転生したから魔法少女モノで黒幕やることにした   作:外道黒幕魔法少女

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9話

 

太陽が魔法少女たちの勝利を祝うように市街地に晴れ渡り、霧の脅威が去った空に暖かな光を投げかけていた

 

陽菜が意識を失った後、涼香は即座に動ける魔法少女たちを招集し、残党狩りと後処理に取り掛かった。霧が完全に晴れた空の下、彼女の冷静な指示が響き渡り、集まった25人の魔法少女たちに役割が割り当てられた。

涼香はまず25人を2つのチームに振り分けた。20人を「残党狩りチーム」として周辺の掃討に充て、残る5人を「手当て・護衛チーム」として小学校内に配置した。

伊吹も残党狩りチームに参加し、疲労を隠して拳を握り直した


「残党狩りチームは私と一緒に周辺を掃討するわよ。手当て及び護衛チームは自衛隊と連携して住民を守って!」

彼女の声には、勝利の安堵と仲間への信頼が滲んでいた。

 

「残党狩りチーム」には、救出隊のリーダーであった赤髪の魔法少女「フレアブライト」や、やる気に満ちた伊吹、他のチームから集まった十数人が涼香の指揮下で動き出した。

彼女たちはまず、体育館周辺に散らばる子個体の残党を掃討。魔法が飛び交い、逃げ惑う雀サイズの鳥型を次々と灰に変えた


「残りは少ないはず。見逃さないで!」
涼香の声が響くと、彼女自身も水流を纏った槍を手に霧の残滓が漂う路地へ潜り込み、隠れていた数体の子個体を素早く仕留めた。

伊吹は炎と雷を拳から放ち、複数の子個体を一撃で灰と化す

 

一方「手当て・護衛チーム」は自衛隊と協力して体育館内で活動を開始。5人の魔法少女たちは住民たちに物資を配り、怪我人の手当てに奔走した。泣きじゃくる子どもたちに毛布が渡され、穏やかな声で励まされる。陽菜は救護テントに運ばれ、ソルがその傍らで心配そうに見守るが、彼女は依然として目を覚まさない。ソルは小さな手を握り、「陽菜、頑張ったね…早く起きて」と呟いた 

 

数時間後、小学校周辺は安全が確認され、住民たちは自衛隊の車両で安全地帯へ移送された。魔法少女たちは疲れ果てながらも、互いに肩を叩き合い、勝利を噛み締めた。涼香は通信機で支部に報告を終え、「これで一段落ね」と小さく息をついた

彼女の視線は陽菜の眠るテントに向けられ、「早く起きてくれるといいけど…」と静かに呟く。すると、伊吹が涼香の肩に手を置き、「あいつなら大丈夫さ」と励ました。涼香は小さく頷き、仲間との絆に安堵を感じた。

 

─────

 

同日午後、怪物対策省中央本部の会議室では異様な緊張感が漂っていた。広い会議室に集まったのは、幹部魔法少女7人のうち5人——オラクルプリステス、フロストノヴァ、スターステラ、クリスタルヴェール、プリズンプリンセス——、そして内閣府、防衛省、経産省から高官が一名ずつ、そして怪物対策省総帥・諫原玄一郎だ。

 

残りの魔法少女2名——キャットキャッツはいつものようにサボりで欠席し、パイレーツストームは近海に現れた怪物を討伐中で不在だった

 

会議室の中央には巨大なホログラムが浮かび、霧雀戦のアーカイブ映像が再生されている。

 

「ねえ、キャットキャッツ欠席って何? またサボってるの? 幹部としての自覚がないんじゃないの?」とスターステラ不満を漏らす

 

「今更ね。あの子は気まぐれが服着てるようなものよ。私達の中でも1番強いんだから誰も言わないだけよ。貴女が騒いでも時間の無駄ね」とクリスタルヴェールが冷たく言うと、スターステラが「チッ」と舌打ちし、椅子の背に凭れかかって腕を組んだ

 

オラクルプリステスが立ち上がり、星空を思わせる深い紫のローブの長い袖を軽く振って場の空気を引き締めた

「皆さん、議題に入ります。最近の怪物の連携が強まっていること、そして今日怪物が魔法陣を使用した事についてです。総帥、ご意見頂けますか」

 


諫原が革張りの椅子から身を起こし、威厳と疲労が混じり合った低い声で応じた


「怪物の連携についてだが、今までのデータ━能力、特徴、行動パターン━を全ての支部に即時共有しろ。魔法少女達にありとあらゆる連携パターンに対応できるよう訓練を徹底させる」

 

一呼吸置き、彼はさらに重い口調で続けた

「魔法陣についてだが……私はこの魔法を見たことがある。あれは45年前、始まりの魔法少女が使っていた魔法だ。可笑しな話だがそのときに使っていた怪物は今のような雀サイズの鳥型だった記憶がある。もしかするとあの時の生き残りが自分達を殲滅した魔法を今も覚えていて、人間が作り出した魔法陣を独学で盗み覚えたということになる」

 

会議室に重い沈黙が落ちる。諫原の言葉に、幹部たちは一瞬言葉を失った

 

魔法少女でもあり魔法研究者でもあるフロストノヴァが口を開く


「総帥の記憶が正しければ、研究者として興味深い仮説ですね。怪物の知能が魔法を学習するレベルに達した可能性…解析を急げば、その痕跡が確認できるかもしれません。私は今すぐにでも研究チームに指示をだしたい」

オラクルプリステスが頷き「フロストノヴァ、その方向で進めてください」と即座に承認した

 

防衛省の高官━━丸眼鏡をかけた痩せた男が手を挙げた


「防衛省としては、自衛隊と魔法少女のさらなる連携強化を提案します。協同訓練を実施し、実践での対応力を高めるべきかと」

 

経産省の高官━━恰幅の良い女性が、太い指でテーブルを叩きながら続ける


「都市部での被害拡大が懸念されます。連携する怪物が増えれば、インフラへのダメージは計り知れません」

 

内閣府の高官━━白髪交じりの男性が咳払いをして加えた
「国民への説明も課題です。パニックを避ける情報統制が急務かと」

 

クリスタルヴェールが冷ややかに口を開いた

「戦術の見直しが必要ですね。私たち幹部でしか対処できない怪物同士が連携すればどうすればいいか」

スターステラが「なら私の魔法で一掃すればいいじゃない! まとめてドカンよ!」と自己主張すると、クリスタルヴェールが「頭使ってくださる?貴方の魔法は建物が沢山ある地域では使えないのに」と皮肉る。二人の視線が火花を散らし、会議室に一触即発の空気が漂った

 

オラクルプリステスが喧嘩を始めそうな2人を止めるように静かに手を上げ「お二人とも、落ち着いてください。プリズンプリンセス、あなたの意見は?」と促す

 

プリズンプリンセスは目を伏せ、もじもじしながら答えた


「…あの、私、現場に行ってきたんです。もう霧が晴れた後だったみたいで逃げ惑っていた子個体を牢獄で閉じ込めたんですけど…動きに無駄がなくて…他の子個体が閉じ込めた子個体を助けるために私を攻撃してきたり、連携するだけじゃなく、感情があるように感じました…」

「なるほど、怪物に感情が…。貴重な情報ありがとうございます」

 

オラクルプリステスは皆の意見を一通り聞いた後、諫原を反応を伺うように視線を向けた

 


諫原は腕を組み、深い皺の刻まれた顔で応じる


「オラクルプリステス、クリスタルヴェール、プリズンプリンセスは引き続き情報収集を。フロストノヴァは解析を急げ。もう少ししたら時期がくる。怪物の動きに備えろ」

オラクルプリステスが「了解しました」と締め、会議は終了した

 

スターステラが「キャットキャッツには後で文句言っとくから!」と席を立つと、クリスタルヴェールが「時間の無駄よ」と溜息をつく。フロストノヴァが「解析楽しみです」と呟きながらメモを取る中、オラクルプリステスの視線が一瞬諫原に留まる。その瞳に微かな緊張が宿り、会議室の扉が閉まる音が重く響いた

 

─────

 

夜が更けた怪物対策省中央本部。諫原は自室に戻り、重厚な木製の机に腰を下ろした。窓の外には月が浮かび、静寂が部屋を包む。疲れ切った顔に皺が刻まれ、彼は革張りの椅子に深く凭れる

 

その時、空気が揺れ、部屋の中央に白い光が浮かんだ。光が収まると、白髪の少女が現れる。黒いワンピースを纏い、瞳が諫原をじっと見つめる。陽菜が霧の中で出会ったあの少女——そして「始まりの魔法少女」本人だ。

諫原は驚く様子もなく、低い声で口を開いた。

「お前か…何用だ?」


少女は首を小さく傾げ、淡々とした声で応じた。


「用があるのはそちらの方なんじゃないかな?」

 

諫原は思案に沈む。目の前に立つこの少女とは、かれこれ50年ほどの付き合いになる。50年前━35歳だった諫原の前に突如現れ、「協力を申し出たい」と彼女は言ったが、それは協力などという生易しいものではなかった。彼女は諫原を脅迫し、怪物対策省の設立を強いたのだ。当時一議員だった諫原は、最初は彼女を利用して自身の地位を高めようと考えていた。だが、それは大きな間違いだった

 

世界は怪物で溢れ、混乱に呑まれた。少女はそれらを倒し、人々からは救世主として崇められた。しかし裏では、彼女自身が怪物を作り出し、悍ましいマッチポンプを仕掛けていた。

諫原の政敵や邪魔な議員たちは次々と政界から消え、彼女は市民に微笑みながら、世界を操る悪魔の顔を隠し持っていた。諫原は少女の可愛らしい仕草を見ながら、内心で「この悪魔め」と吐き捨てる。

 

少女がクスリと笑い、口を開く


「難しい顔して何考えてるかと思えば、悪魔とは酷いよ」

 

諫原の顔が歪む。心を読まれるのはいつものことだ。あらゆる魔法を操るこの少女の前では、隠し事など無意味だと彼はよく知っている

 


「霧雀のこと怒ってる? 君のお孫さんが通ってる小学校が被害にあって気が立っているのかい?」


「……そうだ。なぜだ? なぜ貴様が対処しなかった?」


「あー、うーん、そのことはごめんね。『良いもの』を見つけたんだ。安心してよ。お孫さんは近くで見守ってあげてたよ。このご褒美券も未使用にしてあげる」

 

諫原は眉をひそめる。「良いもの」とは何か。少女の計画が何を目的としているのか、彼には知る由もないが、どうせろくでもないものだろう

 


「そうだ、この後君は会見に出るのだろうけど、ちょっとお願いがあるんだ。なんとか世間に始まりの魔法少女に繋がるようなことは逸らしてほしいんだ。まだあの立場は使えるような気がするんだけど」


「それは難しい。いずれ霧雀という怪物が始まりの魔法少女に繋がると気づかれるだろう」


「そこをどうにか。……まだ怒ってる? 何か欲しいものがあるならなんでも作ってあげるよ」

 

諫原は少女を睨み続ける。なんでも……言葉通りに彼女はなんでも作ることができる。例えばあらゆる魔法を仕組まれた施設、例えば妖精を通じて作り上げられる魔法少女システムetc…

彼女は軽く笑い、言葉を続けた
「玄一郎も強かになったね」
諫原は一瞬黙り、やがて低い声で応じる

 

「なら作ってもらおうか」

 

─────

 

諫原からの要望を聞き遂げると、少女が不満げに声を上げる

「えー、僕そういうテコ入れは好きじゃないんだけど。初期設定が一番大事なんだよ」


「なら、この話は終わりだな」


「わかった。作る、作るよ。でも時間はかかるからね」


「秋までには仕上げろ」

 


「はいはい」

少女はそう言うと、一瞬で姿を消した。諫原は一人部屋に残され、机の上のタブレットを手に取る。霧雀戦のアーカイブが再生され、陽菜の光線が魔法陣を貫く映像が流れる。彼の瞳に複雑な光が宿り、溜息は夜の静寂に溶けた

 

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