転生したから魔法少女モノで黒幕やることにした   作:外道黒幕魔法少女

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16話

 

朝焼けが薄オレンジ色に空を染めるころ、陽菜は目を覚ました

カーテンの隙間から差し込む光が、部屋の壁に柔らかな模様を描いている。ベッドの中で少しだけ伸びをして、陽菜は枕元に置いたスマホを手に取った

 

時刻は6時45分 

「ふぁ……おはよう、ソル」と呟くと、枕の横に浮かんでいた小さな光の塊━━妖精ソルが、ぴょこんと跳ねるように反応した

「おはよう、陽菜! 今日も元気に頑張ってね!」

「うん、頑張るよ」

 

階段を下りると、キッチンからトーストの香ばしい匂いと、味噌汁のほのかな出汁の香りが漂ってくる

母がエプロン姿でフライパンを振っていて、父は新聞を広げながらコーヒーを飲んでいる。いつもの朝の風景だ

「おはよう、陽菜。よく眠れた?」

「おはよう、うん、ぐっすり!」

「よかった。ほら、卵焼きできたてだよ。食べてね」

「いただきます!」

 

父が新聞から顔を上げる

「今日も学校か。何か予定あるのか?」

「うん、まあ……放課後、ちょっと友達と遊ぶかも」

 

両親に魔法少女のことは言えない

言ったら心配かけるだけだ。胸の奥に小さな棘が刺さるような感覚が広がるけど、陽菜は笑顔で誤魔化した。

 

「遅くなるなら連絡してね。危ないから」

「うん、大丈夫だよ。気をつけるから」と陽菜は明るく答えた

けれど、心の中では罪悪感でいっぱいだった

 

 

学校が終わると、スマホが震えた

画面を見ると、グループ欄に涼香にメッセージがきていた

 

「支部から調査依頼が入った。工業地帯で物音がするという報告。17時に第4支部集合」

 

陽菜は一瞬目を閉じて深呼吸した

魔法少女としての日常が、また始まる。

「"了解! 行きます"っと」

 

第4支部に着くと、涼香、伊吹、結衣がすでに待っていた

涼香はいつもの冷静な表情で地図を広げ、伊吹は腕を組んでなんだかソワソワしている。結衣は初めての実践なのか緊張した顔持ちでいた

「朝倉さん、時間通りね」

「こんにちは涼香先輩!工業地帯ってどこですか?」

「ここよ、市の北側。工場が密集してるエリア。工場の人から『夜になると変な物音がする』って支部に通報があったようなの」

 

「怪物か盗人だろ!早く行こうぜ」と伊吹が少し興奮した声で言う、

「炎堂さん、落ち着いて。なんだか急ぎすぎよ。どうしたの?」

すると、伊吹は申し訳なさそうな顔をする

「……いや……その……、すまねぇ。工場にはあんまりいい思い出がなくて気持ちが急いでしまったんだ」

「……無理はしないで」

「大丈夫だ。あたしも行く」

 

4人は支部の転移魔法陣を使い、工業地帯の入り口へ移動した。目の前に広がるのは、錆びた鉄骨とコンクリートの壁が連なる無機質な風景だ。夕陽が沈みかけ、空が薄紫に染まりつつある。遠くでカラスがカアカアと鳴き、風が鉄パイプの隙間を通ってヒュウと音を立てる。

 

「ちょっと不気味だね」と陽菜が呟くと、ソルが「大丈夫、僕がいるよ!」と励ましてくれた。

 

「二手に分かれましょう。サンライズとミラージュピクセラ、私とブレスインパクトで。身体強化で聴力上げて、魔力感知に集中してちょうだい」

何かあったらすぐ連絡をと涼香が指示をだす

「「「了解!」」」

 

─────

 

陽菜と結衣は工場の東側へ向かう

足元のアスファルトはひび割れ、雑草が隙間から顔を出している。陽菜は身体強化の魔法をかけ、耳に意識を集中した。風の音、遠くの機械の低いうなり、結衣の靴が地面を擦る音──全てがクリアに聞こえる

「魔力感知、感じる?」

「ううん、まだ何も」

 

二人は黙々と歩き続ける。錆びたドラム缶や放置された鉄パイプが転がる中、陽菜の足音がカツカツと響く。少し間が空いて、結衣がぽつりと口を開いた

「あの、サンライズ。なんで魔法少女になったの?」

「えっとね……帰り道に怪物に襲われて、ソルと契約して成り行きでなっちゃった感じ」「ミラージュピクセラは?」

「私も……似たような感じです。父と怪物に襲われて、ピクセルと出会って、気づいたら魔法少女に」

「そっか。似た者同士だね私たち」と陽菜が笑うと、結衣も小さく頷いた。

 

 

一方、伊吹と涼香は西側を進んでいた。伊吹は身体強化で耳を澄ましつつ、「怪物、早く出てこねえかな」と呟く。

「焦らないで。敵がいるなら必ず気配がある」

「……なぁ、アクアタイドってさ、なんで魔法少女になったんだ?」 「……昔、家族を守りたくて」

声に少しだけ影が混じる

 

「そっか。あたしはさ、兄が死んでから何かやりたくて」

 

その時、涼香と伊吹の耳に異音が届いた。ガシャン、と金属が擦れるような音。

「聞こえた。西の端ね」と涼香が陽菜に連絡を入れる

 

───

 

連絡を受けた陽菜と結衣は音の方向へ急いだ。身体強化で脚力を上げ、工場の角を曲がるたびに風が耳元で唸る。遠くでドガン!と何かが崩れる音が響き、陽菜の心臓が跳ねた

「急ごう!」

 

現場に着くと、伊吹と涼香が巨大な蟹型怪物━━鉄殻蟹と対峙していた

5メートルの巨体、赤錆色の甲羅が夕陽に鈍く光り、両爪が地面を抉っている。工場の壁が一部崩れ、鉄骨が無残に曲がっていた。

伊吹が迫り来る怪物の猛攻を防ぎながら、拳を蟹の胴体に叩きつける。

「ガンっ」という音がなり効果は無さそうだった

陽菜は伊吹を援護しようと杖を怪物へ向け、光線を放つ。光線は怪物の腕に当たり、怪物がよろめいた

 

結衣が伊吹のホログラムを数体作り出し、怪物を撹乱。そのうちに伊吹はその場から離れた。

 

「甲羅がすげぇ硬い。アクアタイドが隙間を狙って腕を抉ったけど、すぐ再生した。甲羅の中に引っ込んだら気をつけろ、高速回転で突撃してくるぞ」

 

鉄殻蟹の複数の目がギョロリと動き、陽菜たちを捉えた。ガシャリと爪が

地面を叩き、アスファルトが砕ける音が工業地帯に響き渡る。

粉塵が舞い上がり、陽菜の視界が一瞬霞む。赤錆色の甲羅が夕陽に鈍く光り、複数の目がギョロリと4人を睨みつけた

 

「サンライズ、右から援護! ブレスインパクトは左から引きつけなさい!ミラージュピクセラはブレスインパクトがいつでも離脱できる様にホログラムの準備を!」

「了解!」


「おう、任せろ!」

「はい!」

 

 

「いくよ!」


オレンジ色の光線が鉄殻蟹の右腕を捉え、ガキン!と火花が散る。巨体がわずかによろめく。

 

「くらえっ!」


炎のブレスが甲羅に直撃し、ドガッ!と鈍い音が響く。だが、甲羅は焦げるどころか一瞬熱で光るだけ。

鉄殻蟹が反撃に転じ、左の爪が伊吹に向かって振り下ろされる。


伊吹は回避し、爪が地面を抉る衝撃波がアスファルトの破片を飛び散らせる

涼香がその隙に槍を青い光で包み込み、槍を投擲する。槍は怪物の脚関節を抉りとる。

───だが、怪物の脚はすぐに再生された

 

伊吹のホログラムの分身が数体、怪物を撹乱させ、伊吹がその場から離脱する

「再生能力が厄介ね」

「どうしよう」

「再生するなら、まとめてぶっ壊すしかねえ!」

 

すると、怪物が甲羅の中に頭と爪を引っ込め、ガチガチと音を立て始めた


「やばい、高速回転だ!」

 

鉄殻蟹の巨体が突然回転を始め、赤錆色の甲羅が夕陽に反射して目映い光を放つ。轟音とともに突進が始まり、工場の鉄骨が次々と薙ぎ倒される

 

陽菜たちは散開し、空へと飛び上がる

しかし1人逃げ遅れたのがいた──結衣だった

 

「ミラージュピクセラ!"飛翔"で逃げて!」

回転する怪物が迫り、結衣は「ひっ」と悲鳴を上げる。

すると、伊吹が結衣の前にでる。結衣に触れると"転移"で衝突を免れた

 

結衣は震えながら「ごめんなさい……」と呟くと

「謝るんじゃねぇ!集中しろ、まだおわってねえぞ!」と結衣を励ます

 

鉄殻蟹の回転が止まり、再び爪を振り上げる。

陽菜は目を閉じ、魔力感知に集中した。鉄殻蟹の動き、複数の目の視線、甲羅の微かな振動━━全てが頭に浮かぶ


「甲羅の隙間……動きが止まった時に狙えば!」

 


彼女は杖を掲げ、光を貯め始めた

オレンジ色の輝きが徐々に強まり、杖の先端が熱を帯びる

 

その瞬間、遠くから人の悲鳴が響いた

「うわぁっ! なんだこれ!助けてくれ!」


陽菜達の耳に届き、身体強化で高めた聴覚がその声を捉える

 

男の声、慌てふためく足音、そして怪物の近くで何か転がる音

 


「誰かいる!?」

「……親父!?」


 

悲鳴の主は、工場の隅で転倒した伊吹の父━━炎堂剛志だった

 

作業着に泥と油がこびりつき、40代後半の疲れ切った顔が恐怖に歪んでいる。錆びた鉄パイプの山に足を取られ、もがいていた

 

鉄殻蟹の複数の目がその動きを捉え、ガシャリと爪を振り上げる。目標が陽菜たちから剛志に切り替わる。


「まずい!」

「親父、動くな!」


 

伊吹が叫び、瞬時に父の前に飛び込む。鉄殻蟹の爪が振り下ろされ、伊吹は身体強化で反応速度を上げ、剛志の腕を掴んで横に転がる。爪が地面を叩き、コンクリートが砕け散る。剛志が「うっ」と呻き、伊吹は彼を鉄骨の陰に押しやる。

 


「チッ、こんな時に……!」

伊吹が舌打ちし、拳を握り直す。彼女の胸に、家での父を見た記憶が蘇る。酒臭い息、怒鳴る声、無力感──全てが一瞬で頭を駆け巡る。

「ブレスインパクト、戻って!」

陽菜が叫ぶが、伊吹はすでに鉄殻蟹を睨んでいた

 

「てめえ、親父に手ぇ出すな!」


彼女は口を膨らませ、水のブレスを勢いよく噴射。鉄殻蟹の複数の目に直撃し、ゴロゴロと目が動き、視界が乱れ、鉄殻蟹が一瞬怯む。

 

陽菜が光線を放つ

オレンジの輝きが甲羅の右腕を捉え、ガキン!と火花が散る。結衣はホログラムで伊吹の幻影を増やし、注意を分散。涼香は潜行で下に潜り、槍で甲羅の隙間を抉る。黒い液体が滲み、鉄殻蟹がよろめく。

 

すると、鉄殻蟹は甲羅の中に頭と爪を引っ込め、ガチガチと音を立て始めた。

 

「高速回転だ!」

結衣が叫ぶ

 

だが、伊吹は即座に動く

「させるかよ!」


氷のブレスを浴びせ、冷気が鉄殻蟹の関節を包む。甲羅が引っ込む途中で凍りつき、カチカチと音を立てて怪物動きが止まる。関節が氷で固まり、回転が封じられた

 


「今だ!」

涼香が潜行から飛び出し、槍を逆手に持って関節の隙間を突き刺す

 



陽菜の杖の先端に膨大な光と熱が集まる

「ミラージュピクセラ!私の魔法と同時に怪物を閉じ込めて!」

「はい!」

 

結衣はホログラムの魔法で怪物の周りにブロックを展開する


すると、陽菜から一撃必殺の光線が放たれ、オレンジの輝きが工業地帯を貫く。光線が怪物に当たる直前に最後のブロックで密室をつくりだした

 

密室からオレンジ色の光が溢れ出し、ドカンと大きな爆発が起こり出した。崩れるブロックと巻き起こる煙の中から、灰と化す怪物が見えた

 

静寂が工業地帯を包み、陽菜達は膝をついて息を切らす。

「やった……!」


「よくやったわ」

「私、役に立てたかな?」

「もちろん! みんなで勝ったんだよ!」

 

 

だが、静寂を破る声が響いた

「伊吹! お前なんでその格好……まさか魔法少女なんかしてるのか!」

 


鉄骨の陰から這い出てきた剛志が、驚愕の表情で娘を指さす。作業着に泥と汗がこびりつき、目が大きく見開かれている。伊吹の漆黒と紅の装束を見て、彼の声が震える。

 

伊吹は拳を握り、眉を吊り上げる

「悪いかよ! 親父こそなんでこんな所にいるんだよ!」


「俺は夜勤の残業で工場にいたんだ! 変な音がして逃げてきて……お前、こんな危ないことしてたのか!」


「うるせえ! 親父に心配される筋合いねえよ! 兄ちゃんが死んだ時も、酒飲んで怒鳴ってばっかだったじゃねえか!」

 

剛志の顔が一瞬歪み、言葉に詰まる

「それは……俺が悪かった。だから最近仕事に復帰して……でも、お前がこんな目に遭うなんて……」


「黙れ! 親父なんかに何が分かるんだよ!」


伊吹の声が震え、目尻に涙が滲む。

 

陽菜が慌てて間に入ろうとする。

「あの、落ち着いて……」


 

──だが、伊吹は舌打ちし、「もういい!」と転移魔法で姿を消す

光の残像だけが残り、彼女は第4支部へと戻ってしまった

 

剛志が呆然と立ち尽くす中、涼香が静かに近づく

「あなた、怪我は?」


「あ、ああ……なんとか大丈夫だ。娘が……あんな目に……」

陽菜には彼の声は小さく、罪悪感と混乱が混じってる気がした

 

夕陽が完全に沈み、空が深い紫に染まる。崩れた工場の一部に風が静かに吹き抜ける。涼香は仲間たちを見回す


「とりあえず、貴方はここから避難を。サンライズ、ミラージュピクセラ、私たちは後処理を」

 

─────

 

支部に戻った陽菜、涼香、結衣は休憩室でソファに座っていた

陽菜は温かいお茶を手に持つが、どこか上の空だ

 

「伊吹ちゃん、大丈夫かな……」


涼香が地図を片付けながら答える

「炎堂さんなら、少し時間が必要ね。あの様子だと、家族とのことは簡単には解決しないわ」


 

その時、ドアが勢いよく開き、伊吹が入ってきた。紅の装束は埃まみれで、目は少し赤い

 


「伊吹ちゃん!」

陽菜が立ち上がるが、伊吹は手を上げて制する


「心配すんな。ちょっと考え事してただけだ。すまねぇ、先に帰っちまって」

 


「お父さんとは、どうするつもり?」


伊吹はソファにドサリと座り、天井を見上げる

 

「分かんねえ。あいつ、昔は兄ちゃんとあたしをちゃんと見てた。でも今は……酒臭い顔しか思い出せねえ」

「でも、今日助けたじゃん。お父さん、伊吹ちゃんのこと心配してたよ」「心配? あいつが? 笑わせんな。あんな奴に何が分かるってんだ」

伊吹の声は尖るが、どこか力が抜けている

 


結衣が小さく言う

「私も父に裏切られたけど……どこかで、信じたい気持ちが残ってるよ」
「……認めて欲しいなんて、思ってねえよ。ただ…………」

 

涼香が立ち上がる

「時間が必要よ。あなたも、あなたのお父さんも」

「まぁな」

「私たち、仲間だよ。伊吹ちゃんが辛い時は、絶対支えるから!」


「………ありがとよ」

 

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