転生したから魔法少女モノで黒幕やることにした 作:外道黒幕魔法少女
月曜日の朝
陽菜はベッドの中で目を覚ました。昨日の高熱が嘘のように引いており、額に手を当てるとひんやりとした感触が戻っている。部屋に差し込む朝陽がカーテンをオレンジ色に染め、彼女は大きく伸びをして起き上がった
「陽菜、おはよう。熱下がったみたいね。どう?」
母が部屋のドアを開けて顔を覗かせ、心配そうな声で尋ねる
陽菜は笑顔で頷いた
「うん、大丈夫だよ。昨日は疲れてただけみたい。学校行ってくるね!」
リビングでは、父がコーヒーを飲みながら新聞を読んでいた
母が用意したトーストとスクランブルエッグを急いで口に運び、陽菜は鞄を背負って玄関へ向かう
「気をつけてね。無理しないでよ」と母が念を押すと、陽菜は「うん、平気!」と元気に返して家を出た
妖精ソルが小さな光となって肩に寄り添い、「よかったね、陽菜!」と囁く。陽菜は小さく笑いながら、通学路を歩き始めた
昨日、母に連れられて訪れた病院では、医師が「おそらく風邪ですね」と診断。薬を処方され安静を勧められたが、陽菜の回復力は予想以上に早かった
─────
学校に着くと、教室はいつもの賑やかさに満ちていた。陽菜が席に着くと、隣の席の女子生徒が振り返って声をかけてきた
「陽菜、おはよう! 」
「おはよう!」と陽菜が笑うと、女子生徒が目を輝かせて続ける
「昨日ニュース見てびっくりしたよね。隣町の怪物騒ぎすごかったね。魔法少女ってほんとカッコいいよね!」
「うん、ほんとすごいよね!」と相槌を打つ
すると男子生徒が割り込んできた
「でもさ、怪物って怖いよな。あんなのに遭遇したら俺、逃げるしかないわ」
「翔太くん、意外とビビりなんだね」と女子生徒がからかうと、教室に笑いが広がった
陽菜も笑いながら、魔法少女の秘密を隠しつつ、友だちとの日常を楽しんだ
朝のチャイムが鳴り、数学科の山田先生が入ってきた。40代半ばの落ち着いた男性教師で、手には教案を抱えている
教室が静まると、彼は少し硬い表情で話し始めた
「おはよう、みんな。実は最近、近隣で商品の盗難事件が続いてるんだ。商店街で、商品が忽然と消えたり、高価なものがなくなっているケースが多発してる。何か怪しいものを見かけたら、すぐに警察に連絡するように。くれぐれも自分たちで解決しようとしないでくれよ」
生徒たちがざわつき始めると、山田先生が手を挙げて制した
「まだ犯人は分からないけど、用心するに越したことはないからな。気をつけてくれ」
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昼休み、陽菜は購買で買ったメロンパンを持って校庭のベンチへ向かった
そこには水河涼香と炎堂伊吹が待っていて、涼香はサラダを、伊吹はカレーパンを頬張っていた
「お、陽菜! 熱下がったんだな、よかったぜ!」
伊吹がパンくずを払いながら笑うと、陽菜が「うん、昨日は心配かけたね」と返してベンチに座る
涼香が穏やかに微笑んだ
「朝倉さん、無理しないでね。戦いの疲れが残ってたんだと思うわ」
「ありがとう、涼香先輩。でも、もう大丈夫だよ!」
3人は戦いの話や学校の話題で盛り上がった。伊吹が突然、「なぁ、陽菜、お前あの光線どうやって撃ったんだよ? めっちゃ熱かったぜ!」と興奮気味に聞くと
陽菜が照れ笑いしながら答える
「えっと…みんなの力が集まって、自然と出てきた感じかな。自分でもびっくりしたよ」
「頼りになるわね」と涼香が頷き、3人は笑い合った
「ねえ、放課後どうする? 支部に行く?」
「私は少し用事があって支部に寄るつもりだけど、急ぎじゃないわ。炎堂さんは?」
「あたしは特に予定ねえな。陽菜、どうしたい?」と伊吹がニヤリと笑う
陽菜は少し考えて提案した
「じゃあ、せっかくだから3人でどっか寄って帰らない? 商店街でおやつでも買って、のんびりしようよ」
「おお、いいね! 」と伊吹が賛成し、涼香も「たまにはいいかもね」と微笑んだ
3人は校門で待ち合わせる約束をして、それぞれ準備を始めた
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放課後、校門を出て商店街に向かう途中、陽菜たちは賑やかな通りを歩いていた
夕方の陽射しが柔らかく、街は買い物客や学生で活気づいている
陽菜が「何食べようかな」と呟いていると、前方から小さな悲鳴が聞こえてきた
「ちょっと、何!?」
小さなコンビニの前で、店員が慌てて外に飛び出していた
店員が「誰か! 商品が消えたんです!」と叫んでいる
店のガラス越しに、棚からお菓子や飲み物が一瞬で消えるのが見えた
「え、なにこれ!?」と陽菜が目を丸くすると、涼香が冷静に周囲を見渡し、小声で言った
「魔法少女か怪物の仕業ね。瞬間移動か、幻覚系の魔法…。普通の人間じゃこんな芸当はできないわ」
「魔法少女も………!?」
「怪物はこんなことしねぇな。だとしたら魔法少女しかいねぇだろ」
その時、コンビニの裏手でかすかな光が揺れた
陽菜が「何かいる!」と指差すと、3人は一斉にそちらへ目を向ける
光の中で、人型の何かが一瞬だけ姿を現し、お菓子が宙に浮いているように見えた。だが、次の瞬間、姿が歪み、消えてしまった
「何!? 消えた!?」
「魔法ね。実体を隠してるか、分身を作ってるか…。追うわよ!」
3人は裏手の路地へ駆け込んだ
陽菜が「身体強化」で聴力を上げると、かすかな足音と「ピピッ」という電子音のようなノイズが聞こえた
「こっちだよ!」と陽菜が先導し、路地を抜けて空き地へ出る
そこにはフードを被った150cm程の人が立っていたが、近づくとその姿が再び揺れて消る
「へへっ、捕まえられるもんなら捕まえてみなよ!」「こっちだよ」「あっちだよ」「もうどこにもいないよ」
複数の声があちこちから反響し、陽菜が「どっち!?」と混乱すると、あちこちに人型現れ揺れて消えるだけだった
伊吹が「くそっ、どこだよ!」と拳を壁に叩きつけるが、気配は完全に消えていた
「逃げられたわね…。手強い相手だわ」と涼香が息をつき、陽菜が「多分魔法少女だったよね…? でも、なんで盗むんだろう」と首をかしげる。
その後、陽菜たちはコンビニに戻り、店員に事情を説明
盗まれた商品の代金は見つからなかったため、店員に警察への連絡を勧め、3人は肩を落として別れた。
─────
その夜、古びれたビルの一室で、灰原結衣はベッドに寝転がり、盗んだスナック菓子をポリポリと食べていた。14歳、中学3年生。灰色のショートカットが特徴的な少女で、部屋にはゲーム機やモニターが散乱し、壁にはレトロゲームのポスターが貼られている
ゲーマー気質の彼女にとって、この部屋は唯一の安らぎの場だった
………
結衣の幼少期は、母・美穂との幸せな時間に満ちていた
母は結衣が8歳の時、古いゲーム機と「小さな銀のペンダント」を贈ってくれた。星形のチャームがついたそのペンダントは、母が「私が子どもの頃に持ってたものなの。大事にしてね」と渡してくれた形見だった
結衣は母とゲームを楽しみ、「結衣は頭いいね」と褒められるのが誇りだった
父・健司は無口な労働者で、家族を養っていたが、結衣との関わりは少なかった
11歳の時、母が交通事故で亡くなった
結衣はペンダントを握り潰すほど強く握り、ゲームに逃げ込んだ
父は酒に溺れ、仕事を辞めて荒んだ生活を送るようになり、結衣への関心は薄れていった
結衣が13歳、中学2年生の時、彼女の人生を変える事件が起きた
ある夕方、父に無理やりコンビニに連れ出され、帰り道の路地で狼型の怪物に襲われた
父は結衣を怪物の方へ突き飛ばす
「お前が食われてりゃいい! 俺は助かる!」と逃げ出した
結衣が恐怖で倒れた瞬間、小さな光が現れ、妖精ピクセルが姿を見せた。ピクセルは感情のない声で一言だけ発した
「……魔法をあげる」
光が結衣に宿り、「ホログラム」の力が流れ込んだ
結衣は幻影を作り出し、怪物を惑わしてホログラムで作ったブロックで怪物を押し潰した
息を切らして振り返ると、逃げていた父が呆然と見ていた
結衣は「お父さん、大丈夫!?」と駆け寄ったが、健司の目は恐怖に染まっていた
「お、お前…何だその力は…化け物か!?」
「違うよ、魔法で…」と説明しようとすると、健司は後ずさりし、「近づくな!」と叫んで逃げ帰った
その夜、健司は結衣を避けるように部屋に閉じこもり、酒を煽っていた
結衣は母の形見である星形ペンダントを握り、寂しさに耐えていた
ピクセルは無口に浮かぶだけで、何も言わない
翌日、結衣が学校から帰宅すると、部屋に異様な空気が漂っていた
ドアが開き、父が震えながら立っている
隣には黒スーツを着た男が2人ソファにドカリと座っている。
結衣が帰ってきた姿を見ると1人の男がニヤリと笑い立ち上がり、健司を肩に掴んだ
「やっと帰ってきたか。お嬢ちゃん魔法が使えるってな? 面白いじゃねえか」
結衣が「誰ですか!?貴方たち」と驚くと、男が懐から健司の首にナイフを当てた
「お嬢ちゃん親父が借金で困ってるらしい。俺たちゃその肩代わりをしてやるよ。その代わり、お前が魔法で稼げ。親父を助けたけりゃ、高価なもんを盗ってこい。宝石でもブランド品でもいいぜ」
健司が震えながら呟く
「結衣、頼む…助けてくれ…俺、死にたくねえ…」
結衣は父が怯えている姿とナイフを見てヤクザの脅しに屈した
「……分かったよ。でも、お父さんを傷つけないで」
「賢い子だな。親父は預かっとく。成果上げなきゃ、どうなるか分かるな?」
結衣は父を救うために盗みを始めた
……
時は現在にもどり
「どうしよう……あの3人、魔法少女だったよね……」と呟く
父と黒スーツの男2人部屋に入ってきた
父が「結衣、今日の分はどうだった?」と声を振わせながら言うと、結衣は盗んだ品を差し出した。
父が結衣から受け取ると、黒スーツの男が奪い取りニヤリと笑う
「中々の成果だな。明日もよろしく頼むぞ」
「……もう無理だよ」
「はぁ?親父がどうなっていいのか」
結衣は立ち上がり、声を張った
「今日他の魔法少女に見つかったんだ。このままだと捕まっちゃうよ」
「なら、もっとうまくやれ。親父の命が惜しけりゃな」
父が震えながら言う
「結衣、頼む…俺を…」
結衣は父の怯えた顔を見て、唇を噛んだ
「……分かったよ。でも、もう限界だよ…」
父と男たちが部屋を出ると、結衣はベッドに倒れ込み、ペンダントを握り締めた
「母さん…私、どうしたらいいの…」
ピクセルが無口に浮かぶ中、彼女の心は葛藤で揺れていた