Re.インフィニット・ストラトス    作:kue

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第十六話

「ふんふんふ~ん♪」

 

 ウサミミをつけた女性が楽しそうに飛び跳ねている。

 彼女の周りには機械仕掛けの鳥やリスが駆け回っており、彼女の感情とリンクしているかのような勢いだ。

 

「あれから6時間……そろそろ毒が全身に回りきる頃かな? あの毒は強いよ~。なんせ色んな毒をマゼマゼコネコネギュッギュッしたら偶然できた毒だからね~。誰も解毒剤なんて作れないのだ~! なーっはっはっは!」

 

 彼女は高笑いをすると指をパチンとならし、空間に一夏の顔写真を浮かべる―――そこに指鉄砲を向けて引き金を引く真似をするとともに画面が砕ける。

 束は落ちていく彼の顔の欠片たちを見ながら笑みを浮かべる。

 

「あー……ようやく消せたよ……長かったな~。早10年くらいたったかな? ち~ちゃんとの約束で今まで手が出せなかったからな~……ISに関係するところでしかいっくんに手を出したらイケナイ……いっくんとISの繋がりが出来てくれて束さんは嬉しいよ……おや?」

 

 ブーブー、とスマホが震える音が聞こえ、何もないはずの空間に軽く触れると彼女の手元に空間に投影されや映像が現れ、通話相手の名前が表示される。

 そこにはち~ちゃんとあった。

 

「もすもす終日~? 世界が誇る天っっ才……って言ってる場合じゃないかな? ち~ちゃん」

『えらく機嫌がいいな』

「もっちろんだよ~! だってもう少ししたら私が望む世界の第一段階になるんだから!」

『ハートフルラブストーリー……だったか』

「イクザクトリィ~! で、いっくんは? 死んだ?」

 

 とても人の命に対してかける言葉ではなかったが束はごく自然にその言葉を言い放つ。

 だがそれを分かってか千冬の電話越しの声色は変わらない。

 

『死にはしない……私の計画が完遂するまではな』

「いやいや~! ち~ちゃん負け惜しみ~? いっくんに刺さったナイフ……あれ。世界のだれもが知らない毒化合物だから刺さった時点で束さんの勝ちだよ?」

『……お前に一つ教えておいてやる。えてして人が考えるものには限界があり、現実(リアル)は限界を超えて起こるものだ』

「ん~?」

『気になるなら見てみるといい。どうせどこかでウサギでもいるのだろう?』

 

 その一言を最後に通話は切れた―――電話越しに聞こえてくる声は絶望に満ちた物ではなく、普段通りの彼女の声であった。

 そして彼女はつまらない嘘はつかないし、ことこの勝負に関しては正々堂々を貫く約束。

 気になった束は別の画面を手元に映し、確認する。

 

「……へぇ……確かにち~ちゃんの言うとおりだね」

 

 画面に映し出されている光景を見て束の表情から先程までの嬉しそうな色は消え、どす黒い色で染められる。

 その画面には決して束には見せない表情を浮かべ、束には決してしないことをしている千冬の姿があった。

 全ての時間を見ようとするがうさぎが録画できている時間が一夏の目覚めた数分後しかなかった。

 

「……」

 

 束は用済みと言わんばかりに画面を叩き割った。

 

「……やっぱり君という男は……私の世界にはいらない」

 

――――――☆――――――

 

 学園の地下五十メートルに位置する地下施設に千冬はいた。

 その施設はレベル4権限を持つ人物のみが立ち入りと存在の把握を許された秘密施設―――重要なのは“教師”ではなく“人物”であること。

 件のISはその施設へと運び込まれ、解析が進められている。

 千冬は設置されたモニターで二時間もの間、アリーナでの戦闘映像を見続けている。

 

(間違いなくこいつはあのバカが創り出したもの……ご丁寧に機体内部に証拠隠滅用の爆弾まで搭載か)

 

 現時点で判明していることは数少ない。

 原因は一夏の攻撃とセシリアの狙撃によってコアが消し飛んだことと証拠隠滅用の爆弾による損失。

 逆に判明していることと言えばシステムクラック機能を搭載していること。その機能で学園のアリーナに関するシステムをクラックした。

 

「遂に動き出したか」

 

 脳裏に浮かぶはあのウサギ耳をつけた女性の顔―――篠ノ乃束。

 千冬は映像を切り替え、一夏のあの一撃の近辺の映像を再生する。

 背中の噴出口から噴き出す炎が真っ赤だったものがやがては青いものへと変わり、防護用シャッターごと鎖を引きちぎるほどの力を見せた。

 そして高性能のアリーナのカメラであっても映像に収めることが出来ないほどの速度を叩きだし、ISの胸部を拳で貫いた。

 千冬の知識の中でここまでの速度を叩きだす技術は知らない。

 

「……これ以上、お前を戦いに立たせるわけには」

 

 その時、モニターに割り込む形で監視カメラの映像が映し出される―――そこにはタブレット端末を抱えている真耶の姿があった。

 

「どうぞ」

 

 千冬の許諾をもってドアが開き、真耶が入室する。

 

「解析が終わりました……織斑先生の言うとおり無人機だと結論付けられました」

「そうか……コアの方は」

「コアは完全に……推測の域を出ませんが未登録でしょう」

「……」

 

 ふぅっと一息つく千冬の表情には少し疲労の色が見える。

 

「織斑君の傍にいてあげてください。ここは私がやります」

「……心配などしていないさ。容体は安定している」

「そうですか……それにしても未知の毒化合物により医師が治療不可と診断したのにそこから生還するなんて生命力の塊ですね」

「そうだな。だから私は心配していない」

 

 そう言いながら千冬はカップに粉末とお湯を注ぐ。そして手元に三種の粉セットを引き寄せると蓋を開け、白い粉を注ぐ。

 

「……それ塩ですよ」

「何故、塩がここにある」

「さ、さあ? でもボックスに大きく塩って書いてありますけど……あ! 分かりました! やっぱり織斑君のことが心配なんですね! やだなー! そうなら言ってくださいよ~!」

「山田先生……コーヒーに塩を入れると苦味の軽減や甘味の引き立て、風味の強調があるそうだ……一度試してみると良いぞ」

「いや~もう何言ってるんですか~。それ、コーヒーじゃなくてココアですよ?」

 

 更なる指摘に千冬の動きが止まり、視線だけでさっきまで持っていた袋を見ると確かに『あま~いココアの粉』とでかでかと書かれていた。

 

「ココアに塩はあいませんよ~。も~、織斑先生ったらツンデ……先生?」

「さあ、山田君。飲んでみるといい。塩入りコーヒーを」

「あ、あの……織斑先生?」

「さあ」

「ふ、ふぇぇぇ~」

 

 真耶は半泣きになりながら一口試しに飲んでみるがすぐに水をがぶ飲みする。

 

「うぇぇ……それにしても、けほっ……防護シャッターを引き剥がすなんて凄まじい力ですね」

「それだけじゃないぞ」

 

 千冬の言葉の後、モニターの映像が切り替わり、現在のアリーナの状況を映す映像となり、作業員が夜通し作業をしている光景が映し出される。

 フィールドを囲うようにして設置されていた壁には超高硬度の金属が採用されており、最大出力稼働時のISの一撃を耐えられることを目標にして制作されている代物。

 さらに言えば最大出力稼働時の一撃を受けても凹み程度で済むようになっている―――はずだった。

 

「アリーナの壁に傷をつけたのはいつだったか」

「昨年、現生徒会長の更識楯無さんが学年別トーナメント戦でミストルテインの槍でひびを入れた時ですね」

「……気化爆弾4個分の威力を優に超える威力」

「まさか壁を粉砕して観客席まで破壊するなんて思いもしませんでした。無人機がクッションになっていたおかげもあり、"この程度"で済みましたが」

「無人機のクッションが無ければアリーナの4分の1を吹き飛ばしていたか」

 

 千冬の発言に真耶は表情一つ変えずに頷く。

 

「君はこれをどう考える」

 

 映像が再び切り替わり、青い炎を噴出口から発している一夏の映像へと変わる。

 真耶は普段見せない鋭い目つきで映像を食い入るように見る。

 

「……推測の域を出ませんが青い炎は高温であることと完全燃焼を示すものかと思います……であればこの時の白式のスラスターでは理論値のエネルギー効率を実現していたんだと思います」

「同感だ……となれば一つ、詰めなければいけない相手が出来た」

「……倉持技研第二研究所所長、篝火ヒカルノさんですね」

「白式の最終調整を行ったのもこいつだ……山田先生、すまないが」

「倉持技研に篝火ヒカルノとの面会の連絡をしてきますね」

「……よろしく頼む」

 

 真耶はスマホを片手に外へと足早に出ていく。

 現在、白式は整備班の下へと担ぎ込まれ、修復作業に取り掛かっているがIS学園の生徒の力だけでは完全なる修復には至らない。

 

「どいつもこいつも……何故、一夏を戦場へと駆り立てる」




最近、また小説熱が再燃しましてまたまた賞に送る作品を書いていたりします。
まぁ、過去最高が1次選考突破程度なのでまずはそれを目指しています。
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