下手をすると年内には完結するやも……
ダークパープルのエネルギーを纏った斬撃がいくつも放たれるが一夏はそれをスラスターを駆使して縦横無尽に空を駆け巡りながら回避していく。
最後の横なぎの斬撃を回避した瞬間、“織斑一夏”がスラスターを吹かした勢いの突きを繰り出す。
それを確認した一夏は雪片弐型の刀身で受け止める。
「ぐぅっ!」
「はぁぁぁっ!」
そのまま“織斑一夏”がスラスターを全開に吹かしたことで押し切られてしまい、二人して地上へと降り立って互いの剣を振りかざす。
横なぎの斬撃を姿勢を低くして回避すると同時に一夏が相手に足払いをかけるが足をあげられることで回避され、そのまま回し蹴りが放たれる。
「っっ!? 片手で」
「うおぉぉっ!」
回し蹴りを片手で受け止め、“織斑一夏”の脚を掴むと同時に力任せに後方へと投げ飛ばす。
しかし、上空で体勢を整えられて木を足場にして着地したところを雪片弐型で切りかかるが一夏を飛び越える形で斬撃が回避される。
太い木が一撃で真っ二つに切り裂かれて滑り落ちるようにして地面に落ちた。
「
「おぉぉぉぉっ!」
互いに剣を振り下ろした瞬間、それぞれの装甲に剣が突き刺さり、そして躊躇なく引き下ろす。
肩のあたりが鋭く切り裂かれたことで血しぶきが舞い上がるが気にも留めずに同時に拳を突き出し、お互いに切り裂いた個所を殴りつける。
「はぁっ!」
後ろに後ずさりながら雪羅の荷電粒子砲が放たれるがバスター・ソードの斬撃で叩き落される。
直後、“織斑一夏”の装甲から加速機関が生み出された瞬間、一夏の視界を埋め尽くすほどの血しぶきが舞い上がった。
切り裂かれた胸を抑えるもあまりにも深い斬撃の前に一夏は膝をついてしまう。
(自分のBoost・Timeよりも早い……でも反動も強い……だから短期決戦でくるはず)
「うらぁぁぁっ!」
「ぐぅぁっ!?」
一夏が咆哮をあげながら振り返ると同時に拳を突き出した瞬間、“織斑一夏”の腹部に突き刺さり、超音速の速度によってあり得ないほどに拳が突き刺さっていく。
スラスターを操作し、その場から即座に離脱するが着地際を狙って一夏が切りかかる。
甲高い金属音とともに火花が散る。
両目から血を垂れ流しながらも邪悪な笑みを浮かべたままの“織斑一夏”は空いている手にピンクのナイフを呼び出すと一夏の脇腹に深く突き刺す。
「ぐふっ!」
「死ね」
突き刺したナイフをそのまま下へと無理やり引き下ろした瞬間、一夏の脇腹の装甲が砕けるとともに鮮血がまき散らされるが一夏は体勢を崩さない。
一夏は歯を食いしばりながら右手を握り締め、相手の顔面へと突き刺し、殴り飛ばす。
「脇腹を抉った程度では死なないか」
「お前も……顎を殴った程度じゃ気絶しないか」
スラスターを吹かし、互いにその場から駆け出して剣を振るう―――しかし、“織斑一夏”はバスター・ソードを敢えて収納し、身をよじって一夏の斬撃を寸でのところで回避する。
地面に降り立つと同時に一夏の背中を蹴り飛ばし、首を掴むと同時に上空へと飛翔する。
彼女の脇腹に肘打ちを入れ、一夏は距離を取ると同時に“織斑一夏”がその場から姿を消す。
「お前はこの速度についてこれない」
「がっ!」
一夏の腹部に強烈な膝蹴りが入り、口から多量の血反吐を吐きながら後ろへと後ずさる。
が、その後ずさりを止めるかのように一夏の後ろへと超音速で移動した“織斑一夏”が後ろから肩を掴み、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべる。
「見えてんだよ!」
「俺もな」
振り返りざまに雪羅のクローを振るうが相手が体勢を低くしたことでクローは虚しく空を切り、それと同時に彼の視界に一撃の構えを取る相手の姿が映った。
その手にはいつのまにか展開したバスター・ソードが握られている。
ヒュッ! と空気を切り裂く音が彼の耳に木霊した瞬間、白式の腹部装甲が粉々に砕けると同時に大量の血しぶきがまき散らされる。
「ぐっ……あぁぁぁっ!」
「っっ!? ぐぅっ!」
斬られた直後、一夏は雪片弐型を全力で相手めがけて投げつける。
一撃を放った直後の隙だらけな相手の腹部に雪片弐型が突き刺さり、口から血反吐を吐くが相手は笑顔のまま腹部に刺さった雪片弐型を抜き取り、投げ捨てた。
同時にスラスターを吹かした瞬間、拳がぶつかり合う―――直後、二人の手に粒子が集まったかと思えば一瞬で剣が構成され、手中に納まる。
「「はぁぁっ!」」
互いの得物がぶつかり合い、彼らを中心として衝撃波が放たれて木々を大きく揺らす。
相手が大きく後ろへと飛びのいた瞬間、大型ウイングスラスターが最大稼働を始めるとともにダークパープルに輝きを放ち始める。
それを確認した一夏も鎖を背部装甲から射出―――
「ごぁっ!?」
「貴様のような低次元の力と一緒にするなよ!」
黒炎を吹き上げた“織斑一夏”の一撃が一夏の腹部に突き刺さり、体勢を大きく崩すとともに射出されかかっていた鎖が消え去ってしまう。
瞬時に亜光速へと移行した“織斑一夏”は黒炎を噴き出しながら一夏に狙いを定め、上空へと舞い上がる。
「えあぁぁぁっ!」
黒炎とともに急降下し、一夏の頭部に踵落としが炸裂し、一瞬一夏の目から光が消えかかるがすぐさま顔面を強く殴りつけられたことで無理やり意識が覚醒する。
一夏を足蹴りして距離を取るとともにスラスターを吹かした“織斑一夏”は極大の黒炎を纏いながら一夏に狙いを定めて突撃していく。
「死ねぇぇぇぇ!」
避ける間もなく相手の黒炎を纏った蹴りの一撃をまともに食らい、白式の装甲の大部分が一瞬で吹き飛び、破片の一片すら黒炎によって焼かれていく。
その身を黒炎に焼かれる激痛で意識も絶え絶えな一夏は黒い炎に包まれながらそのまま地上めがけてゆっくりと落ちていく。
「終わらせる」
追撃と言わんばかりに“織斑一夏”は落ちていく一夏へと突っ込んでいく―――その瞬間、瞬時に体勢を立て直した一夏が瞬時加速を発動させ、すれ違いざまに彼女の脇腹を切り裂く。
そして方向を入れ替え、スラスターから赤炎を吹かしながら彼女めがけて突っ込んでいき、彼女の胸部へと蹴りを叩きこみ、そのまま押し込んでいく。
「わざと食らって!?」
赤炎から蒼炎へと変化した瞬間、二人を包み込んで凄まじい勢いで地上めがけて落ちていく。
しかし、“織斑一夏”は逃れようとピンクのナイフを展開すると一夏の足に何度もナイフを突き刺していくが落下の勢いはさらに増していく。
「くそがぁぁっ!」
「っっ! がぁぁっ!」
バスター・ソードが一夏のふくらはぎを貫通した瞬間、あまりの激痛に耐えきれなかった一夏の体勢が崩れてしまいい、蒼炎状態が強制的に解除されてしまう。
お互いに体勢を立て直す暇もなく崩したまま地表へと落ちる。
地表に落ちた瞬間、同時に互いが動き出そうとするが一夏がその場から駆け出そうとした瞬間、貫通している部分から血が噴き出し、激痛に思わず顔をゆがめ、動き出しが一瞬遅れる。
「俺の勝ちだ」
「っっっ!」
呟きの直後、バスター・ソードが勢いよく振り上げられたことで縦にまっすぐ切り傷が入るとともに血しぶきが舞い、追撃として肩から斜めに大きく斬撃が加えられる。
何もできないまま二度の斬撃をその身に受けた一夏の体がゆっくりと落ちていくが腹部めがけてバスター・ソードが突き出され、そのまま貫通した。
地面にボタボタと血痕が滴り落ち、バスター・ソードを赤く汚す。
体から完全に力が消えた一夏はバスター・ソードにもたれかかるような体勢のままピクリとも動かない。
「全てが根底から違うんだよ。ISも……肉体も……存在も……全て“俺”が上だ。“俺”こそが千一番目の個体であり、オリジナルだ」
「……」
「思い出? 未来? そんなものは偽物に過ぎない。偽物が作った思い出も……思い描いていた未来も……お前を消した後で全て“俺”が掃除してやる……そしてあの人の声も……温もりも……何かもを得る」
バスター・ソードをゆっくりと引き抜くと血痕が多量に落ちていく。
支えを失った一夏の体はゆっくりと地面に向かって落ちていく。
「お前は本来いるべき場所に戻れ……
――――――☆―――――
「―――っっ……ぅっ」
軽く痛む頭を押さえながら目を覚ました千冬はゆっくりと起き上がり、周囲を見渡す。
視界に時計が映りこみ、全てを察した千冬が慌ててベッドから飛び起きて愛する一夏のもとへ向かおうとしたその時、喉元に槍が差し込まれ、動きを止める。
視線だけを動かすとそこには楯無がいた。
「……貴様、その行為が何を示しているのか分かっているのか? 更識」
「分かっています。あなたをここから出さない……それがあの人との約束です」
「そうか……っっ!」
「っっ!?」
楯無が反応できない速度で槍に掌底が真下からあてられ、槍先が天井を向いたと同時に胸部に強烈な衝撃が走り、体がふわりと浮いて襖を破壊しながら外へと吹き飛んだ。
突然の出来事に理解が追い付いていない楯無の前方には殺意を隠すことなく全開に放っている世界最強の存在が立っていた。
「一夏は私の全てだ……個体差は絶対に覆すことは出来ない。貴様にはすべて話したはずだが」
「ええ、覚えています。下位の個体は決して上位個体に勝つことは出来ない。その象徴が上位種による命令」
「そうだ。
旅館の床が破砕音を奏でた瞬間、千冬の姿がその場から消えたように見え、楯無は慌てて槍を構えた瞬間、鈍い打撃音が周囲に響き渡る。
「織斑先生……あなたが一夏君を失いたくない気持ちもわかります……ですが彼は必ず生きて私たちのもとへ帰ってきてくれます」
「乙女の夢物語にすぎん……現実を見ろ、更識」
「現実を見てなお! 私は一夏君が勝って帰ってくると信じているんです! 私だけじゃありません! 全員が彼の帰りを信じているんです!」
「……」
「彼こそが! 織斑一夏なんです! 千一番とか
「っっ!」
「私たちが知る織斑一夏は必ず勝つ。勝って全てを取り戻した彼と私たちは未来を築く!」
「……」
千冬は何も言わずに数歩後ろへと下がり、握っていた拳を開いて腕を降ろした。
「更識……私を止めろ」
「そのつもりです」
「今の私は……私でも止められない!」
一夏が死ぬから助けに行きたいという想いと楯無のようにこれからの未来を彼と築くために勝つと信じて待ちたいという想いが千冬の中でぶつかり合う。
相反する想いがぶつかりあい、千冬の中では想いが暴走し、何も理解できない。
「あぁぁぁぁぁっ!」
千冬の拳と楯無の拳が真正面からぶつかり合った。