転生したから魔法少女モノで黒幕やることにした 作:外道黒幕魔法少女
訓練場に足を踏み入れると、陽菜は息を呑んだ。広大な屋内には、巨大なターゲットや不気味な模擬怪物が配置されている
陽菜の心が縮こまった
「こんなところで…私、できるのかな」
ソルは「さあ、陽菜、始めよう!」と彼女に変身するように促す
陽菜は目を閉じ、心の中で「変身」と唱えると光に包まれて『サンライズ』に変身した。ソルは基礎魔法を教え始めた
「まずは『飛翔』だよ!魔力を足に集中させて体を軽くするイメージだよ!」
陽菜は「飛翔」を試し、ソルの言葉通りに魔力を足に集中させた。
すると、ふわりと体が浮き「うわっ、飛んでる!」と叫んだが、バランスを崩して床に落下する。「痛っ…!」と呻き、膝を擦りながら立ち上がる。
ソルが「焦らないで! ゆっくりだよ!」と励ます中、陽菜は再び浮かび、「飛べた…!」と歓喜した。
次の「魔弾」に挑戦。ソルが「杖を振って、光を放つイメージだよ!」と指導する。陽菜は杖を握り直し、魔力を先端に集めた
オレンジ色の光がチカチカと点滅し「えいっ!」と振り下ろすと、弱々しい魔弾が飛び出した。ターゲットに届く前にふらつき、床に落ちて消える。
「当たらない…」と呟く陽菜に、ソルが「力を込めて! 心で狙うんだ!」と叫ぶ
陽菜は何度も試すが、光弾は壁に虚しく消え、彼女の肩が落ちた。
その時、訓練場の奥から鋭い足音が響いた。カツン、カツンと規則正しく床を叩く音が近づき、陽菜が振り返ると、青い長髪が風に揺れた少女が現れる
彼女の背後に漂う威圧感に、陽菜はゴクリと唾を飲み込んだ。
「職員の方に言われてきたのだけど、貴女が新人の魔法少女かしら?」
「朝倉陽菜です…!」
「本名じゃなくて、魔法少女名でいいわよ。」
陽菜は少し恥ずかしそうに先程決めた魔法少女名を言った
「さ、サンライズです」
「恥ずかしがらなくいいわよ。私たち魔法少女が本名を隠匿するのはちゃんとした意味があるのだから」
「私はアクアタイド、魔法少女は数が多くて似たような名前が多いからアクアタイドと呼んで
本名は水河涼香、高校3年生よ」
「え、どうして本名を………」
「私だけ貴女の本名をしってるのは不公平じゃない。その、悪い?」
「い、いえ!よろしくお願いします!」
彼女の周りで飛んでいた、魚の姿をした妖精が
「涼香は面倒見が良くて、強いからどんどん頼っていいよー」と言う
涼香が自身の妖精に睨みつけるが、妖精はどこ吹く風のようだった
涼香がため息を吐き
「魔弾の練習をしていたわよね。ひとまず手本を見せるから見ていて」
アクアタイド――水河涼香は静かに一歩前に進み、訓練場の中央に立った
涼香は目を閉じる。すると、彼女の手のひらに水のような青い光が集まり始め、徐々に形を成していく。まるで水滴が集まって球体を作るかのように、光は凝縮され、やがて鋭い輝きを放つ「魔弾」が完成した。
「魔弾は力だけじゃなくて、意志が大事。狙う場所を心でしっかり捉えるの」
涼香が静かにそう呟くと、彼女の手から魔弾が放たれた。青い軌跡が空気を切り裂き、訓練場の奥に設置されたターゲットの中心に一直線に命中する。
陽菜は目を丸くして、「すごい…!」と声を漏らした。
「大したことじゃないわ。慣れれば誰でもできる。サンライズ、貴女もやってみて。」
「え、私!?でも、私、全然当たらないし…さっきみたいに弱々しい魔弾しか出せなくて…」
「最初はみんなそうよ。基礎魔法はどれもイメージが大事。力を込めるだけじゃなくて、どうしたいか、どこに当てたいかをしっかり意識するの。ほら、やってみて」
陽菜はゴクリと唾を飲み込み、ソルの励ましの声を背に再び前に立った
「うん、やってみる…!」
目を閉じ、深呼吸する。魔力を杖に集中させた。
「魔力を、強く、鋭く!」と心の中で唱えると、杖の先端からオレンジ色の光が溢れ始めた
「いい感じだよ、陽菜! 狙いを定めて!」ソルが叫ぶ。
陽菜は目を開け、ターゲットをじっと見つめた。心の中で「当たれ!」と強く願う
すると、オレンジ色の光弾が勢いよく飛び出し、ターゲットに向かって一直線に進んだ。少しブレたものの、ターゲットの端をかすめ、壁に小さな焦げ跡を残して消えた
陽菜は飛び跳ねて喜んだ。
「当たった…! かすっただけだけど、当たったよ!」
涼香が小さく拍手しながら近づいてきた。
「上出来よ。軌道がブレたのは魔力のコントロールがまだ慣れてないだけ。練習すればもっと精度が上がるわ」
「ありがとう、アクアタイドさん! 何か…コツとかありますか?」
陽菜は目を輝かせて尋ねた
「コツね…。」涼香は少し考え込む
「そうね、私の場合は魔力を水に例えてイメージしてる。自然に流れるように、自分の体の中に魔力という水を動かすの。水ではなくて血液に例えるのも良いかもしれないわ」
「魔弾は自身の体内になるものを緻密にコントロールしなくてはいけないのよ」
「水、血液かぁ…」
陽菜は目を閉じ、
再び魔力を集中させ、杖に光を溜める。今度は焦らず、ゆっくりとイメージを固めた。
「光、強く、遠くまで届いて!」と心の中で呟き、魔弾を放つ
魔弾が一直線に飛び、ターゲットの端ではなく、中央に近い部分に命中した。衝撃でターゲットが軽く揺れ、陽菜は驚いて目を丸くした
「やった…! 本当に当たった!」
陽菜はソルとハイタッチを交わし、笑顔が溢れた
「いい感じね。」涼香が微笑みながら頷いた
「貴女、センスあるわよ。あとは数をこなして慣れるだけ。基礎魔法は『転移』『飛翔』『魔弾』『身体強化』『魔力感知』の5つだけだから、少しずつマスターしていけばいいわ。」
「次は『身体強化』を試してみましょうか。」
陽菜は気を引き締め、強く頷いた
「はい!よろしくお願いします!」
涼香は訓練場の端に置かれた木製のダミー人形を指差した
「身体強化の基本は、魔弾のときと同じで身体中に魔力を巡らせるの。筋肉や骨を強くするイメージね。まずはそのダミーにパンチをしてみて。」
「え、パンチですか?」
陽菜は驚いたように目を丸くした。
「私、喧嘩とかしたことないし…殴るなんて無理かも…」
「戦う相手は人間じゃないわ。怪物よ」
涼香は静かに、しかし力強く言った
「魔法少女にとって身体強化は命綱。攻撃が当たらなくても、自分の身を守れる力があれば生き残れる」
陽菜はゴクリと唾を飲み込み、ソルが横で「陽菜ならできるよ! イメージだよ、イメージ!」と励ます声を聞いて、少し勇気を振り絞る
彼女は目を閉じ、再び深呼吸した。涼香のアドバイスを思い出す——「魔力を水や血液に例えて、体に流す」。心臓から全身に温かい流れが広がるイメージを頭に描き、その力を右腕に集中させた。すると、腕にほのかなオレンジ色の光が宿り、軽い脈動のような感覚が走った
「よし…!」
陽菜は意を決してダミーに近づき、ぎこちなく拳を握った。そして、思い切りパンチを放つ。
バキッ!
鈍い音が響き、ダミーの表面に小さなひびが入った
陽菜は驚いて手を引っ込め「うわっ、私、割っちゃった!?」と叫んだ
ソルは「やったね、陽菜! すごいよ!」と飛び跳ねて喜んでいる
「初めてにしては上出来ね。魔力がちゃんと流れていた証拠よ。ただ…」
涼香はダミーに近づき、ひびを指でなぞった
「力の方向がバラバラだったから、衝撃が分散しちゃってる。身体強化はただ強くするだけじゃなくて、力を一点に集中させる意識も大事」
「一点に集中…」陽菜は拳を見つめながら呟いた
「水が流れ込むみたいに、力を集めるってことかな?」
「そうね。私の場合は、水が渦を巻くイメージで魔力を凝縮してる」
涼香はそう言うと、軽く拳を握り、ダミーに触れるようにパンチを放った。すると、鋭い水音と共にダミーの胴体に穴が開き、木屑が飛び散った。
陽菜は口をぽかんと開けた
「す、すごい…! 一瞬だったのに、そんな威力が出るなんて…!」
「あの…でも…壊しちゃって良かったんですか?」
「問題ないわ、施設内は様々な魔法がかけられてるの。このダミーだってすぐに補充されるわ」
「さて、サンライズ、もう一回やってみて。今回は力を拳の先に集めるイメージで」
陽菜は頷き、再び別のダミーの前に立ち構えた。今度は魔力を腕に流し込みながら、拳の先端にオレンジ色の光が集まるよう意識した
「渦を巻いて…拳に集まる!」と心の中で唱え、ダミーに向かってパンチを繰り出す。
ゴンッ!
今度は鋭い音が響き、ダミーの胸部分にくっきりとした拳の跡が残った。ひびは広がらなかったが、力が一点に集中したことが見て取れた。陽菜は目を輝かせた
「できた! 見て、ソル、アクアタイドさん! ちゃんと当たったよ!」
「すごいよ、陽菜! 凄くかっこいい!」ソルが興奮して飛び回り、涼香も満足そうに微笑んだ。
「いい感じね。身体強化のコツを掴めてきたみたい。次はこれを維持する練習よ」
「維持?」陽菜が首をかしげると、涼香は訓練場の奥に設置された障害物コースを指差した。そこには跳び越える壁や這うトンネル、揺れるロープが連なっていた。
「身体強化を維持しながら、あのコースをクリアしてみて。戦場じゃ動きながら魔法を使うのが基本だから、まずは体に覚えさせるの」
陽菜は少し緊張した表情でコースを見た
「うわっ…難しそう。でも、やってみる!」
彼女は気合を入れ直し、身体強化の魔力を全身に巡らせた。オレンジ色の薄い光が体を包み、軽い温かさが広がる。
最初の一歩を踏み出し、壁に向かって跳躍。身体強化のおかげでいつもより高く跳べたが、着地でバランスを崩してよろけた。
「うわっ、危ない!」と叫びながらも、なんとか体勢を立て直す。
次にトンネルを這う場面では、魔力を維持しながら狭い空間を進むのが難しく、光が一瞬途切れた。
「あっ、魔力が…!」と焦る陽菜に、涼香が冷静に声をかけた。
「焦らないで。途切れてもすぐ意識を戻せばいいわ。続けなさい」
陽菜は頷き、再び魔力を呼び起こしてトンネルを抜けた。最後の揺れるロープでは、腕に力を込めてしっかりと掴み、なんとかゴールまでたどり着いた。息を切らしながら地面に座り込む
「はぁ…はぁ…できた…!」と笑顔を見せた
涼香が近づいてきて、手を差し出した。
「よくやったわ、サンライズ。初めてであそこまで動けたら十分よ」
陽菜は照れ笑いを浮かべながらその手を取って立ち上がった。
「ありがとう、アクアタイドさん! 何か…魔法少女っぽくなってきた気がする!」
「まだまだこれからよ」涼香は静かに笑い、訓練場の奥を見やった「次は『魔力感知』を教えるけど…その前に、少し休憩しましょうか。貴女、結構魔力使ったでしょ?」
陽菜は頷き、ソルが「陽菜、頑張ったね! お菓子でも食べようよ!」と提案してきた。魚型の妖精も「私も食べるー!」と加わり、涼香が「貴女は食べれないでしょ」と突っ込む声が響いた。
訓練場の片隅で、陽菜と涼香、そして二人の妖精はしばし穏やかな時間を過ごした。陽菜の心には魔法少女としての誇りが少しずつ芽生え始めていた