Re.インフィニット・ストラトス    作:kue

158 / 198
第百五十六話

 凶悪な威力を持つ武器の数々のインストールが完了し、ダリルのもとへと向かおうとするフォルテだったがダリルが専用機を展開する。

 アサルトライフルを構えると夜景がよく見える一面ガラス張りの壁に向かって何の遠慮もなく引き金を引く。

 突然の凶行に一瞬、驚いた表情を浮かべるフォルテだったがすぐに彼女の意図をくみ取り、自身も専用機を展開してその傍へと向かう。

 

「んじゃ……かかってこいやぁぁぁぁ!」

 

 

――――――☆―――――

「かかってこいやぁぁぁぁ!」

 

 突然、ホテルのガラスの壁が粉々に砕けたかと思えば周囲に木霊するほどの大きなダリルの声が響き、隠密行動をとっていたセシリア、ラウラ、アーリィの三人はISを展開し、上空へと舞う。

 しかし、セシリアもラウラも驚いた様子はなくむしろすがすがしい表情をしていた。

 

「よぅ、小娘ども。オレたちをとっ捕まえに来たんだろ?」

「無論だ。裏切り者に制裁を下すためにもな」

「なぜ、あなた方は学園を、祖国を裏切ったのですか」

「お前らみたいな温室育ちのボンボンには分らねえよ!」

 

 説得は無駄だと言わんばかりにダリルはアサルトライフルを二人めがけて放つ。

 ラウラとセシリアはその場から離脱し、ラウラのレールカノンとセシリアのスターライトmkⅢが火を噴き、ダリルを狙うが目の前に氷壁が出現し、二人の攻撃をはじく。

 

「やらせねえっスよ!」

「セシリア! フォルテ・サファイアを頼んだぞ!」

「了解ですわ!」

「俺らを離せば勝てるとか思ってんじゃねえよな!?」

 

 ダリルの肩に装備されている犬頭が炎を吹きながら射出されてラウラへと向かう。

 ラウラのエネルギー手刀と犬頭が正面からぶつかり合い、火花を散らせるがワイヤーブレードが六機すべて射出されてダリルに向かっていく。

 もう一機の犬頭が鎖鉄球のように振り回されてワイヤーブレードを叩き落していくがダリルのすぐそばを一発の砲弾が通過していく。

 

「次はあてる」

「てめえっ! 余裕こいてんじゃねえ!」

 

 ダリルの怒声とともにその場に刀サイズのチェーンソーが展開され、ダリルの手中に納まると激しく火花を散らせながら刃が回転を始める。

 二機の犬頭が炎を一か所に集め、巨大な火球を生成するとダリルがそれをラウラめがけて蹴り飛ばす。

 ラウラは迫りくる火球に向かって突撃していき、六機のワイヤーブレードを高速で振るうことで火球を切り裂き、開けた道を突っ込んでく。

 

「うらぁぁっ!」

 

 ダリルがチェーンソーを振り降ろそうとした瞬間、ラウラが手をダリルめがけて伸ばす。

 それを見た瞬間、ダリルはすぐさまその場から離脱し、後方へと下がりながら火球を生成してラウラに向けて放っていく。

 それらの火球は全てワイヤーブレードによって切り裂かれていく。

 

「AICに頼ってんじゃねえよ!」

「頼るほどの戦闘ではない」

「て、てめえ! 手ぇ抜いて俺に勝てると思ってんのか!? あぁ!?」

 

 チェーンソーを収納し、ダリルは両手を伸ばすと光の粒子が集まり、二丁のサブマシンガンが納まる。

 それは対IS用の弾丸が百発装填されているジャック・デニム。

 開発当初、その弾丸はISの装甲を貫くとまで評され、後に製造が禁止された悪魔の兵器がダリルの手に納まり、引き金に指をかける。

 しかし、それを見てもラウラは表情一つ変えない。

 

「てめえ……これがどんな武器なのか理解してんだろ」

「もちろんだ。製造が禁止されている三八口径のジャック・デニムだろう? 軍で資料を見たことがあるがなんでもISの装甲を貫く威力、だとか」

「あぁそうだ。威力試験じゃ一機のIS装甲を粉砕して搭乗者は入院したらしいぜ?」

「知っている……だがそれは当たれば、だろう」

「その口ぶりじゃ当たらねえってか?」

「そう言っているのが聞こえなかったか?」

 

 その発言を聞き、ダリルは額に青筋を立てて何のためらいもなく二丁の引き金を引く。

 悪魔の威力を持つ無数の弾丸がラウラめがけて放たれていく。

 ラウラはAICを起動することもなく二本のエネルギー手刀、そして六機のワイヤーブレードを高速で振り回すことで放たれるすべての弾丸を切り裂いていく。

 切断された弾丸が次々と闇夜に消え落ちていく。

 

「あ、ありえねえだろ……弾丸全部切りやがった」

「何の目的で亡国機業のスパイをしているかは知らん……だが私たちはお前たちなどに負けはしない」

「はっ……愛する人を守るためってか!?」

「違うな」

「あ?」

「私たちが守っているのは」

 

 ダリルは犬頭から最大火力で炎を放出し、巨大な火球を形成するとそれをラウラめがけて蹴り飛ばす。

 ラウラは瞬時加速を発動させながら六機のワイヤーブレードで火球を切り裂き、開いた道をダリルめがけて最高速度で突っ込んでく。

 

「っっ!」

「一夏の居場所だ」

 

 ラウラは両肩の犬頭にエネルギー手刀を突き刺し、そのまま振り下ろすと大きな爆発を上げてヘル・ハウンドの両肩のアーマーがはじけ飛ぶ。

 負けじとダリルもその手にショットガンを収め、ラウラに向けようとした瞬間、ダリルの腹部にレールカノンがぴたりと着けられ、ダリルの表情が一変する。

 

「て、てめえ!」

 

 敵に情けはかけないと言わんばかりにラウラのレールカノンが火を噴き、ゼロ距離で砲弾が炸裂するとヘル・ハウンドの装甲が粉々に砕け散り、地上へと吹き飛んでいく。

 

「私たちは負けない。一夏の居場所を守り続ける限り」

 

 

――――――☆―――――

「てぁぁぁっ!」

 

 上空に氷柱が形成され、勢いよくセシリアめがけて射出されていくが寸分の狂いもない狙撃によりすべてが彼女に届くまでに撃ち落とされる。

 さらに氷塊を瞬時に作り出し、それを全力でフォルテが殴りつけた瞬間、粉々に砕け散るとともに氷の弾丸となってセシリアに放たれていく。

 セシリアは同様に氷の弾丸を狙撃で撃ち落としつつ、スラスターを吹かしてその場で回避行動をとり、氷の弾丸を次々に回避していく。

 そして上空で逆さまの態勢のままフォルテめがけて一撃を撃つ。

 フォルテも負けじとスラスターを吹かしてその場でバク転をするように空中で飛び上がってレーザーの一撃を難なく回避する。

 

「っと! 流石はイギリス最強のBT使いと言われるっすね!」

「あら。そんなことを言われているのですか? 初耳ですわ」

 

 セシリアの澄ました物言いに腹が立ったのかフォルテは軽く舌打ちをしつつ、拳に氷柱を纏わせて殴り掛かろうとするが背後からの一撃で拳の氷柱が粉砕される。

 

偏向射撃(フレキシブル)……忘れてたっス」

「……何故、裏切りましたの?」

「まだ聞くっスか? 説得なら無駄っスよ……覚悟は」

「説得ではありませんわ」

「……じゃあなんで」

「分かりませんの。なぜ、あなたが亡国機業にこのタイミングで下ったのか」

 

 楯無が全くのノーマークだったと言ったように誰もがフォルテが亡国機業に寝返るとは思ってもいなかったうえに愛する者の裏切りを止めると思っていた。

 しかし、現実は違った。

 セシリアにも愛する者はいるがフォルテの考えが全く理解できなかった。

 何故、愛する者が闇に染まれば自身も闇に染まるようなことをしたのか。

 

「別に何も理由はないっスよ……ただ単に私の髪を結んでくれる人の傍にいるだけ……それだけっス」

「愛する者が闇に落ちていればそこへともに落ちるのですか?」

「何が言いたいんスか?」

「なぜ、止めなかったのですか。愛する者が闇に落ちるのをなぜあなたも一緒になって」

 

 話はそこまでだと言わんばかりにフォルテが両手に冷気を纏わせて氷塊を作り出し、互いをぶつけ合うとセシリアを囲うようにして周囲に氷壁が足場のように出現する。

 セシリアはその様子を見てすべてを悟ったのか、それ以上の質問をするようなことはなく自身の得物を握り締め、愛する者の顔を思いうかべる。

 

「あの人の傍には私が居なきゃダメなんっス!」

 

 フォルテは叫びをあげながら瞬時加速を使い、セシリアの周囲に作り出した氷壁を空中での足場にして高速で飛び回り始める。

 セシリアはその動きを目で追いかけながらスターライトmkⅢを向け、引き金を引くが蒼の一撃は何にも当たらずに虚空へと向かって消えていく。

 セシリアが体勢を軽く右へと傾けるとすぐ傍を氷塊を装備したフォルテの拳が通っていく。

 

「愛する人が闇に落ちるなら私もその傍にいるっス! 寂しくないように落ちていくんっスよ! あんたにはその覚悟がないんスよ! セシリア・オルコット!」

「……」

「私にはその覚悟がある! あの人を一人で闇に落とさせる気はないっス!」

 

 セシリアの背後を取り、瞬時加速を発動させて一気に距離を詰めて氷塊の拳を叩きつけようとした瞬間、スターライトmkⅢの銃口がセシリアの肩からフォルテを覗く。

 こちらを見ることなくセシリアは引き金を引く。

 しかし、青の一撃はフォルテが体勢を大きく後ろへと反らしたことで闇夜へと消えていく。

 体勢を元に戻し、再び瞬時加速を発動させて殴り掛かろうとした瞬間、フォルテの右肩に何かが直撃し、爆発を上げて装甲がはじけ飛ぶ。

 

(さっきの一撃が今になって帰ってきた!? こっちの相手をしながらそれすらもコントロールするなんて)

 

 その瞬間、フォルテは後ろを振り返ると先ほど回避した蒼の一撃がこちらへと戻ってきているのが見え、慌てて上空へと飛翔し、一撃を回避する。

 氷塊による殴打を諦め、拳の氷塊を砕いて氷柱にしてセシリアへと放とうとしたその時、回避した蒼の一撃が足場にしていた氷壁に反射するかのように次々に方向を変えていき、フォルテの方向へ向かう。

 

(んな馬鹿な!? レーザーをここまで自在にコントロールなんてありえないっスよ!)

 

 すぐさま氷柱を集結させて前方に氷壁を形成した瞬間、足場に反射した蒼の一撃が氷壁を貫くがギリギリのところでフォルテは身をよじらせて回避する。

 体勢を整えて次の攻撃へ移ろうとしたその時―――

 

「っっ!」

 

 氷壁に空いた小さな覗き穴からセシリアがこちらへ銃口を向けているのが見えた。

 しかし、氷壁に空いた穴はあまりにも小さく、そこへレーザーを通して自分を狙撃するなどありえない、と思うが先ほどまでの彼女の狙撃技術の高さを思い出す。

 セシリアの視線はただ小さな穴を通してフォルテだけを見つめている。

 

(通す! こいつは絶対にこの穴を通して私を撃ってくる!)

 

 確信にも似た嫌な予感に従い、上に向かって飛び上がる―――次の瞬間、カチャリという動いたような機械音がフォルテの耳に入る。

 視線をセシリアへと向けると二基のビットが銃口をフォルテへと向けており、それを確認したと同時にビットから二発の弾頭ミサイルが放たれる。

 回避策を取る暇もなく二発の弾頭ミサイルがフォルテに直撃し、闇夜を照らすように大爆発を上げると地上へと落下していく。

 

「あなたの愛を否定するつもりはありません。ですがわたくしは一夏さんが闇に落ちた時は闇から救います。わたくしは彼の居場所を守り、彼の全てを愛しますの」

 

――――――☆―――――

 

 粉々に砕けたホテルの一室から車いすに乗ったスコールが地上へと落ちていくレインとフォルテの姿を捉えるが慌てることはなかった。

 たとえ目の前に『テンペスタ』を纏ったアリーシャがいようともスコールの表情は何一つ変わらない。

 

「随分と落ち着いているネ、スコール・ミューゼル。お仲間がやられたっていうのに」

「この程度の戦況で驚いていては亡国機業のリーダーは務まらないもの……で、答えはいかがでしょう?」

 

 優しく笑みを浮かべながらそう尋ねるスコール。

 アリーシャは少しの間、考えるとまるで答えと言わんばかりにホテルの室内の邪魔なものを吐き出すように風が室内を駆け巡り、ガラスの破片や空いた木箱が窓から地上へと落ちていく。

 そして綺麗になった室内の床にアリーシャは降り立ち、テンペスタを解除する。

 

「ありがとうございます。アリーシャ・ジョセスターフ」

「で、話って何サ」

「結論から言いましょう……アリーシャ・ジョセスターフ。我々のもとに来ませんか?」

 

 まさか国家代表を務める自身にテロリストにならないかという誘いが来るとは思ってもいなかったアリーシャは少し驚きながらテンペスタの待機形態であるキセルを咥える。

 

「今までいろんなところから誘いが来たけどサ、テロリストからは初めてサ」

「そうでしょうね……あなたは常に戦いを望まれている。違いますか?」

「……」

「それも特定の人物との戦いをね。それ以外の戦闘はもう飽きているんじゃないですか?」

 

 スコールには確固たる証拠があった。

 京都での行動を見ていてもどの戦闘にも積極的に参加しようとはせず、適当にいなしている姿しか見せていないし、もっと遡れば国家代表として公式の試合に参加した記録もない。

 あの第二回モンドグロッソから。

 

「あなたの実力は他を圧倒している。だから第二回モンドグロッソから公式の戦闘に一切、参加していないんじゃないんですか?」

「……知った風な口をきくネ。じゃあどうやってあんたたちが私の望むステージを用意するサ」

「我々は今、ある作戦を動かしています。その作戦が形となれば……確実に織斑千冬を最前線に引きずり下ろすことができるでしょう」

「あいつは並大抵のことじゃ出てこないのサ。それは理解しているのか?」

「もちろん」

 

 絶対的な自信をのぞかせるスコールの言葉にアリーシャは少し考えるように黙りこむ。

 

「……その作戦はどんなものサ」

「作戦は――――――」

 

 スコールはこれまでにどの作戦とも同時並行で動かしてきたとある作戦の内容を全て包み隠さずにアリーシャに向けて話していく。

 もうすでに仲間であるかのようにすべてを話すスコールには絶対的な自信があるのかもしれない。

 全てを話し終えた時、全ての時間は進みだした。

 

「そんな作戦……人がするような作戦じゃないネ」

「ふふっ。人ではありませんから」

 

 その時、レインとフォルテを下したセシリアとラウラがそれぞれの得物を構えながら傍までやってくる。

 セシリアは少し距離を開けて待機し、ラウラはエネルギー手刀を展開したまま室内へと降り立ち、ゆっくりとスコールのもとへと歩いて行く。

 

「スコール・ミューゼル。貴様を捕縛する」

「流石はIS学園の新世代ね。苛烈な戦場の場数が段違い……あの子たちが勝てるはずもないわね」

 

 スコールまであと数歩というところでラウラの目の前にキセルが差し込まれ、ゆっくりとラウラの顔へと近づいていき、コンっと胸部の装甲にあたる。

 

「……」

「それ以上、近づかない方がいいよ」

「……なぜ?」

「それはサ」

 

 ヒュッ、という空気を切り裂くような音がラウラの耳に入った直後、強烈な衝撃が顎に伝わると同時に体がふわっと真上へと上がる。

 

「こうやって私の不意打ちがくるからサ」

 

 直後、アリーシャの回し蹴りがラウラの腹部へと突き刺さり、バキィッ! という嫌な音ともにラウラがいとも簡単に蹴り飛ばされる。

 

「ラウラさん!」

 

 完全に不意を突かれたラウラはまともに防御姿勢も取れないままセシリアに受け止められるまで吹き飛ぶ。

 その時、ザワザワと木々が大きく揺れるほどに強い風があたりに吹き荒れ始める。

 

「……セシリア、構えろ。やつはもう……尊敬する人間ではないぞ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。