Re.インフィニット・ストラトス    作:kue

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ドキドキ


第百八十五話

 突如として始まったエクスカリバー内部のスコールと探検だったけどお互いに一言も話すことはなく、ただただ続く道を歩いて行くだけ。

 エクスカリバー内部は特に変わった様子はなくただ道が続いているだけ。

 しかし、数分歩いていると開けた空間へと俺たちは出るがそこにあるものに驚く。。

 そこはエクスカリバーのコントロールルームとも言うべき空間なのかとも思ったがそこにあるのは数々の大型サーバ、そして一台のマシーン。

 そのマシーンは無数のケーブルが接続されており、チェア型のカプセル型のマシンともいえる形状だ。

 そのマシーンの全体を覆うように黒いシールドも見える。

 

「これは……ダイブマシン?」

「ダイブマシンではないわね……中は……さすがに見えないわね」

 

 スコールがマシーンを見ている間、俺は伸びているケーブルが接続されているサーバのもとへと向かい、注意深く見ているとふと、無造作に置かれた一冊の冊子を見つける。

 その表紙にはエクスカリバー、と英語で書かれており、嫌な予感を抱きながらも中を見ていくがすべて日本語で書かれていた。

 

「……なんで日本語なんだ?」

 

 ISを生み出した当初、世界の中心的言語は英語だった。

 でも開発者の束さんが英語で書くことを面倒くさがったので全部、日本語で発表した結果、各国はこぞって日本語教育を始め、いつしかISに関わる部分での公用語は日本語となった。

 だからIS関連の論文はすべて日本語で書かれている。

 でもそれはあくまでISに関わっている部分だけであってそのほかの学問分野では公用語は英語だ。

 だから一般兵器のカテゴリーであるエクスカリバーも英語で書かれていてもおかしくないはずなのにこの冊子に書かれている言語はすべて日本語だ。

 

「なにそれ?」

「っっ!」

 

 後ろから突然、声をかけられて反射的に姿勢を低くしてその場から飛びのく。

 その姿を見てスコールはやれやれと言わんばかりに呆れた表情を浮かべ、肩をすくめる。

 

「何をそんなに警戒してるのよ」

「……当たり前だろ。お前の傍にいて安心なんかするはずないだろ」

「酷い言いよう……で、それはなんなの?」

「知るかよ……でもエクスカリバーに関する冊子だと思う……中身は全部日本語だけど」

「……日本語ねぇ……」

 

 スコールは顎に手を当てながら考えつつ、再びマシーンの方を向く。

 俺もスコールの方に注意を払いながらも冊子を読み進めていく。

 そこに書かれているのはエクスカリバー開発に携わった人の名前や組織などがすべて詳細に書かれており、読み進めていくと詳細なスペックデータもあった。

 それもイギリス側が公表していないデータだ。

 

「……ライド型IS?」

 

 読み進めていった中でそんな表現が目に留まり、さらに進めていくとそんな表現が随所に現れる。

 ISはマルチフォーム・スーツであり、ライド型なんていう言葉は存在しないはず。

 でももし―――もし、俺たちが知るよしもない裏側でそんなものが存在するのだとしたら従来のISをスーツ型とすればライド型はつまり、【搭乗タイプ】になる。

 

「おい、スコール……エクスカリバーは兵器なんかじゃない……ISだ」

「なるほど……ということはこの中には」

 

 スコールがマシーンに触れた瞬間、電子音とともにマシーンが動き出し始め、ゆっくりと全体を覆っていた黒いシールドが回転していき、その内部が露わになっていく。

 漆黒のシールドがすべて取り払われて内部が完全に露わになった瞬間、俺もスコールもそこにあるものに目を見開いてしまう。

 

「……なるほど。エクスカリバーは人間を生贄にして動く悪魔のISってわけね」

 

 そこにあったのは無数の管が全身に突き刺さり、骨と皮だけになって生きているかさえ分からないほどに衰弱しきっている女性だった。

 スコールは何のためらいもなくその女性の首筋に触れるとほんの一瞬だけ女性の指がピクリと動く。

 

「……脈はあるけど弱い……長くはもたないわね」

「この人は……なんなんだ」

「ん~。識別タグも何もないから何とも言えないわね……予想するとすれば……エクスカリバーに搭載される人間は別に消えても構わないやつ、とかかしらね」

「……犯罪者」

「もっと言えば死刑囚とか、かしらね」

 

 恐らくエクスカリバーの全ての情報がこの冊子に記載されているんだろう。

 正直、この悪魔のような冊子を十六歳になったばかりの子供である俺では管理することは出来ないし、どう扱えばいいかも分からない。

 この冊子がすべて公開されれば少なくともイギリスという国家はアメリカとは違う形で終焉を迎えることになるのは間違いない。

 

『ついに』

「「っっ!?」」

 

 突如として背後から機械音声が聞こえ、俺たちはその場から全力で飛びのき、声がした方向を向くとそこには老年の男性の姿が映像として投影されていた。

 

『私の名はベネディクト・オルコット』

「オルコット?」

『そして妻のアメリア・オルコットだ』

「オルコットって……セシリアの両親!?」

 

 何故、セシリアの両親がこんな宇宙空間に浮かんでいるエクスカリバーに存在するのかが分からない。

 首をかしげていても映像はあらかじめ用意されていたものなので進んでいく。

 

『この場にたどり着いた者よ……今からエクスカリバーの全てを話そうと思う』

「「……」」

 

 俺たちはたがいに視線を合わせ、今は何もしないことを互いに確認し、静かに耳を傾ける。

 

『エクスカリバーは……アメリカとイギリスが覇権を得るために作り出した悪魔の兵器だ。そのあまりにも巨大さゆえに従来のエネルギー量では動かすことさえままならなかった……そこで奴らは考えた。人間をエネルギーを生み出す歯車の一つにすればいいと』

 

 それを聞き、俺たちの視線は衰弱しきった女性のもとへと向けられる。

 

『最初は犯罪者……特に死刑囚を当てがおうとしたみたいだがエクスカリバーを起動するには高いBT適正が必要であることが判明した……イギリスとアメリカは血眼になって探しただろう……そしてついに見つけたのだ。非常に高いBT適正を持つ少女を』

 

 男性の話を聞いていく中で俺は一つの結論にたどり着いた。

 BT適正が高い女の子なんて俺が知る限りではたった一人しかいないから。

 

『その少女の名は』

『「セシリア・オルコット」』

 

 以前、彼女は言っていた。

 極東の国までISを学びに来たのは戦闘経験値の蓄積、そしてBT兵器のデータ取得が目的であると。

 データサンプリングの対象に選ばれるほどに高いBT適正を持っている彼女は上の目論見通りにIS学園でBT分野において目覚ましい活躍を見せた。

 偏向射撃に始まり、あらたなBT兵器の境地にも至った。

 それらは全て―――エクスカリバーという巨大なBT兵器を運用させるためにイギリス側が仕組んだこと。

 

『イギリス政府はセシリアのBT適正の高さを知り、まだ幼い彼女を代表候補生にすると我々に通達を出してきたんだ。普通なら喜ぶだろうが……我々は恐ろしかった。この子に何かとてつもない災厄が降りかかるのではないかと……だから私たちはそれを拒んだ……だが拒んだところで相手は国。結果は火を見るよりも明らかだ……だから我々は考えた。少しでも時間を稼ごうと……我々がエクスカリバーの生贄になることを選んだ』

「セシリアを……守るために」

『我々は世間的には越境鉄道の横転事故による死亡として扱われた……政府からは様々な好条件が提示されたよ。オルコット家の地位はもちろん、セシリアに対しての好待遇も……だが我々はそれを信じていなかった。なんせそれを確認できないのだから……だが我々は信じていることが一つだけあった』

 

 その一言の直後、気のせいだとは思うけど男性と目があった気がした。

 

『セシリアを……私たちの愛娘を守ってくれる存在が必ず現れると。アメリアは常に言っていた……必ずセシリアが私たちの想いを解き放ってくれると……そしてついにそれは実現する。この場にたどり着いた者よ……我々の願いを聞き入れてほしい……どうか……どうかこの悪魔の兵器であるエクスカリバーを破壊してほしい。こんな兵器は存在してはならない……世界を守るためにも……セシリアを守るためにも。おそらくこの映像が流れるころにアメリアの命は尽きる。そうなればイギリス政府は何が何でもセシリアを我が物にしようと動くだろう』

 

 タイミングは最高だったわけだ。

 亡国機業がIS学園で爆破テロを起こしたことで各国が代表候補生を戻す方針を打ち出し、それに便乗すれば何も怪しまれることはない。

 イギリスは傷を負わず、むしろ利益を得ながらセシリアという次なるエクスカリバーの弾を手に入れる。

 

『この場にたどり着いた者よ……どうか我々の想いを汲み取ってほしい』

 

 その言葉を最後に映像が消え去ると同時にチェア型マシーンが機械音を発しながら動き始めるるとセシリアの母親に繋がれていた管がすべて外れる。

 そしてマシーンがゆっくりと動き始め、彼女を押し出すように形を変えていくので俺は慌てて受け止めようと近づいた瞬間、視界の端で殺意が動くのが見えた。

 

「うぉぉぉっ!」

 

 身をよじらせ、その場から飛び上がると同時に三本の尾が俺の体スレスレのところを通過していき、白式のスラスターを吹かしてその場から離脱する。

 セシリアの母親が床に落ちると同時に床が赤く汚れる。

 それは俺の頬から流れ落ちる血だった。

 

「スコール!」

「アメリカの名もなき兵たち(アンネイムド)のようにイギリスの裏側……それが人間を生贄として稼働する最強の兵器、エクスカリバーだったというわけね」

 

 スコールはセシリアの母親をゴミでも蹴り飛ばすかのようにそこから退かすと尾だけを部分展開したまま落ちている管を全て拾い上げる。

 

「……何をする気だ」

「何をって? そんなの決まってるじゃない……こうするのよ!」

 

 直後、スコールが全ての管を己の体に突き刺した瞬間、ゴールデン・ドーンのエネルギーが管を伝ってエクスカリバーへと送り込まれ始め、エクスカリバー全体が激しく揺れ動く。

 

「あぁぁぁぁぁぁっ!」

「くっ!」

 

 激しい閃光を発しながら雄たけびを上げるスコールを警戒しながら倒れて動かないアメリアさんを抱き寄せてスコールから距離を取る。

 すると管がゴールデン・ドーンと同じカラーの輝きを放ちながら宙に浮かび上がる―――そして彼女の背中に勢いよく突き刺さっていく。

 

「くっふぅっ! んぐぅぅぅぅぅっ!」

 

 まともな人間が浮かべることはない表情を浮かべ、目を白黒させているスコールの姿はまさに狂人。

 そしてだらりとその両手が落ち、部分展開されていた三本の尾が光の粒子となって消え去り、エクスカリバーの激しい揺れも収まりを見せた。

 

「……」

「…………Ex-Dawn……Activated」

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