「ついに……宇宙に行くのか」
全ての調整を終えた俺たち宇宙班の三人は
簪が繋いでくれたこの貴重な時間は三十分。
この三十分の間に俺たちは宇宙へと飛び立ち、地上のアフタヌーンブルーと協力しながらエクスカリバーの破壊作戦を粉う流れだ。
「ISで宇宙戦闘を行うのが……まさか学生の私たちとはな」
「仕方があるまい。今やIS学園に集まる戦力は国家とやりあえるレベルだからな」
「出来れば宇宙旅行って名目がよかったんだけどね」
『この戦いが終わればいくらでも行けますわ』
セシリアはアフタヌーンブルーとブルーティアーズを接続しているためこの場にはいない。
でもオープンチャネルから聞こえてくる彼女の声には緊張の色が感じ取れる。
セシリアの一撃がエクスカリバーを決定打になるかもしれないということになれば彼女にのしかかる責任の重圧は尋常じゃない。
『発射まで三十秒……っっ! 敵機反応を検知! この反応は……亡国機業です!』
山田先生の慌てた声とともに敵機の位置を示すマーカーが表示され、そちらの方を向くと三機のISの機影が確認でき、こちらへまっすぐ進んできていた。
ダリル・ケイシー、フォルテ・サファイア、そしてアリーシャ・ジョセスターフの三人だ。
襲撃は織り込み済みだ。
敵と俺たちの間を遮るように楯無さんとシャルが現れる。
「ここは僕たちに任せてみんなは宇宙へ!」
「よろしく頼んだわよ!」
楯無さんとシャルがスラスターを吹かし、突撃するが楯無さんをレインが、シャルをフォルテが抑え込むとアリーシャさんがこちらへを風を纏って突っ込んでくる。
彼女が腕を横へ伸ばした瞬間、渦が発生してそれが伸びると風の鞭が生み出される。
「宇宙へは行かせないサ」
あまりの回転速度からか空気との摩擦で火花が散っており、強烈な風の渦が鞭のように俺たちではなく
思わずその場から飛び立とうとしたその時、風の渦が一瞬にして切断されて消え去る。
その斬撃に覚えがあったのかアリーシャさんは今までに見たことがないほどの笑顔を浮かべると上空を見上げ、高らかにその人物の名を叫ぶ。
「待っていたヨ……織斑千冬!」
そこに立っていたのは暮桜を纏った世界最強の座を持つ姉―――織斑千冬だった。
世間からすれば第一回モンドグロッソ以来、そして俺からすれば初めて見る千冬姉がISを装備した姿は勇ましく、そして強者のオーラが感じ取れる。
その手には雪片弐型の原型となった雪片が握られている。
「ここでは戦いづらい……場所を変えるぞ、アーリィ」
「いいよ。ブリュンヒルデと戦えるなら地獄の果てまでも行くのサ!」
千冬姉はスラスターを吹かし、その場を去るとその後を追いかけて笑顔を浮かべたアリーシャさんが飛翔し、スラスターを全開にして向かっていく。
その勢いはまるで彼女の心を映しているようだった。
『発射まで十五秒! 皆さん準備は良いですね!?』
「もちろん!」
『発射まで十秒! 九、八、七、六、五、四、三』
「みんな……生きて帰って来るぞ!」
『二、一、
直後、発射台が勢いよく射出されてISの限界速度を超えて空を超え、白い雲を突き抜けて成層圏を更に超えて宇宙空間に向かって飛んでいく。
発射台はその役目を終え、勢いがなくなっていくが俺たちはそこから飛び立ってISの飛行によって外気圏突破を図る。
外気圏を突破した先に見えてきたのは何もない暗闇の世界だった。
「ここが……宇宙空間」
「にしても
「仕方があるまい。国家単位で宇宙開発が活発になっているんだ」
「ゴミの問題は地球内だけじゃないのだな……」
箒やラウラ、鈴たちが初めての宇宙空間の感想を各々漏らすが徐々に見えてくる目的の姿を視界に収めるにつれて誰も言葉を発さなくなる。
今回の事件を巻き起こしたともいえる最強の兵器―――エクスカリバー。
今は簪のおかげもあり、エラー処理に全ての機能が回されているので迎撃される心配もないがその時間はもって三十分間。
地上の襲撃部隊にスコールの姿がなかったことからきっとこの宇宙空間のどこかに。
「っっ! 離れろ!」
ラウラの怒声と同時に全員がその場から散開する―――同時に先端が開き、鋭い突起物が生えた四つの尾が俺たちがさっきまでいた場所を通過していく。
体勢を整え、尾が戻っていく先を見るとそこには予想通りの人物がいた。
「スコール!」
「ようこそ。織斑一夏」
以前、見た時とゴールデン・ドーンの姿が違っていた。
一本だったはずの尾は四本まで増設されており、黄金のカラーリングだった機体は赤みが追加され、まさに太陽神の名を関する姿となっていた。
「あんたが亡国機業の頭目ってわけね!」
「いかにも……エクスカリバーは絶対に破壊させない」
「いいや、ここで私たちが破壊する! 平和な世界のためにも!」
「あなたたちに興味はないの……邪魔者は消えなさい!」
尾が勢い良く展開されるや否や先端が開き、そこに火球を模したエネルギー球体が複数個生成されると勢いよく尾が振るわれるとともに放たれる。
スラスターを駆使してエネルギー球体を回避し、スコールのもとへと向かおうとした瞬間、突如として複数の球体が同時に勢いよく破裂し、小型の球体へと変化して俺たちに向かってくる。
「っ! 弾けた!?」
「一夏! そのまま突っ込め!」
ラウラのワイヤーブレードが俺を追いかける球体を切り裂く。
俺は球体の処理をみんなに任せ、スコールめがけて突っ込んでいき、拳を突き出すが彼女の腕―――いや、剣と腕部装甲が一体化した腕によって阻まれる。
そして気が付いた―――ISを纏っているというのに彼女の素肌が見えない。
その姿かたちはまるでいつぞやに学園を襲撃した無人機のような姿をしている。
驚きながらも一度、スコールから距離を取る。
「お前……その体、何をしたんだ」
「あら気が付いた? 私はね……ISと融合したのよ」
「ゆ、融合?」
「私はもともと肉体の大部分を機械義肢にしていた。だから私はその延長としてISと融合したのよ……これこそ生体融合型IS【ゴールデン・ドーン・ネオ・オルガノス】。宇宙空間仕様で今は炎は出せないけど」
「なんで……なんで自分の体を犠牲にしてまで」
「それほどまでに叶えたい世界があるからよ!」
四本の尾とともに二本のブレードを携えたスコールが俺めがけて突っ込んでくる。
スラスターを吹かしてその場から離脱するが宇宙空間での動きに慣れず、回避行動が緩慢になってしまい、彼女の攻撃を掠ってしまう。
「四本の尾と二本の剣……宇宙空間でかわせるかしら!?」
「それはこっちのセリフよ!」
鎖に繋がった双天我月がスコールめがけて放たれるが尾とぶつかり合う。
間髪入れずに紅椿の赤いエネルギー斬撃、そしてラウラのワイヤーブレードが向かうが自立稼働する四本の尾が的確に彼女たちの攻撃を裁いていく。
「エクスカリバー!」
スコールが叫んだ瞬間、エクスカリバーの柄部分より攻撃性能を持った無数の小型ドローンが射出されて俺たちのもとへと向かっていく。
「箒! あんたは一夏といなさい!」
「あれは我々で殲滅する!」
「了解!」
鈴は鎖付の双天我月を器用に投擲しながら切り裂いていき、ラウラはワイヤーブレードを操作しつつ、エネルギー手刀で切り落としていく。
「ハハハハハ!」
高らかに笑いながらスコールは俺めがけて二本の剣を振り下ろす。
スラスターを横向きに吹かしてその場から離脱し、瞬時に雪羅の荷電粒子砲を拳にチャージし、それを勢い良く振りぬくと同時に紅椿から穿千から深紅のレーザーが放たれる。
しかし、残る一本の尾が盾となって俺たちの一撃を防ぐ。
『エクスカリバー再起動まで残り十分!』
山田先生の声が通信より聞こえてくるがスコールの猛攻で俺と箒はエクスカリバーに近づけず、ラウラと鈴も無数の子機によって足止めを食らっている。
いくら簪によって射撃ポイントが変更されているとはいえ、なるべきエクスカリバーの攻撃は止めたい。
「っっ! 箒!」
その時、白式から一つの通知が表示され、箒とアイコンタクトを取りながら後方へと大きく下がる―――次の瞬間、そこを蒼い閃光が通過していき、スコールの尾を一本、打ち砕いた。
「ぐぅぅぅっ! ど、どこから攻撃を!」
スコールはISの装甲が弾けたはずなのにまるで片腕でも吹き飛ばされたかのように激痛に表情を曇らせ、額から嫌な汗を流す。
「セシリア!」
『これ以上はエクスカリバー破壊に差し支えるため出来ませんわ』
「最高の一撃だ!」
【Boost・Time】
痛みに悶え苦しんでいるスコールめがけて超音速の速度で拳を突き刺し、そのまま全スラスターを吹かしてエクスカリバーから離そうとする。
「うおぉぉぉっ!」
「させるかぁぁぁ!」
俺の意図を感じ取ったスコールが残っている三本の尾を俺めがけて振りかざす。
一本は残りの腕で受け止めるが残り二本が迫る―――しかし、箒の二本の刀が尾の一撃を真正面から受け止めると絢爛舞踏を発動しつつ、全身の展開装甲を全開に起動させてスコールを押し込む。
「だったら! O.V.E.R.S.起動!」
次の瞬間、残っていたエネルギーの増大が通知で表示され、
O.V.E.R.S.のエネルギーが持つ時間は短い。
「箒! 行くぞ!」
「あぁ! やつを射線上からどかすぞ!」
相当、ゴールデン・ドーンに改修を加えたのか二人でスラスター全開にして押しているというのに尾からの噴射、そして背部装甲からのスラスター噴射によって少しずつしか押せなかった。
少しずつスコールを押していき、もう少しで射線上から離れるといったところで通信が入った。
『エクスカリバーに新たな動きアリ! このモードは……
山田先生の慌てた声が聞こえ、俺たちは一旦スコールから離れてエクスカリバーの方を注視するとエクスカリバーが砲身を収めていき、柄に入るかのように待機形態へと戻っていく。
「バ、バカな……私はこんな命令は飛ばしてなんか」
スコールのこの驚きようを見る限り彼女も知らない形態らしい。
その時、白式がポイントにマーカーをつけてその地点をズームし始め、俺の視界にエクスカリバー内部への侵入口が開いているのが見えた。
「っ! 待てスコール!」
「おいっ! 一夏!?」
「箒は二人を頼む!」
スコールに先を越され、その後ろを追いかていくが小型ドローンが標的を俺に定めて突撃してくる。
しかし、投擲された二つの双天我月が全ての小型ドローンを切り裂いた。
「さっさと帰ってきなさいよ!」
「もちろん!」
突如として現れた侵入ゲートへ向かって突き進んでいき、ほとんど同時と言えるタイミングで侵入ゲートを通過した瞬間、ゲートが閉じられる。
「ここは……エクスカリバー内部?」
「エクスカリバーは兵器だろ……なんで内部に侵入できるんだよ」
「私が聞きたいくらいよ……ねえ、織斑一夏。提案なんだけどエクスカリバーの秘密、探ってみない?」
「信じれるわけないだろ」
俺がそう言い返した瞬間、スコールはゴールデン・ドーンを収納し、両手を上げて何も持っていないアピールをするかのようにくるりとその場で一回転する。
正直、こんなやつを信じたくないのは山々だがエクスカリバーが予想外の動きをした以上、俺たちに伝えられていない秘密があるのは確かだ。
スコールに返すように俺も白式を収納すると彼女はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「じゃ、行きましょうか」
「お前が先頭を歩けよ」
「はいはい」