転生したから魔法少女モノで黒幕やることにした   作:外道黒幕魔法少女

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7話

5月の残りの日々は、陽菜にとって魔法少女としての充実した日常となった

放課後や休日は、炎堂伊吹と水河涼香と共に、支部で訓練を重ねた

陽菜は基礎魔法を中心に訓練し、ソルの励ましに支えられながら、ターゲットを正確に撃ち抜く感覚を掴んでいった

伊吹は魔法を豪快に繰り出し、模擬怪物との戦いで陽菜と競い合う

涼香は冷静に二人の動きを指導し、槍を使った戦術を披露した

 

ある時には、街外れに現れた2体の怪物——鋭い爪を持つ狼型と糸を吐く蜘蛛型——を3人で討伐する時もあった

陽菜が「太陽」のビームで狼型を仕留め、涼香が流れるような動きで怪物を翻弄し、伊吹が炎の息吹で蜘蛛型を焼き尽くした。

5月はこうして3人の絆と力を深める日々として過ぎていった。

 

6月1日、陽菜の日常は一変する

放課後の16時頃、廊下で伊吹と雑談していると、陽菜のスマホが振動した。怪物対策省の支部からのメッセージが画面に映る

 

「魔法少女サンライズ様、変身姿で至急支部へお越しいただきお願い致します。緊急事態につき、詳細は到着後に説明します」

 

陽菜が目を丸くして「伊吹ちゃん、支部から呼び出しだって! 何かあったのかな…?」と言うと、伊吹がニヤリと笑い、「あたしにもきてるな。面白そうじゃん! 陽菜、一緒に行こうぜ。強い怪物でも出たかな?」と目を輝かせ、足早に廊下を進み始めた

 

二人は人の気配がない校舎裏に移動し、変身して転移魔法で支部に到着する

ロビーで合流した陽菜は緊張した顔で辺りを見回す

そこへ、支部の職員が近づいてきた

「サンライズ様、ブレスインパクト様、お待たせしました。会議室にご案内します。急ぎの案件です」

と落ち着いた声で告げる

 

陽菜が職員のただならぬ雰囲気に「は、はい…!」と頷き、伊吹が「よっしゃ、行くぜ!」と気合を入れ、二人は職員に導かれて奥へ進んだ

 

会議室には、30人ほどの魔法少女が集まっていた。支部で見かけたことのない顔も魔法少女もいて、皆緊張した表情で椅子に腰掛けている

さらに、自衛隊の制服を着た3人が後方に立ち、物資のケースを確認していた。

 

「こんなにたくさん…自衛隊も?」

「何かでかいことが起きたな」と陽菜と伊吹が小声で返す。

 

部屋の前方には、水河涼香が立ち冷静な目で全員を見渡し陽菜と伊吹が席に着くの確認すると口を開いた

「皆さん集まってくれてありがとう。私はアクアタイド。今日の進行を務めさせて頂くわ」

 

涼香がタブレットを手に話し始めた

「昨日、隣町の市街地に怪物が出現し、討伐に向かった4人の魔法少女チームが失敗したわ。その後も数人が挑んだが全員撤退を余儀なくされたの。現在、状況はこうよ」

 

涼香がタブレットを操作し、霧に包まれた市街地の映像をホログラムで投影される

「市街地は濃い霧に覆われ、視界はほぼゼロ。通信機器や魔力探知が効かず、どこからか急な攻撃が飛んでくる。霧は一時的に晴らしてもすぐ再生する特性がある。霧の原因は怪物にあると思われる。怪物の正体はまだ分からないけど、聴力を強化した撤退者から『羽音がかすかに聞こえた』という情報がある。鳥型か蟲型の怪物と推定してるわ。」

「問題はそれだけじゃない。逃げ遅れた住民数百人——その多くが子ども——と、最初のチームの魔法少女2名が小学校の体育館に固まっている。霧の中で孤立し、救助が必要よ」

 

会議室にざわめきが広がり、自衛隊の隊員が手を挙げて言った

「自衛隊からも報告だ。霧が濃すぎて接近できない。物資運搬、可能なら救出を頼みたい」

 

涼香が頷き

「了解したわ。今回の作戦は、怪物討伐と住民救出の二正面よ。まず30人の魔法少女を2つに分け、怪物討伐隊を数チーム、物資調達及び救出隊を1チームに編成する

自衛隊から10人、魔法少女が8人が救出隊に加わり、物資運搬と住民保護を担当。魔法少女は主に自衛隊護衛につくわ」

 

陽菜が震える声で「涼香先輩、私たちも入るの? こんな大事な任務、私にできるかな…?」と尋ねると、涼香が静かに微笑み、「朝倉さん、貴女には実力がある。私と炎堂さんと一緒なら大丈夫。怪物討伐隊の1チームとして参加してちょうだい」

 

涼香がタブレットを手に仕切り直した

「作戦開始は明日6月2日の明朝5時。怪物の正体も数は不明で、おそらく怪物を倒さないと霧は止まらない。失敗したチームは数と攻撃に圧倒された

討伐隊は各3~4人の7チームに分け、各チームが怪物を追ってもらう」

「準備は今夜中に。討伐隊は市街地の霧を突破し、救出隊は小学校を目指す。作戦の詳細はメールで伝えます。解散!」と締めた

 

陽菜は自宅に戻った。時計は19時を回り、夕陽が沈んだ後の薄暗い住宅街をオレンジ色の髪が揺れる。

玄関で靴を脱ぎ、リビングに入ると、母が夕食の準備を終えたところだった。テーブルにはカレーライスとサラダが並び、テレビの音が小さく響く。

 

母が振り返り、「おかえり、陽菜。遅かったね。どうしたの?」と笑顔で言うと、陽菜は「うん、ちょっと友達と…ね」と曖昧に笑い、ソファに腰を下ろした。魔法少女のことは家族に秘密にしているため、いつも通り誤魔化す癖がついていた

 

陽菜がカレーを口に運んでいると、父がリモコンを手にテレビの音量を上げた。ニュースキャスターの落ち着いた声が流れる

 

「昨日より、市街地を覆う異常な霧が続いています。視界がほぼゼロの状態で、住民数百人が逃げ遅れ、小学校の体育館に取り残されている模様です。怪物対策省によると、この霧は魔力によるもので、討伐に向かった魔法少女チームが失敗に終わり、その後も複数回の挑戦が撤退を余儀なくされました」

 

陽菜の手が一瞬止まり、母が「ひどいね…」と呟く

 

キャスターが続けた

「最新情報では、怪物対策省と自衛隊が共同で対応を進め、明日6月2日明朝より、怪物討伐隊と救出隊による大規模な作戦が決行されます。討伐隊は霧の中の怪物を排除し、救出隊は体育館に物資を届け、可能なら住民を安全地帯へ移送する予定です。引き続き状況を注視していきます」

 

画面には霧に包まれた市街地と小学校の映像が映り、陽菜の胸がドキドキと高鳴った。

 

父が眉を寄せて「怪物ってのも大変だな。自衛隊まで出るなんて、よっぽどの事態だ」と言い

母が心配そうに「陽菜、隣町って近いよね。大丈夫かな、学校とか…」と尋ねた

 

陽菜は慌ててカレーを口に押し込み、「う、うん、大丈夫だよ! 学校はこっち側だし、怪物対策省がちゃんとやってくれるって!」と笑顔を作った

内心では「私がその討伐隊なんだけど…」と思いながら、スプーンを握る手に汗が滲んだ

 

夕食が終わり、陽菜は家族に切り出した。「あのさ、明日、朝早く出るから…起こさないでいいよ」

母が首をかしげて「早いって、何時くらい? また友達と遊ぶの?」と聞くと、陽菜が少し焦りながら「えっと、5時くらいかな…。うん、友達と、朝からちょっと用事があって! 大事な約束だから、早く行かなきゃで…」

父が新聞を手に「高校生の朝5時は早いな。まあ、気をつけてな」と笑い、母が少し心配そうに「そうね、暗いから気を付けてね。朝ごはんはどうする?」

「ううん、大丈夫! 出る前に何か食べるから!」と笑顔で誤魔化し、家族が疑う様子がないことにホッと胸を撫で下ろした。

 

部屋に戻ると、陽菜はベッドに座り、スマホを手に持った

ソルが光と共に現れ、「陽菜、明日はいよいよだね! 大丈夫、君ならやれるよ!」と陽気な声で言う

陽菜が小さく頷き、「うん…でも、子どもたちが取り残されてるなんて…絶対助けなきゃ。涼香先輩と伊吹ちゃんと一緒に頑張るよ」

 

窓の外を見ると、夜の闇が広がっていた。明朝5時の作戦開始を前に、陽菜の心は緊張と決意でいっぱいだった

 

─────

 

6月2日、明朝5時

まだ薄暗い空が徐々に明るさを増す中、陽菜は伊吹、涼香と共に支部の転移ポイントに立っていた

怪物討伐隊の第1チームとして、隣町の市街地へ向かう準備が整う

他の6チームは市街地の各々異なる地点に配置される

救出隊——自衛隊10人と魔法少女8人——は1番短い距離で小学校を目指す

陽菜たちは救出隊からは遠く離れた場所から進入する予定だ

 

涼香は時刻を確認すると「もう5時ね…」と呟く

冷静に「サンライズ、ブレスインパクト、準備はいい? 転移するわよ」とタブレットを手に操作を始めた

フィンが「アクアタイド、 気をつけてねー!」と飛び回り、涼香が「分かってるわ、フィン」と小さく笑って応じた

3人は光に包まれ、次の瞬間、市街地の外縁に転移した

 

転移した瞬間、陽菜は息を呑んだ

目の前は真っ白な空間だった。濃い霧が視界を完全に覆い、10m先の地面さえぼんやりとしか見えない。冷たい湿気が頬にまとわりつき、服がじっとりと重くなった

「何これ!? 真っ白で…どこにいるかも分からないよ!」

「うわっ、なんじゃこりゃ! 目が効かねえ!」

 

「サンライズ、ブレスインパクト、落ち着いて。ここは市街地の東側よ」と言う

フィンが「アクアタイド、こんな霧初めてだよー! どうするの?」と少し慌てた声で尋ねた

 

「まずは状況を確認するわ」

「フレア、なんか見えねえか?」

「霧が濃すぎて何も分からねえぜ。感覚でいくしかねえな」

 

「霧が濃すぎる以上、視界は頼れないわ。討伐隊の役割分担を決めましょう」

「どうするんだ、アクアタイド?」

「1人が聴力強化に集中して羽音を聞き分け、他の2人がその人を守る。サンライズ、貴女が身体強化で聴力に集中して。もし場所が割り出せそうなら光線を放って良いわ。貴女の魔法がこの中で早いもの」

 

「え、私!?……うん分かった、アクアタイドさん」

「なら、あたしとアクアタイドでサンライズを守るぜ! 任せろ!」

 

3人は霧の中を慎重に歩き始めた。足音が霧に吸い込まれるように鈍く響き、陽菜は杖を握り締め、心臓の鼓動が少しずつ速まるのを感じた

霧の冷たさが頬に触れ、湿った空気が服にまとわりつく

 

10分ほど歩いた頃、変化が訪れる

霧のざわめきに混じって、かすかな「チチッ…チチッ…」という音が聞こえてくる。陽菜が目を閉じ、集中すると、高く軽い羽音が霧の中で跳ねるように響いた。まるで雀の群れが飛び交うような、「チチッ…チチチチッ…」と素早く連続する音が耳に軽く刺さるように届く

 

「何か聞こえた…雀みたい。『チチッ…チチッ…』って」

 

すると突然、空気が切り裂かれる「シュッ!」と鋭い音が響いた。

陽菜が「えっ!?」と叫ぶと同時に、右側から鋭い風圧が襲いかかってきた

 

涼香が素早く陽菜の腕を引き、槍を構えて風を弾き返した

伊吹が「どこだ!?」と小型の風を放つが、霧に吸い込まれ効果は見られない

フレアが「敵が隠れてるぜ! 気をつけろ!」と警告し、陽菜が「敵が…どこにいるか分からない!」と焦ると、再び風圧が複数方向から襲いかかってきた

 

涼香が「サンライズ、音に集中して! 私たちが守るわ!」と指示し、伊吹が陽菜を背に庇う。

陽菜が「うん…!」と頷き、聴力をさらに強化すると、「チチッ…チチッ…」が賑やかに響き、まるで無数の雀が霧の中で飛び交うような軽快な羽音が耳に届いた

高音が霧に吸われつつも、素早い「チチチチッ…」のリズムが陽菜の耳に残り、方向は掴めないままだった

 

「もっと集中しないと…」

 

その時、強烈な風が横から吹き荒れ、陽菜が「うわっ!」とバランスを崩した。杖が手から滑り落ち、アスファルトにカランと転がる音が響く。

陽菜が「杖が…!」と慌てて拾おうとすると、風がさらに強く吹き、視界が一瞬揺れた。地面が崩れ、陽菜は落ちていくような感覚に陥る

 

伊吹が「サンライズ!」と手を伸ばすが、霧の濃さで陽菜の姿が一瞬にして消えた

涼香が「ブレスインパクト、落ち着いて、私たちも離れないで!」と叫び、フィンが「アクアタイド、ど、ど、どうしよう!?」と慌てるが、陽菜は2人と離れ離れになってしまった

 

落ちた先で陽菜は「アクアタイドさん! ブレスインパクト!?」と叫ぶが声は霧に吸い込まれ、返事はない

ソルが「サンライズ、大丈夫だよ! 僕がいるから!」と励まし、陽菜が「ソル…ありがとう。どうしよう……逸れちゃった」と呟きながら立ち上がる

 

霧の中を進み始めると、足元の地面がわずかに湿っているのに気づき、「雨でも降ったのかな…?」と首をかしげた

視界は依然として真っ白で、手を伸ばしても自分の指先さえぼんやりとしか見えない

陽菜は「頑張らないと」と自分を奮い立たせ、杖を握り直して歩き続ける

霧の冷たさが頬を刺し、湿った空気が服に染み込み、陽菜の呼吸が少しずつ荒くなった。

 

仲間と逸れてから20分程霧の中を彷徨い、時折、風圧や矢のような攻撃が飛んできた

陽菜は「身体強化」で聴力を上げ、かすかな「チチッ…」の羽音を頼りに身をかわし、「魔弾」を小刻みに放って応戦した

杖を握る手が汗で滑りそうになりながらも、建物に当たらないよう角度を慎重に調整する

 

「シュッ!」と風圧が耳元をかすめ、勘を頼りに放った「魔弾」はすぐに霧に飲み込まれ、効果はほとんどなかった

「どこにいるの…? 」と呟きながら歩き続けると、足が何かに躓きそうになり、陽菜が「危ない!」と杖で体を支えた。霧の中を彷徨う感覚に焦りが募り、「どうしよう…」と呟きながらも、陽菜は深呼吸して足を踏み出した。霧のざわめきが耳にまとわりつき、羽音が遠くで響いては消え、陽菜は杖を持つ手が冷えていくのを感じた

 

仲間と逸れてから30分、霧の向こうに黒い影が揺れた気がした。陽菜が目を凝らし「何かある…?」と呟きながら近づくと、黒いワンピースを着た白髪の少女が立っていた。

中学生くらいの見た目で、白い髪が霧の中でかすかに揺れ、静かにこちらを見つめている

 

陽菜が「え…誰!?」と驚き、杖を握り直して一歩近づいた。少女は無表情で陽菜を見据え、感情の読めない瞳が霧の中でかすかに光っているように見えた

陽菜が「ねえ、君、こんな所にいたら危ないよ! 一緒に逃げよう!」と話しかけ、少女の方へ手を伸ばすと、少女は小さく頷きじっと陽菜を見つめたままだった

陽菜は少女の様子に気を配り、「大丈夫かな…?」と呟いて近づいた。

 

陽菜は少女の手を引きながら連れ歩く。白い少女は何も喋らずただ陽菜に手を引かれた

そして「シュッ!」と鋭い風圧が襲いかかってきた

陽菜が「危ない!」と叫び、少女を庇うように前に飛び出すと、風圧が陽菜の左腕をかすめ、鋭い痛みが走った。「うっ!」と呻きながらも、陽菜は「身体強化」で耐え、杖を振って「魔弾」を霧の方向へ連射。魔弾が霧を切り裂くが、敵の姿は見えず、攻撃が一時的に止まるに留まった

 

陽菜が「君、大丈夫!?」と少女を確認すると、少女は無傷で陽菜の左腕をじっと見ていた

陽菜の左腕に浅い切り傷ができ、血が少し滲んでいた

「平気だよ、これくらい…ついてきて!」と少女のまた手を引いて歩く

少女の手は冷たく、わずかに震えているように感じ、陽菜が「怖かったよね…でも、私がいるから!」と励ましながら歩きつづける

 

仲間と逸れてから45分、霧の中を少女と移動していると、「チチッ…チチチチ…」と音が聞こえる

陽菜は「くる!!」と感じ聴力を強化するのに集中していると右前の霧が揺れている気がした

 

再び「シュッ!」と風圧が飛んできた。しかし陽菜はその直前に杖を振って光線を放っていた

今回は霧の中で小さく「キィ!」という悲鳴が聞こえ、影が一瞬揺れて地面に落ちた。

陽菜が「一体…倒した!?」と息を切らし、霧の中を見ると、小さな鳥のような形が消えていくのが見えた。少女が陽菜をじっと見つめ、倒した陽菜に興味を持ったように視線を動かした

陽菜が「一体だけか…まだいるよね」と呟くと、少女が小さく頷いた。

 

仲間と逸れて1時間、少女を連れてさらに進むと路地のような場所に入った

陽菜が「身体強化」で聴力を上げ、耳を澄ますと上空から「チチチチ……チチチチ…」という高く軽い音が賑やかに響き、まるで雀の群れが飛び交うように耳に届く

さらに集中すると、その中に「ジュン…ジュン…」という低い音が混じっているのに気づいた。通常の「チチッ…」が軽く素早い雀のさえずりのように耳に跳ねるのに対し、「ジュン…」は太く深く、ゆったりとした間隔で響き、まるで重い羽が霧を切り裂くような鈍い反響を伴っていた

 

陽菜が「この低い音…何!?」と驚いてると少女が小さな声で話し出した

 

「君、いいね」

陽菜が「え?」と振り返ると、今まで無口だった少女が淡々とした口調で続けた

 

「前にパフォーマンスのために作り出しただけなのに、いつ間にか繁殖してこんなに多くなってるとは気づかなかったんだ」

「計算外のことだから僕自ら解決しようと思ったけど、気が変わった。あとは君たちに任せようかな」

 

陽菜は少女が何を言ってるのか理解できなかった。何か聞いてはいけないものを聞いてるような感覚に陥り、心臓がドキリと跳ねる

 

「この霧を晴らしたいなら、統括する個体を倒せばいいよ。今君が聞いた羽音が少し低いのが目印」

 

「統括する個体…? 今の『ジュン…』って音のこと!?」

 

少女は微かに笑みを浮かべると霧に溶けるように姿を消した

 

「待って!……消えた!?」

と叫ぶと、ソルが現れ「サンライズ、大丈夫!? 腕が…!」と飛び寄る

 

陽菜はそういえばソルが話しかけられたのが久しぶりのように感じた

「うん、ちょっと怪我しただけ…変な少女がいたけど…消えた」と呟く

ソルが「え、僕には何も見えなかったよ!」と驚き、陽菜が「え?」と首をかしげる。

少女の言葉が頭の中で反響し、陽菜はあの少女は何者だったのか自問したが確信は持てなかった

 

─────

 

羽音が聞こえなくなり、路地からでて霧の中をさらに進むと、聞き慣れた声が聞こえてきた

 

「サンライズ! どこだよ!」

伊吹の叫び声だ。

 

「ブレスインパクト! ここだよ!」と返すと、霧の向こうから伊吹と涼香が駆けてきた

 

「サンライズ、心配したぜ! お前、腕どうしたんだ!?」

「サンライズ、無事でよかった…! 離れ離れになった後、攻撃が激しくて」と息を切らす

 

「ごめん…あの風で杖を落としちゃって。怪我は平気だよ」

「サンライズ、大丈夫ならいいけど…手当てしないと。無茶はしないでね」

「そうだぜ、サンライズ! まだ敵がいるんだ、気合い入れてくぜ!」

「うん………?」

「サンライズ?首を傾げてどうしたの?」

陽菜は何か2人に話さないといけない事があった気がするが、それが何だったのか忘れてしまった

「ううん、なんでもないよ」

「こっちに行こうぜ。あたしの勘がそう言っている!」

伊吹の元気な声に陽菜は頷き、3人は再び霧の中を進み始めた




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