する


別の魔法少女が

「どうしよう、誰か飛んで対処すれば…!」と叫んだが、赤い髪の救出隊のリーダーが首を振った

「高すぎるわ。制空権はあちらにあるから飛んでいる最中に子個体達に撃墜される」

 

魔法陣の光が強まる中、涼香が陽菜に目を向けた

「サンライズ、貴女ならいけるわね。特訓の成果を見せるときよ。」

陽菜が戸惑い

「え、私!?」と声を上げた。

「私の魔力じゃ、対抗できないよ…!」
涼香が静かに微笑み「私や他の魔法少女たちが貴女に魔力を集めるわ。皆、協力してちょうだい。」
魔法少女たちが頷き、「任せて!」「サンライズならやれるよ!」と声を揃える陽菜は緊張しながらも杖を握り直し、決意を固めた

 

─────

 

『霧雀』は45年前に創られた怪物だ


創造主に創られた瞬間、その存在は始まった

創られた創られた瞬間、その使命は決まっていた——地上のあらゆる生命を襲うことだ

 

『霧雀』には自身と同じように創られ同じ羽を持つ同種たちがいた。共に地上を襲い、街を恐怖で染めた

だが、始まりの魔法少女が現れ全てが変わった
。最初の仲間は、光の槍に貫かれ灰になった

『霧雀』は逃げ惑う仲間の羽音を聞きながら、ただ立ち尽くした。次々と仲間が屠られ、焼かれ、切り裂かれた

 

鋭い光が空を裂き、『霧雀』の目の前で最後の仲間が消えた時、恐怖と孤独が心を支配した。
「なぜだ…なぜ私たちは創られた?」『霧雀』は問い続けた。創造主は何も答えなかった

 

生き残った『霧雀』は繁殖を選んだ

自身の体を削り、血を流し、無数の個体を生み出した。子個体たちは親個体の命令に従い戦ったが、魔法少女たちに次々と倒された

『霧雀』は創造主に創られた怪物の中でも弱かった。霧の中に隠れ潜み一方的に攻撃できるアドバンテージはあれど、一撃で敵を倒せずすぐに対処されてしまう


それでも抗い生き続けることを諦めなかった

創造主に認められるため、存在する意味を見つけるため、『霧雀』は戦い続けた
この魔法陣は、『霧雀』の同種達を一掃した始まりの魔法少女が放った『星を砕く』魔法を模したものだ

 

45年前、『霧雀』はその魔法を目の当たりにした——空が割れ、地面が燃え、何百万といた同種が一瞬で消えたあの光を

 

子個体たちに命を捧げさせ、『霧雀』は魔法陣を完成させる

 

---これで地上もろとも憎きあの人間共を滅ぼせば…創造主は我々を見てくれる。我々の苦しみを認めてくれる!---


羽を震わせ、涙を流しながら『霧雀』は咆哮を上げた

45年間貯めた全魔力を注ぎ込み、魔法陣が赤黒い光で燃え上がる

 

─────

 

 

魔法少女たちが陽菜に魔力を集め始めた

青い光、赤い光、緑の光、紫の光、あらゆる色の光が陽菜の杖に流れ込み、杖の先端が眩く輝く。陽菜の足元に魔力の波紋が広がり、地面の小石が震えた

 

数分間、魔法陣の赤黒い光が強まる一方で、陽菜の周りに集まった魔法少女たちは汗と疲労にまみれながら魔力を送り続けた

陽菜は目を閉じ、深呼吸して集中する

心臓の鼓動感じながら全身に温かい力が満ちていく。既に心臓の高鳴りは感じず、心は落ち着いていた

目を開け、目標━━魔法陣の中心を定める

 

魔法陣から赤黒い光の奔流が放たれる直前、涼香が「今よ、サンライズ!」と叫ぶ。陽菜が目を開け、杖から『太陽を希う』魔法を放つ

膨大な魔力と高度の熱を纏ったオレンジ色の光線が空を切り裂き、奔流と激突した

衝撃波が小学校周辺を揺らし、屋根の残骸が崩れ落ちる。両者が拮抗し、空が割れるような轟音が響く

 

陽菜が「負けない!」と叫ぶと

光線が勢いを増し、奔流を突き破った。光が魔法陣を貫き、親個体と何万体もの子個体を飲み込む

「グゥオオオオッ!」という怪物の断末魔が響き、怪物たちは灰となって消えた

 

空が晴れ、太陽が小学校を照らす

魔法少女たち、住民、自衛隊が一斉に歓声を上げた

 

涼香が陽菜に近づき、「見事だったわ、サンライズ」と穏やかに微笑んだ

伊吹が肩を叩き、「すげえぞ、サンライズ!お前がMVPだ!」と笑う

陽菜は「私…やったんだ…」と呟き、達成感に胸が熱くなる。

膨大な魔力を使った疲労が押し寄せ、彼女はその場で意識を失った。杖が地面に落ち、朝陽が陽菜のオレンジ色の髪を優しく照らした。




ソシャゲ風に言うとチュートリアル終了
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