パンドラズ・アクターとシズ・デルタの少しだけ恋愛っぽいお話しです。
 
 
 プレプレプレアデスのパンドラズ・アクターが猫になって、帽子に一円シールが貼ってあるのを見て、何も考える事なく指の赴くまま書いただけなので、色々とおかしいかもしれません。

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自動人形と元猫

 近頃私変なんですよ。

 我が父上──アインズ様なら何かわかるのではないかと思い相談させて頂きましたが「お前はいつもそうだろ」と言われてしまい、結局なにも解決はできませんでした。

 これも愛の鞭、というものなのでしょうか?

 そうに違いないっ!私はアインズ様によって唯一創造された僕っ!だからこそアインズ様は私にのみっっ!特別な愛を下さる──っっ!!

 

 まあ、それは良いとして。近頃変なんですよ私。

 普段は別にそうでもないのですが…おっとそろそろ私が変になってしまう時間が来ますね。

 その時間が来る前に、私はいつも以上に自分の身だしなみを整える。少しでもカッコよく見えるように。いや、いつもカッコいいんですけどね?

 私は服装を整え終わり、変になる時間を待つ。

 実を言うと…私が変になる時間を、私はどこか待ち望んでいるような気がするんですよね。

 そしてその時が来る。私はすぐさま敬礼して、私が変になってしまう原因の人物に挨拶する。

 

 

「ようこそいらっしゃいましたシズ殿。本日もトラップのチェックありがとうございます」

 

 

「うん」

 

 

 そんなやり取りをした後、私はその場から動かず、シズ殿はトラップのチェックをした後、すぐに宝物殿からいなくなってしまいました。

 これで、私が変になる時間の終了です。

 え?どこもおかしいところなんてなかったって?

 何を仰いますか。私がっ!!何一つとしてっ!!カッコいいっ!ポーズが!取れていないのですっっ──っっ!!

 これが変で無かったら何が変だと言うのですか?

 

 どうも私が猫になってシズ殿と出会ってから、おかしくなってしまいました。シズ殿が宝物殿に来られることをどこか心待ちにしているような、そんな気持ちになってしまい、そして先程のように、私は何もポーズも取れず、いつもようにカッコ良くも喋らず、ただシズ殿がトラップをチェックする姿を眺めているだけなのです。

 しかし私がそうなり始めてから、シズ殿も「うわぁ…」と言う事が無くなって来たようにも感じます。

 これは一体どういうことなのでしょうか?

 本来であれば私はシズ殿に「ようこそいらっしゃいました、美しいお嬢様」と言いたいのですが、その言葉が出てこないのです。他のお嬢様方にならいくらでも言えるのですが、シズ殿にだけはそれが言えないのです。

 

──もしや、なんらかの精神支配っ!?

 

 しかしそんなアイテムはこの宝物殿からは出されてはいないはず…。

 やはりアインズ様に再び相談するしかないかもしれませんね。

 私はメッセージを父上に繋ぎ、相談を持ちかけます。

 

 

「父上っ!!」

 

 

『パンドラズ・アクターか。どうした?」

 

 

「はいっ!私が先日ご相談させて頂いた件なのですが!」

 

 

『お前が変になるというやつか?原因がわかったのか?』

 

 

「いえ、原因まではわからないのですが、どうやらシズ殿と会うと私がおかしくなってしまうようです。もしかしたらなんらかの精神支配の影響かもしれませんっっ!」

 

 

『シズ?シズは精神支配なんてしないだろう。お前の勘違いではないのか?』

 

 

「いいえ!ンンアインズ様!私はシズ殿と会うと、いつものようにかっこいい!喋り方と、かっこいい!ポーズが、できないのです」

 

 

『ああもうわかったから、あまりメッセージで大きい声を出さないでくれ。とりあえずお前のところに行くから待っててくれ』

 

 

プチッ

 

 

「ありがたきっ!!幸せっ!!……あれ?」

 

 

 私の感謝を聞く前にアインズ様はメッセージをお切りになってしまった。

 そして父上はすぐに私のところまでやって来て下さった。どうやら、感謝は直接聞きたかったようですね。

 私はいつものように敬礼をしたり、カッコイイポーズを取ったりしながら先程の感謝を伝えようとします。

 

 

「父上っっ!!私如きの──」

 

 

「挨拶は不要だ。とりあえず話を聞かせてくれ」

 

 

「はっ!」

 

 

 照れ屋な父上は私からの感謝の言葉を聞こうとはしていただけませんでした。

 

 そして私はシズ殿の前だとおかしくなってしまうというお話を父上にしました。

 

 

「──ということなのです」

 

 

「うん、えっ!?あ??え??……パンドラ、それは恋、じゃないのか?」

 

 

「おぉ!なるほど!!恋っっ!!!……とは何でしょうか?」

 

 

「あ、いや。私も詳しい訳ではないのだが…」

 

 

 父上は私に恋というものを教えてくださった。

 

 

「──というのが恋だ。例えば、お前はシズともっと一緒にいたいとか、ついつい目で追ってしまうとか、そういう事はないか?」

 

 

 恋…。

 私も言葉だけは知っておりますが、このおかしくなってしまうのが恋なのでしょうか?

 確かに私は、シズ殿が来た時には何をしているのかつい目で追ってしまいますし、一緒にいたい、というよりはもっと長くトラップのチェックをしていてくれれば良いのに、と思う事はあります。

 これが、恋なのでしょうか?

 

 

「父上、確かにそのように思うことも多々ありますが、果たしてそれは本当に恋なのでしょうか?やはりなんらかの精神支配を──」

 

 

「いや、それはないと思うぞ?仮にシズが精神支配ができたとしても、レベル差がありすぎてお前ならレジストできるはずだし、シズはそんなアイテムなど持ってはない」

 

 

「はぁ…」

 

 

「ま、まぁ、私がここで何を言っても無駄だろうし、シズをここに呼んでおいてやろう。それで確かめてみればいいんじゃないのか?」

 

 

「かしこまりました!父上っ!私が変になってしまうのが果たして恋なのかどうか、私の眼で見定めてみせましょうっ!!」

 

 

「そ、そうか。じゃ、じゃあまた何かあったら言ってくれ」

 

 

「はっ!!このパンドラズ・アクター必ずや父上の────またですか」

 

 

 父上は私が喋っている途中で転移なされてしまった。

 そしてそれから少しすると、シズ殿がやって来ました。

 

 

「──何か、用?」

 

 

 いつもと変わらない無表情で、シズ殿は言いました。

 私としても急なことで、何を話せばいいのかがわかりません。とりあえず、今回は時間があるので、いつもはできなかったのですが、シズ殿を褒めてみることにしましょうか。

 

 

「シズ殿。本日もお、おう、おうつ…おうつ……オウトマチックですね」

 

 

「──は?」

 

 

 …おかしいですね。お美しいという言葉が出て来ません。

 もしかして私は別にシズ殿をお美しいと思っていないのでは?私は嘘が付けるような者ではありませんので、心の底から思っていないと言えないのかもしれません。二重の影(ドッペルゲンガー)なんですけどね…。

 

 

 

「と、とりあえず、座りませんか?」

 

 

「いい」

 

 

「……」

 

 

 どうしましょうか。そもそもシズ殿は中々喋るようなタイプではありませんし、私から何かを喋らないといけないのですが、何も思いつきません。

 私が何を話すべきか考えていると、シズ殿はソファの方に移動して行きました。

 

 

「やっぱ座る」

 

 

「あ、はい。では私も」

 

 

 私もシズ殿に続いてソファ──前に一度父上に叱られましたので対面の席──に座りました。

 

 

「──それで、話って?」

 

 

 いや話も何もないんですけど。父上は一体何を言ったのでしょうか?

 

 

「シズ殿、ンンアインズ様はシズ殿になんとお伝えになられたのでしょう?」

 

 

「──あなたが私と仲良くなりたいって。だから話があるって、聞いた」

 

 

 仲良くなりたい…。私はそう思っているのでしょうか?

 しかし今この時点でも、私はシズ殿と会話できてて嬉しいような気持ちになっているのは事実として認めますが、仲良くなりたいのかと聞かれると微妙ですね。今はただシズ殿がここにいて下さるだけで満足なような気がします。

 

 

「シズ殿。私は仲良くなりたいとはあまり思ってはいないのですが」

 

 

「──そう」

 

 

「ですがもう少しだけここにいてくださいませんか?」

 

 

「──?いいよ」

 

 

 シズ殿は少しだけ首を傾げて、承諾してくださいました。

 それからはお互い無言で、私はソファに座りながら、元々止まっているのは苦手なタイプなので、どこかしら体を動かしていました。するとシズ殿は私のそんな姿を見て、話し始めました。

 

 

「あなた、少しだけ、キンカンに、似ている」

 

 

「キンカン、ですか?」

 

 

「そう。アインズ様が連れて来た小動物。今はもう、いない」

 

 

「そうなのですか」

 

 

「私はキンカンに、シール、貼ってあげた」

 

 

 はい。知っておりますよ。今でもそのシールは私の帽子に貼ってありますし、今ではそのシールを気が向いた時に撫でるのが癖になりつつあります。

 

 

「キンカン、すごく、可愛かった。餌も、あげた」

 

 

「餌ですか?確かゴキブ──」

 

 

「違う。缶詰」

 

 

 ああ、そうでした。ゴキブリを食べるのは嫌そうな顔をしていたので食べるのはやめたんでした。

 

 

「その後、ハムスケに、一緒に乗ったり、ソファに一緒に座ったり──」

 

 

 シズ殿のキンカンの話が続いていき、色んなキンカンの思い出を話してくださった。

 

 

「──を私がやって、私たちはキンカンを、助けた。あなたは、そのキンカンに、似ている」

 

 

 まあ、私ですからね。

 しかし私は父上に止められているのでそれを言うことはできません。

 そうしてシズ殿の話を聞いていると、シズ殿はソファから飛び降りる。

 

 

「──もう行かないと」

 

 

 シズ殿は時間が来てしまったのか、そのまま宝物殿の出口の方に歩いて行きます。

 私もその後を追いかけ、シズ殿を見送ることにしました。そしてシズ殿は立ち止まり、私の方を向きました。

 

 

「今日は、楽しかった。また、来る」

 

 

「ええ、いつでもいらして下さい」

 

 

「──じゃあ、また」

 

 

 そう言ってシズ殿は転移して行きました。

 どこか楽しかったところがあったのでしょうか?私は楽しかったですが、私はシズ殿に特に楽しい話などしてあげられませんでした。

 それで良かったのでしょうか?

 

 

 結局その答えは見つかりませんでしたが、この日を境にシズ殿はトラップチェックに来た時は毎回私と少しばかりお話をしてから、宝物殿を出て行くようになりました。

 そうしていくうちに、私はどんどん変になっていきました。しかし、途中からは変になることも無くなってきて、カッコいいポーズやカッコいい喋り方もできるようになって来ました。

 

 ですが、私は父上にこの事を何も報告はしておりません。

 父上から与えられた、カッコいいポーズやカッコいい喋り方がシズ殿の前でもできるようになったにも関わらず、私はそれをあまりしようとは思わなかったからです。

 

 父上申し訳ございません。父上の仰られた「産み出していない部分」は私はまだシズ殿にしか見せられないようです。

 

 そして父上は見た事がありますでしょうか?シズ殿の満面の笑みを。

 

 シズ殿から2枚目の1円シールを頂いた私は、この時間をもう少しだけでいいので独り占めしたいのです。

 どうかお許し下さい。

 


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