転生したから魔法少女モノで黒幕やることにした 作:外道黒幕魔法少女
春の朝焼けが空を柔らかく染める5月の朝、15歳の高校1年生・朝倉陽菜は、自転車を漕いで通学路を進んでいた。オレンジ色の短髪が風に揺れ、彼女の明るい笑顔が街に溶け込む
陽菜は地元の高校へ向かう
彼女の住む街は、怪物と魔法少女が日常に根付いていた
50年前「始まりの魔法少女」が現れて以来、怪物が街を襲い、魔法少女がそれを倒す光景が常態化していた。街角には魔法少女の募集ポスターが貼られ、子供たちが「妖精と契約したい!」と騒ぎながら走り回っている。
学校に着くと自転車を駐輪場に停める。教室に入ると、友達が「おはよう」と手を振ってくる。授業が始まる前に陽菜は教室で友達と他愛もない話を交わしていた。窓際の席に座り、外を眺めながら穏やかな時間を楽しむ。
「ねえ、星空瑞希ちゃん見た? アイドルなのに魔法少女で、怪物倒すのすごいよね!」
「うん、かっこいいよね。私には無理かな、魔法少女って特別な人だけでいいよ」
彼女の声には、少しの憧れが混じっていたが、自分がその一員になる自信はなかった
「陽菜ならなれそうだけどね」とからかうと、彼女は照れ笑いを浮かべた「まさか! 私、普通が一番だよ」
その日の2時間目、社会科の授業が始まった
教室のざわめきが静まり、教師が黒板に「魔法少女の歴史」と大きく書いた。陽菜はノートを開き目を輝かせて見つめ、教師が落ち着いた声で話し始めた
「皆さん、魔法少女の歴史の経緯を知っていますね。50年前、怪物が突然現れ、人々を襲い始めた。その時、1人の魔法少女が現れて怪物と戦った。彼女は『始まりの魔法少女』と呼ばれ、今の魔法少女文化の礎を築いた人物です」
陽菜は興味津々で聞き入り、ペンを手にメモを取り始めた
教師が黒板に年表を描きながら続ける
「怪物が現れたのは、正確には50年前の春。最初の怪物は鋭い爪と赤い目を持つ狼型の異形で、街の中心部を襲い、数十人が犠牲になりました。そこに現れたのが始まりの魔法少女です。彼女は怪物と戦い、圧倒的な力でこれを倒し、そしてこう宣言しました。『妖精と契約すれば、誰でも魔法少女になれる』と」
「彼女はその日から10年間、魔法少女のリーダーとして戦い続けました。最初の数年は単独で怪物と戦い、人々に希望を与えました。妖精たちが現れ始め、素質ある者を魔法少女に変えていきました」
陽菜はノートに「始まりの魔法少女」「妖精」と書き込み、ワクワクを抑えきれなかった
教師が黒板に「怪物対策省」と書き加えた
「彼女の最大の功績は、怪物対策省の設立です。彼女は現在怪物対策省トップの諫原玄一郎に協力を申し入れ、魔法少女を組織化する機関を作りました。当時、怪物は火を吐く蛇型や霧を操る鳥型の強力な個体も現れ始めており、今から48年前の災害では、港町が焼かれ、数百人が命を落としました。彼女は単独では限界があると判断し、魔法少女たちを集め、訓練の基礎を築きました。怪物対策省は、魔法少女に魔法の使い方を教え、街を守るための拠点を各地に設けました。彼女自身が設計したと言われる支部の仕組みは、今も使われています」
陽菜は「怪物対策省」と書き、「すごい人だな…」と呟いた。
教師が年表に点を追加しながら続けた
「怪物が現れてから50年間、怪物による災害は幾度も起きました。
15年目には、触手を操る怪物が大都市を襲い、ビルを崩壊させ、数千人が犠牲になりました
20年目には、幻惑を使う怪物が街全体を混乱に陥れ、避難が間に合わず壊滅的な被害が出た。これらは強力な怪物で、魔法少女たちの連携がなければ倒せなかった。彼女が去った後、怪物は次第に強さを増していきます
30年目には、氷を操る怪物が北部の街を凍結させ、数万人が避難を強いられた
40年目には、海水を操る怪物が沿岸部を襲い、津波で壊滅的な被害をもたらした。これらは特に強力な怪物として記録されています」
陽菜は「15年目」「20年目」「30年目」「40年目」とメモし、「魔法少女って大変だ…」と呟いた。
友達が小声で「歴史好きだよね、陽菜」と笑うと、彼女は「うん、なんかワクワクする」と頷いた。
教師が話を進めた
「始まりの魔法少女の戦い方は独特でした。彼女の魔法は怪物に合わせて変化し、時には炎を、時には水を操ったとされ、彼女が使った魔法が、今の固有魔法や基礎魔法の原型かもしれないと諸説言われています。飛翔、魔弾、身体強化といった基礎魔法は、彼女が魔法少女たちに教えたものが標準化されています。彼女が去った後も、魔法少女たちはこれを学び、戦ってきました」
陽菜は「固有魔法と基礎魔法」と書き加え、「どんな魔法だったんだろう」と想像を膨らませた。
教師が最後に付け加えた
「10年後のある日、彼女は忽然と姿を消した。理由は誰も知りません。病気だったのか、怪物の強さに負けたのか、それとも別の目的があったのか。記録には残っていません。その後も妖精たちが魔法少女を増やし続けています」
「今では、魔法少女は社会の一部です。怪物は日常的なものから強力なものまで現れ、50年間で何度も国を救ってきました。彼女が始めたこの歴史は、皆さんの身近に続いている。たとえば、君たちの親戚や友人に魔法少女がいるかもしれません。歴史を学ぶことで、彼女たちの役割と責任を理解してほしい」
授業が終わり、陽菜はノートを見返しながら「魔法少女って、すごい責任だね」と呟いた。
友達が「陽菜、興味津々だったね」と笑うと
彼女は「だって、こんな歴史知ったらワクワクするよ! 始まりの魔法少女、どんな人だったんだろう」と目を輝かせた。
放課後、陽菜は友達と別れ、自転車を押しながら帰路についた。夕陽が街をオレンジに染め、風が心地よかった。
「歴史の授業、面白かったな」と呟きながら、彼女は住宅街の道を進んでいた
家の近くまで来たとき、路地の奥から微かな物音が聞こえた。陽菜は自転車を止め「何の音?」首を傾げた。
夕陽が路地の入口を照らし、影が揺れているのが見えた
彼女は少し不安になりながらも、「猫でもいるのかな」と呟き自転車を降りて近づく
その瞬間、低い唸り声が響き、路地の影から異形の存在が姿を現した。鋭い爪と赤く光る目が夕陽に映え、その異様な姿が陽菜の視界に飛び込んできた
「え!? 怪物!?」
陽菜は自転車を放り出し、恐怖で足が震えた。自転車が倒れるガシャンという音が路地に響き渡る
歴史の授業で聞いた最初の怪物─鋭い爪と赤い目の狼型─が、今、目の前に現れたのだ
怪物はゆっくりと彼女に近づいてきた。夕陽がその背を照らし、鋭い爪が地面を削る音が静かな路地に響く。陽菜の心臓が激しく鼓動し、冷や汗が背中を伝った
彼女は後ずさりながら、「どうしよう…逃げなきゃ…!」と呟く
怪物は喉の奥から低い唸り声を上げた。その音は陽菜の耳に突き刺さり、彼女の体を硬直させた
逃げようと踵を返した瞬間、路地の奥から小さな泣き声が聞こえた
5歳くらいの男の子が地面に座り込んでいた
膝を擦りむき、涙を流しながら「お母さん…」と呟いている
怪物がその子に気づき、向きを変えて近づき始めた
「危ない!」
陽菜は震える足を無理矢理動かし、少年に駆け寄った
陽菜は「逃げて!」と叫びながら少年の前に立ち、腕を広げて怪物と対峙する
「お姉ちゃん……怖いよ…」と少年が泣くと、「大丈夫、私がいるから!」と声を張り上げた
怪物が一歩踏み出し、陽菜の肩に恐怖の重みがのしかかる
目の前の恐怖に彼女は少年と逃げることを選ぶ
すぐさま彼女は少年を抱きかかえ、路地の隅に転がるようにして隠れた。コンクリートの壁に背を預け、少年を強く抱きしめながら、「怖くないよ、大丈夫だよ」と囁いた
だが、怪物は執拗に近づき、その赤い目が陽菜を捉えた。爪が地面を擦る音が近づき、彼女の呼吸がさらに速くなる。
「誰か!誰か居ませんか!…助けて!」
「魔法少女が来てくれれば」と願った
だが、路地は静かで、助けは来ない
怪物の唸り声が近づき、陽菜は「死にたくない…!」と喉の奥で呻く
少年の小さな手が陽菜の服を握り、彼女の胸に熱いものが込み上げる
「私が…守らなきゃ!」
陽菜は目を開け、少年を怪物から見えないように隅に置く。
隠れるのをやめて近くに転がっていた鉄パイプを持って怪物の前へ躍り出る
怪物は警戒したように動きを止め、赤い目が陽菜を睨みつけた。彼女の心臓はまだ激しくなり続けている。
その刹那、小さな光が彼女の前に現れた。オレンジ色の蝶のような妖精が舞い降り、陽気な声で告げた
「ねえ、君、助かりたいよね? 魔法少女にならない?」
陽菜は息を呑み、目を見開いた
「僕と契約すれば、この怪物倒せるよ!」
「僕、正義感強い子が大好きなんだ!」
陽菜の心が揺れた。すぐ近くにいる少年の涙、自分の中の小さな勇気が交錯する
怪物が再び迫り、爪が陽菜の髪をかすめた。鋭い風圧に髪が乱れ、陽菜は涙を流しながら叫んだ
「契約する…! 守りたいんだ!」
彼女の叫びが路地に響き、恐怖と勇気が混ざった声が夕陽に溶けた。
「契約成立! 僕、ソルって言うからよろしくね!」
眩い光が陽菜を包み込んだ。怪物は光に目をやられ、後ずさりながら唸り声を上げる
少年が驚いた顔で彼女を見上げ、光の中で陽菜の姿が変わっていくのを見つめた
変身が始まり、制服がオレンジと金の魔法少女衣装に変わっり、スカートがふわりと広がり、手には杖が現れる
陽菜は自分の姿に驚きつつも杖を握りしめた
「これが…魔法少女!?」
「そう! 固有魔法『太陽』を使ってみて! 杖を振ればビームが出るよ!」
目を回復させた怪物が再び唸り声を上げ、陽菜に襲いかかる
彼女は深呼吸し、杖を手に持つ感触を確かめた。夕陽が杖に反射し、オレンジの光が路地を照らす
陽菜は両手で杖を握り、腕に力を込めて杖を振り下ろした
眩い光線が迸り、怪物に一直線に突き刺さる。オレンジ色の輝きが路地を埋め尽くし、怪物は「グオオッ!」と悲鳴を上げ、体が灰となって崩れ落ちた。
「やった…!」
彼女の声が震え、周囲が静寂に包まれた。杖を持つ手が汗で濡れ、膝がガクガクと震える。
少年が「ありがとう、お姉ちゃん!」と泣きながら抱きついてきた
陽菜は「よかった…」と笑い、少年の頭を撫でた
「よくやった! これが魔法少女の第一歩だよ」
「私…本当にやったんだ」
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彼女は少年の手を引いて路地を出て、近くの家まで送り届けた
少年と別れを告げた後、自転車を拾って家に向かった
「ただいま…」
「おかえり、遅かったね」
「うん、ちょっとね」と笑い、夕食を食べながら今日の出来事を家族に話さなかった
部屋に戻るとソルが現れる
「陽菜、すごかったよ!」
「まだ実感ないよ」と苦笑し、陽菜はベッドに腰を下ろした。