Re.インフィニット・ストラトス    作:kue

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第百八十七話

 作戦内容の再考のためにそれぞれ自由な時間が与えられた中、セシリアは一人で空軍基地の外に出て一夏から託されたエクスカリバーの全てを見ていた。

 そこには一夏が伝えてくれたようにエクスカリバーが人間を歯車の一つとしていること、そしてその歯車として彼女の母親があてがわれていること。

 全てが書かれていた。

 

「……これが私の両親の真実」

「お嬢様」

「チェルシー……」

 

 後ろを振り返るとそこには幼き頃からともに傍にいてくれたメイドであり、幼馴染でもあるチェルシーの姿があり、隣へとやってくる。

 

「全てお聞きしました……ご両親のお話」

「……わたくしは正直、どう反応していいか分かりませんの」

「……」

「両親を駒にしたイギリスに怒りの矛先を向けるべきなのか、それとも真実を目の当たりにして泣き叫べばいいのか……何が正しい反応なのか分かりませんの」

 

 セシリアの言葉にチェルシーは何も言わずに耳を傾けているとそっと彼女の手を取り、優しく握りしめる。

 その優しさに触れ、セシリアは少しだけ笑みを浮かべるとチェルシーの手を握り返し、エクスカリバーがいるであろう場所をじっと見つめる。

 

「どのような反応するのか分からない……それが今のお嬢様の正直なお気持ちだと思います……ですが今やらなければいけないことはもう決まっています」

「ええ……両親の想いを受け継ぎ、エクスカリバーを破壊しますわ……そして二人に見せますの……わたくしの成長した姿を」

「この戦いが終われば……お墓参りに参りましょう。全てのご報告も兼ねて」

「ええ。その時も一緒に来てちょうだい、チェルシー」

「もちろんでございます」

 

 

 

――――――☆――――――

 オペレーティングルームでは技術者による俺たちの専用機の最終調整が行われており、技術者たちが忙しそうに走り回っているがそんな姿を見ながら俺はこれから自分がするべきことを考えていた。

 全員の共通目標はエクスカリバーの破壊とスコール・ミューゼルの打倒。

 ただ、正直なことを言えばスコールとは一騎打ちで俺の手で確実に倒したい―――『千夏』を消し去ったあいつは俺の手で倒さないといけない。

 

「……」

 

 でもこの作戦には世界の命運がかかっており、俺のわがままを突き通せるほどの余裕はないし、確実にスコールを倒すのであれば複数の戦力を用意してぶつけるべきだ。

 頭ではそうするべきだと分かっているけど俺の心がそれを許さなかった。

 やっと織斑の一員としてあいつを迎え入れられると思ったのにスコールはそれを奪った。

 たとえあいつがそれを拒んでいたとしても一区切りをつけたかった。

 

「一夏」

「千冬姉」

 

 千冬姉は俺の隣に座るけど何も言わない。

 きっと千冬姉は俺が何を考えていて、何を望んでいるのか気づいているんだと思う。

 

「十分後、作戦会議を開く……お前の手で全てを終わらせろ」

 

 千冬姉はそれだけ言うとその場を後にする。

 次のスコールとの戦いで俺の全てが決着する。

 俺という存在を欲する悪意は全て消え去り、織斑計画を知る者はその数を減らし、そして俺は自分の人生を次のステージに進めることができる。

 みんなから伝えられた想いに応えることができる。

 

「……ありがとう」

 

――――――☆――――――

「では作戦を伝える」

 

 十分後に始まった新たな作戦会議。

 空間に投影された映像には黄金に輝くエクスカリバー、そしてその隣にスコールの顔写真が表示される。

 三時間の冷却時間によりエクスカリバーは射撃を行うことができず、今は沈黙を貫いているがスコールと一体化するという予想外の事態を迎えた以上、何が起きるか分からない。

 

「現在、エクス・ドーンは沈黙を貫いており、三時間の冷却だと考えられる。ここで一気に攻勢に出たいところではあるが問題はエクス・ドーンのスペックが不明な点だ」

 

 ゴールデン・ドーンと一体化した以上、エクスカリバーのもともとのスペックにゴールデン・ドーンのスペックが上乗せされていると思ってもいいかもしれない。

 だから三時間の冷却時間が短縮されている可能性だってあるし、もしかしたらエクスカリバーから火球を打ち出すことだってできるかもしれない。

 

「そのため、まずはエクス・ドーンからスコールを切り離す必要がある」

「切り離すということは……誰かがスコールを倒すということですか?」

 

 ラウラの質問に千冬姉は静かに頷く。

 エクス・ドーンの冷却時間が三時間のままであればその間にスコールを倒して切り離せばエクスカリバーへと戻り、アフタヌーンブルーで超長距離狙撃をもってして破壊することができる。

 

「宇宙班を再構成して宇宙へ向かうのか……構成はどのようにされますか?」

「現状、こちらが確認している亡国機業の構成員は全て捕縛済みだ。であれば地上班を最小限にし、宇宙班を最大数まで構成する。織斑、篠ノ之、鳳、更識姉を宇宙班とし、地上班をデュノア、オルコット、更識妹、ボーデヴィッヒとする……織斑、お前がスコールを倒してこい」

 

 千冬姉の言葉に誰も反論を述べることはなく、全員が千冬姉の決定に従うことを表明するかのようにただ沈黙を貫いている。

 今まで何度もスコール率いる亡国機業とぶつかり合ってきた。

 でもその因縁も次の戦いで最後となる―――いや、俺の手で最後にするんだ。

 

「エクスカリバーの冷却時間は残り二時間と十五分だ……十五分後に作戦を開始する」

 

 千冬姉はそう言うと山田先生、そして篝火さんを引き連れてオペレーティングルームを後にし、俺たちだけの空間にしてくれた。

 それはまるでやるべきことをして来いと言っているようだった。

 

「……俺さ、ちゃんとみんなに返事をしようと思うんだ」

 

 誰もが俺が発する言葉に耳を傾け、俺を見つめる。

 これまでみんなから想いを告白されてその返事をずっと結論を出さないでいた。

 でもいつまでもそうするわけにはいかない―――スコールとの戦いが終われば俺は人生の新しい一歩を踏み出さなきゃいけない。

 そのためにはみんなに想いを伝えないといけないんだ。

 

「今まで散々、命を狙われてきて戦い続きの生活から……新しい生活に踏み出すためにも……これからのみんなとの生活のためにも……俺は最後の仕事をしてくるよ」

「旦那様は……一夏は次の戦いをどういう風に考えているのだ?」

「俺の人生の一つの区切りと……始まりだと思ってる」

「一夏が新しい一歩を踏み出せるためにも……僕たちは守り続けるよ。あなたの居場所を」

「あたしたちも待つからさ……あんたは気兼ねなくスコールをぶっ飛ばしてきなさいよ!」

「一夏。迷うことなくスコールを倒してこい」

「一夏さん。この戦いが終われば盛大にパーティーをしましょう。そのための準備はしておりますので」

「一夏の……門出をお祝いしなきゃ」

「そうね。一夏君の新しいこれからのために」

 

 楯無さんがそう言いながら手を前に差し出し、その上から簪が手を重ね、セシリア、箒と次々にみんなが手を重ねていき、最後に俺が重ねる。

 みんなの温もりや強い思いがこの手を伝わって俺の全身に流れてくる気がする。

 

「絶対に……戻って来る。今までの人生に区切りをつけて……新しいこれからを歩んでいくためにも」

 

 

 

――――――☆――――――

「みんな……成長しましたね」

「まだまだこれからさ……あいつらの人生はこれから始まるんだ」

 

 オペレーティングルームを抜け、扉の近くで待機していた千冬と真耶は一夏たちの会話を聞き、この八か月近くの成長に心を打たれていた。

 入学時は幼さが残っていた彼らが今や世界の命運を握るようになったのは成長どころか進化と言っても差支えがないだろう。

 

「嬉しいねぇ……彼が進むほど私が普通だと証明される……いや、ここまでの道のりで証明されたかな?」

「少なくとも人間としての良識は多少、持ち合わせていることは証明されたな」

 

 千冬は若干、睨みを利かせながらヒカルノを見ると彼女は降参したかのように肩をすくめ、小さく両手を上へと上げる。

 黒騎士を生み出した篠ノ之束、白式に超加速推進機や蒼炎瞬時加速という力を与えた篝火ヒカルノ。

 どちらも力を与えていることに越したことはないが前者は使用数ればその反動で血しぶきを吹き、後者は時間は短いものの力を発揮することに代償はない。

 その時点で多少なりとも良識を持っているのは確か。

 

「あいつも……仲間を作っていれば変わっていたのかもな」

「「……」」

 

 千冬がぼそっと呟いた言葉にヒカルノも真耶も対象の人物の顔を思い浮かべていた。

 その時、向こうより複数の足音が響いてくるのが聞こえ、三人がそちらを向くと軍服を着た女性たちが千冬たちのもとへと向かっていた。

 

「ど、どうしましたか? そんな慌てて」

「ほ、報告! 現在、所属不明ISとエクスカリバーより放たれた無数の小型ドローンがアフタヌーンブルーへ接近中! 所属不明ISは五機! 小型ドローンは反応を検知できただけでも数百!」

「ご、五機の所属不明ISと数百の小型ドローン!?」

「……束っ!」

 

 千冬は忌々しそうにその名を呟くと彼らがいるオペレーティングルームの扉を蹴り開けると全員に向かって声を張り上げる。

 

「現在、五機の無人機と数百のドローンが接近中! 織斑は宇宙進出の準備だ! 更識姉! 鳳! ボーデヴィッヒは無人機の撃破! オルコットはアフタヌーンブルーの準備! そのほかのメンバーはアフタヌーンブルーに近づく小型ドローンを撃ち落とせ!」

「「「「「「「「はい!」」」」」」」」

 

 これより世界のこれから、そして一人の少年のこれからを決する戦いが始まった。

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