Re.インフィニット・ストラトス    作:kue

179 / 198
親知らずが痛い


第百七十七話

 アルベールさんの後をついていくとエレベーターに乗り込み、三階で降りると白衣を着た研究員たちが多くみられるフロアにたどり着く。

 廊下をまっすぐ歩いて行き、自動扉を超えるとそこは学園のような広いアリーナになっており、俺たちの前方に一機のISが整備されている光景が現れる。

 そのISはどこかつぼみを閉じた花のようにスラスター・ウイングを閉じているが機体カラーはシャルの専用機であるリヴァイヴに似ている。

 

「リヴァイヴ……でも違う……これは」

「リヴァイヴとデュノア社の総力を結集した第三世代型IS、コスモスを融合させている最中だ」

「じゃあリヴァイヴは初期化したんですか」

「いいや……コスモスは第三世代型ISと銘打ってはいるが運用方針は武装だ」

「ISでありながらIS用兵器にもなるのか……じゃあ戦闘中に切り離して戦うことも」

「本来の想定はそうだがいかんせん遠隔操作技術はまだ存在していない。ゆえに今は外部取り付け装甲としての運用しかできないがな」

 

 つまり今のリヴァイヴは俺たちが服を着るようにISを上から装着している状態だということ。

 技術がさらに進歩して束さんしか使えない遠隔操作技術が形になれば一人の操縦者でありながら二機のISで戦うことができるということになる。

 それが本来のコスモスの姿。

 

「……コスモス……」

「コスモスはお前の母が好きだった花だ……常にあいつはお前のことを想い続けた……ようやく結実した。シャルロット……お前のISの新たな名はリィン=カーネイション」

 

 シャルはまるで機体に吸い寄せられるように歩み寄っていき、新たな専用機であるリィン=カーネイションに触れた瞬間、まるで花開くようにスラスター・ウイングが開き、彼女を迎え入れる。

 彼女がリィン=カーネイションに搭乗すると同時にまるで包み込むようにしてスラスター・ウイングが閉じ、再び花開くようにして生まれる。

 

「リィン=カーネイションの第三世代型兵器は花びらの装い(ル・ブクリエ・デ・ペテラ)。試してみろ」

 

 アルベールさんがそう言うとともに独立稼働兵器のサブマシンガンが彼女の真正面に設置されると有無を言わずに無数の弾丸を放ち始める。

 彼女が弾丸たちを受け流すような軌道を描きながら手を振った瞬間、弾丸がその軌道に合わせて横へと逸れていき、壁にあたって火花を散らせる。

 

「弾丸が……逸れた?」

花びらの装い(ル・ブクリエ・デ・ペテラ)はエネルギーによる不可視の力場を発生させることで実弾兵器の軌道を自由自在に操ることができる。無論、BT兵器にもある程度の干渉は可能だ」

「じゃあ、実弾を相手に反射させることも」

「可能だ。そしてリィン=カーネイションの真骨頂はエネルギーと実弾の融合だ。ヴァーチェⅡを展開しろ」

 

 彼女の手に二丁のライフルが収められると彼女は独立稼働兵器に向けて引き金を引く。

 直後、発砲音とともに弾丸を包み込んだレーザーの一撃が放たれて独立稼働兵器を貫くと風穴を開けると同時にそこを中心として亀裂が入り、数刻後にはサブマシンガンは粉々に砕け散った。

 

「実弾をエネルギーで覆うことでレーザーのような貫通力と同時に実弾の破壊力を同時に相手に叩き込む。仮に実弾だけを叩き落してもレーザーに撃ち抜かれ、レーザーをかき消したとしても実弾により破壊される」

「つまり二段構えの攻撃を絶え間なくできるのか」

「リィン=カーネイションの全ての重火器はエネルギーを纏わせて放つ。零落白夜のようにエネルギーをかき消す相手だろうが銃装甲のように実弾に強い防御力であろうがリィン=カーネイションにとっては関係ない。等しく破壊し、等しく打ち倒す」

 

 シャルは二丁のライフルを収納すると稼働テストと言わんばかりに上空へと飛び上がり、アリーナを縦横無尽に飛び回っていく。

 飛び回りながらもシャルは武装を確認するかのように得意に高速切替で次々と武装を持ち替えていくが今までの比じゃないくらいに早い。

 それこそマジシャンのように手をくるりと回したころには既に武器が変わっている。

 

「スペックもコスモスを装着したことにより第三世代ISのものになっている。特に高速機動においてはラファール・リヴァイブをはるかに超える」

「これが……シャルの新たな専用機」

「あいつはお前の居場所を守りたいとい言った……私の言うことを自己解釈し、その通りに行動し続けてきたあの子が自分の想いに従って行動するようになった……それはお前がいるからだろう」

「……」

「お前にだけは話しておこう……大人の中には薄汚い思惑を持つやつもいる。たとえば……あの子を揺すりの道具としようとする一派など……な」

「だから……シャルをIS学園に」

「最初はデュノア社のテストパイロットという肩書で守るつもりだったが奴らはそれすらも超えた汚い計画を実行するつもりだった。だから私はIS学園へ送り込んだ。ただ送り込むだけでは周囲を納得させることは出来なかった。だからお前を使わせてもらったということだ」

 

 つまり俺が以前、電脳空間で目撃した光景は現実でも起こりえたかもしれないことだった。

 シャルを狙う一派から守るためにアルベールさんは連中も手が出せないIS学園へと送り込み、その間に汚い連中を一掃しようとした。

 俺という存在のデータを取りに行かせるという名目は誰しもが納得する理由になったと思う。

 

「じゃあ本当に……あなたはシャルのことを想って」

「……あの子の母親と約束したんだ……どんな手を使ってでも守ると……それが二人の女を愛したバカな男ができる唯一の贖罪だ」

「きっとシャルは……気づいていますよ」

「そんなことは知らん……いつだって男は女の手のひらの上を転がっているものだ」

 

 そう話すアルベールさんの表情はどこかすべて片付いたという晴れやかなものだった。

 

「お前も気を付けるといい……あの子の母親もそうだったが気づかないうちに料理されてしまう」

「は、ははは……気を付けます」

「シャルロットのことを頼む」

「はい。絶対に守ってみせます……ずっと」

「一夏ー!」

「うっぇぇぇ!?」

 

 上空から俺の名前が叫ばれたかと思えばシャルが上からISを解除した状態で振ってきたので慌てて体勢を取って彼女を受け止める。

 直後、シャルは俺に抱きかかえられたままの格好で俺を強く抱きしめる。

 

「シャ、シャル?」

「へへっ……一夏だ……おかえり」

「……ただいま」

 

 あの戦いが終わって初めてのシャルからの言葉はやはりうれしいものだった。

 シャルはいつにも増して明るい笑顔を浮かべながら俺から少し離れると俺の手を握り締め、アルベールさんの方を振り向く。

 

「少しの間、出かけます……全てが終わったら……一緒にお母さんのお墓参りに行きましょう」

「……随分と長く行けていないな……そうだな。全てが終わったらあいつの墓参りに行こう」

「じゃあ……行ってきます」

 

 アルベールさんは何も言わず手だけを上げ、アリーナを後にした。

 

 

――――――☆――――――――

「お疲れ様」

 

 アリーナを出たアルベールを出迎えたのは赤いドレスに身を包んだ女性であり、その人物こそアルベール・デュノアの正妻であるロゼンダ・デュノア。

 

「なんだ来ていたのか……お前は会わなくていいのか?」

「……初対面があれだから……もう少しだけ時間が欲しいの」

「そうか……また一から再スタートだな」

「せっかく完成させた第三世代型ISをタダであげたものね」

「だが第三世代の基盤は出来た……再びデュノア社は花開くさ。うちには優秀な技術屋と……テストパイロットがいるからな」

「……あの子たちは勝てるのかしら」

「勝つさ」

「あら。偉く自信満々に言うじゃない」

「あの男を最初に見た時、分かったよ……あれはやる男の目だ」

「そう……じゃあ私たち大人はそれを支えましょうか」

「次の世代のためにもな」

――――――☆――――――――

 

「…武装としてのIS運用……興味深い」

「リヴァイヴとコスモスを合わせて第三世代ISのリィン=カーネイションか……ということは将来的にはシャルロットはIS二機持ちになるということか」

「そうなると思う。今はまだ遠隔操作技術が世に出てないけど形になればいずれは」

「これはまたIS委員会で揉めに揉めますね~。織斑先生」

 

 山田先生に振られた千冬姉はもう勘弁してくれと言わんばかりにため息をつきながら手を小さく左右に振る。

 千冬姉がそんな表情をする原因と言えば世界で唯一の男性IS操縦者と世界にまだ一機しか存在していない第四世代ISの紅椿を持つ操縦者を抱えているからだろう。

 

「徐々にこちらの戦力は整いつつあるわね……残るはラウラちゃんとセシリアちゃんね」

 

 戦力が集まるということはエクスカリバー破壊作戦が近づいてきているということ。

 俺はみんなが集まるという安心感と同時に緊張感も同時に感じながら次なる目的地であるドイツへの道を車で走り続けていく。

 

――――――☆――――――――

「束さま」

「ん~? どったの? く~ちゃん」

 

 スコールたちも知らない二人だけの秘密の部屋。

 そこでは束がモニターに映し出されている映像をクロエを膝に乗せた状態でボーっと眺めていた。

 

「彼らが行動を開始していることをスコールたちに報告しなくていいのですか?」

「良いの良いの……別に束さんはあいつの部下になった記憶はないから報告する義務はないのだ~」

「むぎゅっ」

 

 束はニヤニヤと笑みを浮かべながらクロエの頬を優しく握りつぶしながら揉みしだいていると別のモニターに一枚の映像が新たに表示され、そちらに二人の視線が向かう。

 そこに映し出されていたのは束が用意した無人機体であるゴーレムⅠの無残な残骸がいくつも転がっており、その中心にはISを装着した一人の女性がいた。

 

「へぇ……五機のゴーレムⅠを一人で片付けちゃうか……ISのスペックはもちろんだけどどうやら貰い受けたあれ、なかなか頑丈だね」

「はい……適応しているのでしょうか」

「それはないね。だってこいつ、意識失ってるもん」

「意識失いながら……これも第四世代の特色ですか?」

「第四世代というか無段階移行(シームレス・シフト)の特色かな。蓄積経験値によってパーツ開発や性能強化を随時行うようにしてあるからどんどん進化していくよ。それに……この子の特色は別のところにあるから」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。