転生したから魔法少女モノで黒幕やることにした 作:外道黒幕魔法少女
6月4日、火曜日の放課後
朝倉陽菜は教室で鞄を片付けながら、水河涼香と炎堂伊吹に昨日の出来事を振り返った
陽菜が少し興奮した声で切り出した 「ねえ、昨日商店街で会った子、魔法少女だったよね! 魔法で消えたり現れたりして、すごかったけど…何か困ってる気がするんだ。涼香先輩、どう思う?」
涼香は冷静な口調で答えた 「そうね、朝倉さんの言う通り、魔法少女の可能性が高いわ。無登録の魔法少女なら支部の支援を受けられず、生活のために盗みを働いてる可能性はある」
「でも最近の盗難事件は高価なものも含まれているから、単なる生活費じゃないかもしれない。誰かに強要されてる可能性もあるわね」
伊吹は机に肘をつき、勢いよく立ち上がって拳を握った。 「魔法少女だろうが何だろうが、盗みは許さねえ。昨日は逃げられたけど、次見つけたら絶対捕まえてやるよ!」
陽菜は少し心配そうな表情で続ける 「でもさ、私たちも魔法少女なんだから、同じ魔法少女が困ってたら助けたいな。昨日、声が楽しそうだったけど、どこか寂しそうだった気がして…。私、もっと知りたいよ」
涼香は陽菜の優しさに微笑みながら頷いた「朝倉さんは優しいわね。確かに彼女が盗みを楽しんでるように振る舞いつつ、心のどこかで葛藤してるなら、私たちに話すきっかけが必要かもしれない
今日から商店街をパトロールして、接触を試みましょう。……そうね支部にも協力してくれる魔法少女に声をかけてみましょう」
「いや、ここ最近皆忙しい。怪物の行動パターンと連携パターンを頭に入れている最中なんだ。僕たちだけであの魔法少女を捕まえよう」
と白髪の少女が言う
「おお、いいね! アタシたちで仕留めよう!」と伊吹が目を輝かせた。陽菜も笑顔で同意した 「うん、それで行こう! 次こそちゃんと会って、話したいな」
3人は商店街へ向かった
夕陽が街をオレンジ色に染め、買い物客や学生たちの笑い声が響き合っている
陽菜は制服の上に薄いカーディガンを羽織り、手にはコンビニで買ったツナマヨおにぎりを持っていた
涼香は依然と凛としていて、伊吹は腕を組んで周囲をキョロキョロ見回しながら歩いている
パトロールの始まりだった
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商店街に到着すると、陽菜たちはまず昨日の一件があったコンビニの前を通り過ぎ、さらに東側へと足を進めた
涼香がポケットから商店街の簡易地図を取り出し、指でポイントをなぞりながら分析を始めた。 「最近の盗難報告をまとめると、コンビニでのお菓子や飲み物の盗難以外に、貴金属店やブランドショップが狙われてるわ。特に東側の『ジュエリー藤田』が怪しい。昨日の一件から距離も近いし、高価な品が揃ってるから、次はそこを狙う可能性が高いと思うわ」
「じゃあ、そこを中心に回ろうぜ!」と伊吹が拳を鳴らし、勢いよく歩き出す。陽菜がその後を追いながら笑った 「伊吹ちゃん、張り切ってるね!」 「あたぼうよ! 昨日はあいつに遊ばれたからな。今日こそ仕返しだぜ!」
「ジュエリー藤田」は商店街の東端に位置し、ガラス張りのショーケースには金のネックレスやダイヤの指輪が美しく並べられていた
店先には「本日セール! 全品20%オフ」の看板が掲げられ、客がちらほらと出入りしている。陽菜は店の向かいの路地に身を隠し、ソルに小声で話しかけた。 「ソル、ここで待ってたら会えるかな?」 ソルが小さな光を揺らしながら応じる。 「うん、陽菜。気配に気をつけてね。あの子の魔法、トリッキーだよ」 「うん、そうだね。頭いい子なのかなって思うけど…何か理由があるよね、きっと」
陽菜たちは路地に潜み、店の様子を窺った。陽菜がおにぎりを頬張りながら呟く。 「こうやってると、探偵みたいでちょっと楽しいね」 「まあな。でも、あたしたちは魔法少女だぜ。平和な裏で盗人を捕まえるのが仕事だろ」と伊吹が肩をすくめて笑う
涼香が穏やかに付け加えた 「そうね。この日常を守るために戦ってるんだから、無駄な時間じゃないわ。少しでも手がかりが掴めれば、支部にも報告できるしね」
その時、店の奥から小さな騒ぎが聞こえてきた。店員が慌てた声で「ちょっと、誰か! ネックレスが消えた!」と叫び、ショーケースから金のネックレスが一瞬で消えるのが見えた。
陽菜は「身体強化」で聴力を強化して、「ピピッ」て音を拾う 「まただ! あっちだよ!」
陽菜と涼香と伊吹が同時に走り出す
3人は店の裏手へ一気に駆け込んだ
結衣との再遭遇と追跡
裏路地に飛び込むと、薄暗い空気が漂っていた
古びた自転車が倒れ、ゴミ箱が散乱し、壁には色褪せた落書きが残っている
陽菜が「身体強化」で聴力を高めると、「ピピッ」という電子音と軽い足音が聞こえてきた 「こっちだよ!」と陽菜が先導し、路地を進む
すると、光が揺らめきフードを被った150cmほどの人型が姿を現した
手に金のネックレスを持ち、陽菜たちを見てニヤリと笑う 「またお姉さんたちか! ほんとしつこいねぇ!」
その姿が歪み、人型が20人程に増える
涼香が素早く動き「魔力感知」を使う
反応があった先程の人型より10m先の人型へ走る
「そこよ!」
涼香は掴むと人型は揺れて消えた
「なっ!?」
複数の声が路地に反響した。 「残念!はずれー」「諦めたら?」「もういないよー」
伊吹が「てめえ!」と叫び、突進するが、ホログラムの人形が現れて踊り出し、伊吹が拳を振り下ろすと「ポン!」と消えた
笑い声が響き渡る。 「そっちじゃないよ!」
陽菜が足音と電子音を頼りに追うと、気配が路地の反対側へ移動しているのが分かった 「涼香先輩、伊吹ちゃん、あっちだよ!」
3人は方向を変え、狭い路地を抜けて小さな空き地へ出た
そこには結衣らしき影が立っていたが、近づくとまた幻影で、地面に「遅い!」とホログラムの文字が浮かんでいた
「くそっ、また遊ばれてるぜ!」と伊吹が歯ぎしりし、拳を地面に叩きつける
涼香が冷静に分析した 「焦らないで。彼女の魔法は幻影と分身がメインね。実体はそう遠くに逃げられないはず。挑発的な物言いも私たちを疲れさせて隙を作るつもりよ。もう少し集中すれば…」
その時、空き地の端でかすかな物音がした
涼香が「そこ!」と指差すと、本体が一瞬姿を現し、焦り走り出した
フードが風に揺れ、灰色の髪がちらりと見える
結衣はホログラムで陽菜達を遮るようにブロックを作り出す
陽菜達は立ち止まるが涼香は幻影と見切りブロックを消し去る
しかしその間に本体がフェンスを軽やかに跳び越えた 「ちっ、またかよ!」と伊吹が悔しがる
陽菜が全力で叫んだ 「待って! 私たち、君を助けたいだけだよ! 盗む理由があるなら、話してよ!」
結衣がフェンスの向こうで一瞬立ち止まり、振り返った。フードの下から覗く目には、驚きと疑いが混じっている
彼女は口を開きかけるがすぐに噤んでしまう
次の瞬間、姿を完全に消した。気配が途絶え、陽菜たちはまたしても取り逃がしてしまった
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空き地で肩を落とす3人
陽菜が息を整えながら呟く。 「また逃げられちゃった…。でも、昨日より近づけたよね? 最後に立ち止まってたし…」 涼香が頷いた。 「そうね。彼女の動きのパターンが少し見えてきたわ。魔法で惑わすのが得意だけど、逃げる距離には限界がある。今日は実体に近づけたし、次はもっと連携を詰めれば捕まえられるかもしれない」
伊吹が拳を握り、悔しそうに地面を睨む 「くそっ、あのガキ、舐めやがって! 次は絶対ぶん殴ってやるぜ! 挑発してくる声がムカつくんだよ!」
陽菜が少し心配そうに続ける 「でもさ、私の声にまた反応してたよ。『助けたい』って言ったら、立ち止まって何か言おうとしてた。本当に困ってるのかも…」
涼香が考え込みながら応じた 「確かに、反応はあったわね。誰かに強要されてるなら、無登録の魔法少女として追い詰められてるのかもしれない。支部に報告して調査を頼むのもいいけど、私たちで直接会って確かめるのが早いわね」 「あたしはまず捕まえてからだぜ。そっから話聞いてやるよ」と伊吹が笑い、陽菜も微笑んだ
「うん、そうだね。明日もパトロールしよう。あの子に会って、ちゃんと話したい!」
3人は空き地を後にし、商店街を抜けて帰路についた。陽菜の心には、挑発的な笑い声と一瞬の迷いが強く残っていた
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一方、結衣は裏路地を抜け息を切らしながら古びれたビルの一室へ戻った
ドアを勢いよく開け、盗んだネックレスを床に放り投げる。フードを脱ぎ、ベッドに倒れ込んで天井を見上げた
「はぁ…はぁ…しつこいなぁ、あの3人…」
ピクセルが無口に浮かび、結衣の横で静かに光っている。彼女はピクセルを睨み、苛立ちを込めて呟いた 「お前、また何も言わないんだな。私がこんなことしてても、怪物と戦わなくても、ずっと黙ってる…。何でいるのさ? 責めるなら責めてくれよ…」
ピクセルは沈黙したまま、ただそこに浮かんでいるだけだった。結衣は苛立ちを抑えきれず、枕をピクセルに投げつけたが、光はすり抜けて何も変わらない
彼女はベッドから起き上がり、部屋の隅にある古いゲーム機の電源を入れた。画面には母と一緒に遊んだ懐かしいパズルゲームが映し出され、優しい音楽が流れる
結衣はコントローラーを手に持ったまま、母の形見である星形ペンダントを握り締めた
陽菜の「私たち、君を助けたいだけだよ」という言葉が頭をよぎる
「助けたい、か…。そんな奴いるわけないだろ。父さんを助けるためにやってるだけなのに…。でも…」
結衣は父を救うために盗みを続けている
1年前、怪物事件の翌日に黒スーツの男達が現れ、父を人質に取って脅迫してきた日から、彼女の日常は変わった
だが、最近、父の態度に違和感を感じ始めていた
「父さん、いつも震えてるけど…ヤクザと話す時、時々笑ってるみたいなんだよな。昨日だって、部屋の外で何か楽しそうに喋ってた気がする…。まさか…いや、そんなわけないよね?」
結衣は首を振ってその疑念を振り払おうとしたが、心の奥で引っかかりが消えない。彼女はゲームを進めながら、過去の記憶を辿った
母が亡くなった後、父は酒に溺れ、結衣を顧みなくなった。怪物事件で結衣を突き飛ばし、魔法を見た後は「化け物」と呼んで避けるようになった。それでも、ヤクザに脅されている姿を見た時、結衣は父を救おうと決めたのだ
「父さんがそんな奴でも、私には父さんしかいない…。母さんの形見だって、父さんが持ってるから…」
だが、陽菜たちの追跡と「助けたい」という言葉が、結衣の心に小さな波紋を広げていた
彼女はゲームを一時停止し、ベッドに寝転がって呟いた。 「もし、あいつらがホントに助けてくれるなら…。でも、信じられないよ。誰も信じられない…」
その夜、結衣が眠りに落ちる前、ビルの外で物音がした
彼女はベッドから飛び起き、窓の隙間から外を覗いた
薄暗い路地に、父・健司の姿が見える。隣には黒スーツの男が1人、タバコを吸いながら立っていた。もう1人の男は少し離れた場所で電話をかけており、時折笑い声が聞こえる
健司が男に話しかけた 「今日の分、ちゃんと持ってきたぜ…。」
男がタバコの煙を吐きながらニヤリと笑う。 「へぇ、中々の成果だな。金のネックレスか。ガキ、使えるじゃねえか。明日も頼むぞ」 健司が小さく頷き、袋を投げ渡す
「結衣には…俺が脅されてるって思わせとけばいいんだよな?」 「ああ、そうだ。健司、いい演技だぜ。あのガキ、まだ気づいてねえだろ?」と男が笑う 健司が一瞬目を逸らし、口元に薄い笑みを浮かべた 「へへ、結衣が魔法使えるなんて金脈だ。借金なんかとっくにチャラだよ。このペンダントもそろそろ質に入れて金にしちまおうかな」
父がいつもと違う様子でペンダントを手に持ち男と親しげに話す姿を見て、胸にざわめきを感じた 「父さん…何!? 笑ってる…?それに母さんのペンダント……」
彼女は目を疑い、窓を閉めてベッドに戻った
心の中の疑念はさらに大きくなり、眠りを妨げる
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その夜、陽菜は自宅の部屋でソルと話していた。窓の外では月が静かに輝いている 「ソル、今日の子、やっぱり困ってる気がするよ。私捕まえるだけじゃなくて、助けたいな。あの子の声、強がってるけど寂しそうだった」 ソルが光を揺らし、優しく応じる 「うん、陽菜。あの子、魔法で遊んでるみたいだったけど、目が寂しそうだったね。陽菜の優しさなら、届くと思う」
陽菜はベッドに寝転がり、天井を見上げて呟いた 「うん、明日もパトロールしよう。涼香先輩と伊吹ちゃんに相談して、次こそちゃんと話したい」 彼女は小さな決意を胸に目を閉じ、眠りについた
翌日、6月5日水曜日の朝。陽菜は学校で涼香と伊吹と共に次の計画を立てた
陽菜が少し興奮気味に言う 「昨日、近づけたよね! 次はもっと早く動けば捕まえられると思う」 涼香が頷き、提案した 「そうね、彼女の魔法は予測が難しいけど、盗みの現場に現れるのは確か。昨日は『ジュエリー藤田』だったから、今日は別の貴金属店で待ち伏せしましょう。商店街の『シルバームーン』が次の候補よ」
だが、伊吹は悩んでいた
「だけどどうする?涼香でも魔力感知を使って騙されてだろ。陽菜が聴力強化で音を聞いてるのも薄々気付かれるだろ」
「それならいい案があるよ。ホログラムという魔法は手を動かし続けなければいけないんだ。それに魔法発動するには「ピピッ」て音がでるのは避けられないから聴力を強化するのは間違っていない。本体に近づいたら手を注視し、魔法発動の瞬間を狙うんだ」と白髪の少女は言う
涼香はその名案に考え込む
「なるほど。手を注視すればいいのね」
「うし!次こそ捕まえるぜ!」 「うん、でも、捕まえたらちゃんと話聞いてあげようね」
3人は結衣の捕縛に向けて動き出す準備が整った