Re.インフィニット・ストラトス    作:kue

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ついに百話突破しました! 


第百話

「私に倒されて! 一夏君!」

 

 第六アリーナに響き渡る先生の怒号を含んだ放送にかき消されないほどに強い意志を感じる言葉は確かに俺の耳に届き、脳内で何度も響き渡る。

 一度距離を取ろうと後ろへと飛びのいた瞬間、水のヴェールが翻されるとともに霧状の水が俺めがけて散布されたので慌てて大型ウイングスラスターを全開に吹かし、さらに距離を取る。

 

清き熱情(クリア・パッション)!」

「うぉぉっ!」

 

 直後、断続的な爆発が発生し、ギリギリ散布範囲から逃れたが目の前が砂埃で埋め尽くされる―――振り返りざまに雪片弐型を振り下ろした瞬間、瞬時加速を解いた楯無さんの姿が現れ、蛇腹剣とぶつかり合う。

 確かにさっき、整備室にウサギの姿があった。

 

「楯無さん! あのウサギは」

 

 その時、ふっと向こうからの押し込む力が消え去ったかと思えば目の前に光の粒子が昇っていくとともに姿勢を低くした楯無さん、そして俺の腹部に水を螺旋状に纏った槍―――蒼流旋(そうりゅうせん)が突きつけられる。

 やばい―――そう思った時には遅かった。

 

「ぐぅぅっ!?」

 

 ドドドドッ! という怒涛の銃声音が鳴り響くとともに四門のガトリングガンが火を噴き、無数の弾丸が全身に直撃していたるところで火花を散らせる。

 体勢を崩し、後ずさった瞬間、水のヴェールが先ほどのように大きく振るわれる姿が見えた。

 咄嗟の判断で瞬時加速を発動させてその場から離脱する。

 直後、フィールドに連続した爆発が起きて大小さまざまな穴が生まれる。

 

(獲った!)

 

 彼女の背後へと回り、拳を突き出して背中に突き刺した瞬間、楯無さんはバック宙を行い、上へと飛び上がることで拳を回避した。

 すぐさま振り返りざまに着地の瞬間を狙って回し蹴りを放つと同時に瞬時加速を発動させて蹴りぬく。

 

「くぅぅっ!」

 

 アクア・クリスタルが壁のように彼女を守るがクリスタルごと蹴りぬくと楯無さんは背中からアリーナの壁に激突する。

 

(瞬時加速の速度で蹴りぬいたのにクリスタルに傷一つ入っていない)

「楯無さん! どうしてこんなことを!」

「もう少しで……もう少しであの子の専用機が完成するの! そうすれば……もうこれ以上、あの子が苦しまなくて済む! だからお願い! 何もしないで!」

 

 ずっと楯無さんも苦しんでいたんだ。

 思い悩む簪さんの姿や彼女に振りかけられる心無い言葉の数々に。

 家族が心無い言葉をぶつけられていると知って放置しておく家族なんてこの世界にどこにもいない。

 

「……それはできません。簪さんを……簪をこのまま放っておいたらあの人の思うつぼだ! 今以上の災厄が簪さんを襲うことになるんです!」

「それでもっ! あの子の想いが成就するなら……私は悪魔とだって契約する!」

 

 楯無さんの感情の高ぶりに呼応してか彼女を覆っていた水のヴェールが分散し、そのすべてが蒼流旋へと集中し始めたのを見て俺はすぐさま背部装甲から鎖を射出し、体を固定すると大型ウイングスラスターを全開に吹かし始め、蒼炎状態への移行を開始する。

 

「あなたの想いはわかる! でも俺は簪を止める!」

「止められるものなら止めてみなさい!」

 

 大型ウイングスラスターの色が赤炎から蒼炎へと切り替わると同時に蒼流旋を多量の水が覆い、巨大な槍先の形成を終えると互いに向き合う。

 互いに構えるは相手を必ず倒す大技中の大技―――それを繰り出すということは相手を確実に仕留めるという覚悟の表れだ。

 

「ミストルティンの槍!」

蒼炎瞬時加速(ブルー・イグニッションブースト)!」

 

 鎖が次々に千切れていき、全ての拘束が解かれた瞬間、蒼炎を纏って亜光速飛行へと移行し、その勢いのままに飛び蹴りの姿勢で突撃する。

 蒼流旋と俺の蹴りがぶつかり合おうとしたその瞬間―――

 

「「っっ!」」

 

 俺たちの間に凄まじい速度でIS用の近接ブレードが投げ込まれてフィールドに突き刺さる。

 俺はすぐさま蹴りの体勢を崩し、体をねじって無理やり右側に軌道を変え、楯無さんもそれに合わせてミストルティンの槍を持ったまま左側へとそれていく。

 

「ぐぁっ!?」

 

 体勢を崩したままの状態、かつ蒼炎瞬時加速の亜光速飛行の勢いのままにアリーナの壁に直撃し、ISの絶対防御を貫いて全身に凄まじい衝撃が走る。

 直後、後方で空気を震わせるほどの爆発が発生したのを感じる。

 軽い脳震盪を起こしながらフィールドに降り立ち、爆発音の方向を向くと蒼流旋が深々と突き刺さっている周辺の壁に無数の亀裂が入っている。

 

(本気で……本気で俺を倒しに来ていたんだ)

 

 凄まじい威力同士がぶつかり合っていればお互いの専用機はおろか生身の体にも何らかの影響は出ていたはずだし、爆風によって第六アリーナの施設にも多大な影響が出ていたはず。

 フィールドの中央に刺さった近接ブレード―――を涼しい顔をして抜き取る一人の女性。

 そんな人外染みたことをやってのけるのは世界でただ一人だけ。

 

「ち、千冬姉」

「お、織斑先生」

 

 近接ブレードを肩に担いでいる千冬姉の顔はまさに怒り心頭。

 

「貴様ら……いったい何をしているのかわかっているのか!」

「「っっ」」

 

 第六アリーナに響き渡る千冬姉の怒声に俺も楯無さんも思わず身をすくませる。

 

「織斑。私はウサギの破壊にISの使用許可は出したがアリーナ外での模擬戦まで許可した覚えはないぞ」

「……すみません」

「更識……これが生徒会長がやることか? 何たる体たらくだ」

「……申し訳ありません」

「……お前たちには“私”が直々に特別指導してやろう……一週間、特別指導室に登校するように」

(……もしかして)

 

 千冬姉はそう言いながら近接ブレードを肩に担ぎ、第六アリーナの出口へと向かう。

 事情をある程度知っている自分が担当することをわざとらしく強調したのは千冬姉なりの思いやりなのか、それともただ単に千冬姉預かりレベルの問題なのか。

 でも十中八九、前者だと思う。

 

「……ぐへぇ」

 

 軽い脳震盪がいまだに治まらず、フィールドに横になると体を引きずりながら楯無さんが俺の傍へとやってきて隣に横たわる。

 お互いに話しかける言葉が見つからず、少しの間、沈黙が流れてしまう。

 

「体……大丈夫ですか?」

「鍛えてるから……一夏君こそ、凄い衝撃だったんじゃないの?」

「まあ……今もちょっと視界が揺れてますし」

 

 亜光速の勢いで壁に突っ込んだから伝わる衝撃もそれはすさまじいものだろうし、むしろ骨折しなかったのが不思議なレベルだ。

 ISの絶対防御が効いたとはいえ、防ぎきれないほどの衝撃だ。

 

「……ごめんなさい」

 

 ぽつりと楯無さんが絞り出すように小さくつぶやいた。

 

「何がですか?」

「簪ちゃんのこと……あなたには迷惑をかけっぱなしだわ」

「そうですか?」

「こっちからお願いしておきながら最後は切りかかる、なんてなかなかないわよ」

 

 確かにそうだと思い、思わず吹き出してしまう。

 

「何笑ってるのよ」

「いや、確かにそうだなって……でもおかげで楯無さんの想いを知れました」

「……」

「最初は家族以外を敵とみなせとか、吐きそうなくらいに甘いとか言われてなんだこの人、って思ってましたけど……実は妹想いの優しい人だなって」

 

 きっとあの時の叫びが楯無さんの本音のすべてだと思う。

 ずっと心の中にとどめて鎖で縛りつけていたものが一気に今回の一件で解けて本音となってあふれ出てきて俺にぶつけてきた。

 だからこそ俺に甘さを捨てろと警告し続けていたんだ―――自分のようにならせないために。

 周りの人はそれを見て生徒会長にふさわしくないとかいうかもしれないけど俺はむしろ、人間味があって生徒会長らしいって思う。

 機械みたいに判断して学園のことだけを思って動く人こそ生徒会長にふさわしくない。

 

「これからどうしますか?」

「……専用機は完成させるわ」

「……」

「専用機を完成させて管理官を黙らせる……そのあとで簪ちゃんを止めるわ」

「どうやって止めますか?」

「簪ちゃんがつけていた黒いチョーカー。あの子は自分を飾り立てる装飾品はつけたがらない……でも着けていた。きっとあれが簪ちゃんをおかしくしているはず」

「じゃあ、そのチョーカーを破壊すれば」

「簪ちゃんは元に戻る」

 

 ただ、黒いチョーカーとやらを破壊しようとすれば必ず簪さんは抵抗を見せるはず。

 俺と楯無さんの二人で打鉄弐式を抑えればチョーカーの破壊はできるはずだ。

 

「俺も手伝います。楯無さん」

「……決行は二日後、第一アリーナ。生徒会長権限で占有しておくわ」

「わかりました」

 

 

 

――――――☆――――――

(一夏君……これ以上、あなたを巻き込むわけにはいかない……簪ちゃんは私が止める)




多分、イタイ系時代の自分だったら前書きか、短編形式で作品キャラクターにお祝いのセリフを言わせて最後に作者も登場するとかいうイタくて寒いエピソードを書くんかなと思ったりとしました。
あの時代が懐かしいな。
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