転生したから魔法少女モノで黒幕やることにした   作:外道黒幕魔法少女

16 / 19
13話

 

6月5日、水曜日の放課後。

朝倉陽菜、水河涼香、炎堂伊吹の3人は学校の教室で朝の作戦会議を終え、商店街へ向かった

 

陽菜は制服にカーディガンを羽織り、手にはツナマヨおにぎりを持っている。涼香は凛とした表情で、伊吹は拳を握り気合を入れていた

 

陽菜が歩きながら呟く。
「今日こそ捕まえられるよね! 手を注視して、本体を見つけるんだ」


涼香が頷き、冷静に補足した
「そうね。音と手の動きを頼りにすれば、幻影に惑わされずに済むわ。朝倉さんが音で追跡、炎堂さんと私が接近戦で押さえる。連携をしっかり取れば、彼女を捕まえられるはずよ」


「おお、次こそ仕返ししてやるぜ!」と伊吹が拳を鳴らす

 

夕陽が商店街を赤く染める中、3人は「シルバームーン」へ向かった

貴金属店「シルバームーン」は商店街の中央に位置し、銀製品を中心に扱う小さな店だ

ショーケースにはシルバーリングやペンダントが並び、客足はそこそこあった

陽菜たちは店の向かいの路地に身を隠し、待ち伏せを開始した。

 

─────

 

しばらくすると、店の奥から騒ぎが起きた。店員が慌てて叫ぶ


「ちょっと! リングが消えた! 誰か取ったの!?」


ショーケースからシルバーリングが一瞬で消え、陽菜が「身体強化」で聴力を高めると、「ピピッ」という電子音が裏路地から聞こえてきた。

 


「今だよ! あっち!」
3人は一斉に裏路地へ駆け込んだ

 

路地は薄暗く、古い自転車やゴミ箱が散乱している。陽菜が音を追うと、結衣が一瞬姿を現した。灰色のショートカットにフードを被った少女が、シルバーリングを手に持ってニヤリと笑う


 

「またお姉さんたちか! しつこいねぇ!」


姿がホログラムで歪み、30体ほどの分身が現れた

 

涼香が「魔力感知」を使いながら叫ぶ。
「手を注視して! 本体は動いてるはずよ!」


陽菜が「ピピッ」の音を頼りに分身を見極め、15m先の分身が微かに手を動かしているのに気づいた
「あそこだよ! 手が動いてる!」


涼香と伊吹が一斉に動き、本体の前後に回り込む
「ちっ、バレたか!」

結衣がホログラムでブロックを作り、涼香と伊吹を遮ろうとするが、涼香が跳躍し結衣の目の前に着地する。

結衣は急いで自身と涼香の間に壁をつくり左手に抜け出そうとするが目の前には伊吹が現れる

 

伊吹が結衣の腕を掴んだ

結衣は「離せって!」と叫び抵抗するが伊吹は手を離さなかった。

「へへっ、やっと捕まえたぜ」



「お前ら、何!? 何でこんなにしつこいの!?」

 


陽菜が一歩近づき、優しく言った


「私たち、君を助けたいだけだよ。盗む理由があるなら、話してよ。私たちも魔法少女だから


結衣の目が一瞬揺れ、口を開きかけたその時、空き地の奥から複数の足音と低い笑い声が響いた

 

─────

 

「おい、結衣! さっさと終わらせろって言ったよな?」


 

声の主は黒スーツに身を包んだ男たちだった

刺青が覗く屈強な男たちが次々と現れ、その数は15人に上る

結衣の父・健司もその中に混じり、震えた声で呟く


「結衣、早く渡してくれ…俺、助かりたいんだ…」

 

男たちの中から、体格の大きい男が一歩前に出た。スーツの襟に金のピンを付け、口元に薄い笑みを浮かべている

闇金グループ「黒蛇」のボス格、矢崎だ

彼が結衣に冷たく言い放つ


「ガキ、仕事が遅いと親父がどうなるか分かってんだろ? そのリング、さっさと渡せ」

 

結衣が目を丸くし、陽菜たちを振り返る


「お前ら…何!? お父さんを…!」

 


陽菜が驚きながら叫んだ


「え、君のお父さんが!? どういうこと!?」


涼香が冷静に状況を読み取る


「これは…闇金グループね。お父さんを人質にして彼女を操ってるんだわ」

 

矢崎が陽菜たちを見て、低い笑い声を上げた


「へぇ、魔法少女のお嬢ちゃんたちか。いい度胸してるじゃねえか。だがな、俺たちゃ分かってんだよ。お前ら魔法少女には法律がある。一般人には魔法を使えねえんだろ? 俺たちに手出しできねえって分かってんだよ!」


黒スーツの男たちが一斉に笑い出し、ナイフや金属バットを手に持つ者も現れた

 

伊吹が拳を握り、怒鳴る


「てめえら、卑怯だぞ! 魔法使えなくてもぶっ飛ばしてやる!」


涼香が伊吹を手で制しながら言う


「確かに法律はあるわ。でも、一般人が魔法少女を脅した場合、自衛のために魔法を使うことは認められてる。貴方たちが攻撃してきたら、私たちは対抗するわよ」

 


矢崎が鼻で笑う


「警察? 自衛? やってみろよ。お前らが魔法使えば、俺たちが警察にチクってやる。魔法少女が一般人を傷つけたってなったら、世間様が何て言うだろうな。お前らの支部も終わりだぜ?」

 

結衣が震えながら立ち上がり。矢崎に近づくとリングを差し出した


「これでいいだろ…父さんを離してよ…。この人たちには関係ないんだから。これで終わりにしてほしい」

 

矢崎がリングを受け取り、笑う

「賢いガキだ。親父、助かったな。お前のおかげだぜ」


健司が震えた声で言う。
「結衣、ありがとう…俺、助かった…」

 

陽菜は結衣の震える手と、矢崎たちの態度に違和感を感じた。健司の震えが不自然で、時折矢崎と目配せしているように見える

 

冷静に状況を見極め、結衣に問いかける


「ねえ、君のお父さん、本当に人質なの? 何かおかしくない? お父さん、震えてるけど、この人たちと一緒に笑ってる時もあるよね」

 

結衣が驚き、陽菜を見る

陽菜が矢崎に一歩近づき、毅然と言った


「貴方たち、結衣ちゃんを騙してるでしょ? お父さんが人質なら、もっと怯えてるはずだよ。でも、お父さん、貴方たちと一緒にいるのが自然すぎる。仲間なんじゃないの?」

 

矢崎が一瞬目を細め、笑い出した

「へぇ、良い妄想だな。だが、証拠がなけりゃただの言いがかりだぜ?」

 


陽菜が結衣に近づき、耳元で優しく小声で言う


「結衣ちゃん、聴力を強化してて」

 

陽菜の言葉に、結衣の目が揺れた。彼女は陽菜を見つめ、次に父・健司へと視線を移す。健司は震えながらも、矢崎と目配せを交わしているように見えた。

結衣が小さく呟く
「聴力を…強化?」

 

陽菜が優しく頷き、結衣に囁いた


「うん、魔法少女は皆できるよ。心臓に感じる力を鼓膜に送るように想像して。聴力を強くすれば、遠くの声も聞こえる。試してみて。お父さんの本心が分かるかもしれないよ」

 

結衣は戸惑いながらも、目を閉じ、集中した

陽菜の言う通りにすると、父と矢崎の会話が微かに聞こえてきた

 

健司が震えた声で矢崎に耳打ちする


「結衣が魔法使えなくなったら困るだろ…。このガキども、どうにかしろよ…」


矢崎が低い声で笑いながら応じる

「へへ、慌てるな。あのガキ、まだ気づいてねえよ。俺たちがグルだって知ったら、面白い顔するだろうな。もっと稼がせるぜ」

 

結衣の目がカッと見開かれ、震えが止まらない。彼女は陽菜を振り返り、声を震わせて呟いた


「父さん…嘘だろ…? お前、ヤクザと…グルだったの?」


健司が慌てて手を振る


「結衣、違う! こいつらの嘘だ! 俺はお前を助けるために…」

 

だが、結衣が一歩前に出て、鋭く叫んだ


「黙れ! 今、聞いたよ! お前、私を騙してたんだろ!? 借金がチャラでも、私に盗ませて…お前が稼ぐためか!?」


健司が目を逸らし、言葉に詰まる


「結衣、それは…仕方ねえだろ。俺、追い詰められてて…お前が魔法使えるなら…」

 

結衣の目から涙が溢れ、叫びが空き地に響いた


「仕方ない!? 母さんが死んでから、お前は私を見もしなかった! 怪物に突き飛ばして、化け物って呼んで…それでも私、お前を助けようとしたのに! お前なんか父さんじゃない!」

 

矢崎が結衣の叫びを聞いて笑い、ナイフを手に持つ


「ガキ、泣いても遅えよ。親父は俺たちの仲間だ。お前はこれからも稼ぐ道具だぜ。さあ、そのリング以外にもっと盗ってこい!」


黒スーツの男たち15人が一斉に動き出し、ナイフや金属バットを手に陽菜たちを取り囲んだ

 

陽菜が守るように結衣の前に出る


「もうやめて! 結衣ちゃんは悪くないよ。私たちが守るから!」


 

涼香が陽菜の隣に立ち怒りの籠らせながら静かに言う


「貴方たちの言い分は分かったわ。でも、魔法少女を脅して一般人を危険に晒してる時点で、自衛の範囲よ。私たちに手を出せば、魔法で対抗する。それでもいい?」

 


伊吹も陽菜の隣に立ち、ニヤリと笑う


「今すぐにでもぶん殴れるぜ。てめえら、まとめてぶっ飛ばす!」

 

矢崎が鼻で笑い、男たちに命じた


「やってみろよ、お嬢ちゃんたち。魔法使えば世間が黙っちゃいねえぜ。やっちまえ!」


男たちが一斉に襲いかかろうと身構えたその瞬間、遠くからパトカーのサイレンが近づいてきた

「ウーウー」という音が空き地に響き渡り、矢崎たちの動きが一瞬止まる

 

黒スーツの男たちが動揺し始め、矢崎が顔を歪めて叫んだ


「おい、何だ!? 誰が警察呼んだ!?」


男の一人が慌てて呟く。
「まずいぜ、ボス! 逃げねえと捕まる!」

 

涼香が穏やかに微笑んだ


「私よ。警察に通報する準備しておいたの。貴方達が出てきた瞬間に通報ボタンを押したわ。証拠として今の会話も録音済みよ」


彼女がポケットから小さな録音機を取り出すと、矢崎と健司の会話が再生された。
今までの会話が空き地に響き、男たちの顔が青ざめる

 

陽菜が驚きながら涼香を見る


「涼香先輩、すごい! いつから準備してたの?」


「朝倉さんのおかげよ。貴方が結衣ちゃんの何か困ってるんじゃないかて考えていたから。もしかしたら脅迫されているかもと思ったのよ」と涼香が答える。

伊吹が笑いながら拳を下ろす


「おお、策士だぜ! これでてめえら、逃げられねえな!」

 

矢崎が歯ぎしりし、ナイフを握り直して叫ぶ


「くそっ、警察が来る前に片付けるぞ! お前ら、やれ!」
だが、男たちはサイレンが近づく音に動揺し、統率が乱れ始めていた

矢崎が一人で陽菜に突進しようとするが、結衣が前に飛び出した


「やめろ! お前らにこれ以上関わらない!」

 

結衣がホログラムで周りに巨大な壁を作り、矢崎と男たちの動きを封じる

矢崎が壁を叩きながら怒鳴る。

「ガキ、裏切る気か!? 親父がどうなるか分かってんだろ!」


「もう父さんじゃない。お前らに騙されてただけだ!」

 

その時、健司がポケットから星形ペンダントを取り出し、震えながら呟く。
「結衣、落ち着け…これ、お前の母ちゃんの形見だ。俺が預かって…」


結衣が目を細め、健司に近づいた


「預かる? お前、昨日、母さんのペンダントを売る話してたろ。親しげにヤクザと話してたるのをビルの窓から見てたんだ!私に盗ませて、自分が楽するつもりだったんだ!」


彼女は健司の手からペンダントを奪い取った。健司が「返せ!」と叫ぶが、結衣は冷たく見下ろす


「母さんの形見はお前には渡さない。私が持つよ」と言って、健司の周りに壁を作り出した

 

陽菜が駆け寄り、結衣を慰める
結衣がペンダントを握り締め、涙をこらえる


「……ありがとう。私、騙されてたなんて…バカみたいだ…」

 

─────

 

パトカーの音がすぐ近くまで迫り、警察官たちが空き地に到着した

制服姿の警官が「動くな! 全員手を上げろ!」と叫び、矢崎と男たちが慌てて逃げ出そうとするが、結衣のホログラムの壁に阻まれている。涼香が警官に近づき、状況を説明した


録音機を渡すと、警官が頷き、矢崎たちを拘束し始めた。

 

健司が地面に座り込み、震えながら呟く


「結衣、俺は…仕方なかったんだ…」


「お前の仕方ないで、私の人生はめちゃくちゃだ。お前とはもう終わりだ」

 


警官が健司の手錠をかけ、連行していく。

ピクセルが初めて声を発した


「……結衣、強くなったね」


「お前…喋った…?」


「……ずっと見てた。君が自分で選ぶのを待ってたよ。怪物と戦うには自己の強さが必要だ。君は今、鎖を断ち切った」

 


結衣が涙を拭い、頷いた


「ピクセル…ありがとう」

陽菜が結衣に手を差し出す


「結衣ちゃん、困ってたんだね。私たち、魔法少女の仲間だよ。一緒に戦おう?」

 


しかし結衣は陽菜の手を取るのを躊躇う


「……ありがとう。でも私いっぱい物を盗んだ。自首して罪を償わないと」

涼香は穏やかに言う

「そうね。貴女には窃盗の罪にあたる。支部に連絡して貴方のことはこれから事情を説明して対応を決めるわ。暫定的に第四支部で監視付きで活動してもらうことになると思う。私が監視役として一緒にいるわね」

「それに魔法少女の窃盗だけど前例があるわ。その時の判決は魔法少女としての責務を果たし無償奉仕することよ。貴女が稼ぐお金は全て被害にあったお店に充てられるわね」

 

結衣が驚き涼香を見る

「……良いんですか?……私……」

「犯罪を犯した魔法少女は監視付きで強制的に働かせるしかないのよ。そして監視ということは私と一緒に住んでもらうことになるわ」

 

伊吹が肩を叩き、陽菜が笑顔になる


「おお、よろしくな!」「よろしくね!結衣ちゃん」


結衣が頷き、心からの笑みを浮かべた

 

「うん…よろしく!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。