Re.インフィニット・ストラトス    作:kue

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今日は短いので12時にもう一話、あげます


第百三十九話

「んまんま、このお肉美味しいねぇ」

「お口にあって何よりですわ」

 

 とある高級レストランでは大量に並べられている料理を稀代の大天才である篠ノ之束がテーブルマナーなどどこかへ置き忘れたかのように無心に食べていた。

 もちろん、最低限度のマナーは守ってはいるが高級ホテルのスイートルームという場所ではマナー違反も甚だしいほどだった。

 しかし、それを気にするようなほかの客は誰一人としておらず、ほかのテーブルには客の姿は見当たらないし、彼女たちをサポートする人間の姿も見当たらない。

 

「うん。この睡眠薬入りのスープとワインもおいしいねぇ~」

 

 スコールはある意味、目の前の光景を見て驚くを通り越して引いていた。

 なんせ最初に手を付けた料理こそ毒物を混入させた料理であり、その後も次々と平気な顔をして睡眠薬入りのスープやワインを飲み干していく。

 常人であれば眠るどころか永遠の眠りにつくことだろう。

 

「ところで博士、先ほど連絡させていただいたことですが」

「あ、着いた!?」

「ええ、今ここに」

 

 軽く手を叩くとカーテンが翻り、クロエが束のもとへと駆け出していくがその肩を掴むように後ろから仮面をつけた人物が現れ、首元にナイフを突きつける。

 スコールはその光景を見た瞬間、思わずため息をついてしまう。

 彼女としては隠密に、かつ確実に束とある契約を交わしたかったのだがどうやら“織斑一夏”となった彼女には我慢という二文字はないらしい。

 

「申し訳あ―――」

 

 スコールが謝罪の言葉を言いきるよりも前に束は円卓を下から蹴り上げ、ナイフやフォークを宙へ浮かべるとそれらを殴りつけ、蹴り飛ばすことで“織斑一夏”へと放つ。

 攻撃だと判断したオータムが待機していた柱の陰から飛び出し、それらを叩き落す。

 

「死ねよ」

「ごぇ!?」

 

 ゴミでも見るかのような冷めた目を向けながら容赦なくオータムの腹部に膝蹴りを叩きこむとバキバキッ! という破砕音とともにオータムの体が九の字に曲がり、床を血反吐が汚す。

 そのあまりの威力にオータムの体は浮かび上がり、そこへ回し蹴りを叩きこまれ、オータムは何が起きているかも理解できないままワインセラーへと吹き飛んでいく。

 

「調子に乗るな!」

 

 “織斑一夏”が長大なレーザーライフルの銃口を彼女に向け、引き金を引く―――しかし、レーザーの射線上に束の姿はなく、壁に着弾して爆発を上げる。

 束は―――レーザーライフルの上に立っていた。

 ISのハイパーセンサーでも捉えられなかった高速の動きを前に“織斑一夏”は動けない。

 直後、そんな“織斑一夏”を嘲笑うように十本の手によって次々とサイレント・ゼフィルスが分解されていき、徐々に“織斑一夏”に近づいていく。

 武器を、肩部装甲を、胸部装甲を、ありとあらゆる装備が“織斑一夏”の理解を超える速度で分解されていき、光の粒子となって消えていく。

 サイレント・ゼフィルスのすべてが分解され、束が仕上げと言わんばかりに手を真上へと振り上げた瞬間、彼女がつけていた仮面が真っ二つに切り裂かれ、その下にあった顔が露わになる。

 

「にゃ?」

 

 その顔を見てようやく束の表情に変化が訪れる。

 “織斑一夏”の周囲をくるくると回り、三百六十度すべてを確認した束はにやりと口角を上げる。

 

「へぇ……まだ残ってたんだ。てっきり二人だけかと思っていたんだけど……ねえ、君の名前は?」

「お、俺は“織斑一夏”だ」

 

 その一言に束は少し驚いた表情を浮かべる。

 

「へぇ……奪ったんだ。何もかもを」

 

 全てを知っているかのような言い方に“織斑一夏”は驚きを隠せないでいたが相手はあの稀代の天才、知らないはずもないだろう。

 なんせ、“オリジナル”なのだから。

 

 

「そうだ……今は俺が“織斑一夏”であり、“千冬姉”の愛を受ける者だ」

「ふふん。なるほど……不思議と君には殺意が湧かないなぁ……それもそっか……なんせ君は“織斑一夏”だもんねぇ……ねえ、せーので目的を言おうよ。せーの」

「「識別外個体(アウト・ナンバー)の抹殺」」

 

 全く同じ言葉を発した彼女たちはゆっくりと、勢いよく高らかに笑い声を上げる。

 そんな二人の様子を負傷したオータムの介抱をしながら遠巻きに見ていたスコールはほんの少しだけ恐怖を抱いていた。

 自分では到達し得ない場所で通じ合い、意思疎通を図っていること、それが恐怖の根源だった。

 

「はははっ……良いねぇ、気に入ったよ。君にならあいつを殺すIS……作ってあげる」

「殺せるのか? 本当に」

「もちろん。あんな下劣なものなんか比較にならないオーバースペックのISを作ってあげる。時間制限のない超音速、移行時間のない亜光速、そして殺し続ける武器……君が望むものを作ってあげるよ」

「ならば一つ、俺からもいいか?」

「いいよ」

「こいつの能力を借りたい」

 

 “織斑一夏”は束の後ろに隠れているクロエを指さす。

 束は怖くないよと言う代わりに彼女の頭を優しくなでながら自分の前へと引っ張り出し、後ろから優しく抱きしめて安心感を与える。

 

「く~ちゃん、いいかにゃ?」

「は、はい……束様の命とあれば」

「だってさ……で、くーちゃんの力を何に使うのさ?」

宇宙(そら)から世界を落とす……らしい。俺には理解できないがな」

「ふ~ん、それがこの会社の目的か~……分かってると思うけど」

「分かっている。貴様の世界には手は出さない」

「ならいいよ~」

 

 トントン拍子で亡国機業(ファントム・タスク)にとっていい方向へと進んでいることにスコールは少しの不安を抱きながらも今は静観しておくことに決めた。

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