Re.インフィニット・ストラトス    作:kue

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第百八十六話

「っっ!?」

 

 スコールの口から人間の声とは思えない電子音声と人間の声が混ざり合った音が発された瞬間、再びエクスカリバーが激しく揺れ動き、周囲のサーバが黄金に輝き始める。

 俺はアメリアさんを抱き寄せながら周囲を見渡すと脱出ポッドが見え、彼女を抱きかかえながら脱出ポッドの開閉ハンドルを開け、ポッド内に彼女を乗せるとハンドルを強く閉める。

 そして近くにあった射出スイッチをカバーごと粉砕するとエクスカリバー外へと射出される。

 

『一夏!? いったい何があった! エクスカリバーから黄金の輝きが』

『待て! 脱出ポッドが射出されたぞ!』

『一夏! 応答しなさいよ!』

「悪いみんな! 何も言わずに脱出ポッドを回収してくれ! 俺も今から脱出する!」

 

 オープン・チャネルでの通信を閉じ、スコールの方を見るとそこにはもう完全に人間を捨て、新たなエクスカリバーの弾となった人柱の姿があった。

 全身からは黄金の粒子が零れ落ちている。

 

「完全に人間を捨てたな……スコール」

『「捨てた? いいえ……私は超越したのよ! 人間をね! 見せてあげるわ……超越した私を!」』

「やめろスコール!」

「ははっ」

「くぅっ!?」

 

 彼女の意図を察し、止めようと駆け出すがスコールが手をかざした瞬間、衝撃波が放たれて俺の体をいとも簡単に吹き飛ばし、壁に叩きつける。

 ISのエネルギーを攻撃に転用したんだろうが完全に人間がする技じゃない。

 

「くっ! ここは一旦退くしかない……くそっ!」

 

 俺は白式を展開し、スラスターを吹かしてその場から緊急離脱を行い、道を戻っていく。

 そして侵入ゲートへとたどりついた瞬間、俺の到着を待っていたかのようにゲートが開き、そこから外へと出ると鈴が俺のもとへとやってくる。

 

「一夏! いったい何が」

「今すぐ離れるぞ! 重撃射撃(ブラストモード)が来るぞ!」

「っっ!」

 

 鈴とともにスラスターを吹かして急加速を行い、エクスカリバーから大きく距離を取ると脱出ポッドを回収したラウラと箒とも合流する。

 

『皆さん合流しましたね!?』

「はい!」

『重撃射撃時、強い衝撃波が予想されます! 発射と同時にスラスターを全開に吹かして姿勢制御に全てを注いでください! でなければ広大な宇宙空間に投げ出されます!』

「ラウラ、脱出ポッドはどうすればいい」

「私のAICで動きを止めることは出来る……私の分まで支えてくれればな」

「よし」

「ぁっ」

「「なぁっ!?」」

 

 ラウラを抑えるためにと思って後ろから抱きしめる形で彼女を抑え込むと鈴と箒が何やらこちらに羨ましそうな視線を送ってくる。

 そしてラウラは顔を真っ赤にしてしまい、うつむいてしまった。

 

「っっ! 来るぞ!」

 

 エクスカリバーの銃口から放たれる輝きが最高潮に達した瞬間、見たことがないほどの極大な輝きを放つ消滅級(デストロイ)レーザーが放たれる。

 ISのスラスターを全開に吹かし、迫りくる衝撃波に耐えようとするが―――

 

「うあぁっ!?」

「きゃぁぁっ!」

「な、なんて衝撃だ!」

 

 エクスカリバーから放たれた凄まじい衝撃波が俺たちに襲い掛かり、全力でのスラスター噴射が全く意味をなさないほどに姿勢が大きく崩される。

 視界の方向が全く定まらず、グルグルと回転するなか俺はラウラを抑えながらもなんとかして姿勢制御に全ての意識を集中させる。

 

「一夏! これにつかまって!」

 

 視界の端に鎖に繋がれている我月が投擲されるのが見え、手を伸ばして我月の持ち手部分を掴む。

 それを確認した鈴と箒は二人がかりでスラスターの逆噴射を行い、俺とラウラ、そして脱出ポッドの動きを止めようとする。

 激しい回転は徐々におさまっていき、吹き飛びも緩やかなものとなり、白式のスラスターによる姿勢制御のおかげもあって無事に衝撃波を流しきることができた。

 

「セーフね」

「なんとかな……冷や汗かいたぞ。大丈夫か、ラウラ」

「あ、あぁ……心臓が止まるかと思ったぞ」

 

 確かにラウラの言うように宇宙空間に制御不可能になった状態で吹き飛ばされたら戻るすべがないからな、と思いながらもどこか彼女の意見と相違があるように思うのは気のせいか。

 そんなことを思っていると通信が入り、山田先生の声が響く。

 

重撃射撃(ブラストモード)の着弾を確認しました。事前に設定した地点の着弾のため、既にイギリス側の避難も完了しています』

「よかった……とは言えないわね」

「あぁ……」

 

 鈴の言うようにエクスカリバーはまだ健在だ。

 三時間の冷却時間があるとはいえ、エクスカリバーとスコールが一体化した今、俺たちへの脅威はさらに強くなったと言える。

 

「まずこの脱出ポッドはなんなんだ、一夏」

「あぁ、その話もあるし……まずは地球に戻ろう。エクスカリバーもスコールも三時間は動けないからな」

 

 俺たちは脱出ポッドの外部アクセスパネルを操作して降下座標を入力して機械制御に任せて一足先に脱出ポッドを地球へと送る。

 

「山田先生」

『どうかしましたか?』

「今から送る座標に脱出ポッドを降下させますので回収をお願いします」

『……よくわかりませんが更識さんとデュノアさんに伝達しておきますね』

 

 何かを察したのか山田先生は深くは追及せずにそれを承諾してくれた。

 後は俺たちが無事に地球へ戻ればいったんは任務終了だ。

 

「戻ろう……地球に」

 

 

 

―――――――――☆――――――――

 

「……了解。シャルロットちゃん」

 

 地上で真耶より指令を受けた楯無はシャルロットへと声をかけるとシャルロットも先ほどの伝達を聞いていたのか何も言わずに静かに頷く。

 

「この二人はどうしますか?」

 

 そう言うシャルロットの足元には大破したそれぞれの専用機の待機形態を握り締めながら拘束用ケーブルによって横たわらされている二人がいた。

 第二形態移行を果たした楯無、そして新たな力を得たシャルロットたちの前においては既にレインとフォルテは足止めにすらならなかった。

 

「あとでイギリス軍の部隊が回収に来る手筈になっているわ。私たちは脱出ポッドの回収に」

「分かりました」

 

――――――☆―――――――――

 

「ではこれよりこれまでの状況をまとめる」

 

 千冬姉の一言からイギリス空軍のオペレーションルームにて会議は始まり、空間にこれまでの状況が簡単に要約された画像が投影される。

 

「現在、エクスカリバーは三時間の冷却時間に入っており、残る時間は二時間半。山田先生、被害状況は」

「はい。重撃射撃によって発生した人口津波によって沿岸部において甚大な被害が発生しています。しかし、既に避難が完了していることもあり、死傷者はゼロ。被害は全て家屋などです」

「亡国機業についてだがアリーシャ、フォルテ、ダリルの三人は捕縛。以前、捕縛したオータムも入れると残るメンバーはスコールのみ。織斑、それについて報告を」

「はい。エクスカリバー内部にてスコールは……エクスカリバーの中枢システムと融合を果たしました……今あれはエクス・ドーンに変化しています」

 

 俺の報告にこの場にいる全員が驚きのあまり言葉を失う。

 

「俺は内部でエクスカリバーの全てを知りました」

 

 そう言いながらあの時、回収した全てが記された冊子をテーブルに置く。

 俺は一つ一つ情報を整理しながらみんなにエクスカリバーの真実を話し始める。

 

「エクスカリバーは兵器なんかじゃない……人間搭載型の……ISなんだ」

「あ、IS? あの巨大な兵器が」

 

 鈴の言葉に全員が同じ表情を浮かべる。

 ISは人間が纏うものであり、そのサイズは人間よりも大きくはあるがそのスケールで言えばまだ人間でも取り扱えるサイズだ。

 でもエクスカリバーは違う。

 

「エクスカリバーを動かす動力はISと同じエネルギー……でもその巨大さゆえにISと同じ構造じゃ回しきれなかったんだ……だから人間を歯車の一つとして置いたんだ」

「それがあの脱出ポッドに入っていた人……だったわけね」

「ポッドに入っていたのは女性だったとお聞きしましたが……その女性とは」

 

 セシリアの質問に俺は迷ってしまう。

 ここで正直にセシリアの両親の話を打ち明けるのか、それとも両親の話をすり替えて別の話として全体に打ち明けるのか。

 セシリアの両親の想いは彼女を守るという一点のみ。

 俺は―――

 

「エクスカリバーに搭載されていたのは……セシリア。お前の両親だ」

「……」

 

 俺の発言を聞き、セシリアは目を点にし、全ての言葉を失った。

 

「エクスカリバーには高いBT適正を持つ人間が必要なんだ。イギリス政府はセシリアが高いBT適正を持つと分かって両親に話を持ち掛けた……でも両親はそれを拒み、セシリアを守るために自分たちがエクスカリバーに搭載されたんだ」

「……」

「両親の事故は……世間的にそう見せかけるカモフラージュだったんだ」

 

 突然の両親の死の真実を伝えられ、セシリアは一言も言葉を発さず、それを察してか周りのみんなも彼女に何も言葉をかけられない。

 でもセシリアは顔を上げ、まっすぐ俺の方を見る。

 

「そうでしたか……私の両親の死にそんな話が……」

「……セシリア」

「でしたら猶更、この作戦でエクスカリバーを破壊しなければなりませんわ。私を道具としか見ない政府との決別、そして両親を呪いから解放するためにも」

「……」

 

 俺はテーブルに置いたエクスカリバーの全てが載っている冊子を取り、彼女にそれを渡した。

 

「これにはエクスカリバーの全てが載ってる……これをセシリアに預ける」

「……確かにお預かりしましたわ」

「千冬姉。構わないよな」

 

 そう尋ねると千冬姉は当たり前だと言わんばかりに頷く。

 この情報が開示されればイギリスという国もまた終焉へと向かうだろう―――でもセシリアが居れば必ずこの国はまた立ち上がることができる。

 これは壊すためのものじゃない―――再構成するためのものだ。

 

「我々はこれより作戦内容を再考する。各自、体を休めておけ」

 

――――――☆――――――

「束様……どうされますか?」

「ん~。別にいいかな~。まぁ、最後に回収には行くけどね」

疾駆する嵐(アーリィ・テンペスト)、ですね」

「そそ。それを貰って……とりあえず当分は回収作業かな」

「分かりました。私もどこまでもついていきます」

「うん! じゃあ行こうか!」

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